アンチブレイカーとの戦闘が続くも、その圧倒的な性能による戦法に一矢は何とか食い付いているような状況であった。今なおアンチブレイカーの溶断破砕マニピュレーターから発生したビームサーベルをGNソードⅤで受け止めるゲネシスブレイカーではあったが、放たれた左腕を回避するため頭部を逸らすもも掠った部分が抉れてしまう。
「ぐぅっ……!?」
切り払われ、アンチブレイカーのサーベルが振るわれる。咄嗟に回避するゲネシスブレイカーではあったが、バックパックに備わっている大型ビームキャノンの砲身を一つが切断される。だがそれも束の間、放たれたレールガンによってゲネシスブレイカーは吹き飛ぶ。
迫るアンチブレイカーにフラッシュエッジ2を投擲するが、溶断破砕マニピュレーターによって軽々と弾かれ、そのまま花弁のように展開し、エネルギーを纏ってこちらに突き出す。避けるには間に合わない。ゲネシスブレイカーはパルマフィーオキナで対抗するが単純なエネルギーで負けてしまう。
体勢を崩したゲネシスブレイカーに掌での掴みあいではなく、そのまま胴体へ溶断破砕マニピュレーターを差し向けようとするが、間髪入れずに放たれたシザーアンカーによって矛先を逸らされ、そのまゲネシスブレイカーに残った大型ビームキャノンと頭部バルカンを浴びせられる。
「……ッ!?」
アンチブレイカーにも損傷が出来る。しかし物ともせずアンチブレイカーの左腕マニビュレーターが煩わしいバルカンを放つ頭部を掴み、そのまま圧を加える事でバルカン砲を潰し、そのままエネルギーによって巨大化させたようなマニビュレーターで殴られる。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」
けたましく一矢のシミュレーターに中破を警告するアラートが鳴り響く。あまりの差に一矢の額に汗が滲み、息遣いも荒くなっていく。集中しなければ簡単にやられてしまう。だがその集中力だって延々と続くものではないのだ。しかしそんな一矢をあざ笑うかのようにピット兵器を差し向けられ、歯を食いしばった一矢は反撃には転じず、回避だけに集中する。
「クッ……!?」
だが当然、アンチブレイカーはピット兵器に乗じて攻撃を仕掛けてくる。
両腕を分離させ、ピット兵器に混ぜて差し向け、左右から押し込むようにゲネシスブレイカーを拘束する。物凄い血からによって抑え込まれ身動きが取れないゲネシスブレイカーを確実に仕留めるようにピット兵器が包囲し、その砲口が眩い輝きを見せる。
「──ッ!」
だがビームがゲネシスブレイカーを貫くことはなかった。周囲のピットの一部が破壊され、ゲネシスブレイカーを抑える左腕も直上から落ちた何かに破壊される。
何者かの乱入に溶断破砕マニピュレーターはアンチブレイカーに戻っていくが、それでも先程の襲撃で左腕を失ってしまった。一体、誰が……。一矢とアンチブレイカーが視線を向けると……。
「借りは返したよ」
ゲネシスブレイカーの傍らにはセレネスの姿があった。刀の切っ先を向けたアンチブレイカーから視線を変えることなく通信越しでウィルの声が聞こえてくる。あのセキュリティソフトと強化ウィルスを単機だけでも突破して、こうして援護に駆け付けてくれたのだろう。
「まったく格好悪いね。戦い方は君に似ているし、実力差もある……。だが君も奴に差をつけているものはあるだろ」
「俺が……?」
向かっている際中に見たアンチブレイカーの戦い方。それは暴力的な部分は違えど、基本的な所では似通っていた。それで向こうが実力が上なのならば一見、一矢に勝ち目はない。だが差があるのはそれだけではない。一矢がアンチブレイカーに勝っている部分もあるのだ。その事を指摘するウィルにその意味が分からず、首をかしげる。
「奴は所詮、データ上の存在さ。だが僕達は違う。僕達は生きているんだ。今日この時までの強さはただ力を付けて出来たものじゃない筈だ」
「今日、この時まで……」
アンチブレイカーもウイルスの一部でしかない。だが今、ここにいる自分達は生きている。単純にデータに加えられた力ではない。成長して得た力が、
『俺は神じゃない……。だからこそ……この手の届く範囲は絶対に俺が守り抜く……ッ!!』
『俺達に限界なんてないんだッ!!』
一矢の脳裏に英雄と覇王の姿が過る。
自分は彼らの背中を追って来た。彼らのように強くなりたいと思った。それは単純な力だけを憧れたわけではなかった筈だ。
「そうだ……。俺があの二人から受け継いだのは力だけじゃない……ッ!!」
ゲネシスブレイカーの瞳にあたるツインアイが一矢に呼応するように煌めく。
彼らから学び、自分は今日まで進んできた。戦い方だけが、力だけが彼らから受け継いだものではない筈だ。
「最後まで諦めない……。そして……俺だけにしかない
カガミとのやり取りを思い出す。彼らから受け継いだ想いとそして自分が抱く
「どれだけ力でねじ伏せられようが……この
GNソードⅤをソードモードで軽く振るい、宣言するかのようにアンチブレイカーに切っ先を向けたゲネシスブレイカーは覚醒する。眩い光は確かにこのフィールド上に輝きを放つ。
「行くよッ!」
「ああッ!」
