生きるとは一体。   作:ホットケーキで殺人

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 ハーメルンにはISの二次小説が2000件以上ある。
 処女作を埋めるには十分過ぎる環境なのだよ。



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 つい先日、とある離島で違法な研究所が見つかったらしい。

 非常に攻撃性が高い致死性の毒ガスが充満していて、探索チームや研究員はもちろん、実験に使われたと思われる少年少女も皆死んでいるとのこと。

 酷い話だ。

 

「鬼道! 集中しろ!」

 

 思春期なのだろうか。

 妙に荒れてる千冬さんに注意されて、子供用の竹刀を振る。

 

 ──なんて不毛なことなんだ。

 

 堅苦しい型もそうだが、特に精神論がいけない。

 竹刀だろうが鉄パイプだろうが人が持って振れば暴力だし、

そこに正しい、正しくないだとか、理性、倫理の類を持ち込んだところで本質は変わらない。

 大切なのは損得勘定と自己満足のバランスだ。

 合理性とも言う。

 そんなことを考えていると右腕に不調が!

 ラッキー、これで道場を辞める理由が出来た。

 元々一般人っぽいという理由で通い始めたからな。

 長居をする気はない。

 という訳で道場主の柳韻さんに辞めますと伝える。

 無言で頷かれ、病院へ。

 あっれー?

 診察の結果、歪みがどうとかであと数年もすれば右腕が完全に動かなくなるらしい。

 まあ母体の中で過ごすはずだった十ヶ月をすっ飛ばして作られたので、異常があって当たり前なんだが。

 新シリーズと違って、テロメアが割とヤバイ状態だからな。

 これからも右手に限らず、生体組織が少しずつ劣化していくだろう。

 さて、治療するとなれば数百万掛かる。

 柳韻さんが借金しかねない顔をしていたので、借金した場合の家族の将来を語ることで思い止まらせる。

 それに生体組織がダメというなら、機械化すればいい話だ。

 

「機械化?」

 

「ええ、機械化です。 機械の腕、夢が有るでしょう?」

 

「……」

 

 まあ肉体派の大人には理解出来ないか。

 帰宅後、俺のクローンを解凍して体温を39°に設定し、寝かせる。

 書類上は両親ということになっているNo.18とNo.7に面倒見るように命令してアリバイ作りは完了だ。

 地下室のラボにて作業開始。

 三日──で出来るといいな。

 

◇◇◇◇

 

「君、面白いことしてるね」

 

 作業中に声を掛けられ、モニターを確認するとデフォルメされた兎が画面に写っていた。

 別のモニターで一階の様子を確認すると、No.18とNo.7が新しい布団を用意して俺のクローンと仲良く寝ている。

 使えないな。

 それでこの女性は確か──篠ノ之束さんだったか。

たまに道場の近くで千冬さんや箒とワチャワチャしているのを見たことがある。

 親からこの人に伝わってしまったのだろうか。

 とりあえず眠気覚ましに常備してある珈琲でも出すとしよう。

 

「ミルク入れます?」

 

「束さんはブラックをご所望だよ!」

 

 そう返す束さんは興味深そうにモニターを見つめている。

 

「ふふん、ここをこうして──」

 

 どういう気まぐれなのか、手伝ってくれるらしい。

 作業ついでに幾つかのデータが盗まれているようだが、止められるようなものじゃない。

 以前チラッと彼女のラボ──倉を改造したものを見たが、あれば数世代進んだ技術だ。

 数十万という検証のよって得られる一つの成果を、何千何万と束ねてようやく理論上は可能とされるような技術が幾つも使われている。

 俺自身、研究所のデータを脳にイントールしていなければ、理解のりの字も出て来なかっただろう。

 束さんの手助けもあって、腕の形成、神経系との接続、修復機能などの設計図が完成。

 これをナノマシン生成カプセルに読み込ませる。

 俺の生体情報を基に、数日すれば新しい右腕が出来ているだろう。

 御礼に何か欲しいものはあるか、と束さんに聞いてみる。

 

