機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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輝きを持つ者たちの演武

「ついにお台場ステージだ。ここに来られるなんて……」

 

 GGF博物館で体験できる最終ステージ。それはかつてお台場の地をガンプラスケールのステージとして落とし込んだものであった。モニター越しにでさえデータ上の存在ではなく本物なのではないかと見違えるほど精密に再現されたお台場の街並みを見て、ユウイチは感激している。

 

「このステージはラスボスを撃破した参加者の中から、更に選ばれた者達しか立てなかったんだ。それ以外のファイターはこのステージを外から見ていたんだよ。お台場に投影された実物大のホログラム映像でね」

「お台場ファイナルバトル……。今でも語り草になってますね」

 

 お台場をわざわざステージに選んだのは意味がある。

 それはかつてGGFのグランドフィナーレとしてバトルライブGに参加した者達から選ばれた如月翔を筆頭とする選抜プレイヤーが実際のお台場の地を実物大のサイズにホログラム投影されたガンプラによってお台場をガンダムの戦う戦場に変えると趣向で執り行われたお台場ファイナルバトルを再現したものであった。ユウイチの説明にかつてGGFに訪れていた一矢は口を開く。

 

「それはそれですごい迫力だったんだけど、僕は自分で戦いたかったんだ。だからここで戦っていた人達を……如月翔君達を本当に羨ましく思っていたよ」

「……分かりますよ、その気持ちは」

 

 ユウイチがGGFグランドフィナーレの場にいたように、幼い一矢もあの場にいた。

 あの時、実物大に投影されたガンプラを駆って実際のお台場を舞台にバトルを繰り広げる光景はまさに壮観であった。だが自分が、自分のガンプラが実際のお台場の地で実物大でバトルをする、という気持も抱いたって不思議ではない。こうやって疑似的に叶えられたとはいえ、厳密には全く違う。あの頃の気持ちは色褪せる事はなく、ユウイチの呟きに一矢は同意する。

 

「さてお喋りもそこそこに行こうか」

「ええ、楽しみましょう」

 

 ゲネシスブレイカーやセピュロス達のガンプラバトルシミュレーターがけたましく反応を示す。すると四機のモニターの先には膨大なデータが構築されて形作る。

 

 そこに現れたのはPGサイズのユニコーンガンダムとνガンダムであった。

 二機のPG機体はツインアイを輝かせるとそれぞれが持つライフルの銃口を向けるとPGならではの大火力という言葉が相応しい一つ一つが強力な攻撃が仕掛けられるなか、ユウイチと一矢は通信越しで笑いあい、マチオやミヤコと共にPG機体へ挑むのであった。

 

 ・・・

 

「何だこりゃ。何でゲーセンで茶ぁ飲んでんだ?」

「いやあ何でだろ。いつの間にかこうなってた」

 

 一方、イラトゲームパークで盛り上がりを見せている女子会。その場にモチヅキやウルチも訪れていた。ゲームセンターという場でわざわざティーポットや洋菓子類を広げて談笑している妙な状況にモチヅキが顔を顰めていると、最初の段階から参加しているミサ自身も何故、このような流れになったのかは自分でも分かっていないのか表情を引き攣らせながら答える。

 

「で、モチヅキさんとカドマツさんとその後、どういう感じなのですか?」

「な、ななな、何の話だぁっ!?」

 

 ドロシーがモチヅキ達の分のティーカップを用意するなか、今までずっと話していた恋バナをモチヅキに振る。なんだかんだで親交のあるモチヅキとカドマツ。二人には何かあるのではと尋ねてみれば面白い程露骨に狼狽えている。

 

「いーじゃん、教えてよモッチー」

「誰がモッチーだぁっ! ガキが色気づいてんじゃねーよ!!」

 

 そんなモチヅキの反応は見ていて面白いのか、ニヤニヤと笑みを浮かべながら追及してくるミサに、外見はあれだが実際は三十路を超えているモチヅキはツッコみをいれつつ呆れている。

 

「やっべぇ女子会だコレ……。姐さん、アタシ先に失礼します」

「おい待てよ助けろよ」

「いやぶっちゃけ面倒くさ…………あぁっと、ちょっと用事を思い出しました」

 

