空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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 艦これ夏イベント2021
 『増援輸送作戦!地中海の戦い』開催中!

東条少将の敗因

 マスケット銃で航空機落としまくる輩を想定してなかった。
 トランプで航空機切り刻む輩を想定してなかった。
 幻術呪文つかってくる輩を想定してなかった。


 前回までのあらすじ!

 東条少将   「これは合同作戦だ。いいね?」
 レジェス大将 「アッハイ」
 亡霊軍隊   「時間だから帰るわ」≡≡ヘ( ゚∀゚)ノ →自宅
 一同     「「「」」」( ゚д゚ )( ゚д゚ )( ゚д゚ )
 東条少将   「草」

 

 


第34話 英雄による事後処理

 『ジャワ島防衛作戦』。

 先の作戦―――『ジャワ島奪還作戦』で失ったジャワ島を奪い返すべく、深海棲艦が差し向けた攻勢部隊を迎え撃った東南アジア連合軍と自衛隊の共同作戦。

 

 東南アジア全域という広範囲で両軍が衝突し、数多の戦闘が繰り広げられるはずだった今作戦はしかし、当初の作戦計画から大きく逸脱し、僅か一日という早さで終結した。

 結果は深海棲艦の攻勢部隊の壊滅。

 深海棲艦・上陸部隊の艦艇は辛うじて逃げ延びた一部の護衛部隊除いて全て撃沈。

 陸上戦力、歩兵40個師団と機甲師団10個師団、そしてそれを支える戦略物資諸共、輸送艦と共に海の底に消え。

 深海棲艦・空母機動部隊に至っては文字通り一隻残らず全滅した。

 

 それに対して東南アジア連合軍は目立った損害なし。

 自衛隊も深海棲艦・空母機動部隊と真正面から殴り合う事となったタウイタウイ方面軍・第一作戦部隊の艦娘に被害が出たものの轟沈した者はなく、深海棲艦・空母機動部隊が破壊目標としていたタウイタウイ軍港も無傷。

 基地航空隊についても作戦前の被害想定を大幅に下回っている。

 まさに奇跡のような大勝利。

 

 本来ならば、この大本営発表もかくやという大勝利に、関係者も、そして迫りくる深海棲艦の脅威に怯えていた東南アジアの国民も狂喜乱舞していたことだろう。

 だが、喜びに震えているのは情報が制限され、作戦の実情を知らぬ国民だけ。

 少しでも今回の作戦を知る者であれば、そのようにお気楽に喜べるはずもない。

 

 なぜなら、この奇跡の舞台を演出したのは、東南アジア連合軍でもなければ、自衛隊でもないからだ。

 

 鉤十字(ハーケンクロイツ)を掲げる謎の集団―――ミレニアム。

 数か月から東南アジアの最前線において深海棲艦に対しての軍事行動が確認されつつも、今までその正体を全くつかめなかった亡霊のような軍隊はしかし、『ジャワ島防衛作戦』の作戦中において白昼堂々、深海棲艦・上陸部隊、深海棲艦・空母機動部隊を強襲。

 両艦隊に致命的な損害を与え、そしてそのミレニアムの巨大な飛行船は、包囲していたタウイタウイ方面軍・第一作戦部隊所属の航空隊の目の前で、跡形もなく、文字通り消え去った。

 

 ミレニアムの飛行船の艦娘であると宣うその男の不快な冗語と共に、まるで魔法のように戦場から消失した飛行船。

 すぐさまその行方を東南アジア連合軍と自衛隊が懸命に捜索したものの、終ぞ発見することは出来なかった。

 あまりにも現実離れした、神の『奇蹟』のような所業。

 

 それはまさにその飛行船の名―――Deus ex machina(デウス・ウクス・マキナ)―――機械仕掛けの神の御業というに相応しい。

 

 そして。

 『奇蹟』の後にも、現実は待ち受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 ……まさか亡霊どもがあんなふざけた隠し札を持っていたとはな。

 何をどうやれば、あんなことができるのか……。

 さすがの君でも予想できなかっただろう。

 

 

 ―――

 

 

 いや、いい。そもそも襲撃さえ予想できていなかった私たちは、それ以前の問題だったのだからな。

 ……だがどうする?

 ジャワ島防衛作戦自体は成功したとはいえ、共同の極秘作戦と称してまででっち上げた亡霊どもの捕獲作戦は失敗した以上、私も、そして君も責任追及は避けられんぞ。

 

 

 ―――

 

 

 !?。問題ない(・・・・)此処からひっくり返す(・・・・・・・・・・)

 ……一体どうやって?

 

 

 ―――

 

 

 

なに?『英雄』?

