空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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第26話 奇妙な戦場

――――1999年9月30日 PM 1:00 ジャワ島沖 とある島の入り江

 

  

 

     上手くいかない

 

 

 『――――という訳で、今現在『ジャワ島防衛作戦』は『プランJ-a-1』を放棄し『プランJ-d-4』へと移行しているわ。

今はちょうど基地航空隊と潜水艦隊、そして空挺降下を実施した『第五作戦部隊』が撤退する深海棲艦・上陸部隊を追撃しているはずよ』

 『え?『プランJ-d-4』は海上での戦闘を想定した計画ですよね。

 たしか私達、『第三作戦部隊』も編成に組み込まれていたはずですが?』

 『ええ、本来ならね。ただ、今、上陸部隊との主戦場となっている場所は、ここから距離のあるフローレス海。

 空挺降下するならともかく、実艦を伴った私達、第三作戦部隊の足では到底、戦いには間に合わないわ。

それに正体不明の勢力…じゃなくて『幽霊軍隊』が、ジャワ島に仕掛けてくる可能性も考慮して、私達には予備戦力として、作戦司令部から現状待機の命令が下っているわ』

 『そういう事であれば。了解いたしました』

 

 ビスマルクから()()()()説明を聞いた、第五作戦部隊の重巡洋艦『妙高』は納得した様子で引き下がった。

 

 『他の皆も、現状は待機命令が出ているけれど、いつ出撃命令が出ても大丈夫なよう、準備だけは整えておいて』

 『『『了解!』』』

 

 船体を隠すために、広範囲に散らばっている第五作戦部隊の面々に現在の状況と、作戦司令部の命令を伝え終え、相互通信を切ったビスマルクは、重苦しい気分を変えるべく、薄暗い艦橋から甲板へと向かう通路を歩きながら、小さな溜息をついた。

 

 

 『亡霊軍隊』の出現。

 

 深海棲艦・上陸部隊壊滅の知らせと共に、届いたこの知らせにより『ジャワ島防衛作戦』の作戦計画は当初の計画から大きく変えられた。

 

 そして当初の作戦計画では、深海棲艦・上陸部隊に対する攻撃の要であったはずの、ビスマルク率いる第三作戦部隊、そして東南アジア連合海軍の、ミサイル艇、高速戦闘艇で構成された攻撃部隊は、完全に蚊帳の外へと、追いやられていた。

 現に、艦橋から甲板に出て見渡してみれば、ビスマルクの巨大な船体が停泊している三日月型の入り江には、ビスマルク以外にも、数隻のミサイル艇、そしてその乗組員であろう、東南アジア連合海軍の兵士の姿が見て取れた。

 

 その表情は一様に暗い。

 

 まあ、その気持ちも分からないでもなかった。

 先ほどまで、深海棲艦・上陸部隊との戦闘に闘志を燃やしていたにもかかわらず、その機会が失われてしまったのだ。

 今回の海戦に並々ならなぬ思いを込めていた東南アジア連合海軍の兵士にしてみれば、今のこの現状はまさに最悪の一言につきるだろう。

 停泊する艦艇を空から発見されないよう、この入り江全体を覆い隠すように施された擬装により、日の光が抑えられ、薄暗くなっている入り江内では、連合海軍の兵士たちの出す、負のオーラとの相乗効果で、まるで墓場の様な、おどろおどろしい雰囲気が形作られていた。

  

 

 「はぁ、本当に、もう……」

 

 重苦しい気分を変えるべく、外に出てきたにもかかわらず、気分転換どころか、この重苦しい雰囲気により、逆にダメージを負う羽目なったビスマルクは、こめかみを抑えながら、このままならない現状にぼやいた。

 

 だが、ぼやいた所で何かが変わるわけでもない。

 そう考えたビスマルクは、この待機時間を利用し、頭を悩ませている、()()()()()に対する解決の糸口を少しでも見つけようと、相互通信で二人のメンバーを呼び出した。

 

 『プリンツ、グラーフ。ちょっといいかしら?』

 『はいお姉様!どうされました?』

 『……む?どうしたビスマルク?』

 『ちょっと第五作戦部隊の配置について、相談に乗ってもらいたいのだけれど―――』

 

 そう持ちかけると、素直に応じた二人。

 表向き、相互通信で相談を持ちかけ、ビスマルクは第五作戦部隊の僚艦である重巡洋艦『プリンツ・オイゲン』、航空母艦『グラーフ・ツェペリン』の様子を会話の様子を注意深く観察していた。

 

 『うーん、今の第五作戦部隊の配置は、深海棲艦・上陸部隊に発見されないよう、広範囲に分散した艦隊配置になっていますからね。出撃命令が下ってから集結していては、時間がかかりすぎますか。

 でもジャワ島に対する予備戦力という事も考えれば、早々にこの隠匿された陣地から出ていくのも、惜しい気がしますね……。グラーフさんはどう思いますか?』

 『ッ!!!あ、あぁ、そうだな――――』

 (やっぱり……)

