機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

101 / 294
繋ぎ続けた手

≪あれは主殿と同じ姿……!≫

 

 ネオ・ジオングのコアユニットに収まるゲネシスブレイカーは見る者に大きな衝撃を与えた。しかし問題はそれだけではない。覚醒をしたネオ・ジオングの猛攻は今までの比ではなく、大型アームユニットを地面に叩きつければ地を伝って衝撃波が襲いかかってくる。

 

「どんな姿でも負けないっ! 父さん……私、絶対に帰るからっ!!」

「簡単なことだ。奴をぶちのめせば良いッ!」

 

 だがいくら姿を真似ようが、能力をコピーしようが関係ない。ここで負けるわけにはいかないのだ。なぜなら地上で自分達を待っている人々がいるのだから。

 衝撃波を回避しながら攻撃を仕掛けるアザレアフルフォースに同意しながらウィルもセレネスをネオ・ジオングに近づける。

 

「ああ、負けるつもりなんてない……ッ!!」

 

 ネオ・ジオングは後方の四基の大型アームユニットを大型ファンネルピットとして稼働させると、己の周囲に展開する。その威圧的にも見える光景を目にしながらでも、覚醒状態にあるゲネシスブレイカーは一気にネオ・ジオングへと向かっていく。

 

 接近するゲネシスブレイカーにネオ・ジオングの大型アームユニットが迫る。しかし僅か数cmの位置で回避したゲネシスブレイカーは間近に迫り、その間にも接近したセレネスと共に腰回りのIフィールドジェネレーターを破壊していく。

 

「っ!?」

「ぐぁっ!?」

 

 しかしネオ・ジオングは己を中心に衝撃を放ち、取りついていたゲネシスブレイカーとセレネスを紙吹雪か何かのように容易く吹き飛ばす。

 

「──ッ!?」

 

 だがそれだけでは終わらず、体勢を立て直そうとするゲネシスブレイカーに既にネオ・ジオングは迫っていた。その元々の機動力のみならず、覚醒の力も相まってネオ・ジオングの機動力は驚異的なものにまで発展していった。

 

 そしてそのまま二基の大型アームユニットで左右からゲネシスブレイカーを抑え込む。

 先程、覚醒の光を放ち、自機のみならず周辺の機体にも回復効果を齎したがまさに押し潰そうとしてくるネオ・ジオングに見る見るうちにゲネシスブレイカーの耐久値は減少していく。

 

≪この力は私の方が有効活用出来るっ!!≫

 

 ギチギチと耳障りな音がゲネシスブレイカーから発せられるなか、何とか抜け出そうともがくが抜け出すことは愚か身動きを取る事すら難しかった。そんなゲネシスブレイカーをあざ笑うかのように覚醒状態のネオ・ジオングを操るコントロールAIは強く言い放つ。

 

≪それ以上はやらせんっ!!≫

 

 大型アームユニットに電磁ランスが投擲され、深々と突き刺さる。

 一瞬、バランスが崩れ、抑える力も弱まったのかゲネシスブレイカーが何とか脱すると電磁ランスを投擲したバーサル騎士は大型アームユニットの上に乗り、そのまま引き抜いて、今度は自身を拘束しようとするアームユニットに対してトルネードスパークを使用する。

 

「その光はただの力じゃないっ!」

 

 バーサル騎士がネオ・ジオングから脱すると、それを追撃しようとする前にアザレアフルフォースが己の身の重火器を放って、Iフィールドジェネレーターを破壊されたネオ・ジオングに被弾させていく。だがそれでもネオ・ジオングの装甲はいまだ目立った損傷はない。

 

「それに気づけないなら私達は絶対に負けないッ!」

 

 更にバーサル騎士とゲネシスブレイカーがアザレアフルフォースに合わせるように同時に攻撃を一か所に集中して放ち、堅牢に思われたネオ・ジオングの巨体を揺るがす事に成功する。

 ゲネシスブレイカーが放つ覚醒の光は確かに爆発的な力を発揮する。だがそれだけではなかった。あの光は希望の太陽のように周囲を照らしてくれるそんな暖かな輝きなのだ。

 

「彩渡商店街……。良いチームだな」

 