 

 

 

 

 

 

 

――――1999年10月14日 リンガ軍港 提督執務室

 

 

 

 波乱に満ちたジャワ島防衛作戦より二週間後。

 

 東南アジア方面における深海棲艦との戦争における最前線の一つであるリンガ前線。

 その前線を東南アジア連合軍と共に守護する海上自衛隊の将校であり、自衛隊の拠点でもあるリンガ軍港の司令官でもある東条少将が、自身の執務室にある執務机で資料を読んでいると、唐突にドアのノックする音が響き渡った。

 

 その音に顔を上げた東条少将は、ちらりと壁に掛けられた時計で時間を確認すると、席から立ち上がり入室を促した。

 

 

 「おっと、来るのが遅かったか?」

 

 「いや、時間通りだ」

 

 

 そう言いながら入って来たのは、同じ海上自衛隊の将校ある橋本少将。

 東条少将と同じように東南アジア方面での最前線の一つであるタウイタウイ前線を守護しタウイタウイ軍港の司令官でもある彼は、部屋にある来客用のソファーにドカリと腰を下ろした。

 

 「コーヒーでも飲むか?」という東条少将の問いかけに、手を上げて肯定を示す橋本少将。

 そこには、日本の士官学校とも云うべき防衛大学校の同期であること、東南アジア方面の前線を維持するために頻繁に共同作戦を行う関係であることを抜きにしても、確かに友としての気安さがあった。

 東条少将は執務室に隣接している給湯室でコーヒーを用意しつつ、軽い雑談もそこそこに話を切り出した。

 

 

 「そちらの首尾は?」

 

 「まぁ上々やな。亡霊どもに……じゃなくてミレニアム?だったか、には散々荒されたけど損害自体は少なかったからねぇ」

 

 「だが、その損害自体は深海棲艦・空母機動部隊と真正面から戦うことになった第一作戦部隊に集中しているだろ。

 タウイタウイ軍港の修理ドックに空きがないのなら、リンガ軍港で何隻か受け持つか?」

 

 「いや、それに関しては、どうせひどいことになるやろうと思って、作戦前、本国に工作艦の派遣要請を出してたからな。

 今、明石と朝日と、ついでに秋津洲がフル稼働で修理してくれてる.

それでも全艦隊の復帰まで、後1週間ほど掛かるが……、深海の屑共も、攻勢部隊が壊滅した以上、しばらくは身動きとれんやろ」

 

 彼らは現在、ジャワ島防衛作戦の事後処理の手分けして取り掛かっていた。

 先ほどの問いは、橋本少将が担当する仕事の進捗状況を聞いたものだ。

 今のこの時間はその報告会といえるだろう。

 ちなみに彼らの秘書官であるビスマルクと金剛も、この事後処理の為に別行動をしている。

 

 ビスマルクが執務室に持ち込んでいたコーヒーメーカーで挽きたてのコーヒーを二杯入れ、給湯室から出てきた東条少将は、橋本少将の前のテーブルに置き、先ほどまで読んでいた資料を小脇に抱えながら、そのまま対面のソファーに座った。

 

 

 

 

 「ただなぁ……。

 今回は作戦範囲が広かったから、その報告書を受け取るのに、無駄にあちこち飛び回る羽目になったわ。

 そのせいで、腰が……」

 

 「ん?……あぁ、輸送機に便乗か」

 

 「仮にも少将やってのに、何で貨物と相席やねん……。

 移動の為にもプライベートジェットとは言わんけど、ある程度自由に飛ばせる飛行機くらいは欲しい所やね……」

 

 「多分経費では落ちないから、自費だぞ」

 

 「……………諦めるかぁ」

 

 

 そう言いながら橋本少将は、身体の疲れを取るように、ソファーにもたれ掛かって体を伸ばしていた。

 

 

 「まあ何にせよ、こちらの事後処理は滞りなく進んでるけど………そっちは、事後処理にしては、えらく派手にやったなぁ?」

 

 

 橋本少将は含むような物言いをしつつ、ソファーの背もたれにもたれ掛かっていた体を起こして目の前の東条少将を見据えた。

 

 

 「さて、こちらの事後処理も滞りなく進んでるが?」

 

 

 橋本少将の物言いたげな視線に晒されているにもかかわらず、一切動揺することなく、コーヒーを飲みながらそう言い切る東条少将。

 あまりに白々しいその返答に、橋本少将は呆れたように頭を振った。

 

 

 「よう言うわ。その事後処理のせいで東南アジア連合は、トンデモないこと(・・・・・・・・)になってるいうのに」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 今より一週間前。

 

 未だ各所でミレニアムに対する動揺が収まりきらぬ中、突如としてジャワ島防衛作戦における東南アジア連合軍側の総責任者であるレジェス大将に対し、東南アジア連合議会の場において査問委員会が開かれることとなった。

 罪状は、連合政府に無許可での軍事行動及び、部隊の私物化。

 

 ジャワ島防衛作戦の裏に隠されたもう一つの作戦。

 連合政府に極秘で、東南アジア連合海軍と自衛隊と共同で行われた対亡霊軍隊計画―――『ミレニアム拿捕作戦』(東条少将にとっては戦力調査)に対しての罪を問われた形だ。

 