 

 話を振ったプリンツに対し、グラーフが見せた微かな動揺。それを確認したビスマルクは、内心深いため息をついた。

 

 今、第三作戦部隊、というより仲間内で起きているとある問題。

 それは、この二人。

 

 ビスマルクと同じ、ドイツで生まれた艦艇であり、信頼できる仲間でもある、プリンツ・オイゲンとグラーフ・フェペリンの不仲だ。  

 

それまでは、二人の仲は、ビスマルクの主観が入るが、それほど悪くなかったと思う。

 しかし、ある時。そう、『ジャワ島防衛作戦』が正式に決まった辺りで、二人の仲は急激に悪化した。

 しかも、二人ともそり合わないとか、気に入らないことがあったなどで、喧嘩をしているといった様子ではない。

 

 グラーフが、プリンツに対し、()()()()()()()()()距離を取っていた。

 

 そしてプリンツは、そのグラーフの行動に対し、気が付いていないはずがないにもかかわらず、全く気にしていないかのように、いつも通りの自然体でいることが、その違和感を増長させていた。

 

 (何かがあったのは、確かだと思うんだけど)

 

 仲間内の、しかも同郷の仲間の不仲とあっては、東条少将から、リンガ軍港に所属する艦娘の総括を任されている秘書艦としても、二人の友としても、ビスマルクが動かない訳にはいかなかった。

 そして、この問題を解決するべく、取り組んで来たビスマルクだが、未だに二人が不仲になった原因さえつかめてはいない。

 二人の不仲が、艦隊内の輪を乱すほどであれば、強権を用いて探ることができたのだが、演習でも表面上は円滑に、過不足なく協力し合っているために、そこまで強く介入することもできず。

 

 それとなく二人から、聞き出そうと試みるも、プリンツからはド直球にとぼけられ、グラーフからは露骨に話題をそらされた。

 

 ならば原因の方を探ろうと、同じく同郷の友でもあるU-511にも相談して、二人がそうなった原因を考えてみたものの、ビスマルクも、U-511も―――

 

 ―――もう!全く分からないわ

 ―――私も心当たりはない……、かな?

 

 ――――()()()()()()()()()()()()

 

 

 まさに八方ふさがり。

 いっそ時間が解決してくれないかと、願ってみたものの、今の様子を見るに二人の関係は、不仲という位置から、特に変わってはいなかった。

 

 『――――そうね、じゃあ、現状はこのまま待機ということでいいかしら?』

 『それでいいと思います!お姉様!』

 『私も同感だ』 

 

 

 結局、会議としては、そこそこ実りある。

 しかし問題解決という意味では、全く成果のなかった通信を終え、ビスマルクは、深い深い大きなため息をつき、天を仰いだ。

 

 蚊帳の外の自分たちに、仲間内での不協和音。士気の落ちた友軍に、好き勝手に暴れ回る『亡霊』ども。

 

 「はぁ、本当に……」

 

 

 

  

     上手くいかない

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

――――同時刻 フローレス海

 

 

  

 中型戦術輸送機『C-1改』から空挺降下を実施し、迅速にフローレス海に展開した『第五作戦部隊』は、二つに分かれ、東へ撤退する深海棲艦・上陸部隊の両翼から、強襲攻撃を仕掛けた。

 

 「さぁ、第一艦隊、仕掛けるよ!」

 「第二艦隊……私に続いて!」

 

 川内、神通の指揮の元、深海棲艦・上陸部隊の右翼を強襲する第五作戦部隊の第一艦隊、第二艦隊の艦娘達は、携帯艤装を展開。

 携帯艤装の力により、青々とした海面をまるで滑るように移動しながら、上陸部隊との距離を詰めていく。

 本来なら3000トンを超える船体を30ノット以上の速度を出せる彼女達の実艦。

 その主機のエネルギーは、携帯艤装の効果により、半減してもなお、彼女達に有り余るほどの力を与え、その速度は、40ノットを優に越えていた。

 

 『10時の方向の駆逐艦級を狙うわよ!神通!』

 『ええ!』

 

 その快速をもって深海棲艦・上陸部隊の側面へと接敵した第一艦隊と第二艦隊。

 川内の指示に頷いた神通は、第二艦隊を率いて第一艦隊から離れていく。

 

 『突っ込むよ!』

 『『『了解!』』』

 

 そのことを確認した川内は、第一艦隊を率いて、北西方向にて航空機に向け、対空砲弾を打ち上げる駆逐艦級に向け、最大船速で突っ込んでいった。

 

 次第に、接近する両者。

 

 丁度その時、第一艦隊の接近に気が付いた駆逐艦級が、空へ向けていた主砲を全てこちらに向けた。

 その直後、発砲。

 

 『回避ー!』

 