 一連の流れを見ていたウルチは面倒事から逃れるようにモチヅキに声をかけ、この場を後にしようとするが、これ以上、この場にいても追及されるだけと分かり切っているモチヅキは縋るようにウルチに助けを求めるが、哀しい事に取り合っては貰えず、ウルチはそそくさとイラトゲームパークを後にする。

 

≪なるほど、これが噂に聞く女子会ですか。データベースに登録しておきます≫

 

 助け舟になるかは分からないが、それでも身内のようなウルチに見放されたモチヅキが絶望したような表情を浮かべる背後でミサがニヤニヤと笑っている。そんな光景を傍から見ながらインフォはカメラアイを動かしている。

 

「で、どうなのですか」

「い、言わない」

 

 ウルチが去っていった出入り口を見て呆然としているモチヅキに仕切り直すようにドロシーが再び尋ねると、まるで油が切れたブリキ人形か何かのようにぎこちない動きでそっぽを向きながら拒否をされてしまう。

 

「えーセンパーイ? ってゆーか女子会でコイバナ拒否るとかぁぶっちゃけぇサゲサゲじゃないですかー」

「やめろその喋り方っ!!」

「で、どうなのですか」

「ぜっったい言わないっ!!」

 

 すると何を思ったのか、擬似人格タイプr35ばりの現代女子っぽい喋り方で話しかけてくるドロシーに薄ら寒さを感じながらツッコむモチヅキだが、何事もなかったかのように再度尋ねてくるドロシーに意地になったように拒否する。

 

「モチヅキさん、そんなに遠慮することはありません。いくら女子と言うには苦しい年齢だとしても」

「喧嘩売ってんのかぁっ!!」

 

 意地でも言わないとそっぽを向いているモチヅキに後半、語気を強調しながら言い放つとモチヅキはたまらず青筋を浮かべながら怒鳴る。

 

「遅れたわね、ヴェル、カガミ」

「レーアさん! あっ、どうぞ! リーナちゃん達も!」

 

 ふーっふーっ! と鼻息荒く肩を上下させているモチヅキはの背後から店内に入店してきた客が苦笑していたヴェルやカガミ達に声をかける。

 のはそこにはレーア、リーナ、ルルの三人がおり、喜んでヴェルは手早く三人を招いて座らせるとドロシーは三人分の紅茶を用意し始める。

 

「こんなところで集まってどうしたんですか?」

「……私も何が何だか……」

 

 促されるまま座ったレーア達だが、今一状況が呑み込めず困惑している。ルルがこの集いは何なのか尋ねると、カガミは紅茶を飲みながら苦笑交じりに答える。

 

「三人は確か翔さんの知り合いなんでしょ? 翔さんのことはどう思ってんの?」

「「っ!?」」

「もしかして好きだったりしちゃうの?」

 

 不意に夕香が何気なく三人にも恋バナを振ってみる。

 顔は知っているもののあまり接点が多くはないがこの場に集まったのも何かの縁だ。丁度、三人は翔の知り合いである事は師っているため尋ねてみるとレーアとルルはピクリと反応する。いや二人だけではなくカガミも紅茶を飲む手を止めてしまっている。

 

「うん、翔は大切な人だよ」

 

 レーアとルルが翔について尋ねられて戸惑っている中、リーナはあっけらかんとした様子で答える。だがその返答にレーアやルル、ヴェルやカガミと彼女を知る者達は驚いていた。

 

「翔もレーアお姉ちゃんも皆……私にとって大切な人達」

「えーっ、じゃあ翔さんに恋してるとかないの?」

 

 だがその次に放たれたことばにそういう事かと納得する。

 要は好きと言っても異性として好き、と言うよりは親愛からくるものであったようだ。だが恋バナを期待していた分、この返答は期待外れだったのか、今度は裕喜が声をかける。

 

「……私にはまだ……分からない……」

 