 吹き飛ばされたセレネスは刀を杖代わりに何とか立ち上がりながら、いまだネオ・ジオングとの交戦を続ける彩渡商店街チームの姿を見やる。単純な連携ではなく、互いが互いを想い、支え合うかのようなコンビネーションの数々は圧倒的な力を前にしても渡り合っていた。

 

「……僕も彼のようになれるだろうか」

 

 ウィルにとってゲネシスブレイカーが放つ覚醒の輝きがファイターである一矢の誇りを表すかのように見えた。その誇り高い輝きはまるで自分が失ったものを見ているかのようでもある。今は夕香達に出会い、まだマシになったとはいえ、例の大会以前ほど純粋には楽しめなくなってしまった。

 

「……彼のように……? いや、何を言っているんだ僕は」

 

 だからこそウィルはあの輝きを放てる一矢に憧れのような感情を無意識に抱いてしまった。それを自覚した時、自分は何てバカな事を考えているんだと頭を振って、先程までの自分の考えを打ち消す。

 

「僕は僕だ……! 彼ではない、誰でもない、僕は僕にしかなれない存在になるんだ!!」

 

 自分はどこまで行ったって自分にしかなれない。だからこそ個なのだ。

 ネオ・ジオングを見据えるウィルの瞳に熱いものが宿る。決していかなる障害が立ち塞がろうとも挫ける事のない誇り高きファイターの瞳だ。

 

 そんなウィルに呼応するように一瞬ではあるのだが、ゲネシスブレイカーと同種の輝きが纏う。ウィルは気づかないもののそのままネオ・ジオングへ立ち向かうセレネスは一瞬だけ発した輝きを力にしたかのようにバーサル騎士が損傷を与えた大型アームユニットを完全に破壊する。

 

 よろめいたネオ・ジオングにゲネシスブレイカーが再度迫り、そのマニビュレーターに紅蓮の輝きを纏う。そしてそのままコアユニットへバーニングフィンガーを放ち、対処しようとするコアユニットの差し向けられた腕部を貫いた。

 

≪何故だ!? その力も元は他人のモノの筈……ッ! 何故、こうも違うッ!!≫

「お前の猿真似と一緒にするな……ッ!」

 

 コントロールAIはこの空間内で現れた機体の中にゲネシスブレイカーに似た技を使う存在が、そして何より過去のデータから検索してそれが教わったものである事を知っていた。だがその大きな動揺と共に放たれた疑問に一矢は鋭く言い返す。

 

「俺のこの力も技も……ッ! 出会った人達が強くしてくれたんだ! 俺のこの魂や……誇り(プライド)まではコピー出来やしないッ!」

≪魂? 誇り(プライド)!? そんな不確かで意味のないものなどッ!!≫

 

 バーニングフィンガーを放った腕部はそのままマニビュレーターを握り、一矢の想いをぶつけるかのようにコアユニットの頭部に強く叩きつけられる。

 しかしいくらバーニングフィンガーを数発は耐えられるように作られたゲネシスブレイカーと言えど、その数発だけではなく長期にわたる戦闘にフレームその物にガタが来たのだろう。スパークが強く走り、バーニングフィンガーを放った左腕は自壊してしまう。

 

「確かに不確かなものかもしれないッ! けどそれが同じ力を使う俺とお前の差だ! そんな事も分からないなら俺は負けやしないッ!」

 

 だがそれでも一矢は怯んだりはしない。

 腰部のハイメガ粒子砲のチャージを始めながら理解出来ないとばかりに喚き散らすコントロールAIにありったけに叫ぶと、残った右腕のGNソードⅤを天に掲げ、GNソードⅤを媒体にした巨大な光の剣を発生させる。

 

 一瞬の差であった。

 僅かに先に放ったゲネシスブレイカーの一振りが発射直前のネオ・ジオングのハイメガ粒子砲の砲口に強烈に直撃する。覚醒も相まって溜りに溜まったエネルギーが爆発し、ネオ・ジオングにかなりの損傷を与え覚醒の光を打ち消す。

 

 しかし近くにいたゲネシスブレイカーもただでは済まず、爆発したエネルギーに呑み込まれ、吹き飛んでしまう。ゲネシスブレイカーはもはや大破寸前であり、覚醒の光も失いスラスターも満足に稼働しておらず、地面にゴムまりのように何度も叩きつけられた。

