空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する! 作:ワイスマン
『ジャワ島奪還作戦が発令された。今作戦は、航空基地隊による制空権確保と、ジャワ島近海に展開する深海棲艦艦隊の排除による、上陸部隊の安全と、補給路確保が主眼となる。
長期作戦が見込まれるので、各員しっかりと準備を整え作戦にあたってほしい。
また、補足事項として、深海棲艦の不可解な行動が確認されている。
最悪の場合作戦中止となる可能性も、頭に入れておいてくれ
―――東条遥人少将』
第12話 E-1 スラバヤ沖海戦
――――1999年7月22日 AM5:00 ジャワ島奪還作戦開始時刻
E-0作戦作戦名『ジャワ島深海棲艦航空基地爆撃作戦』
作戦内容『東南アジア連合共同作戦「ジャワ島奪還作戦」が発令された。同海域の制空権を確保するため、周辺の味方航空基地より爆撃編隊を出撃、敵飛行場を爆撃し、その機能を一時停止させよ!』
東から朝日が昇り始め、今日という一日が雲一つない空と爽やかに吹く風と共に始まろうとしている時間帯、『ジャワ島奪還作戦』は、東南アジアに建設された人類の多数の航空機基地隊の滑走路横に露天駐機された爆撃機と、それを護衛する戦闘機群の離陸より、開始された。
次々と離陸して空へと上がってきた航空機群は、いくつもの爆撃機編隊を組み、ジャワ島に無数に点在する航空基地対し、分散して爆撃を敢行、自分たちの基地を守らんとして迎撃してきた深海棲艦戦闘機と護衛戦闘機との間で激しい空中戦闘が至る所で繰り広げられた。
快晴の空にいくつもの黒い煙と、機体の残骸がまき散らされる中、この作戦のために大量の航空機を用意していた人類側は、その物量をもって、迎撃戦闘機を爆撃編隊に近づけさせず、また、なぜか上がってくる戦闘機の数と精彩を欠いていた深海棲艦側は、護衛戦闘機群の妨害と、爆撃機編隊の濃密な対空弾幕により、近づくことすらできず次々と爆撃機の航空基地上空への侵入を許してしまう。
周辺の高射陣地より打ち上げられる対空砲火をものともせずに深海棲艦航空基地上空に到達した、日本海軍の陸上攻撃機――――「一式陸上攻撃機一一型」をメインに構成された人類側の爆撃機編隊は次々と爆撃コースに入り、その身に抱える爆弾を基地に投下、投下された大量の250キロ爆弾は次々と、施設、滑走路周辺に着弾、その性能を遺憾なく発揮して、軍事施設を吹き飛ばし、地上で怨嗟の声を上げる深海棲艦軍を焼き払い、滑走路にいくつもの大穴を開けていく。
そして、ダメ押しとばかりに、護衛戦闘機群が飛来、滑走路周辺に無数に駐機されている、補給などで、空に逃げることができなかった航空機や抵抗を続ける高射陣地対し、機関銃掃射を実施。
深海棲艦の損害を広げていった。
破壊の限りを尽くした爆撃機編隊と、護衛戦闘機はその成果を確認すると素早く帰投、この光景はジャワ島各地で見られ、島の東の一部を除き、ほぼすべての深海棲艦航空基地が滑走路に被害を受け、その復旧のためその機能を一時的に停止。
ジャワ島周辺の制空権は人類側のものとなった。
――――同日AM8:00 スラバヤ沖 第7作戦部隊 旗艦ビスマルク艦内
E-1作戦作戦名『スラバヤ沖海戦』
作戦内容『E-0作戦の成功によりジャワ島周辺の制空権は確保された!ビスマルクを旗艦とする第七作戦部隊は、上陸作戦を行う第八・第九作戦部隊の安全を確保するため、南西海域スラバヤ沖に多方面に展開する深海棲艦艦隊を捕捉、粉砕せよ!』
編成:第七作戦部隊:旗艦 戦艦 Bismarck
第一艦隊:旗艦 戦艦 Bismarck
