生きるとは一体。   作:ホットケーキで殺人

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 手続きと根回しと洗脳が終わったので学校に通うことに。

 気高き箒と同じクラスだ。

 道場での一件のせいか、箒の視線が冷たい。

 まあどうでもいいがな。

 アクション映画の話題を振って、クラスメイト達との友好を図る。

 思いの外良好な反応、やはり映画は偉大だな。

 アクションといえば、という流れでスマブラというゲームをすることになった。

 その集まりの中にいた一夏という少年が俺の右腕を凝視している。

 どうしたの?

 

「いや、なんか違和感が……うーん、気のせいかな」

 

 これが第六感というやつか。

 まあ左腕と違って曲がらないところまで曲がったりするから、バレる時はバレるんだよね。

 

「そんなことより乱闘しようぜ!」

 

 弾、というイカした名前の少年の一声で、一斉にコントローラーを手にした。

 一番有機物っぽいピンク色のキャラクターを選ぶ。

 さあ、お前の能力を寄越せ!

 

◇◇◇◇

 

 機械的で冷たいNo.18とNo.7に比べて、

 スマブラしたりドッジボールで一対四やっている内に俺はすっかり溶け込んでいた。

 道徳の時間以外で俺に叶うクラスメイトはいない。

 母への手紙?

 そんなものはfuckで十分だ。

 名前の由来?

 有機物の有機だよ。

 担任に引かれながらも授業が終わり、放課後となる。

 忘れ物をしたという一夏と共に教室に来てみれば、何やら騒がしい。

 三人の男子生徒が気高き箒を苛めているようだ。

 

「男女のくせに!」

 

「そうだそうだ!」

 

 そんな言葉が聞こえる。

 研究所で両性の実験体を見た俺からすれば、

 箒が短髪で半袖短パンだとしても十分女に見える。

 見識の狭い奴らだ。

 一夏が突撃し、箒を庇うようにして立ち回る。

 俺は苛めっ子達の膝裏を蹴って回り、さり気なく髪の毛を引っこ抜いた。

 クローンのバリエーションを増やす為に使わせて貰おう。 

 その後、互いの両親を交えた反省会の始まる。

 憤慨する苛めっ子の親の怒声に、それで?と繰り返し答えるNo.18を頼もしく思いながら、

 来賓用の羊羹を一夏と箒を交えて食べる。

 反省しなさいと言われたが、俺は膝かっくんして遊んでいただけだ。

 そうだろう? と苛めっ子達に同意を求めると否定されてしまう。

 まあどうでもいいことだ。

 妹を苛めた生徒を束さんが見逃すとは思えん。

 家族愛とは素晴らしいな。

 No.7にそう聞くと、そうですねと返される。

 これが模範というやつだ。

 

◇◇◇◇

 

 圧力を受けると硬度と弾性を変化させる合金が完成した。

 融点も果てしなく高い。

 さっそく生産体勢に入るが、複数の素材をナノマシンで分解、選別、合成という過程もあってか、生成率が低く時間が掛かる。

 素材の入手も近場の工場を潰し過ぎたのでそろそろ品切れだ。

 洗脳規模を広げて、資材をちょろまかす必要があるだろう。

 レーザー砲のシュミレーションは未だ終わらず、付けっぱなしのPCが再計算を繰り返している。

 これは時間の問題か。

 

◇◇◇◇ 

 

 時は立つのは思っていたより早い。

 単調であればあるほどそうだ。

 ISを使った競技である第一回モンド・グロッソとやらの開催と同時期に、

 政府の保護プログラムとやらで篠ノ之家は一家離散するらしい。

 気高き箒が一夏に離れたくないと縋り付いている。

 それを仕方無いという言葉で引き剥がす一夏の姿に冷徹な心が垣間見える。

 まあ竹刀を常備している女は嫌だよね。

 何度か叩かれてるみたいだし。

 守る必要がなく、自衛が出来るパートナーという意味でいえば、優良なのかも知れない。

 そういう内容を一夏君に話してみると、男は女を守るものだ、という答えが返ってくる。

 格好いいね!