 次々と、第一艦隊の周囲に次々と着弾する砲弾。その砲弾が作り出す水柱の間をすり抜けながらもなお、ひたすら駆逐艦級に向けて、前進していく。

 

 (まだ駄目。もう少し近づかないと)

 

 この距離から発砲しても、実艦に比べ、射程、威力ともに半減している携帯艤装では、駆逐艦級に大した損害を与えることはできない。まだ距離を詰めなければ。

 

 そう考える川内の指揮のもと、第一艦隊は、砲弾の雨が降りそそぐ中、駆逐艦級へと向けて決死の進軍を続けていく。

 しかし、その進軍は決死ではあっても、無謀ではなかった。

 

 そもそもが、人型程度の大きさしかない、しかも高速戦闘艇以上の速度で動き回る艦娘だ。

 それだけでも十分梃子摺る内容なのに、しかもその回避能力は船体ではなく人型である以上、一切の制限に縛られず機敏であり、携帯艤装を展開しているために、砲弾の破片程度では傷つかず、砲弾の直撃でもなければ戦闘不能に追い込めないほどの、装甲を備えているのだ。

 

 深海棲艦からしたら、これほどに鬱陶しい敵はいないだろう。

 

 砲弾の豪雨の中を、すり抜けながら、距離を詰める第一艦隊。

 その距離は、今や、駆逐艦級の機銃が届く範囲内ま近づいてきていた。

 

 これ以上の接近を防ぐため、主砲の砲撃に加え、機銃による弾幕を張るべく、その船体に取り付けられた無数の銃口を第一艦隊へと向ける駆逐艦級。

 

 しかしその銃口から、大量の弾丸をばら撒くよりわずかに早く――――

 

 『来た!砲撃戦よーい、てー!』

 『あっは!行くよ!』

 『当たって、お願い!』

 『よし、いっけぇー!』

 『これでもくらえ~!』

 『撃ぅてぇ~、撃ぅ~てぇ~い!』

 

 駆逐艦級を有効射程に収めた、第一艦隊の主砲が火を噴いた。

 先ほどまで、一方的に攻撃されていた鬱憤を、晴らすかのごとく次々と砲弾を撃ち込む第一艦隊。

 その攻撃により、攻撃を仕掛けられた駆逐艦級の右舷側が、爆発と共に激しく燃え上がった。

 

 しかし第一艦隊の砲撃により、右舷側の機銃群は叩き潰されたものの、装甲の施された主砲はいまだ健在。

 駆逐艦級は、全主砲を十全に使うべく艦艇の右舷側を向け、第一艦隊は、駆逐艦級の正面、斜め左方向から突っ込むように進路を取り、さらに距離を詰めつつ熾烈な砲撃戦を続けてく。

 そして駆逐艦級が、第一艦隊に主砲の狙いを定め、再度砲弾を撃ち込もうとしたその瞬間――――

 

 艦艇の左舷、第一艦隊に面していないはずの駆逐艦級の左舷側で、次々と爆炎が咲き乱れ、機銃群が吹き飛んだ。

 

 『第一艦隊の攻撃に、注視しすぎましたね』

 『でかした神通!合わせるよ!第一艦隊、突撃よーい!』

 『ええ!第二艦隊、各艦、突撃用意…行きましょう!』

 

 第一艦隊と別れ、大きく迂回するように、駆逐艦級の反対側へと回り込んだ、神通率いる第二艦隊の攻撃により戦局は一気に艦娘側へと傾いた。

 

 ちょうど第一艦隊と第二艦隊から、両舷を攻撃される形に追い込まれた駆逐艦級。

 第一艦隊、第二艦隊ともに無視できない火力を有しているため、これ以上近づけさせる訳にはいかないのだが、副兵装である機銃は、両舷共に壊滅。

 残るは、主兵装である主砲なのだが、第一艦隊、第二艦隊を迎撃するため、両舷に主砲を向けたため、投射火力は半減してしまっていた。

 

 駆逐艦級の砲弾の雨が弱まったことで、好機と見た第一艦隊、第二艦隊は、回避を必要最低限に留め、最短ルートを選びながら、駆逐艦級との距離を詰めた。

 

 そして駆逐艦級の斜め正面から砲撃を加えていた第一艦隊、第二艦隊の距離は次第に縮まり、いつしか零に。

 駆逐艦級の真正面で合流した両艦隊は、最後の突撃を敢行した。

 

 駆逐艦級の真正面に展開したことによって、駆逐艦級が使用できる主砲は、正面の主砲のみ。投射火力がさらに制限された。

 しかも両者が共に近づいていくことになる反航戦。

 駆逐艦級と両艦隊の距離は、先ほどの比ではないほどに早く縮まり、正面の主砲を数発撃った所で、駆逐艦級の構造上、主砲の仰角が取れない至近距離まで接近を許してしまった。

 

 副兵装が事前に潰されていた以上、ここまで張り付かれてまっては、もはや駆逐艦級には、打つ手はなかった。

 