 査問委員会が開かれる罪状自体、全て事実であるために特に不自然な点はない。

 だが、ジャワ島防衛作戦の後始末もままならない中、まだほとんど検証も行われていない状況での査問委員会。

 しかも共同作戦であったにもかかわらず、自衛隊側の総責任者に対する呼び出しが一切行われていないとなれば、この査問委員会が明らかにおかしいことが分かるだろう。

 

 不自然なほどにレジェス大将のみをターゲットにした今回の査問委員会。

 それもそのはず、今回の査問委員会は、レジェス大将を失脚させようと目論む政敵が仕掛けた謀略だったからだ。

 

 東南アジア連合海軍の頂点に座るレジェス大将には敵が多い。

 東南アジア連合海軍トップの座を狙っている者たちから、自力で戦果も上がられないにもかかわらず、予算を奪っていく海軍を快く思っていない一部の陸軍派まで。

 様々な政敵が、常日頃からレジェス大将をその座から追い落とす機会を虎視眈々と狙っていた。

 そんな者たちからすれば、東南アジア連合政府に秘密裏かつ独断で作戦を実行したあげく、そのターゲットに無様に逃げられた今回のレジェス大将の失態は、彼を失脚させる絶好のチャンスであるといえたのだ。

 

 彼らはそのチャンスを物にすべく共に手を組んだ。

 双方のツテをフル活用することで、わずか一週間で今回の査問委員会を実現させたのだ。

 残念ながら、レジェス大将の派閥に立て直す時間を与えないよう、何よりも早さを優先させたが為に、査問委員会の人選にまで手を回すことが出来なかったが、それでも彼らは、委員会の中立派を味方につけ、軍法会議にまで持ち込めるだけの材料を揃えたと確信していた。

 『拙速は巧遅に勝る』。

 一週間という短い期間、その中で自分たちの追及を躱すだけの材料を揃えるなど、最初からこの動きを想定していない限り(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)あり得ない、と。

 

 だが。

 本来なら、レジェス大将の失態を徹底的に追求するはずの場で。

 政敵達の手により、彼に対する公開処刑場になるはずの査問委員会の場で。

 

 レジェス大将が、東南アジア連合の(・・・・・・・・)上層部の中に存在する(・・・・・・・・)ミレニアムとつながる複数の(・・・・・・・・・・・・・)『内通者』の情報(・・・・・・)をいくつもの物的証拠と共に暴露したことで全てがひっくり返った。

 

 レジェス大将に対する査問委員会の場であるはずの場で飛び出したとんでもない『爆弾』。

 突然の情報に混乱する委員たちを前に、被告人として証言台に立つレジェス大将は、議場全体に響き渡るような声でゆっくりと語りかけるように口を開いた。

 

 

 「………我々東南アジア連合海軍と自衛隊は、兼ねてより東南アジアの最前線の裏に見え隠れするこのミレニアムという正体不明の集団を、重大な脅威として認識していた。

 深海棲艦の拠点を短期間で落とせるだけの戦闘能力と、我々の監視網を掻い潜ることのできる隠密能力。

 もしこの力の矛先が我々に向けられるようなことになれば、致命的な被害を被ることになるからだ。

 我々軍隊は深海棲艦からだけでなく、ありとあらゆる脅威から国民を守らねばならない。

 だからこそ我々は、ミレニアムの襲撃を想定しつつ、一早く動向を察知できるよう密かに調査を続けていたのだ」

 

 

 「だが」、レジェス大将はそう言うと、査問委員会の面々―――つまり東南アジア連合の上層部の面々を睨みつけるように見渡す。

 最前線で長年戦う軍人からの鋭い眼光に、東南アジア連合政府側から参加していた何人かの官僚がすくみ上った。

 

 

 「しかし、しかしである!

 その調査により、とんでもない事実が発覚したのだ!

 東南アジア連合の上層部の中に、ミレニアムと秘密裏に繋がる『内通者』共の存在が浮かび上がったのである!!!」

 

 

 証言台の机に、『内通者』の特定に繋がる直接的な情報がぼかされた(・・・・・)書類を叩きつける音と共に、レジェス大将は怒りの声を上げた。

 

 

 「本来ならば、東南アジア連合を主導する立場にある者たちが!

 ありとあらゆる外敵から身を挺して連合に所属する国民を守護しなければならない者たちの一部が!

 あろうことかミレニアムと繋がり機密情報を漏洩していたのだ!

 これは重大な背信行為であり、東南アジア連合に属する全ての国家、国民に対する反逆である!

 だが、この獅子御中の虫が上層部に潜んでいる限り、我々の実行する全ての作戦計画は、たちどころにミレニアムの知るところになり、奴らのいいように利用されてしまうだろう。

 だからこそ我々は、何よりも早く『内通者』共を見つけ出さなければならなかった!