 

◇◇◇◇

 

 中国からの転校生、凰鈴音とやらが人気だ。

 パンダの名前と似ているという理由で可愛がられ、顔を真っ赤にして喜んでいる。

 やたらと笹を進めるクラスメイトが多いので、試しに一口食べてみる。

 

「青草っ」

 

 食えたもんじゃねえな。

 興味を持ったのか、他のクラスメイト達も一口囓っては吐き出していく。

 パンダブームは終わりを告げた。

 一部の男子がしつこく彼女を可愛がっているが、それに対して一夏君が憤慨。

 同じネタを繰り返されるほど苦痛なものはない。

 初対面の時に顔面を殴らたのに関わらず、彼女を庇い苛めっ子を糾弾。

 俺は鈴の悪態やらお礼やら何やらを日本語に訳して場を盛り上げた。

 研究所に保存されたいた莫大かつ多種多様な論文データを脳にインストールして自我を得た俺は、あらゆる言語に通じているのだ。

 やがて勝敗が付き、ヒロイン的立場にある鈴は感激して涙を流す……という訳もなく、

 ツンツンしながらも顔を赤くして感謝の言葉を一夏へ述べる。

 これがツンデレか。

 ツンとデレで差し引きゼロ、無益なものだ。

 

◇◇◇◇

 

 つけられている。

 一流も二流も知らないが、常人では気づきもしないだろう。

 研究所にいた人間は一人残らず毒ガスで一掃している。

 俺とNo.18、No.7のクローンを廃棄場に投げ捨てていったから、向こうは全滅したと思っているはずだ。

 だが、研究員の離反や実験体による反乱の可能性を初めから考えていたとすれば、

 俺を見つけたというのも頷ける。

 データーベースの中身を脳にインストールして洗脳用のチップを容量過多で破壊した俺と違い、

 No.18とNo.7には生きたチップが残っている。

 中身を書き換えて無力化しているとはいえ、チップそのものは残っているし、

 それを探すのは容易だろう。

 それにしては時間が掛かったようだが、泳がされていたか……?

 せっかくなので防犯ブザーを改造して作った音響兵器の実験台になって貰うとしよう。

 指向性はないが、まあ問題ない。

 こういうのは即断即決、泳がせて一網打尽にするなんていうのは組織と組織でやることだ。

 俺個人の行動に面倒な策など必要ない。

 プラグを半分程抜いたところで止め、ランプが光ったところで尾行者のいる方向へと投げる。

 手で両耳を抑え、衝撃に備える。

 爆音と共に衝撃派が電柱を粉砕し、住宅の窓が割れ、気絶した鳥達が地に落ちた。

 住宅街の悲劇というやつだな。

 住人たちが何事かと家から現れ、俺の身を案じるような言葉を掛ける。

 幼さは都合が良くて助かるな。

 ジジババと共に爆心地へと向かうと、尾行者は塀にめり込む形で気絶していた。

 体のあちこちには爆発した防犯ブザーの破片が突き刺さっており、

 その一つが頸動脈を傷つけているのが分かった。

 こいつはもう終わりだな。

 明日の朝刊は住宅街で自爆テロ、になるだろう。

 いやぁ、防犯ブザーで死ぬなんて哀れな奴がいたもんだ。

 

◇◇◇◇

 

 あれから数日後、黒服が自宅へやってきた。

 亡国企業というらしい。

 人造人間であるということをバラされたくなければこちら協力しろという話だ。

 

「OK?」

 

 あ、脅してる奴俺のクローンですぜ。

 

「おっけい!」

 

 背後からNo.7が手刀を叩き込む。

 気絶した男を地下へと引きずり込んでいく。

 賢者の石の出力が上げるには、より多くの生物が必要だ。

 こいつで丁度七十人目だし、次は人間以外の生物を取り込んでみよう。

 

◇◇◇◇

 

 束さんが遊びに来た。

 コアの生産を打ち切り、ラボを使って世界中を旅行するらしい。

 せっかくなので、ISを作るに至る動機を聞いてみる。

 

「宇宙への情熱が大部分ではあるけど……子供の頃に思ったんだよ、大人数で遊びたいって思ってね!」

 

 笑顔で答えてくれたのも束の間、一転して冷たく沈んだ顔に変化する。

 

「でも皆は遊びたくないみたい。

 まあ仕方無いよ、束さんは天才だけど皆は凡人だしね。

 理解出来ないって辛いことだよ」

 