 駆逐艦級の懐へと、入り込むことに成功した両艦隊は、再度、艦隊を二つに分け、駆逐艦級の両舷に展開、

駆逐艦級を完全に挟み込んだ。

 

 もう少し近づけば、駆逐艦級の船体に触れることができそうなほどの、至近距離。

 ここまで接近してしまえば、いくら主砲に装甲が施されていようが関係ない。携帯艤装の主砲で粉砕できる。

 

 駆逐艦級の両舷を挟み込むように展開した、第一艦隊、第二艦隊の艦娘達は、その全ての主砲を駆逐艦級へと向けた。

 そして駆逐艦級と第一艦隊、第二艦隊がすれ違うその瞬間――――

 

 『よーい、撃てー!』

 『撃ちます!』

 

 第一艦隊、第二艦隊の主砲が一斉に火を噴いた。

 

 駆逐艦級に向けて、放たれる交差射撃。いや、交差砲撃。

 第一艦隊、第二艦隊の艦娘、合わせて十二名から至近距離で放たれる砲弾が、両舷から殺到。

 装甲の施されていた、駆逐艦級の正面主砲を貫き、粉砕した。

 

 それだけでは終わらない。

 

 反航戦。真逆に進む、両者の進行方向に従って、射線が移動。それにともない、正面主砲を粉砕した破壊の嵐が駆逐艦級の船体の上を、移動し始めた。

 

 艦橋が、マストが、レーダーが、後部主砲が。

 第一艦隊、第二艦隊の砲撃により、爆炎と共に跡形もなく吹き飛んでいく。

 

 時間にして十秒にも満たない両者の交差。

 

 しかしそのわずかな時間で。第一艦隊、第二艦隊が、駆逐艦級の船首から、船尾へと抜ける頃には、駆逐艦級の上部構造物は、夥しい砲弾の雨に晒され、その全てが瓦礫の山へと姿を変えた。

 完全なまでの戦闘能力の消失。

 上部構造物と共に全ての武装が破壊しつくされた駆逐艦級には、もはや攻撃手段など残されてはいない。

 だが、作戦司令部から護衛艦艇の『無力化』の命令を受けている第五作戦部隊には、一切の容赦はなかった。

 

 「そぉら、オマケよ!」

 

 艦尾から、第一艦隊、第二艦隊が、駆け抜ける直前、川内は携帯艤装から駆逐艦級の艦尾に射線を合わせ、何かを射出した。

 その何かは、パシュッと気の抜けた音と共に海面に着水。駆逐艦級から離れていく第一艦隊、第二艦隊とは、逆方向。駆逐艦級の船尾に向け、独りでに動き出した。

 その何かの速度は、駆逐艦級よりも早く、あげく至近距離で放たれたため、あっという間に追いつき右側のスクリューに接触。

 その直後――――

 

 ドンッという海面を這うような振動と共に駆逐艦級の艦尾が炸裂。巨大な水柱を打ち上げた。

 

 

 九三式酸素魚雷。

 極限まで炸薬量を増やした、当時の水雷戦隊の決戦兵器ともいえる魚雷は、携帯艤装の影響を物ともせず、その凶悪なまでの破壊力を発揮。

 駆逐艦級のスクリューを吹っ飛ばし、舵を叩き割り、シャフトを捻じ曲げた。

 これにより、駆逐艦級の機動能力も完全に奪い取られた。

 

 攻撃能力を失い、機動能力も失ったことにより、完膚なきまで『無力化』された駆逐艦級。

 

 もはや、海面を漂う事しかできない哀れな姿と横目で見ながらも。指示通りに無力化したにもかかわらず、川内の表情に喜色の色はなく、むしろ不満げな呟きを洩らした。

 

 「たかが駆逐艦級一隻に、軽巡二名と駆逐十名を動員して、無力化どまりとはね。

 まぁ、携帯艤装の武装程度じゃ、程度が限界か~」

 

 実艦を使えれば、容易に撃破できるものを。そんな言葉を言外に匂わせながら、川内は次の目標を指示。

 

 その指示に従い第一艦隊、第二艦隊は、無力化された駆逐艦級を顧みることなく、次なる獲物に向けて進軍を開始した。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「これにて、終了ってね!」

 「これで……終わりです!」 

 

 川内、神通の声と共に、艦の足を折られ、身動きの取れなくなった駆逐艦級の上部構造物に砲撃が殺到。

 なけなしの武装を駆使し、悪あがきの抵抗を続けていた駆逐艦級に止めが刺された。

 

 『ふう、第一艦隊総員、被害報告』

 『松風、損害なし。まだまだ行けるさ!』 

 『旗風、装甲に亀裂。ですが戦闘に支障ありません』

 『水無月、問題ないよっ!』

 『文月も大丈夫~』

 『うーちゃんも問題ないぴょん♪』

 『了ー解!第二艦隊は、どう?』

 『朝凪さんが、至近弾を受け小破……ですが戦闘継続に問題ありません』

 