 そして私は(・・)、秘密裏に自衛隊に協力を仰ぎ(・・・・・・・・・)、作戦を実行に移したのだ!」

 

 

 会議場の誰もが、レジェス大将の演説を固唾をのんで見ていた。

 もはや査問委員会の会議場は、被告人であるはずのレジェス大将一人の意思に呑まれてしまっている。

 

 

 「今ここに真実を話そう。

 『ミレニアムの拿捕作戦』の真の目的(・・・・)、それはジャワ島防衛作戦に介入したミレニアムの拿捕ではない(・・・・・・・・・・・・)

 それに乗じて動き出す唾棄すべき売国奴共、『ミレニアムと繋がる内通者の割り出し(・・・・・・・・・・・・・・・・・)』あったのである!!」

 

 

 その高らかな宣言に会議場が大きくどよめいた。

 

 

 「そして我々の予想通り(・・・・・・・)、『ミレニアムの拿捕作戦』が失敗したと思い込んだ『内通者』とその『協力者(・・・)』共は、更なる欲望の為に自分たちに楯突く者を排除しようと目論んだのだ!

 そう、査問委員会を使ってな(・・・・・・・・・・)

 

 

 その言葉聞いた瞬間、会議場にいる、ほとんどの者たちの視線は、査問委員会を開くように主導した者たち―――レジェス大将の政敵達へと向けられた。

 唐突に不穏な方向に流れだした状況に、目を白黒させる政敵たちを余所に、レジェス大将はさらに言葉を続ける。

 

 

 「諸君らは疑問に思わなかっただろうか?

 未だジャワ島防衛作戦の後始末もままならない中、ほとんど検証も行われていない状況での査問委員会、その不自然さに。

 そして一週間でそれらを開くまでにこぎ着けたその手際の良さに!

 これではまるで、どこかから情報を受け取り(・・・・・・・・・・・・)事前に動いていたようではないか(・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 ここでようやくレジェス大将の意図を察し、自分たちがレジェス大将に嵌められたことを理解した政敵たちは、慌てて反論しようとするが、もはや遅い。

 彼らに集まる視線に明確な敵意が混じり始めていたのだから。

 もはや狼狽えるしかなくなった彼らを視界に収め、レジェス大将はトドメの一撃を言い放った。

 

 

 「私自身の査問委員会ではあるが、事の重大さゆえに、今この場を借りて告発しよう。

 東南アジア連合の上層部に潜む裏切り者、外部に情報を売り渡す唾棄すべき売国奴。

 『内通者』とその『協力者(・・・)』を!!!」

 

 

 この言葉で全ての趨勢は決した。

 

 会議場は、まるで火山が噴火したかのように歓声に沸き、誰も彼もが口々にレジェス大将への支持を、そして『内通者』とその『協力者』の粛清への賛同を示す。

 

 レジェス大将から齎された情報の奔流は、彼らから冷静な判断能力を奪い去り、そして東南アジア連合の上層部に潜む『内通者』という存在は、所詮利用しあう関係でしかない互いの結束をいともたやすく分断したのだ。

 

 いったい誰がミレニアムと繋がっているのか?

 

 誰もが自分以外の他人に対し、疑惑の目を向け、疑心暗鬼を募らせる中で、いち早くそれを見つけだし、大々的に糾弾したレジェス大将という存在は、彼らに確実に『内通者』ではないという安心感を与え、彼に対し信頼感を無意識のうちに抱かせたのだ。

 

 抑圧された状況下において、レジェス大将が演説により一定の方向性を示したことで群集心理が働き、大半の者たちは、もはや彼の意のままに動き、敵を排除する集団となり果てた。

 

 もちろん群集行動特有の酩酊状態に陥り、判断力・推理力が低下している者が過半を占めている中で、明確な物的証拠が存在する『内通者』はともかく、状況証拠のみで政敵たちをミレニアムの『協力者』と断じたレジェス大将に対し、疑惑の目を向ける者たちも少なからずいた。

 

 だが、彼らががその疑問を口にすることはなかった。

 

 流れは完全にレジェス大将側にあるのだ。

 

 政敵側が本当にミレニアムの『協力者』であるか疑問が残るものの、内通者の存在を証明する確たる証拠を揃え、主導権を完全に握っているレジェス大将側と、先に仕掛けたにもかかわらず、無様に返り討ちにあった挙句、ミレニアムの『協力者』としてのレッテルを張られ、右往左往している政敵側。

 機を見るに敏。

 どちらが勝とうが特に影響の無い者たちが、勝ち馬に乗るならば、どちらにつくかなど考えるまでもない。

 

 そして、レジェス大将の政敵たちが、自身の栄達の為にレジェス大将の失脚を狙ったのと同じように、彼らもまた、他の者たちにその地位を狙われる立場にあるのだ。

 その者たちにとって、レジェス大将よりも政敵たちが消えてくれた方が得する者たちにとって、今この流れは非常に都合がよく、黙認するどころか、むしろ積極的にレジェス大将側に便乗し支援すらしていた。