 どこか諦めが見える。

 そんなあなたに、月面アートのカプチーノをプレゼントだ。

 

「ふふふ、傷心中の束さんになんというものを出してくれるのだー!」

 

 そういってカプチーノを一気飲みする。

 実に男らしい。

 そのままレーザー砲のシステムを弄り始めた。

 なんと、粒子を使うか。

 その発想は無かった。

 

◇◇◇◇

 

 中学生になった。

 僕、という一人称から俺へと変わる生徒が随分と多い。

 

「俺彼女とかいらないわ」

 

「俺も俺も」

 

 下ネタで盛り上がる男子生徒達に突き刺さる女子生徒からのキモッ、という言葉が絶食系男子予備軍を増やしている。

 未来の日本が心配だな。

 少子化になったら大変だ。

 それはともかく、第二回モンド・グロッソ出場者である姉の応援にドイツへ旅立った一夏君だが、どうやら誘拐されたらしい。

 駆け付けた姉に救出されるも、誇り高き千冬さんは決勝戦を棄権する形となり、一年間ドイツ軍で教官をするらしい。

 一夏の居場所を見つけ出したのがドイツ軍だったそうだ。

 それってマッチホンプなんじゃないかと思ったが、ドイツの都合など俺にはどうでもいいことだ。

 問題があるとすれば、一夏への風当たりだ。

 千冬さんの戦闘に魅了されたというだけあってか、ファンには過激派が多い。

 鈴のパンダブームとは比べ物にならないほどの熱狂っぷりに思わず拍手。

 空元気で周囲を欺く一夏に自作した音楽プレイヤーを贈呈する。

 クラシックばかりだがね。

 高そうなものは貰えないと断られるが、

 時には耳を塞ぐことも大切だ、とそれっぽいことを言って押し付ける。

 これで俺の道徳レベルが上がったな。

 次の授業が楽しみだ。

 

◇◇◇◇

 

 道徳1。

 人間って分からん。

 失踪扱いになっているが、何故か遊びに来た束さんにそのことを聞いてみる。

 束さんも1だったらしい。

 仲間ですな。

 

「ちーちゃんは家庭科が1だったよ! あれは笑えたなー!」

 

 いいね、親友がいるって羨ましいよ。

 一夏や弾とは友達だが、親友ではない。

 俺も気づけばクラスメイトから不思議ちゃんみたいな扱いをされるし、

 正直いって学校はつまらん。

 

「ゆーくんも親友だよ! さあ、この胸に飛び込んでおいで!」

 

 飛び込む前に束さんが迫り、捕まってしまう。

 柔らかい。

 これが母性か。

 涙が出ないのは俺がスケベなのか、それとも道徳が1だからなのか。

 答えはない。 

 

◇◇◇◇

 

 劣化した足を取り替えて登校する。

 なんと鈴が帰国するらしい。

 それなりに話す仲だったので、女友達が減ることに寂しさを覚える。

 だが俺のピュアな心が彼女を引き止めるとかそういうことはなく、

 別れに焦りでも感じたのか、酢豚、という言葉を使って一夏にプロポーズをしていた。

 だが真剣な顔で頷く一夏の両耳にはイヤホンが!

 そろそろ切りたいな、と言うぐらいには伸びた髪がそれを隠している。

 首元を見れば分かるはずだが、緊張してガチガチな鈴はそれに気がついていない。

 学ランに黒いイヤホンと黒い髪、相乗効果は抜群だ。

 まあ弾君と一緒に盗み聞きしているので、一夏には伝わるだろう。

 応えるかは知らんがね。

 

◇◇◇◇

 

 受験場を間違えた一夏がISを動かしたらしい。

 最初のコアが千冬さん用に作られたのなら、後続機を親族の一夏が動かせるのも頷ける。

 血がなせる業に哀れみを覚える。

 間接的かつ政治的理由とはいえ、ISの世界大会で酷い目にあった一夏は、これからは直接的にISと関わっていくのだ。

 女ばかりの環境でな……。

 一夏が動かせるなら、ってことで男のIS適性を一斉に検査することになった。

 まさか人造人間の男に動かせるってことはあるまい。

 と思っていたがそんなことは無かった。

 

「え?」

 

「は?」

 

 IS動いちゃったよ。

 まあ動いた物は仕方がない。

 進路変更だ。

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