空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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第1話 新たな劇の開幕

 

 

  

 

 

 ――『おやめください所長!これ以上エネルギーの出力を上げれば【門】の制御が

できなくなります!ここは実験を中止し再度……』

 

 ――『黙れ!ようやく、ようやく()()()を引くことができたのだぞ!

 出力を最大まで上げろ!【門】を限界まで拡張しろ!‘奴‘を、‘奴‘を

 何としてもこちらの世界に引きずり込め!!!』

 

 ――『しかしっ !?【門】観測班より連絡! 【門】より召喚中のunknownから

艦娘の反応あり!召喚力場から推測される船体の全長は……350m以上あるとのこと!』

 

 ――『いいぞっ!いいぞっ!! 我々の世界の歴史ではその時代に350m以上ある船など()()()()()()()()()

 本部に連絡しろ。実験は大成功!実験は大成功だと!

 ただちに本部より解析班の派遣を―――――――――』

 

 

 

 

 

――――1999年5月3日 AM8:00

 

 

 

 真っ暗闇の底に沈んでいた意識が、強烈な力で引っ張られ、急速に浮上していく感覚を覚え、マキナは急いで閉じていた目を見開いた。

 するとそこには、自分が消える直前までいた艦長室が広がっていた。

 暗闇から急に明りのあるところに出たことで目をしばたたかせるマキナ。

 ようやく目が部屋の光に慣れてきたころに、あることに気付く。

 なぜ明りがついている?自身が最後の時を迎える頃には、艦内の電源はすべて落ちていたはずであり、艦長室の明りが付くなどありえない。

 そして、外からは聞きなれた船体のプロペラが回る音が聞こえてきていた。

 気になったマキナは艦長室から外を見ることができる窓に近づき、外を見まわした。

 「は?」

 呆けた声をあげるマキナの視界に広がっていたのは最後に強行着陸した、

大英帝国トラファルガー広場ではなく、どこまでも広がる真っ青な海の上空を

飛んでいた。

 完全に飛行能力を喪失したはずの船体が、傷一つなく、眩しいほどの

太陽が照らす青空を優雅に飛行していた。

 

 「……どうなっているんだ一体」

 

 空を悠然と飛んでいる巨大な飛行船の中で、マキナは艦長室で呆然と呟いた。

 (俺はロンドンで完全に死んだはずだ。なぜ空を飛んでいる?なぜ船体が無傷なんだ?

ここはどこだ?一体どうなっている!?)

 あまりにも突拍子もない事態に、混乱の極致にあるマキナ。

 しかしこのままここにいても埒が明かないと考えた彼は、今この艦を操船している者を確かめるため部屋を出て操舵室に向かおうと歩を進めようとした。

 

「ぐうぅぅぅ!!!!」

 

 しかし、突然立っていられなくなるほどの強烈な頭痛が歩みを止めさせ、マキナは近くにあった椅子に座りこんだ。

 頭の激痛と共に入り込んできたのは、この世界の成り立ちと自分たちの存在――『艦娘』と倒すべき存在――『深海棲艦』との戦争の記憶だった。

 十分かそれとも一時間か。戦争の記憶が終わると同時に痛みは引いていき、

後に残されたのは、非常に長い映画を見せられた後のような疲労困憊の表情で

椅子に沈み込んでいたマキナだけであった。

 椅子から体を起こし、突然起こった現象に、今だ整理のついていない思考を回転させながら、誰もいない艦長室でぽつりと呟いた。

 

 「……何なんだ一体」

 

 

 

 

 

 (この世界に突如現れ始めた『深海棲艦』とか呼ばれる奴らと、その対抗策である

『艦娘』ねぇ……どこぞのヤンキー共が食いつきそうな題材だな)

 

 マキナは黙々と突如として流れ込んできた、荒唐無稽な記憶の内容を纏めていた。

 1994年つまり5年前。

 世界規模で深刻な電波障害が発生し、ほとんどすべての通信機器

が使用不能となり世界中が大混乱に陥った。

それと同時にハワイ・オワフ島より『深海棲艦』と呼ばれる軍隊が出現、第二次世界大戦で使われた兵器の形を象っていた奴らは、全世界に対し侵攻を開始した。

 それに対し、遅まきながらも各国海軍は連合海軍を組織し反撃を試みた。

 しかし先の電波障害で、レーダー、通信、各種誘導兵器が使用不能となり、それぞれの国が第二次世界大戦より積み上げてきた電子戦は形骸化し、時代錯誤な有視界戦闘を

行わざるを得ず、また『深海棲艦』の圧倒的物量により各戦線で敗北。

 ほぼすべての制海権を奪われ、地上をも脅かされ始めた。

 しかし、人類側は『深海棲艦』を鹵獲し解析することで、第二次世界大戦時の艦艇の

魂を持ち、自身の魂を持つ艦艇を手足のように操る『艦娘』を召喚し対抗。

 防衛線を構築することに成功し、終わりの見えない戦争を続けているということ

らしい。

 