 しかしリーナは首を振ると顔を俯かせ、どこか悲し気な表情を浮かべる。

 この少女は元々はシーナ・ハイゼンベルクのクローンとして生まれた。しかしシーナやレーアの父であるヴァルター・ハイゼンベルクが求める【シーナ】という存在にはなれなかった為に彼からはずっと冷遇されてきた。それでもリーナは父に笑ってもらおうと少しでも自分に気を向けてもらえるようにとコロニー軍のMSパイロットとして身を置いた事がある。

 

 いくら戦場を駆け、人を殺めようとそれでも父は見てくれなかった。

 だが当時の翔の中に宿っていたシーナの思念やレーアと触れ合う事によって、ようやく彼女は愛情という感情を知ることが出来たのだ。そんな彼女にはまだ恋愛という感情はまだ分からなかったようだ。

 

「彼女が言っていた恋と言う感情は私やルル達が抱いているものよ」

 

 目を伏せているリーナの背中をそっとレーアが手を添え、顔を上げたリーナに静かに語りかける。

 

「翔が遠くに行っても私の心の真ん中には常に翔がいた。翔の笑顔も涙もずっと欠片のように残ってたわ。会えない時はずっと苦しかったけど、それでもまた会えるって信じてた……ずっと……願っていた。そしてまた翔に会うことが出来た」

「……レーアお姉ちゃん……」

「会えなかった苦しみも寂しさも翔に再会できて温かさに変わって心に満ちていった。翔を想っての苦しさも温もりも全部が愛おしいの。きっとそれが恋なんじゃないかしら」

 

 世界を隔てた恋。

 それは言葉にすれば壮大だが、実際は本当に苦しかった。

 なにせどんなに会いたいと願っても会う事も触れ合う事も出来ないのだから。いっそのこと出会わなければ……そんな事も思ったりもした。だが今は翔と再会して彼に関する想いが全て愛おしく感じる事が出来たのだ。

 

「翔君が傷を背負っても前に進もうとしているのを見て、ただ最初は仲間として翔君を支えたいって思ってたの。でもいつからかな、翔君がずっと隣で笑っていてほしいなんて思っちゃたんだ。だからあんなに一緒だったのに離れちゃった時は本当に苦しかったよ。でも……レーアさんの言う通りなんだよ。いつか全部が愛おしくなるの」

 

 レーアが抱いた感情はルルも同じにするところだ。

 だからこそレーアの言葉も良く分かるし、当時のレーアの気持ちも痛い程共感できるのだ。

「……でも恋は無理してするものではないわ。アナタもいつかは分かる日が来るわ」

「……何だか子ども扱いされてるみたい」

 

 例え言葉で恋を説明したとしても、言葉だけでは分からないだろう。

 だからこそカガミは自分達が翔へ抱く感情もいつかリーナも誰かに抱く日が来ると諭すとリーナは理解はしているもののどこか釈然とない表情を浮かべる。

 

「……でも分かったよ」

 

 だがそれでもこうして話してくれたレーアやルル、そしてカガミ達の表情はどれもこうして話している最中でも想っていたのだろう翔への想いでどこか綻んでいた。

 レーアに対しては翔と結ばれるように促しているが、そうさせるだけの恋と言う感情はまだ分からない。それでもいつか自分も……そんな風に思いつつリーナは微笑む。

 

(遠く行ってもずっと心には……かぁ)

 

 そんなリーナ達のやり取りを傍から見ていたミサは物思いに耽っている。

 その頭の中には先程のレーア達の言葉が残っていた。ミサはそのまま携帯端末で一矢に電話を掛けるが、一向に電話に出る気配がない。

 

(そんな話を聞かされちゃったら、今すぐ一矢に会いたくなっちゃうじゃん)

 

 しかしガンプラバトルをやっている一矢が出られる筈もなく、そんな事を知らないミサは人知れずため息をついて電話を切って頬杖をつく。

 父がお台場に連れて行ってくれなかったのはまだ我慢できる。それでも一矢まで遠くに行ってしまったのは中々辛い。そんな心の寂しさを埋めるために今日はイラトゲームパークに訪れたのかもしれない。ミサは一矢のことを想っていた。

 

 ・・・

 

「よし、これで……ッ!!」

 