重巡 Prinz Eugen
重巡 足柄
重巡 妙高
重巡 那智
空母 Graf Zeppelin
第二艦隊:旗艦 軽巡 能代
駆逐 雪風
駆逐 時津風
駆逐 初風
駆逐 天津風
駆逐 江風
リンガ軍港司令部より、電文でE-0作戦の成功の知らせが届いた第7作戦部隊の旗艦ビスマルクは、自身の部隊に知らせるめ、相互通信を開いた。
「第七作戦部隊旗艦より各員に伝達。司令部よりE-0作戦成功とE-1作戦の開始命令が届いたわ。これより私達、第7作戦部隊は上陸作戦を行う第八・第九作戦部隊の安全を確保するために、南西海域スラバヤ沖に展開する深海棲艦艦隊を捕捉、粉砕するわ!総員出撃!』
『了解です!ビスマルク姉様!重巡、Prinz Eugen出撃します!』
『了解した、ビスマルク。航空母艦Graf Zeppelin、出撃する!』
ビスマルクの第7作戦部隊出撃命令に、ビスマルクが指揮する第一艦隊隷下であり、同郷の戦友でもある、プリンツ・オイゲン、グラーフ・ツェッペリンが真っ先に反応、
『重巡、妙高。推して参ります!』
『重巡那智、出撃するぞ!』
『足柄、出撃よ! 戦場が、勝利が私を呼んでいるわ!』
続いて、妙高型重巡洋艦の妙高、那智、足柄が、
『了解、第二艦隊旗艦、軽巡能代、出撃します』
『雪風、いつでも出撃できます!』
『いよいよ第十六駆逐隊の出番かな!』
『駆逐艦初風!出撃します!』
『第十六駆逐隊、天津風。出撃よ!』
『改白露型駆逐艦江風、出るぜ!』
そして、第二艦隊旗艦、軽巡能代、その隷下の駆逐艦雪風、時津風、初風、天津風、江風と続いていき、ビスマルクが旗艦の第七作戦部隊はスラバヤ沖に展開する深海棲艦群を目指し、進路を取った。
――――同日AM10:00 スラバヤ沖 第7作戦部隊
ジャワ島近海の制空権を確保し、周辺を捜索していた索敵機から、敵艦隊発見の知らせが届いた第七作戦部隊は送られてきた座標に進路を取り航行を続けていた。
そして約2時間後、送られてきた座標に近づいた所で、自身の偵察機を飛ばしていたグラーフ・ツェッペリンから、敵艦隊の発見と詳しい敵編成が入ってきた。
「敵編成は重巡リ級が2隻に、駆逐イ級が4隻ね。進路は0-9-0本艦隊から西へ50km地点速力31ktで単縦陣を組み接近中か……」
『ああ、だがそれだけではないだろう。おそらく敵哨戒艦隊だろうな』
「そうね。でも恰好の獲物だわ、方針1-6-0へ方針。迎え撃ってやりましょう。グラーフは攻撃機を飛ばして頂戴」
『了解した。攻撃隊、出撃! Vorwärts!(前進!)』
グラーフとの通信を切ったビスマルクは発光信号を発し、第七作戦部隊に進路の変更を指示。
こちらにまっすぐ向かってくる敵哨戒艦隊を迎え撃つ進路を取った。
――――同日未明 スラバヤ沖 第7作戦部隊
「ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!Feuer!(発射!)」
グラーフ・ツェッペリンの攻撃機による先制攻撃により駆逐艦級が1隻沈んだ敵哨戒艦隊と、第四警戒航行序列の陣形を取った第七作戦部隊との距離が21㎞を切ったとき、ビスマルクが先頭を航行する重巡リ級に向け、上空を飛び回る自身の観測機から情報を得ながら砲撃を開始した。
ビスマルクの主砲、38cm連装砲より発射された2つの800kgの砲弾の衝撃は、自身の船体を揺さぶり、空気を裂きながら重巡リ級に飛来、そのすぐ周辺にいくつもの巨大な水柱を打ち上げた。
初弾夾叉。
ふつうの戦艦ならばあり得ないだろうその結果に驚くことなく、ビスマルクは砲塔の仰角を戻し、次弾を装填し、今度は全門斉射。