 

 そもそもの話。

 政治闘争というものは、それ自体が目的ではない。

 より良いポストを自身が獲得する為や安寧の為に、ライバルを蹴落とす為の手段でしかないのだ。

 ライバルを蹴落とす為に、自分の地位を失う、または共倒れするなどナンセンス。

 前提にあるのは、あくまでも自身の保身である。

 

 それを考えれば。

 大勢を下しつつあるレジェス大将側を無視し、下手すれば、自身もミレニアムの『協力者』と見られ裏切り者のレッテルを張られかねないリスクをわざわざ冒してまで、政敵側に味方する者など、この場にいるはずもないのだ。

 そして弱った者を集団で叩くことに躊躇する者も。

 それが平然とできるからこそ、ここに居る者たちは、登り詰めることが出来たのだから。

 

 そして『内通者』側も彼らを助けることは無かった。

 そもそも、レジェス大将の策謀により、政敵側はミレニアムの『協力者』とされているが、真実彼らとミレニアムに繋がりはない。

 レジェス大将の失脚を狙って勝手に動いて、彼に嵌められ自爆しただけの、赤の他人である。

 だが、赤の他人である為に、ミレニアムの『協力者』として、いくら政敵側を調べようとも、そこから自分たち『内通者』と繋がることはない。

 

 幸い、『内通者』が存在するという確たる証拠はあるものの、誰が『内通者』であるか特定する証拠はないようで(・・・・・・・・・・・・)、徐々に追い詰められつつあるものの、まだ完全には詰みの状況ではない。

 そこで『内通者』側は、政敵側をミレニアムの『協力者』としてスケープゴートとすることで、時間稼ぎを図ったのだ。

 もちろん、勝手に便乗して返り討ちにあった挙句、こちら側にまで火の粉を飛ばしてきた政敵側に対する私怨も無いわけではない。

 

 こうして全ての陣営から見捨てられた政敵側は、ミレニアムの『協力者』として粛清を待つのみとなった。

 

 こうなってしまえば、いくら彼らが真実を訴えようとも意味はない。

 もはや彼らが、ミレニアムの『協力者』であるということにした方が都合がいいものの方が多いのだ。  

 

 かくして、レジェス大将の失態を徹底的に追求するはずだった場は。

 政敵達の手により、彼に対する処刑場になるはずだった査問委員会の場は。

 

 今この瞬間より、レジェス大将に完全に掌握され、彼の主導の元、政敵たちをミレニアムと繋がる裏切り者として徹底的に追求し、苛烈に粛清する屠殺場と化したのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 「東南アジア連合内は、ミレニアムと繋がる『内通者』とその『協力者』粛清で大混乱。

 そして少し前まで査問委員会に掛けられたレジェス閣下も、今や一連の極秘作戦を主導して東南アジア連合の上層部に潜んでいた裏切り者を探し出した『英雄』とは……。

 ……なんやボクの知ってる真実とずいぶん異なってるんやけど?」

 

 「………」

 

 

 橋本少将のその言葉は、目の前の東条少将に向けられていた。

 

 この一件で、全てがひっくり返った。

 

 ミレニアムに対する戦術的敗北は、彼らのシンパを一網打尽にした戦略的勝利に置き換わり。

 レジェス大将に対し査問委員会を仕組んだ政敵たちは、いつの間にかミレニアムの『協力者』としての濡れ衣を着せられたことで、自分たちが処断される立場となり。

 

 そして東南アジア連合政府に秘密裏かつ独断で作戦を実行したあげく、そのターゲットに無様に逃げられたことで、『無能』の烙印を押され失脚寸前だったレジェス大将は。

 事情が事情だけに、一般の国民には秘匿されてはいるものの、東南アジア連合内では、『英雄』の名声と共に、一連の極秘作戦を主導した東南アジア連合軍随一の名将としてその地位を盤石なものとした。

 

 そして、レジェス大将が一連の極秘作戦を主導したという立場を取ったことで、東条少将こそが計画を実行していたという事実は闇に葬られ、彼の全ての行動はいつの間にか共同作戦の正規の行動として処理されていた。

 

 結局、終わってみれば。

 東条少将の名は、裏表含めたジャワ島防衛作戦を本当に操っていた東条少将の名は、レジェス大将に乞われて協力した(・・・・・・・・・・・・・・・)一自衛隊参謀として、目立たない立場に収まっていたのだ。

 