 また新たに無力化した駆逐艦級の傍を離れながら、川内は第一艦隊、第二艦隊の被害状況を素早く確認していた。

 

 最初の強襲よりそこに漂っている駆逐艦級を合わせて、三隻の駆逐艦級を無力化した今現在、第一艦隊、第二艦隊共に、多少の被害は出ているものの、戦闘継続に問題はなし。

 弾の方も、無理して沈めず、効率的に重要な部分に攻撃を集中させて、無力化しているため、まだまだ残弾には余裕があった。

 

 『じゃあ次は――――うげ』

 

 次の目標の指示を出そうとした川内が、うめき声を上げたと同時に、第一艦隊、第二艦隊の周辺にいくつもの水柱が立ち上がった。

 敵の砲撃。まだ狙いを定めきれていないのか、着弾地点を示す水柱は広範囲に散らばっているが、直に修正し、狙いを定めてくる。

 川内、神通の指揮の元、第一艦隊、第二艦隊は、すぐさま陣形を整え、回避行動をとり始めた。

 

 

 『観測機より連絡。駆逐艦級三隻が当海域に接近中。少々暴れすぎたかな』 

 

 フローレス海上空を飛んでいる基地航空隊の観測機より、一足早く報告を受けた川内の見つめる先――――

 

 そこには三隻の駆逐艦級が戦隊を組み、海面を切り裂きながらこちらに進路を取り、接近してきていた。

 先ほどの砲撃も、この駆逐艦級が撃っただろう。

 三隻全ての正面主砲が、第一艦隊、第二艦隊に照準を合わせている。完全に狙われていた。

 その目的は間違いなく、次々と駆逐艦級を無力化していく自分達の艦隊の排除だ。

 それを証明するかのように再度、三隻の駆逐艦級の主砲が火を噴き、移動する両艦隊の周囲に水柱が立ち上がった。

 

 『どうします川内姉さん?』

 『さてさて、どうしようかねー』

 

 自艦隊の回避行動を指揮しながら問いかける神通に対し、川内はどうするかを考えていた。

 

 向かってくる駆逐艦級は三隻。

いままで無力化した駆逐艦級も三隻ではあるものの、単艦でいた所を強襲し、各個撃破した駆逐艦級らと比べ、こちらを明確に狙い、陣形を組んで攻撃を仕掛けてくる駆逐艦級の戦隊とでは、撃破の難易度は格段に違う。

 

 しかし先ほどまでと比べて、難易度は格段に違うというだけで、打つ手はないわけではない。

 火力面ではあちらに軍配が上がるものの、速力の面ではこちらが上。

 しかも数の面では、かなりの差をつけている。

 艦隊を細分化し、数と速力で駆逐艦級の戦隊を翻弄しながら、少しづつ戦闘能力を削りとってもいい。

 

 いっそのこと目の前の駆逐艦級の戦隊を無視して、次の獲物を探すという手段もある。

 なにせ、向こうは上陸部隊の艦艇を守るために、どうしてもこちらを排除しなければならないが、こちらは、護衛艦艇の無力化が目的だ。

 あいつらを速力で引き離し、狙いやすい駆逐艦級を狙っても何の問題もないのだ。

 まあこの場合、常にあの戦隊に追われることになる事と、強襲中に挟み撃ちにあう可能性もあるが。

 いずれにせよ、こちらにはあの駆逐艦級の戦隊をどうしても今、排除しなければならない理由はない。

 主導権はこちらが持っていた。

 

 『……今無視しても、あの戦隊がこっちに来た以上、上陸部隊にも警戒されてるだろうから、さっきみたいな強襲は望めそうにないしねぇ。挟撃される可能性もある。よし!あいつらを先に仕留め――――?』

 『どうしたの、川内姉さん?』

 

 不自然な形で言葉を止めたことに、疑問の言葉を投げかけた神通。

 

 『……あの戦隊は、無視していこうか』

 

 そしてなぜか苦笑する川内の口から出た言葉は、先ほどとは全く正反対の言葉だった。

 さっきとは百八十度違う方針の転換。

 さらなる疑問の言葉を投げかけようとした神通の言葉を手で制しながら、川内は端的にその理由を告げた。

 

 

 

 『誰だって、狙った獲物は誰にも取られたくないってことだねぇ』

 『狙った獲物?……ああ、そういうことですか』

 

 

 その言葉で、全ての理由を察した神通は、一つ頷くと第二艦隊に命令を伝達。

 第一艦隊と共に、徐々に迫る駆逐艦級の戦隊を、完全に無視するような航路を描きながら、次の獲物を探し始めた。

 駆逐艦級の戦隊も、自分達と戦う気がないという事が分かったのだろう。

 逃がさないと言わんばかりに、第一艦隊、第二艦隊に向けて、苛烈に砲撃を加えていく。

 第一艦隊、第二艦隊の軌跡を追いかけるように、いくつも立ち上がる水柱。

 