 そんな一矢は今、ユウイチ達と共にPG機体を撃破していた。

 今現在、四機がこのGGF博物館のバトルの合間に培った連携によってPGサイズのゴッドガンダムとウイングガンダムゼロを撃破したところだ。

 

「っ!?」

 

 しかし不意にゲネシスブレイカーのみを狙ったビームが四方八方から襲いかかる。

 見やれば黒と白を基調としたフィンファンネルが明らかにゲネシスブレイカーを狙っていたのだ。ある程度攻撃をするとまるで誘導するかのようにフィンファンネルはゲネシスブレイカーから去っていく。

 

「あのフィンファンネル……。まさか」

 

 先程、自分だけを襲ったフィンファンネルに覚えがあった。

 だがそうしている間にもまた新たなPG機体であるストライクフリーダムガンダムとダブルオーライザーがフィールドに姿を現す。

 

「一矢君、君はあのファンネルを追うんだ! アレが誰だか分かっているんだろう?」

「で、でも……!」

 

 PGサイズのストライクフリーダムとダブルオーライザーとのバトルが始まるなか、ユウイチは先程のフィンファンネルを追うように指示するが、一矢はどこか渋った様子を見せる。何故ならPGサイズのストライクフリーダムとダブルオーライザーはあまりにも強力過ぎる能力を持っているであろうからだ。

 

「ガンプラバトルが楽しむものだろう? 大人の我儘に付き合ってもらったんだ。最後は今の君の気持ちに素直になってほしい」

「……分かりました」

 

 二機のPG機体の攻撃を紙一重で避けながら、いまだに渋っている一矢に自分達に遠慮しないで楽しめと激励を送り、その思いに触れた一矢はフィンファンネルを追うのであった。

 

 ・・・

 

「……来たか」

 

 

 まるでゲネシスブレイカーを導くかのように飛行するフィンファンネルは主の元へ戻り、ファンネルラックに収まっていく。

 宙に垂れ下がったフィンファネルはまるで翼のようで宙に佇むその機体はまるで天使のようにも見える。そんな機体を操るファイターはモニターで接近する機影を見てひとり呟く。

 

「翔さん……」

「よく来たな、一矢君」

 

 遂に辿り着いたゲネシスブレイカーはその場に着地してフィンファネルを放った機体を見上げる。

 

 

 ──それは全ての始まり。

 

 

 この世界で初めて誕生した始まりのブレイカー。

 

 その名はガンダムブレイカー0。

 

 この世界のみならず異世界においても人々の心を照らしたガンダムブレイカーがそこにいたのだ。

 

 

「ナオキ達の事は知っている……。本当に強くなったな一矢君」

「翔さんが……出会えた人達が俺を強くしてくれました……。今の俺は昔とは違います。そしてこれからもきっと」

 

 ファイターである翔はゲネシスブレイカーを見下ろしながら通信で声をかける。次々にガンダムブレイカー隊を撃破していった一矢の実力は素直に感心するところである。

 だが一矢は首を振る。自分一人で強くなったわけではないというのは一矢が何より分かっているから。

 

「君はあの時言っていたな、強くなって俺やシュウジに届きたいと」

「……はい」

「ならば見せてくれ。今の君の力を」

 

 かつてジャパンカップ最終日の夜に力強く言い放った一矢を今でも覚えている。

 今の一矢はどこまで自分に届くのか。早速その実力を見ようとブレイカー0は構える。

 

 

 

「ガンダムブレイカー0」

 

 

 

 始まりがあった

 

 

 

「ゲネシスガンダムブレイカー」

 

 

 

 そして今に繋がった

 

 

 

「如月翔」

 

 

 

 無謀だと笑われようとも我武者羅に走り続けた

 

 

 

「雨宮一矢」

 

 

 

 明日へ何度もこの胸の中にある誇り(プライド)をぶつけてきた

 

 

 

「「出るッ!!」」

 

 

 

 それは今も変わらない

 

 

 過去に交わした約束を今、果たすように

 

 

 そしてなにより互いの誇り(プライド)をぶつけるように

 

 

 英雄と新星は全ての始まりの地であるこの台場で激突するのであった。

 

 

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