「もうデータ貰ったから大丈夫! これでISの自己再生機能が完璧になったよ!」

 

 ISとは何か聞いてみると、それはもう上機嫌に語ってくれた。

 インフィニット・ストラトス、宇宙空間での活動を想定したマルチフォーム・スーツらしい。

 もう本体は論文としては完成しており、

自己再生機能を仕上げればどこに出しても恥ずかしくないとか。

 ここに来たのは、父から俺の話を聞き、これまでの息抜きも兼ねて遊びに来たとのこと。

 

「ふふふ、これを応用すれば生体維持機能も向上する……今日は徹夜だぜい!」

 

 上機嫌なのか、それとも寝不足なのか分からないテンションだな。

 せっかくなので、即興で作った兎の絵を彫り込んだマグカップをプレゼントだ。

 日用品ぐらいならナノマシンと設計図さえあれば簡単に作れる。

 ナノマシン自体も割と簡単に培養出来るしな。

 日本には潰れても問題無いような工場が沢山ある。

 

「ありがとう少年! いやゆーくん! 暇になったらまたお邪魔するよ!」

 

 そういって束さんは風のように去っていった。

 有機というのは自分で付けた名前だが、それを略して愛称にしたのか。

 No.2と呼ばれるより嬉しいが──彼女がそれに気がついた時、どうなるものやら。

 まあたった一度の会話で身内扱いはされまい。

 そう思うと寂しいものだ。

 

◇◇◇◇

 

 新しい腕はよく馴染む。

 血が通うようになっているので、外皮が自然な肌色になる。

 とある細胞が骨を溶かし、とある細胞が骨を作ることで代謝を行うように、

この腕もナノマシンが骨格や外皮を溶かし、ナノマシンが骨格や外皮を作る。

 人工筋肉や健の部分なんかも同様だ。

 血流に乗って全身を循環するナノマシンと同期して、成長に合わせてこの偽りの腕も成長する。

 自己修復機能なんてものは、同期システムの副産物に過ぎない。

 問題があるとすれば、仕込めたギミックがブレードなだけってところか。

 展開時に外皮に穴が空くのが欠点だが、まあ仕方無い。

 それと燃費だ。

 いつもの三割増しぐらいは食べないと右腕が動かなくなるだろう。

 

 やべぇな剣道なんかやってる場合じゃねえ。

 

 そんな感じで腕は治ったけど普通じゃないから道場は辞めるぜ☆

 って感じに柳韻さんに伝えると、何故か竹刀を渡され、打ち合うことに。

 付き合う義理などない。

 竹刀を名も知らぬ門下生へ渡し、道場を去ろうとするが、千冬さんと箒が腕を組んた姿勢で入り口へ立ち塞がる。

 おっかないので回れ右して、普通に窓を開けてそこから外に出る。

 これが俺の逃走経路だ。

 歩いていると、何やら憤慨する束さんが見えた。

 どしたのー?

 

「インフィニット・ストラトスを欠陥品だって? ふざけるな!

 私の夢なんだ、必ず認めさせてやる!」

 

 それは素晴らしいな。

 でも胸倉掴むのはやめて欲しい。

 足付いていないし締まる締まる。

 

「ごめんゆーくん、でも今は凄くイライラしてるから……またね」

 

 そういって、ラボへ走っていった。

 ISが話し通りの代物なら、欠陥品どころかオーバーテクノロジーだ。

 まあ宇宙用のスーツなのに宇宙用の母船がないのはどうかと思うが。

 それにしたってこれを認めないとは、見る目がないな。

 いや、怖いだけか。

 

◇◇◇◇

 