 だが。まだ距離があるというのに感じられる駆逐艦級の怒気を感じてもなお、川内はこの場には不釣り合いな苦笑を浮かべていた。

 

 「まぁ、もう手遅れだと思うけど」

 

 ――――まるで見当違いな方向を見ている彼らに、呆れるかのように。

 ――――いまだに自分達が、追いかける側だと思い込んでいる彼らを憐れむかのように。

 

 

 

 

 

 「自分の足元は、しっかり見た方がいいよ?」

 

 

  

 川内そう呟いた直後――――

 

 

 ドンッと腹を打つような振動と、ド派手な爆音とともに、三隻全ての駆逐艦級が、()()()()()()()()()()

 

 引きちぎれた断面から大量の海水が流入し、メキメキと金属が軋む音を立てながら徐々に船尾と艦首が持ち上がっていく駆逐艦級。

 完全なまでの轟沈。

 かろうじて浮いている船体全てが、海中に没するのも時間の問題だろう。

 しかしそこまで見届けるつもりはない。

 大して驚きもせず、轟沈という結果のみを確認にした川内、神通は、姿()()()()()()()に敬礼すると、第一艦隊、第二艦隊を率い、何事もなかったかのようにそのまま次の獲物を探し始めた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 熾烈な戦闘が繰り広げられるフローレス海。

喧しいまで響き渡る爆音と 密集ながら海上に浮かぶ夥しいほどの黒い影、海底にまるで豪雨のようにに降り注ぐ夥しい量の鋼鉄の残骸に恐れをなし、ありとあらゆる生物の影が消えうせたその海中で、場違いなまでに陽気に、そして楽しそうに泳ぎ回るいくつもの少女たちの姿があった。

 人の形をしているにも関わらず、一切の制限なく、それが当然と言うかのごとく自由に泳ぎ回る姿は、まるでおとぎ話に出てくる人魚たちを彷彿とさせる。

 その少女たちは、密集ながら海上に浮かぶ夥しいほどの影のうち、何かを追い回すように移動している三つの大きな影へと慎重に近づいていく。

 

 そして至近距離に近づいた少女たちが、海上に浮かぶ大きな影に向け何かを発射した直後。

 

 海中を打つ大きな振動と炸裂音と共に三つの大きな影が一瞬浮き上がり、そして海面に叩きつけられた。

 それぞれの大きな影から聞こえる金属が引きちぎれるような不穏な音。そのしばらくののち、彼女達の数十倍もある、いくつもの巨大な鋼鉄の塊が海底めがけて沈み始めた。

 真っ二つにへし折れた三隻の深海棲艦の艦艇。

 その艦艇たちは、大量の気泡と大小さまざまな残骸を周囲にまき散らしながら、ゆっくりと落ちていく。 

 

   

 『いひひっ、敵艦を一網打尽なのね!』

 『ゴーヤの魚雷さんは、お利口さんなのでち!』

 『わぉ! 大漁大漁!』

 

 その光景を確認し、少女たちは―――伊19、伊58、伊168の名を関する潜水艦の艦娘たちは、人には聞こえない彼女達、だけが使える能力で楽しそうに声を上げていた。

 

 よくよく周囲を見渡してみれば、人影はこれだけではない。

 

 『敵艦隊発見です。Feuer!』

 『さあ…!魚雷を装填して…Feuer!』

 『撃ちましょう…。発射管開け…一番、二番…よーい……てー!』

 『んっふふ~、イヨの攻撃いっちゃうよー!いっけー!』

  

 

 密集ながら海上に浮かぶ夥しいほどの影――――深海棲艦・上陸部隊を包囲するように待ち伏せしていた潜水艦隊の艦娘たちは、次々と携帯艤装から魚雷を発射。

 深海棲艦の艦艇たちの船底に大穴を開け、深海棲艦の艦艇を海底へと引きずり込んでいく。

 

 その光景は、まさに狩り。

 

 己が狩場に入り込んだ、()()()()たちを、狩り立てる()()()()

 

 Wolfsrudeltaktik――――群狼戦術。

 

 日本ではWolfpack――――ウルフパックといったほうがわかりやすいだろうか。

 

 第二次世界大戦時、ドイツ海軍潜水艦隊司令カール・デーニッツ少将(後に海軍総司令官)が考案した、複数の潜水艦が協同して敵輸送船団を攻撃する通商破壊戦術。

 かつて大英帝国の海上輸送路に壊滅的なダメージを与え、一時は降伏寸前にまで追い込んだその脅威は今、時を越え、姿を変えて、()()()()へと襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 フローレス海を舞台に始まった自衛隊と深海棲艦・上陸部隊との戦闘。

