空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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第13話 E-2 強襲上陸作戦

――――1999年7月22日 PM2:00

E―2作戦 作戦名『強襲上陸作戦』

 

 

 

 作戦内容『第七作戦部隊の奮戦により、スラバヤ近海の制海権が一時的に確保された。この機を逃さず、

第八・第九作戦部隊は、ジャワ島西部バンタム湾のメラク海岸に強行上陸し深海棲艦軍の沿岸防衛網を殲滅、橋頭保を確保せよ!』

 

 

 

編成:第八作戦艦隊:旗艦 戦艦 金剛

    第一艦隊:旗艦 戦艦 金剛

          戦艦 榛名

          空母 加賀

          空母 赤城

          空母 飛龍

          空母 蒼龍

 

 

 

    第二艦隊:旗艦:軽巡 阿武隈

          駆逐 雷

          駆逐 電

          駆逐 響

          駆逐 暁

          駆逐 初霜

 

 

 

 

 

 「全砲門!Fire!」

 「主砲!砲撃開始!!」

 

 バンタム湾のメラク海岸への上陸作戦は、艦娘達の艦砲射撃と、航空基地隊の航空隊と空母の艦載機のによる爆撃から始まった。

 2隻戦艦と4隻の駆逐艦が次々と打ち出す大量の砲弾と、空から雨のように降り注ぐ爆撃により上陸地点の土地が丹念に耕され、海岸の地形自体が変わろうとさえしていた。

 

 

 作戦前に隠密上陸を果たした特殊部隊によって、深海棲艦が上陸地点周辺に強固な防御陣地を構築していることが判明していたため上陸前に火力支援によって相手の防御陣地を破壊し被害を減らそうと画策していた。

 しかし、第七作戦部隊がジャワ島近海の制海権を確保したとはいえ、物量に長ける深海棲艦がいつまた大量の艦隊を派遣してこないとは限らないため、そして少しでも早く揚陸作戦を完遂し、橋頭保の安全を確保したいという思惑があったため、上陸地点への無差別火力支援の時間は比較的短く抑えられていた。

 

 (まあ、彼女達なら問題ないネー)

 

 ジャワ島奪還作戦のためタウイタウイより派遣された第八作戦部隊を指揮する金剛は、艦砲射撃と爆撃の音を聞きながら、自身の懐から取り出した懐中時計で時間を確認しながらそんなことを思っていた。

 自分達とは違う数多の戦場駆け抜ける彼女達なら、と。

 

 そして、懐中時計が火力支援の終了時刻を示した瞬間、艦娘との相互通信を開き、一時終了を宣言、さらに後ろに控える大量の輸送艦、揚陸艦、補助艦艇に通信を開いた。

 

 「これより上陸作戦を開始するネ!各艦、上陸準備!及び第九作戦部隊出撃準備!」

 

 

 

       

    

――――艦娘運用母艦『あまてらす』

 

 

 

 東南アジア連合の輸送艦が次々とハッチを開き、兵士や車両を乗せた上陸用舟艇を発進させている最中、海上自衛隊の輸送艦たちも、周辺を護衛艦艇に守られながら、次々とエアクッション型揚陸艇を発進させていた。

 その海上自衛隊の輸送艦の中でも一際異彩を放つ艦艇があった。

多少装甲を持つ艦艇が増えたとはいえ、まだまだ、前線には装甲の薄い護衛艦が主流の中で、その輸送艦は外見からでも分かるほどに装甲が施されている。

 これはひとえにある者達を運用するためだけに建造された、強襲揚陸艦に近い性質を持つ船だった。

 

 『着上陸作戦、開始。第九作戦部隊出撃せよ』

 「やっとオレたちの出番かよ」

 

ランプだけが光る薄暗いウェルドック内に響き渡る作戦開始の声を聞きながら、第九作戦部隊、第一艦隊旗艦の 天龍は獰猛な笑みを見せる。

 その横で第二艦隊旗艦の龍田はくすくすと笑いながら、待ちきれないとばかりに、体を震わせる天龍と会話を始めた。

 