 突然昼ドラが緊急生放送へと変わった。

 いろんな国のミサイルが日本の国会目掛けて迫っているらしい。

 ここは国会じゃないし問題ないな。

 とか思ってると全てのチャンネルが国会上空の映像に代わり、人型の何かが浮かんでいる。

 これは束さんの言っていたISか。

 見た目は完全に騎士、白いから白騎士か。

 翼があるので、エンジェルナイトでもいいかも知れん。

 搭乗者は誰にしたのだろうか……まあ束さんの知り合いなら千冬さんだろうな。

 大穴で本人ってとこだ。

 白騎士はミサイルを切り払い、その後にやってきた戦闘機をも切り落としていく。

 素晴らしいな、ダイナミックプレゼンテーションだ。

 爆風の中を突っ切って大気圏を突破し、宇宙衛星を真っ二つに……あぁ、そういうことはしないの。

 つまらんな。

 宇宙スーツなんだから宇宙に行くのが一番だと思ったが。

 既存兵器に支えられた各国の軍事的な面子を潰したって意味の方が大きそうだな。

 あ、でもミサイルや戦闘機の破片が降り注ぐことによって生じる人的被害を思えば、

遠回しにお前らのせいだと嘲笑っているのかも知れない。

 ISを認めていれば悲劇は起こらなかったのだぞ、という感じかな。

 まあ人間なんて沢山いるし、二桁程度の悲劇なんて他国の交通事故と同じぐらいどうでもいいことだ。

 なんにせよ、これだけやればISは世界中に認められるだろう。

 どう扱われるかは知らんが。

 

◇◇◇◇

 

 脅しに近い形だが、白騎士事件を境にISは世界中に認められることとなった。

 各国にてコアの研究が行われ、現状では女性しか乗れないらしい。

 理性より感情を優先しがちな女性に科学の最先端を預けるとは、嫌な予感しかしない。

 まあ女性専用だというなら必要以上に関わる必要もない。

 自分の研究を進めるだけだ。

 圧力が加われば加わるほど硬度、弾性が強まる特殊な合金と七連装式レーザー砲。

 この二つを組み合わせて作った車両でマントルへ冒険しにいくのだ。

 未発見の空洞や資源発掘、仮想敵国の地盤粉砕と、実に夢がある。

 問題は動力だ。

 核が現状一番出力が出るが、抽出と管理が面倒だ。

 人間をナノマシンで分解する際に結構なエネルギーが得られるので、

何百人かで実験して人間を小さな固形燃料へと加工して電池、または炉に近いものを作るとしよう。

 研究所の論文に似たようなものがあったはずだ。

 確か賢者の石だったか。

 

◇◇◇◇

 

 No.18とNo.7を連れて役所での手続きや役人の洗脳を終えて帰宅すると、束さんが地下のラボにて珈琲を飲んでいた。

 マグカップを愛用してくれているようで、ありがたいものだ。

 とりあえずいつ宇宙に行くのかを聞いてみるが、どうにも機嫌を損ねたようだ。

 

「あいつら酷いんだよ、ISを兵器としか思っていない。

 ちーちゃんも欠陥品とか言って宇宙まで来てくれないし!」

 

 随分とフラストレーションが溜まっているようだ。

 まあ聞くだけなら苦ではない、癒される声をしているしな。

 車両の設計シュミレーションをパソコンに任せて、束さんに向き直る。

 ある程度愚痴を吐き出したおかげか、スッキリしたように見える。

 

「ところでゆーくん、また何か作ってるみたいだけどそれ何?」

 

 意地の悪い人だ。

 見た時点でそれが何かもう分かっているだろうに。

 そういう思いを顔に出すと、束さんはにぱーと笑みを深めた。

 

「男の子なら空の方が好きだと思ってたけど、ゆーくんみたいなのもいるんだね」

 

「まあ私念もありますがね」

 

 地下に用意された研究所を真横から消し飛ばすのを想像すると中々面白い。

 

「クックック」

 

「あ、ゆーくん楽しそう! 束さんもこうしては居られない! ラボの制作を急がねば!」

 

 あのラボ以上のものをどうやって作るのだろうか。

 というか束さん、学校はいいんだろうか。

 まあ白騎士事件やらかすような人だし、問題ないか。

 義務教育の汚点は全て教師が被るものだしな。

 問題児は教師が手綱を握っていないから問題児なのだ。

 そういう意味では、千冬さんは教師に向いているのかも知れん。

 強いからな。

 

 

 

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