 (全く知らん歴史だな。俺の知ってる時代に深海棲艦なんぞいなかったし艦娘なんぞも知らねえ。平行世界とかいうやつか?というか、俺は第二次世界大戦時に建造されてねーし、そもそも俺は男だ!娘じゃねーよ)

 

情報の整理をしていくマキナ。

 

 (まぁ、納得はしてないが、理解はした。だが……とりあえず()()に会わなきゃダメだな)

 

 ある程度今の状況の整理をつけたマキナは、ある人?を探すために艦長室から抜け出し、操舵室へ向かうために歩を進めた。

 

 

 

 

 

 流れ込んできた記憶の中で格別に意味の分からない存在がいた。

 それは、艦娘と共に現れ、艦娘の操船・戦闘の補助、資源さえあれば艦娘の装備の開発、船体の修理に、それぞれに合った弾薬・燃料なども作り出すことができる存在。

 言わば、艦娘の相棒。その者達の名前は――――

 

 「あ、新艦長だー。おはようございますー」

 『おはようございますー』

 「………」

 

 ――――妖精さんと言うらしい。

 マキナが長い通路を歩き終え、広い操舵室の中に入ると、船体のコントロールをする複数の座席に、ドイツ海軍の軍服を身に纏った身長50㎝位のデフォルメされた小人が、たくさんの小さな妖精さんがパタパタと手を振りながら立っていた。

 その中で一人?の代表者らしい妖精さんが歩み寄って、マキナに対し気の抜けたような挨拶をすると後ろにいた、たくさんの妖精さんが続けて挨拶の合唱をした。

 その挨拶も相まって操舵室は全体的にメルヘンチックな雰囲気が漂っており、

頭が痛くなってくることを感じていた。

 あらかじめ、操船、戦闘の補助をするとは知ってはいたものの、その姿を見ると不安しか覚えない。

 しかし、マキナは浮かんだ不安をすべて無視し平然と指示をを出していった。

短時間であまりにも色々なことを経験したことで、彼の心は並大抵のことでは

動じなくなっていた。

 思考を放棄しているともいえるが。

 

 

 

 

 

 「ん?世界中で電波障害が発生しているらしいが、レーダー、通信機器各種に異常は

見られねーぞ」

 操舵室の艦長席で自身の船体の確認作業をしていたマキナは生じた疑問を隣にいた妖精さんに投げかけた。

 「艦娘に備わっている武装は電波障害の影響を受けないみたいですー」

 「なぜだ?」

 「さー?」

 「そうかい……」

 

 割と適当な返事しか返ってこなく、辟易するマキナだったが、艦娘は電波障害の影響を受けないという答えに関しては安堵の息を漏らしていた。

 マキナに搭載しているほとんどの武装はレーダーと連動した誘導兵器であり、

仮に電波障害の影響をうけてしまっていた場合、ただの空飛ぶでかい的にまで成り下がっていたからだ。

 目下の心配事が去り、安堵したマキナはレーダーを起動させるが、スコープ画面には

何も表示されなかった。

 件の記憶によれば艦娘は基本的に人類側に召喚されるものであり、自然発生などはしないらしい。

 そのことから付近に自身を召喚した施設があると思い込んでいた。

 しかし、自身の複合レーダーの探知距離400㎞圏内には何もない。

 嫌な予感を覚えたマキナは今度は操舵室にいる妖精さん全員質問を投げかける。

 

 「おい、俺を召喚した奴はどこにいる?」

 『さー?』

 「………誰か今どこ飛んでいるか……わかるか?」

 『さー?』

 「……そうかい」

 

 妖精さんの清々しいまでの合唱おかげで、ようやく自身が遭難していることに

気が付いたマキナは頭を抱えた。

 しかしそのままにしておくわけにはいかず、半ばやけくそ気味に指示を出し始めた。

 

 「とりあえず北だ!北に進め!そしてレーダーに映った物はなんでもいいから

とっ捕まえて情報を搾り取れ!!!取り舵用意!!!フラップ起動!!!」

 

 マキナが操船の指示を出すといままで操舵室に漂っていたメルヘンチックな空気が

瞬時に駆逐され、妖精さん達の顔つきも鋭くなる

 ――外見が外見だけに締まらなかったが。

 

 『全フラップ起動を確認!高度よし!』

 「取り舵10!!!進路を北に向けろ!!!」

 『了解!取り舵10!』

 「レーダー員。周辺への警戒を怠るなよ!!!」

 『了解!』

 

 船体側面にある複数ある巨大なプロペラが高速で回転し始め、

空中艦隊旗艦デウス・ウクス・マキナはゆっくりと、着実に空の海を進み始めた。

 

 

 




ミノ〇スキー粒子万能説
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