 

≪あり得ないッ……! 私が最強のガンプラだ!!≫

 

 それでもネオ・ジオングには多大な損傷を与えられたことには違いない。

 各部にスパークを走らせ、今の己の状況を受け入れられないとばかりにコントロールAIが取り乱していると最後の手段とばかりにコロニーレーザーをジェネレートする。

 

≪行けるぞ主殿ッ!≫

 

 バーサル騎士の身が軽やかに舞い、自身に迫っていた大型ファンネルピットを弾くとそのまま電磁ランスを突き刺して破壊すると一矢を鼓舞するようにロボ太が通信を入れる。

 

「終わらせろッ!!」

 

 そしてセレネスもまた鞘を捨て、前方に展開する二基の大型ファンネルピットに対して、すれ違いざまに斬撃を浴びせると、そのまま振り返って刀を振り下ろし確実に破壊する。背後で爆発する二基の大型ファンネルピットを背に刀を振り、ウィルもまた一矢へ叫ぶ。

 

「けど……どうする……ッ!?」

 

 しかし先程の攻撃で大破にまで追い込まれたゲネシスブレイカーにネオ・ジオングを確実に撃破する術はもはや残されていなかった。いや、スラスターウイングもまともに稼働しない為にネオ・ジオングに向かう事も飛び立つことすらももう出来なかった。

 

 他の機体にもネオ・ジオングを打ち倒せるだけの手段はもうないだろう。

 ネオ・ジオングを追い詰める事には成功したもののあと一歩足りない。そんな状況なのだ。

 

 

 

 

 

「──大丈夫」

 

 

 

 

 

 一矢の耳に優し気な声が届き、顔を上げる。

 そこにはアザレアフルフォースが自身に対して、まっすぐと手を差し伸べていたのだ。

 

(……そうだ……。この手があったから俺はここまで来れた)

 

 一矢にとって、こうやってミサが手を差し伸べてくれたからここまで来れた。信じているだなんだと無責任な言葉も空回りな優しさもいらない。

 

 この手をいつまでも握っていたいから。

 この手を守れる存在でありたいから。

 この手を差し伸べてくれる彼女の笑顔をいつまでも見ていたから。

 

 だからその為に──。

 

 

「行こう!」

「ああッ!」

 

 

 アザレアフルフォースのマニビュレーターをしっかりと握り、ゲネシスブレイカーはアザレアフルフォースに支えられながらも何とか飛び立つ。すると二人の想いが表すかのように握り合ったマニビュレーターから光が広がり、二機を覚醒の光が包み込む。

 

「この力はお前が思ってるほど単純な力じゃないッ!」

「力だけが私達の強さに繋がるんじゃないんだからっ!」

 

 限界の近いゲネシスブレイカーは右腕に握られるGNソードⅤを掲げ再び巨大な光の剣を発生させる。しかしもはやこの光の剣を持っていられるほどではないのだろう。ゲネシスブレイカーの右腕が震え、いつ決壊してもおかしくはない状況であった。

 

 だがそんなゲネシスブレイカーの右腕をアザレアフルフォースが両腕で支えると、ミサの想いすら力にしたように一人では決して形成できないほどの強大で強靭な光の刃を生み出す。

 

「「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉりやあああああああぁぁぁああああっっっっ!!!!!!!」」

 

 一矢とミサの声が重なる。

 二人が支え合って突進して突き出した光の刃はこの立ち塞がる巨大な壁の先にある明日へ何度も誇り(プライド)をぶつけるかのようにネオ・ジオングを貫いたのだ。

 

「……っ!!」

 

 ネオ・ジオングが背後で爆発する。

 しかし今のでゲネシスブレイカーは限界に達したのだろう。覚醒の光が消え去り、メインカメラから光が失い、力なく地面に落ちて行こうとする。

 

「大丈夫。ずっとこの手を握ってるから」

 

 しかしゲネシスブレイカーが地に叩きつけられる事はなかった。

 ゲネシスブレイカーのマニビュレーターを握っているアザレアフルフォースはそのまま機体を支える。ミサを近くに感じながら、一矢は戦いが終わった事を感じて微笑むのであった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。