空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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最初のあらすじはウィキの文章を引用しています。


第0話 劇の幕引き

 「戦争 良い戦争だった」

 

 

 南米に逃れたナチス残党によって結成され「少佐」と呼ばれる男に率いられた軍団、

 

 「ミレニアム」による1,000人の吸血鬼部隊を率いての英国本土強襲作戦

「第二次ゼーレヴェ作戦」、これに乗じたヴァチカンの「特務機関イスカリオテ」

対化け物の鬼札アレクサンド・アンデルセン神父とエンリコ・マクスウェル大司教が

指揮する第九次空中機動十字軍3,000人による第九次十字軍遠征

「熱狂的再征服(レコンキスタ)」、この2つを迎え撃つ、インテグラル・ファルブル

ケ・ウィンゲーツ・ヘルシング率いる大英帝国王立国教騎士団と最強の吸血鬼アーカー

ドを合わせた首都ロンドンを舞台に市民をも巻き込んだ三つ巴の大戦争。

 地獄と混沌が入り乱れた一夜の戦争は、マクスウェル大司教の粛清、第九次空中機動十字軍とミレニアム大隊の壊滅、アンデルセン神父の死、少佐の真の目的であるアーカード消滅、そして少佐自身の死によって幕が引かれようとしていた。

 

 

 

 

 

 「少佐殿が逝かれたか……」

 

 爆発が起き続ける巨大な飛行船の中で……すべての電源が落ちた真っ暗の艦長室で1人の

血だらけ青年が、悲しそうにそう呟いた。

 ドイツ海軍の軍服を身に着けている若い男は、整った顔立ちをしており、

脱色気味の金髪と相まって美男子の様相を呈していたが、理性的でありながら

見る者を威圧するようなギラリとした目つきの悪い眼光と深紅の瞳が、そのすべてを

台無しにしていた。

 真っ赤な血で染め満身創痍ながらもなお、輝きが失われない瞳には、はっきりと悲しみの色が映し出されている。

 彼の名はーDeus ex machina(デウス・エクス・マキナ)。ミレニアムが第二次ゼーレヴェ作戦時に使用した空中艦隊旗艦の飛行船、今まさに消えてゆこうとしている飛行船と同じ名前だった。

 

 

 

 

 

 (少佐殿も大尉もドクも死に、最後の大隊も壊滅し、空中艦隊の奴らもすべて墜落……。

残るは俺だけか……。まぁ、戦争とアーカードの野郎の消滅。この2つが達成したから大隊の連中も満足して逝けたことだろうな。

 しかし、最後の最後で肉体を得ることができるとは世の中分からんもんだな)

 

 第二次ゼーレヴェ作戦の開始より、常に戦争の最前線を飛行していたマキナの船体は、数多の攻撃に晒され、内部でも大尉とセラス・ヴィクトリアとの戦闘の余波、

そして、88ミリ対空砲で外壁に大穴を開けられ、特殊軽金装甲で覆われていた巨大な

飛行船は完全にその飛行能力を失い爆炎と粉塵をあげるだけの木偶の坊と化していた。

 しかし、マキナの本体ともいえる船体全域に炎が周り、彼という存在が死につつある状況下でも彼の顔に恐怖の色は欠片もなく、歓喜の――狂喜の笑みを浮かべていた。

 この戦争の中で「兵器として存分に戦い、死ぬ」というある意味で兵器としての本懐を達成できたことで、 彼の心は雲一つない快晴の空の様に清々しく澄み切っていた。

 結局のところマキナの思考とミレニアムの「戦場で存分に戦い、死ぬ」という目的は

ほとんど同じであり、同じ穴の狢―――同類の人でなしでしかなかった。

 だからこそ、彼は自身の艦を操船するドイツ海軍ではなく、満願成就の夢を与えて

くれた少佐に対し、忠誠を誓っていた。

 

 「さて、そろそろ時間か」

 

 一際巨大な爆発が起こり、特殊軽金属製の船体が甲高い悲鳴をあげながら割けていき

自身の寿命があと僅かであることを感じ取ると、彼は見えない観客を相手にするかのように、芝居がかった動作でゆっくりと彼は立ち上がり右手を頭上に掲げた。

 

 「俺の名はデウス・ウクス・マキナ(機械仕掛けの神)!物語を収束させる神の名!

俺の死をもってこの物語の幕引きとしようじゃないか!」

 「Sieg Heil!!!!(勝利万歳!!!!) ハハハハハ!!!アハハハハハッハ」

 

 彼の狂った笑い声は、飛行船が崩れ落ち、燃え尽きるまでずっと艦内に

鳴り響いていた。

 

 




 

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