今度の砲弾は2本が、リ級の船体に命中し炸裂。
その破壊力を存分にまき散らしながら、リ級を海の底へと引きずり込んでいった。
艦娘が各国で有用な兵器として使われている所以は、単独で船体を動かし、数も容易に揃えられる、コストの安さ以外にも、現代艦に匹敵する砲雷撃戦の高い命中率と、相手の攻撃を回避する操艦能力の高さにもある。
本来、遠く離れた目標に戦艦の、大型艦艇の主砲がする場合の命中率はよくて約5%と言われている。
これは、誘導兵器のように、軌道を補正しながら、目標に向かっていくのではなく、最初の発射ですべてが決まるからだ。
命中弾を出すには、目標との距離、速度、風・温度・湿度の計算、火薬の燃焼速度、着弾までの時間とそれに伴う目標の未来位置の計算という事柄を踏まえ、砲撃をしなければならない。
それに加え、波による船体の揺れ、砲身の歪みなど、少しの誤差でも遠距離砲撃の場合、大きな誤差になってしまうため、命中率は著しく低くなってしまう。
しかし、艦娘は違う。
艦娘は艦艇の魂を持ち、自身の魂を持つ艦艇を手足のように操ることができる。
それはつまり、艦艇全体が、彼女たちの意識と同化するという事でもある
艦娘にとって主砲による砲撃とは、人間でいうパンチを当てるという動作に等しく、パンチを当てるのにいちいち意識して計算などしないように、命中弾を出すための計算式など呼吸をするように行い、それに加え自身の砲撃の経験による補正と、戦場で培われた洞察力を頼りに、非常に高い命中率をたたき出す。
そして、通常ならば、伝言ゲームのように、数百人の意思を介して行われる操艦も、艦娘一人の意思と、それを完璧に理解し手助けをする妖精さんにより、一切のラグや伝達ミスなどなく、操艦が行われる。
そして、砲雷撃戦の命中率や操艦能力は、経験を積めば、積むほど成長する。
これが、艦娘が、『成長する兵器』として、各国で有用な兵器として使われている所以である。
「第一・第二主砲、斉射、始めます!」
「夾叉か……次は直撃させる!」
「10門の主砲は伊達じゃないのよ!」
「砲撃、開始! Feuer!」
ビスマルクが先頭を走る重巡リ級を沈め、2隻目のリ級に命中弾をたたき出した頃には、味方の重巡たちが射程圏内に入った三隻の駆逐イ級を、4人で袋叩きにしている所だった。
次弾を装填し再度発射。
かろうじて、浮いていたリ級に止めを刺し、ちょうど同じくして3隻のイ級が沈め始めた時に、ビスマルクの元に基地航空隊の索敵機からの電文が届いた。
ほぼ無傷での勝利に、安堵の空気が広がり、艦隊全体の緊張の糸が途切れかけたとき、電文を読み終えたビスマルクが相互通信を開いた。
「新たな敵艦隊発見の報告よ。数は12。戦艦ル級らしき船影が1隻混ざっているらしいわ。
私達、第7作戦部隊の任務は、『多方面に展開する深海棲艦艦隊』の排除。
さっきの戦いでは私達が、第二艦隊の活躍の場を奪っちゃって、消化不良だろうし、今度は存分に活躍してもらいましょう」
電文の内容を伝え、第二艦隊の面々に発破をかけると、旗艦の能代を筆頭に雪風、初風、時津風、天津風、江風と声を上げ始めた。
『そうですね。第二水雷戦隊旗艦の実力、存分に発揮しましょう!』
『雪風は沈みませんっ!』
『……あんた、そればっかりね…』
『まーまー、雪風らしいじゃんー』
『はぁ、大丈夫かしら…』
『まあまあ、いいじゃン!いいじゃン!』
こうして、第七作戦部隊は作戦を完遂するため、次の目標の座標に向かって舵を切り、深海棲艦の艦隊を探し始めた。
※作戦のメンバーは史実のメンバーを参考にしています
※海戦などは、勢いで書きました。(おそらく、ボロボロ)