 その戦況は、基地航空隊、空挺降下を実施し迅速に展開した第五作戦部隊、そして集結し待ち伏せしていた潜水艦隊を動員し、深海棲艦・上陸部隊に強襲を仕掛けた自衛隊側の圧倒的優勢で推移している。

 

 空から、海上から、海中から。

 

 基地航空隊の空襲に対処しようとすれば、海上から第五作戦部隊が強襲を仕掛け、第五作戦部隊に対処しようとすれば、海中より潜水艦隊が深海棲艦を海底へと引きずり込む。

 

 空、海上、海中と同時に、そして有機的に連携した立体的な攻撃に、『亡霊軍隊』により多大なダメージを負っていた深海棲艦・上陸部隊の護衛艦隊は対処しきれていなかった。

  

 牙を先にへし折るかの如く、頑強に抵抗する護衛艦艇を中心に次々沈められていく深海棲艦・上陸部隊。

 

 しかし次々沈めているとはいえ護衛艦隊だけでも100隻以上、輸送艦級を含めれば500隻を軽く超える規模の巨大な艦隊だ。

 多少沈めた所で誤差の範囲。いままで沈めた艦艇をすべて合わせても、全体の10%にも満たない。

 現にいまも無力化された艦艇を容赦なく切り捨て、深海棲艦・上陸部隊は撤退を続けている。

 

 基地航空隊、第五作戦部隊、潜水艦隊の面々は、一切攻撃の手を緩めない。

 そして警戒も怠ってはいない。

 だが警戒する対象は、深海棲艦・上陸部隊ではなかった。

 

 深海棲艦・上陸部隊に多大なダメージを与えた正体不明の勢力―――『亡霊軍隊』。

 

 その亡霊共の奇襲攻撃に備え、基地航空隊、第五作戦部隊、潜水艦隊の面々は、連絡を密に取り、警戒レベルを最大限に引き上げていた。

 撤退を優先する防御側と、それを追撃しながらも、まだ見ぬ『亡霊軍隊』を警戒する攻撃側。

 互いが、互いを見ていないという奇妙な戦場。

 

 

 だが、その戦局は予想だにしない方向に流れ始めた。

 

 

 

 

――――1999年9月30日 PM 3:00 フローレス海 

 

 

 

 

 『あれ!?』

 『これは……!』

 

 戦闘開始から約二時間。

 また新たに三隻の駆逐艦級を無力化した第一艦隊、第二艦隊の旗艦である川内、神通は目の前の光景に、驚きの声を上げた。

 

 先ほどまで攻撃を仕掛けていた深海棲艦・上陸部隊の護衛艦艇が、突如 ()()()()()()()()

 

 『川内姉さん……!』

 『わかってる!』

 

 現状を把握すべく、深海棲艦・上陸部隊の上空に張り付いている基地航空隊の観測機に連絡を取ろうとした川内。

 しかしそれより、わずかに早く観測機のほうから連絡が入った。

 

――――全護衛艦隊、増速を開始セリ。

 

 深海棲艦・上陸部隊の()()護衛艦隊が増速を始めたというのだ。

 

 この艦隊の指揮官である戦艦棲姫を中心に、解き放たれたように次第に速度を上げていく深海棲艦・上陸部隊の護衛艦隊。

 

 だが、そんなことをすればどうなるか?

 そもそも、()()()()()速度を落としていたのか?

 

 この深海棲艦・上陸部隊の大半を構成しているのは、鈍足な輸送艦級。

 増速する護衛艦隊に追いつけず、艦列から大量の輸送艦級が落伍し始めた。

 

 しかしそれでも護衛艦隊は気にすることなく増速を続け、ついには護衛艦隊と落伍した輸送艦級で構成される船団とに完全に分離してしまう。

 

 そして―――――。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 いくつかの小集団に分散し、次々船団から離れ、四方八方に散っていく輸送艦級。

 完全に船団を解除した輸送艦級を尻目に、護衛艦隊は艦列を整えつつ速度を上げ、離れていく。

 

 『ちょっ、ちょっと待って!これって……』

 

 ここまできてようやく川内は、深海棲艦・上陸部隊が何をしたのか分かった。

 

 『()()()()()()()()()()()()!?』

 

 

 おそらく艦隊を指揮する戦艦棲姫は、このまま鈍足の輸送艦級に艦隊の速度を合わせていれば、全滅すると考えたのだろう。

 だが、輸送艦級を見捨て、速力を出せる護衛艦隊のみで撤退すれば、まだ可能性はある。

 

 深海棲艦の思考は、単純かつ合理的だ。

 全滅か、壊滅か。

 どちらが、損失が少ないかで選ぶならば、考えるまでもない。

 

 おそらくこの思考の元、戦艦棲姫は、少しでも艦を生かすために、歩兵師団40個師団、機甲師団10個師団を搭載した420隻の輸送艦級を全て切り捨てた。

 輸送艦級が船団を解除したのも、散り散りに逃げることで一隻でも多くの艦が生き残れるようにするためか。

 