 「天龍ちゃん楽しそうね~」

 「たりめーだろ!敵前上陸作戦なんて久々だからな!」

 「そうね~スマトラ島以来かしら~。私もうずうずしてるわ」

 

 後部ハッチが開き、ウェルドック内に海水と外に光が流れ込むと、壁に取り付けられた、数字がカウントを始める。

 それに伴い、天龍、龍田、そして第九作戦部隊の面々は自身の出撃地点の足場に並んだ。

 

 「よっしゃぁっ!お前ら気合入れろよ!」

 「死にたくなかったら、しっかり指示に従ってね~」

 

 そしてカウントがゼロになった瞬間―――

 

 「天龍、第一艦隊出撃するぜ!」

 「龍田、第二艦隊出撃します。死にたい敵はどこかしら」

 

 天龍、龍田を筆頭に次々と、ウェルドック内から出撃していく。

 真っ先に外に出た二人は後に続く面々に合図をだし、あらかじめ決められた2つの隊に分かれ、それぞれ別々の上陸地点を目指し、海岸線へと距離を縮めていった。

 

 

 

編成:第九作戦艦隊:旗艦 軽巡 天龍

    第一艦隊:旗艦 軽巡 天龍

          駆逐 神風

          駆逐 睦月

          駆逐 皐月

          駆逐 菊月

          駆逐 望月

 

 

 

    第二艦隊:旗艦:軽巡 龍田

          駆逐 春風

          駆逐 如月

          駆逐 長月

          駆逐 三日月

          駆逐 弥生  

 

 

 

 

 艦娘は、生身の姿でも身体に艤装を展開すれば戦車大隊すら単独で相手取れる。

 そのことを利用して作られたのが『艦娘陸戦隊』だった.

 

基本この隊に所属するのは、旧式の軽巡や駆逐などの艦娘が多い。

 能力が半減するとはいえ、軽巡、駆逐の主砲で、ほぼすべての目標を破壊できるからだ。

 そして旧式ならば、仮に失ったとしても損失が少なくても済む。

 

 こうした理由で作られた艦娘陸戦隊は、数多の戦場を駆け巡り、東南アジア連合陸軍を支え続けたことから、現場の兵士たちから、戦場の女神として絶大な支持を受けていた。

 

 そして、ジャワ島奪還作戦のために組織された第九作戦艦隊に与えられた任務は、先行して敵前上陸を敢行し、敵防衛線を突破、後続の上陸部隊の援護をするという、この上陸作戦では一番危険な、そして血の気の多い艦娘が多い第九作戦艦隊にはうってつけの任務だった。

 

 

 

 

 

 「硝煙の匂いが最高だなぁオイ!」

 

 第二艦隊と別々の上陸地点を目指していた第一艦隊は、旗艦である天龍を中心とした単横陣を取り、兵士、車両を満載した上陸用舟艇を次々追い抜かしながら、海岸線へと最大船速で接近していた。

 

 上陸用舟艇の先頭を走る艦娘に向けて、先の艦砲射撃、航空爆撃で破壊されなかった、防御陣地から次々と砲撃が放たれ、第一艦隊の周辺に大量の水柱を作り出した。

 

 しかし、第一艦隊の面々は無数に飛び交う砲弾の着弾地点を読み切り、人型ならではの小回りの良さと速度で自身に当たる砲弾を回避していく。

 無論、近くで炸裂すれば無数の破片が自身にも飛散してくる。

 だが、艤装を展開している艦娘が、駆逐艦の主砲にも満たないような砲弾の破片程度で負傷するほど貧弱な装甲は展開していない。

 

 「砲撃戦用意!鬱陶しい陣地を吹き飛ばせ!」

 

 艦娘に向けて砲撃をするという事は、自身の砲撃地点を相手に教えることとなる。

 天龍の命令を聞き、第一艦隊の面々――――神風、睦月、皐月、菊月、望月は砲撃を続ける陣地群に対して返す刀で砲撃を開始した。

 

 「やります! 撃ち方、はじめ!」

 「睦月、砲雷撃戦始めるよ♪」

 「ボクの砲雷撃戦、始めるよ!」

 「行けっ!」

 「いよっ」

 