 それだけでなく『英雄』となったレジェス大将が正式に自衛隊に対し、今作戦の詳細とその目的の説明と、

 それに加え『内通者』という事情だけに、自衛隊上層部すら秘密裏に作戦を遂行せざるを得なかったことに対する全面的な謝辞と、そして協力に対する感謝が述べられたことで、自衛隊上層部に無許可での作戦実行に友軍の協力要請があったという正式な理由がつけられてしまった為に、本来なら東条少将に対し、査問委員会を開かねばならなかった自衛隊上層部はその機会さえも完全に失った。

 

 そもそも自衛隊上層部は、今回の作戦の裏側に関して全く把握出来ていなかったのだ。

 

 作戦の真の裏側を知る者は、あの日リンガ軍港の作戦司令部内に居た者たちのみ。

 そして東南アジア連合海軍の人員に関しては、レジェス大将率いる東南アジア連合海軍の元、緘口令が敷かれ、徹底的な隠蔽工作が成されている。

 

 それに加え自衛隊側の人員からも、ジャワ島防衛作戦の作戦司令部の置かれたリンガ軍港の司令官でもある東条少将が、あらかじめ作戦司令部の人員配置に手を入れ、彼自身の派閥の中でも、口の堅く、信用の置ける人員を集中して配置していた為に、上層部に伝わることはなかった。

 

 もちろん上層部も何かしらの隠蔽工作が成されていることは感づいてはいたが。

 ただでさえ東南アジア連合ほどではないにせよ、ミレニアムの正体発覚と、友軍内に居た内通者問題ににより自衛隊上層部も混乱の真っ只中にあるのだ。

 そんな彼らに、念入りに隠蔽工作の成された真実を探るだけの余裕などあるはずもなかった。

 

 結局、真実を知るすべのなかった自衛隊上層は、レジェス大将の説明する内容をそのまま鵜呑みにせざるをえなかったのだ。

 

 そして、全てが終わってみれば。

 自衛隊上層部及び、東南アジア連合に無許可での作戦実行に、書類の改ざん、隠蔽、そして飛行教導群の部隊を始めとした軍隊の一部を私物化と、その事実が明るみにでれば、良くて予備役、下手すれば不名誉除隊も十分あり得た東条少将の罪は。

 その悉くが霞のように消えてなくなっていたのだった。

 

 

 「……いやぁ、ホント上手いことやったなぁ?」

 

 

 橋本少将はしみじみと呟いた。

 

 実際に表立って動いていたのは、レジェス大将だけであったが。

 橋本少将はこの一連の策謀が、レジェス大将と東条少将により仕組まれたものであること、そしてその青写真を描いた真の黒幕は東条少将であると確信していた。

 

 レジェス大将が査問委員会の中で出した、東南アジア連合の上層に存在するミレニアムと繋がる複数の『内通者』の情報と、いくつもの物的証拠。

 あれは元々、東条少将が集めたモノであったはずだ。

 それがレジェス大将の手にあったということは、政敵たちの査問委員会設置の動きを事前に察知した東条少将が、状況を利用すべくレジェス大将に渡したという事なのだろう。

 

 いや、今考えてみれば、レジェス大将の失脚を狙った政敵たちが仕掛けた、全ての始まりといってもいい査問委員会。

 アレすらも二人により仕組まれたものだったのだろう。

 

 彼らはあらゆる方面に手を回し、わずか一週間という短い期間で査問委員会の設置こぎ着けた訳であるが。

 本来なら、失態を犯したとはいえ、今だ東南アジア連合海軍の主流派であるレジェス大将の派閥から、査問委員会設置を妨害する動きがあって然るべきだ。

 にもかかわらず、レジェス大将の派閥から目立った妨害の動きはなく、政敵たちはわずか一週間で査問委員会の設置にこぎ着ける事が出来た。出来てしまった。

 

 つまりはそういうこと(・・・・・・)なのだろう。

 

 彼らは自分たちの動きが読まれていないと考えていたようであるが。

 おそらくは最初から。

 彼らがレジェス大将を失脚させるため査問委員会という手段を考えつく、その遥か前から。

 

 その行動は読まれ、策謀の始まりを告げる舞台装置として、そしてミレニアムの『内通者』の存在を際立たせる体のいい生贄として、彼らの計画に組み込まれていたのだろう。

 

 レジェス大将の派閥は、動けなかったのではない。動かなかったのだ。

 

 いやむしろ政敵たちが成し遂げられるよう、秘密裏に手を貸してすらいたに違いない。

 

 もちろん彼らの中にも、何の障害もなくトントン拍子に進む流れに疑念を持つ者もいただろうが。

 レジェス大将の派閥に立て直す時間を与えないよう、何よりも早さを優先させたことが、仇となってしまった。

 その『拙速』は、彼らからその疑念について、思考する時間すらも奪い去ってしまったのだ。

 

 それと同時に。

 なぜ東条少将がジャワ島防衛作戦時の裏で対亡霊軍隊計画―――『ミレニアムの拿捕作戦』を秘密裏に、かつ単独で推し進めることを決心したのか。

 そしてミレニアムに対し罠を張るのと並行して行っていた『ミレニアムと繋がる内通者の割り出し』に、なぜ日本の諜報機関―――『公安総局』の手を借りようとしなかったのか。