そんな一矢に満足そうに頷いたウィルは短く声をかけると、一矢は頷き、ゲネシスブレイカーとセレネスは同時に飛び出してアンチブレイカーに向かっていく。アンチブレイカーから放たれるピットに集中し、確実に破壊する。
精度の高いピットのビームを刀で防ぎながら、そのまま素早くピットを破壊するセレネスとゲネシスブレイカーはアンチブレイカーに迫る。どんどん近づく二機に距離をとりながらレールガンや溶断破砕マニピュレーターからビーム砲を放つが、互いに無意識ながらでも息の合った動きで避けて距離を詰める。
「「ッ!」」
だがアンチブレイカーは溶断破砕マニピュレーターを分離させ、レールガンと同時に放った射撃はゲネシスブレイカーとセレネスが持つGNソードⅤと刀を弾き、二つの剣は空に舞う。
「確かに強い。だが例え一人では不可能でも──!!」
宙に舞ったGNソードⅤを咄嗟に取ったセレネスはライフルモードに切り替え、アンチブレイカーの両腰のレールガンを素早く撃ち抜く。
「一人じゃないのなら乗り越えられるッ!!」
そしてゲネシスブレイカーもまた刀を掴むと、その勢いのまま溶断破砕マニピュレーターを両断し、アンチブレイカーを挟んだ両機は同時に飛び出す。
例え常識を壊し、非常識な戦い方をされようとも、友と戦い、共に討つ。ゲネシスブレイカーとセレネスはアンチブレイカーを中心にすれ違い、そのままアンチブレイカーを両断して撃破する。
「悪くないね」
「まあまあだな」
アンチブレイカーが爆散する中、並び立った二機は互いの剣を空中に放り投げ、交差すると本来の持ち主の手に収まる。互いに憎まれ口を叩くものの、二人の口元には微笑が。
「一矢ッ!!」
≪無事か!?≫
そんな二人に通信が入る。相手はミサとロボ太であった。そのままアザレアフルフォースとバーサル騎士が覚醒の光が消えたゲネシスブレイカーとセレネスに合流する。
「二人こそ無事?」
「うん、何とか切り抜けられたよ!」
ミサやロボ太の無事を確認する。やはりと言うべきか、四機とも、特にゲネシスブレイカーは損傷が目立っている。だがそれでも四機だけでここまで戦い抜いてこれたのは彼らが世界最高峰のファイターだからだろう。
≪──なるほど、これがガンプラファイター。なるほど、これがガンプラバトル≫
しかしフィールドにコントロールAIの声が響き渡る。今までずっと彼らの戦いを見ていたのだろう。何かを学習したかのような言葉に一矢達は悪い予感を感じさせる。
≪見ているだけでは物足りません。私も私のガンプラで挑戦させてもらいます≫
ゲネシスブレイカー達の前方にデータが構築される。しかし今までの比ではない大きさになっていき、一矢達は見上げると完成したデータを見て、驚愕で言葉を失う。
──ネオ・ジオング
それがコントロールAIが生み出したAIにとっての手足となる機体であった。
もっともコアユニットとなる機体は搭載されてはいないが、見上げるその巨体から発せられる威圧感は相当なものがあり、一矢達は戦慄してしまう。
「あぁ言うのはガンプラって言えるのか……!?」
「なんという機体を選ぶんだ……ッ!」
「あんなの倒せるの!?」
データによって構築され出現したネオ・ジオングに戦慄し、苦し気な表情を浮かべる一矢にウィルとその圧倒的な存在感から四機で倒せるビジョンが思い浮かばないミサは半ば混乱したように叫ぶ。
≪臆するなっ! スケールが全てではないっ!≫
誰もが怯む中、周囲を鼓舞したのはロボ太であった。説得力を持ったロボ太の言葉に頷き、奮い立ったゲネシスブレイカー達は戦闘を開始する。
・・・
「ウイルスのコアプログラムでもあるそいつを何とか出来れば解決する! 頼んだぞ!」
ステーション内でもネオ・ジオングの出現は嫌でも分かっていた。だがこのネオ・ジオングさえ何とか出来れば自体は解決に迎える筈だ。カドマツは一矢達に通信を入れる。
「あのーっ……何だか温度が変わってないですか……?」
「なに……? ……ちょっと待てよ……っ!」
映像を中継していたハルがふと何かに気づいたように恐る恐るカドマツに声をかける。
ハルの言葉に確かに温度の変化を感じ取ったカドマツはコンソールを操作し、静止軌道ステーション内の状況を確認する。
「嘘だろ……!?」
「ど、どうしたんですか?」
途端にカドマツの表情が見る見るうちに青ざめて行く。カドマツの反応を見て、聞きたくはないもののだが状況を知るために、ハルが恐る恐る尋ねる。
「環境制御・生命維持システム達がウイルスに侵され始めてる……! コイツが全部掌握何てされたら……!!」
「そんな……っ!」
ネオ・ジオングとの戦闘の映像を切り替える。そこにはそれぞれアンチブレイカーが一部を胞子のように飛散させたピットが、ネバーランドやテストプレイにも表れたコアプログラムに姿を変えたのだ。
そのままそれぞれが静止軌道ステーションの要となるシステムの柱に触手を突き刺し、掌握を始める。その恐ろしい映像を見ながらカドマツは最悪の状況を説明し、ハルは青ざめて震える。
例え一矢達がネオ・ジオングを破壊したとしても、また別にシステムが掌握されてしまっては意味がない。しかし恐怖を更に誘発させるようにそれぞれのコアプログラム達はシステムの掌握と共に強化ウィルスを生み出しはじめ、生まれた強化ウィルス達は各地に飛散していくのであった。