 第一艦隊が放った小さな砲弾はすべて寸分違わず、砲撃陣地に吸い込まれていく。

 そして着弾と同時にその力を解放、戦車の主砲の直撃を受けたように、次々と砲撃陣地群が吹き飛んで行った。

 それでもなお、無数に存在する砲撃陣地群と、第一艦隊は苛烈な砲撃戦を続けていた。

 

 

 

 

 砲撃陣地との苛烈な砲撃戦を続ける事数分、ようやく上陸地点の砂浜に誰一人欠けることなく到達した第一艦隊は、そのまま一気に上陸を果たした。

 

 「近接戦闘用意。邪魔する奴は全員潰せ」

 

 近接戦用のブレードを展開する天龍の命令を聞き、第一艦隊の面々はそれぞれ近接武器を展開、真正面の防御陣地に一斉に砲撃を加えると、そのまま突撃を敢行する。

 

 「天龍様の攻撃だ!うっしゃぁっ!」

 「やります!」

 「いざ参りますよー!」

 「ボクとやりあう気なの? かわいいね!」

 「悪いが、ここが貴様らの墓場だな」

 「んじゃぁあー、そろそろ本気だぁーっす!!」

 

 

 陣地の塹壕に立てこもっていた深海棲艦軍は、怒り狂いながら機関銃のようなものを第一艦隊の一斉にばら撒き始めるが、第一艦隊の面々は構わず突き進み、敵の塹壕内に飛び込むと、高速で移動し近接武器で塹壕内に存在する重火器を破壊、それを邪魔をする深海棲艦を一気に潰していく。

 

 重火器を一掃するとすぐさま次の防御陣地に向けて進撃を始めた。

 

 まだ塹壕内には深海棲艦がいるにも関わらず重火器を潰しただけで、次の陣地に狙いを定め進撃する艦娘に対し憎悪の炎を燃え上がらせながら、その背中に向けて機関銃を放とうとした深海棲艦は艦娘が上陸した地点から飛んできた重機関銃の弾丸に蜂の巣にされた。

 

 海面から砂浜に向けて次々と姿を現した、水陸両用強襲輸送車は、銃塔の重機関銃を深海棲艦の防御陣地にばら撒きながら自身に収容された兵士を展開していく。

 

 そして、重火器を潰された陣地―――自身が破壊される脅威のない陣地に向けて進撃を開始し、随伴兵たちは水陸両用強襲輸送車を盾にその後に続き、第一艦隊が突破した防衛線を押し広げていった。

 

 安全の確保された浜辺では、まずホバークラフト型揚陸艇が上陸して兵員と車両を展開、突破した陣地を利用し

橋頭保の防衛線を築き始めた。

 そしてそれに少し遅れるように、大量の上陸用舟艇が浜辺に着岸し、膨大な兵士を吐き出していく。

 

 この上陸用舟艇に搭乗していたのは、東南アジア連合の陸軍であり、とりわけインドネシア軍が多かった。

 彼らは、祖国を奪還しつつあることに、喜びを噛み締め非常に高い士気のもと、統率された動きでそれぞれの役目を果たしていた。

 

 最前線では、第一艦隊が砲撃でトーチカ、砲撃陣地を潰し、近距離では機銃群、そして近接武器ですり潰すという破壊の嵐をまき散らしながら、深海棲艦の防衛線に穴を開け、その穴を東南アジア連合軍が広げていくという光景は、第二艦隊が展開する付近でも見られ、その進撃を第八作戦艦隊の非常に精度の高い艦砲射撃と空母の艦載機の航空爆撃による火力支援が支えていた。

 

 第八作戦艦隊は周辺を警戒しながら、大量の戦略物資を海岸に送り届け、その足場固めに尽力していた。

 

 

 

 

 

 上陸作戦が成功し橋頭保の確保が成された今、東南アジア陸軍は、ジャワ島奪還作戦完遂のため、複数の師団に分かれ内地に展開する深海棲艦軍と熾烈な戦闘を繰り広げていく。

 




 
 天龍・龍田幼稚園(最先鋭陸戦隊)

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