 しかし、分かっても理解できない。

 理解できないのは、輸送艦級を切り捨てたことではない。 

 

 

  

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の方だ。

 

   

 先ほどまで深海棲艦・上陸部隊を攻撃していたのは、基地航空隊と第五作戦部隊、そして潜水艦隊。

 

 だが本来の計画『プランJ-d-4』では、ここにビスマルク率いる第三作戦部隊が加わる予定だった。

 

 基地航空隊と潜水艦隊の支援を受けた、実艦を伴った第三作戦部隊を、第五作戦部隊が掩護しながら、深海棲艦・上陸部隊を殲滅するというのが『プランJ-d-4』のシナリオだった。

 

 だが今現在、『プランJ-d-4』を転用した計画では、作戦の要であるはずの第三作戦部隊を欠いたまま、計画を進行している。

 表向き、第三作戦部隊が待機しているジャワ島と戦場となっているフローレス海は距離があり、戦いに間に合わないためとされているが本当は違う。

 

 ()退()()()()()()()()()()()()()

 

 今、深海棲艦・上陸部隊を攻撃している基地航空隊、第五作戦部隊、そして潜水艦隊。

 

 

 ()()()()()()()だ。

 

 傷を負った深海棲艦・上陸部隊という餌に釣られ、のこのこ出てきたマヌケな追撃部隊。

 その風体を装い、その実、それを仕留めるために出てきた『亡霊軍隊』を逆に釣り上げるために構成された囮部隊だった。

 

 だからこそ基地航空隊の航空機は、脆弱ながらも補充の効きやすい、損失の少ない一式陸攻を揃え、速度を出せ撤退のしやすい第五作戦部隊を派遣し、潜水艦隊には火力の出るものの逃げにくい船体の使用を認めず、携帯艤装の武装のみ許可した。

 深海棲艦・上陸部隊で仕留めやすい輸送艦級ではなく、護衛艦から集中的に無力化していったのも、『亡霊軍隊』との戦闘の邪魔をされないようにするためだった。

 

 『亡霊軍隊』が攻撃を仕掛けてきた場合は、深海棲艦・上陸部隊の足止めを潜水艦隊に任せ、第五作戦部隊が応戦。『亡霊軍隊』の持ちうる戦力を調査する。

 それが完了し次第、基地航空隊が全力を持って『亡霊軍隊』抑え込んでいる間に、第五作戦部隊、潜水艦隊は深海棲艦・上陸部隊を無視して迅速に撤退。情報を持ち帰る予定だった。

 

 最初から『亡霊軍隊』のみを主眼に置いた基地航空隊、第五作戦部隊、潜水艦隊の戦闘方針。

 深海棲艦・上陸部隊はその片手間で相手をしていたといってもいいだろう。

 当然、戦力が限定されていた以上、攻撃の手は甘かったはずだ。

 

 にもかかわらず戦艦棲姫は、このままでは全滅すると考えた。

 

 そう、それはつまり――――――

 

 「……そうか、そういうことか」

 『川内姉さん……?』

 

 作戦司令部は、このダメージを負った深海棲艦・上陸部隊を、追撃部隊を釣り上げるために『亡霊軍隊』が用意した餌だと考えていたようだが、違う。

 

 ――――深海棲艦・上陸部隊は、『亡霊軍隊』との交戦が終わった時点で、崩壊寸前だった。

 

 戦力の限定された基地航空隊、第五作戦部隊、潜水艦隊の攻撃程度で、全滅すると考えるほどに。

 もし、『プランJ-d-4』が計画通りに発動されビスマルク率いる第三作戦部隊が加わっていれば、突撃した瞬間に総崩れになっただろう。

 それほどまでに深海棲艦・上陸部隊は、『亡霊軍隊』に致命的なダメージを負わされていた。

 

 

 ――――もはや餌として、まともに()()しない(できない)ほどに。

 

 

 川内は、戦艦棲姫の思考を、そして『亡霊軍隊』考えを完全に理解した。それと同時に先ほどまで漲っていた闘志も、緊張感もその全てが霧散した。

 

 

 

 『亡霊軍隊は来ないよ』

 『え……?どういうこと?』

 

 

 

 ――――亡霊軍隊は来ない

 

 

 

 『こいつらは追撃部隊を釣り上げる餌じゃない。そんな上等な物じゃない』

 

 

 

 ――――ここでの目的は十分に果たしたからだ

 

 

 

 『こいつらは、ただの残骸。亡霊軍隊が食い散らかした()()()()だ』 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――戦争という目的を 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「スープと前菜は味わった(第一幕 第二幕は終了した)。次はいよいよメインディッシュだ(最終幕)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 戦況報告
        タウイタウイ方面

          人類陣営
           タウイタウイ方面軍 第一作戦部隊

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               交戦状態



        フローレス海方面
          
          人類陣営
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          深海陣営
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