 その本当の理由(・・・・・・・)を橋本少将はようやく理解した。

 

 確かに、どこにミレニアムと繋がる『内通者』の目があるかわからない為に、秘密裏に作戦を実行せざるを得えなかった、というのもあっただろう。

 

 そして、東条少将が言ったように「『公安総局』は組織としては若すぎがゆえ、根も張れてもいない国外ではその捜査能力に疑問を覚える」というのも、手を借りなかった理由の一つに違いない。

 

 だが最大の理由はそれではない。

 

 東条少将が仕掛けた『ミレニアム拿捕作戦』。

 それが失敗した時に、全てをひっくり返す『爆弾』として。

 そしてその後の策謀を支える『保険』として。

 

 おそらく東条少将は、最初から内通者の存在を利用するつもりでいたのだ。

 ジャワ島防衛作戦が始まる遥か前から(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 だからこそ東条少将は、その存在を誰にも教えず自ら『内通者』の割り出しに掛かったのだろう。

 公の諜報機関であるが為に、自身の手で情報を操作することのできない『公安総局』の手を借りずに。

 

 『内通者』の存在を秘匿し、もし作戦が失敗した時、速やかに『爆弾』を起爆させ、一連の策謀を支える『保険』として利用できるようにするために。

 

 『内通者』のせいで(・・・)秘密裏に作戦を実行せざるを得えなかったのではない。

 『内通者』のおかげで(・・・・)秘密裏に作戦を実行することができたのだ。

 

 結局のところ、作戦が成功しようが失敗しようが、東条少将にとっては、その全てが既定路線だったということだ。

 

 橋本少将は確信を込めて、一連の事態の陰で蠢いていたフィクサー(黒幕)とも云うべき東条少将を見据える。だが――――

 

 

 「ああ、あそこまで尽力してくださった閣下には、感謝の念が堪えんよ」

 

 

  東条少将は随分アッサリと関与を認めてしまった。

 

 

 「へぇ……、えらいアッサリ認めるんやな?」

 

 

 それに対し驚いたように見せた橋本少将だったが、その理由も分かっていた。

 

 東条少将が自身の関与をあっさりと認めたのは、橋本少将が、あの日リンガ軍港の作戦司令部内に居た、真実を知る者である為に、隠し事は無意味であることも理由の一つだろう。

 だが一番の理由はおそらく、もはや話したところで何の問題ないと確信しているからだ。

 もはや真実の発覚につながるであろう痕跡を、そして東条少将の関与を示す証拠の悉くを、一切の例外なく消え去っているがゆえに。

 

 

 「ホント、ようやるなぁ……」

 

 

 橋本少将は心底呆れ果て、それ以外の言葉も出なかった。

 

 

 東南アジア連合軍と自衛隊という二大組織を存分に利用しておきながら、本来不安要素であったはずの内通者を利用し尽くすことで、ほとんど痛手を負うことなく切り抜ける東条少将も。

 

 東条少将の計画に全力で便乗し、敗北の責任を『内通者』発見という功績にすり替えたどころか、どさくさに紛れて自身の政敵にミレニアムの『協力者』という濡れ衣を着せて粛清し、『英雄』としてその地位を盤石なものとしたレジェス大将も。

 

 さすがは将官の地位を維持できているだけはあるというか、何というか。

 もう言葉にならない。

 

 ちなみに先ほどから引いたような発言をしている橋本少将であるが、わざわざ策を弄さずとも、深海棲艦に対する圧倒的な戦果(殺しの腕)のみでその地位を維持できている彼もまた、大概である。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「ハッ!? アカンアカン、そうや、今日はこんな話をするために来たんやないんや」

 

 東条少将の事後処理の裏に隠された鬼畜外道の所業を垣間見たことで、引き気味になっていた橋本少将だったが、我に返り気を取り直すと東条少将に向き直った。

 今日、橋本少将が東条少将の執務室にわざわざ訪れたのは、互いの事後処理の進捗状況の確認というのも目的の一つではあったが、それが主ではない。

 少なくとも、このモリアーティーもかくやというほどの暗躍の内容を聞くために、わざわざここまで足を運んだのではないのだ。

 

 それに東条少将は頷くと、先ほど橋本少将が来るまで読んでいた資料を手渡した。

 

 

 「これが?」

 

 「ああ、今日の朝、本土から送られて来た、ミレニアムの飛行船に対する中間調査報告書だ」

 

 

 これこそが橋本少将が訪れた目的、自分たちが入手したミレニアムに関する様々な情報を、自衛隊と日本政府が分析した調査報告書だ。

 もちろん橋本少将が管轄しているタウイタウイ軍港にも、東条少将の元に届いた物と同じものが届く予定だったが、ちょうどその日に仕事の関係でリンガ軍港に立ち寄る必要があった為に、ついでにその内容に関して東条少将と議論できるよう、彼の執務室に立ち寄って、調査報告書を見せてもらうことにしたのだ。

 

 「へぇ……。一番最初に送られてきたのが、ミレニアムの飛行船に関する報告書か。

 他の調査は難航してんのか?

