もしも、オリ主がノーネームに居て黒ウサギを惚れさせていたら   作:ミミヤヤ

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オリ主の生存が判明だ!

 高速で動く影が一つ。

 まぁ、その正体は十六夜なのだが。彼は、流石に第三宇宙速度という超速を出すと周囲に被害を及ぼしてしまうということでかなり抑え目な速度で駆けていた。それでもかなりの速度なのだが。どれくらいかと聞かれれば、新幹線くらい! と無邪気に答えて見せよう。そんな速度だ。

 

 十六夜の速度伝々はもう終わりとして。彼は駆けながら愚痴たれていた。

 

「ったく。元お仲間で元魔王の救出に生死も行方も不明の現仲間の捜索、そして暗くなった住処。異世界ってのは存外大変だな、ホント」

 

 現状に対する愚痴、というか文句。元お仲間~、というのはレティシアのことだろう。そして生死も行方も~というのはグレン。暗くなった~というのも元凶はグレン。

 

「グレン某とかいうのは取り敢えず会った瞬間まず殴ろう。そいつにとって理不尽であろとなんであろうとまず殴ろう。そうしよう」

 

 どうやら十六夜さんにとってこの現状はかなりイライラが溜まる状況のようで。三回もグレン某への不幸を決定した。グレンとやらが星をも砕く拳を喰らうと思うと、結果的に生きてても死んでいても変わんなくね? と疑問に思ってしまうのは悪いだろうか。いや、悪い(混乱)。

 

 十六夜が愚痴と文句と呪いを唱えている間に、どうやら“サウザンドアイズ”に着いたようだ。それもそうだ。無邪気な子供が新幹線、と断言できる速度なのだ。子供にとって新幹線とは最も速い乗り物。つまり、彼はとても速いのだ。少しの距離など数分と掛からず到着していしまうことだろう。

 

「白夜叉ぁッ!!!」

 

 そして、白夜叉の個室の障子を蹴破った。

 何故蹴破ったのか……。そう聞かれたなら恐らく「なんとなくだ!」と元気よく彼なら答えてくれる筈だ。

 

「ぬぅぉおお!?? こ、小僧! 何故蹴破った!?」

「なんとなくだ!」

 

 ほら。

 

 十六夜の蹴りをお見舞いされた障子は無残にもバラバラになっており、何とも可哀想な空気を醸し出している。しかし、十六夜はソンナノシラネ、とばかりに白夜叉に詰め寄った。

 

「いいか、質問だ。結構急いでるから質問に質問で返すなんてことはしないでくれよ。“タルタロス”のギフトってのはどうやって継がれていく?」

「ぬっ……? まぁ儂も詳しい訳ではないが“タルタロス”等の忌み嫌われ実体の無いギフトは大半が保持者が死んでから他の者へランダムで移るもの、そう聞いたことはあるの。……って、ぁああああAAAA!!?? と、ということはグレンはッ!?」

「ヤハハ、ったく。俺達間抜けで大間抜けじゃねえか。だが、あれが意図していたかどうかは分からないが七光りの野郎の話し方と会話の流れにしてやられたな。そりゃ、あまり知られていないギフトなんだ。死んだ、そう勘違いするのも不思議じゃあない。ともかく、これでおチビの言葉も加味すれば確実にグレン某が生きているということになった。あとはレティシアだ」

 

 十六夜は不適に笑い、白夜叉は喜で塗れた笑顔を見せる。

 グレンの生死。それはその人物を知っている者をこれだけ喜ばせるに値する人物。そう考えるだけで十六夜は会ってみたいという気持ちが強くなった。しかも“タルタロス保持者”とかいう凄みのあるネーミングがついた者だというあわよくば戦ってみたい、というのが彼の頭にあった。

 

(まず殴るのは変わらないがなッ)

 

 グレンの生がはっきりした筈なのに何故かグレンの死まで想像できてしまうのはきっと間違いではないだろう。

 

「白夜叉、ペルセウスのゲームへの参加方法についても教えろ。帰るついでにちょっくら終わらせてくる」

「……お主顔色が悪いぞ、大丈夫か?」

「……これが終わったら一度有休を取るとするぜ」

「が、がんばるのじゃぞ?」

 

 そして、十六夜はまたも新幹線のごとく速度で去って行った。頑張れ十六夜、敗けるな十六夜! ブラックなコミュニティに入ってしまった宿命を果たすのだ! そんな嫌な応援が聞こえた、そう後の彼は述べたという。

 

 

 ◆◇◆

 

 

「黒ウサギ!」

「……ジン坊ちゃま?」

 

 慌てた様子で駆けてきたジンに気付いた黒ウサギ。今回は十六夜が来たあと、ということでそこまで意識が沈み込んでいた訳ではないようだ。だが、以前その表情は暗いまま。目元には泣き腫らした後があり痛々しい。

 

「黒ウサギ、今から言うことは本当だから信じてほしい! グレンさんは生きている!」

「……え?」

 

 ジンの口から驚きの言葉が出たことで黒ウサギは目を丸くさせて驚く。頭のウサ耳もビクッと反応している。一体どういった構造なのか気になるところだ。

 

「じょ、冗談は言わないで下さいっ。そのような冗談はいくら黒ウサギといえど――」

「――本当なんだッ! 思い出してみて、確かにルイオスの手にはグレンさんのギフトカードがあってグレンさんは死んだ、そう取れる発言をしていた。でも、よくよく考えればグレンさんが死んだ証拠なんてどこにもないんだ!」

「それはギフトカードに“タルタロス”のギフトがありました! 黒ウサギはそれを確とこの目で見たのでございますよ!」

「そう、黒ウサギの言う通り。ギフトカードにはグレンさんのギフトがあったんだよ! 黒ウサギ、ギフトカードのことをよく思い出してみて。死んだ人物のギフトは記される?」

「……ぁ、ぁあああ。ほ、本当でございますか? 本当にグレンはッ?」

「うん、そうだよ。グレンさんは生きている。ちゃんと生きている。ラプラスの悪魔が作ったギフトは嘘を吐かない。また、会えるんだよ」

 

 そうジンが言葉を切った途端に、黒ウサギは泣きだしてしまった。それはさながら子供のようで。絶望に押し潰されていた中、それが取り除かれて泣いてしまう。あまりの驚きとそれを上回る安堵感に涙が出てしまうのだ。

 

 その涙はきっと、何よりも尊く温かいものだろう。

 

 

 

 




 いや、本当にスンマセン。

……未だに主人公が出てないって、ホントもう笑っちゃいますねっ!!!(開き直り)

 つ、次とか、その次とか、少なくとも物語が終わるまでには登場させるので安心してください!
 では、また次話で。
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