 ……というか、もうその薄さからして大体予想はつくけど……。

 拝見させてもらうで」

 

 資料を受け取った橋本少将は、パラパラと捲りながら、流し読みしていく。

 しばらく執務室には、紙の擦れる音だけが響いていた。

 そして、ミレニアムの飛行船に対する中間調査報告書と銘打っている割には、やけに薄いそれを早々に読み終えた橋本少将は、残念ながら自身の予想を一切裏切らなかったこの報告書を見ながら、大きなため息をついた。

 

 

 「これは……なんとまぁブッ飛んでるなぁ」

 

 

 今回、他のよりも先に送られてきたその調査報告書の内容は、ミレニアムの飛行船に関するものだった。

 そして、その分析を行ったのは自衛隊や日本政府の抱える人員だけではない。

 航空工学や飛行力学、武器・兵器の専門家や研究者、果てはナチスドイツや飛行船の歴史に詳しい教授など、多くの者が分析に関わっていた。

 自衛隊や日本政府の抱えている人員、そして両組織から内々に調査を依頼された彼らはチームを組み、それぞれの得意とする分野や観点から、この飛行船の調査を行なった。

 ところが―――

 

 

 「そのほとんどが調査不能とは(・・・・・・)………」

 

 

多くの者たちが、自身の得意とする分野の知識を総動員し、あらゆる角度からこの飛行船の分析を試みた結果、何も分からないということが分かった(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 「この飛行船には、今わかっている範囲だけでも、我々の理解の及ばない、『未知』の技術がふんだんに使われているそうだ。

 調査報告書の説明に来た者たちの話によれば、現代の科学技術では、似たようなものは作れるかもしれんが、コイツと同等の性能を持つ飛行船の建造は不可能だそうだ。

 そもそもコイツが、何の力で浮いてるのかすら見当がつかないらしい。

 少なくともヘリウムガスや水素ガスではないことは確からしいが」

 

 「まぁコイツが従来の飛行船のセオリー通り、大気より軽い浮揚ガスの力で浮揚している仮定して……、あれだけの誘導弾と装甲を搭載してなお浮き続けることのできる浮揚ガスて何?ていう話やしな。

しかも空中でホバリング、というより静止できる以上、揚力で飛んでるわけでもない。

 ということは、この飛行船は我々の知らない『未知』の浮揚ガス、または飛行原理を駆使して、浮かんでいることになるわなぁ………。

 ……というか、これホントに飛行船か?」

 

 「一応、飛行船の歴史に詳しい教授によれば、かつての硬式飛行船の主流だった『ツェッペリン飛行船』の系譜を随所に感じられるそうだ。………系譜が感じられるだけで何がどうなってこう(・・)なったのかは不明だそうだが」

 

 「そりゃあ、硬式飛行船なんて第二次世界大戦前から既に廃れつつあったそれが、半世紀の時を経て、ミサイル艦ならぬミサイル飛行船どころか、並みのイージス艦の処理能力を上回る、イージス飛行船に進化して帰ってきたって言われても、意味分からんわな……。

 あげくの果てに、最後の姿を消したテレポートみたいなやつと、この飛行船の艦娘疑惑やろ?

 いくら何でも盛り過ぎとちゃう?

 最早、どこから手を付けていいか分からんぞ」

 

 

 ちなみに他の報告書よりも先にこの報告書が届いたのも、調査が難航する以前に、現状持ちうる情報からでは、調べることのできる箇所がほとんど無かったからである

 

 ちなみに余談ではあるが、この飛行船の調査をすることになったチームは現在、寝食すらも忘れてこの飛行船の分析に没頭していた。

 ただでさえ、機械生命体である深海棲艦と、オカルトに片足を突っ込んだ艦娘により、科学技術の万能性が揺らいでいるのだ。

 そんな彼らにとって、これ以上の敗北は看過しがたいようである。

 

 

 「ホント……、なんやコイツらは」

 

 

 橋本少将は、そのあまりの意味不明さにそう言いながら天を仰いた。

 

 当初の海上自衛隊、東南アジア連合軍の見立て―――『陸戦兵力を乗せた艦娘を含んだ空母機動部隊』は大外れだった。

 

 そしてジャワ島防衛作戦中に立てた予想―――『他国の開発した新型兵器を、実戦にて試験運用する極秘部隊』とも、もはや思ってはいない。

 ジャワ島防衛作戦時にとった行動と、そして実際にミレニアムの飛行船の艦娘と名乗る男と会話した、大鳳と赤城からの聞き取り調査からも分かる。

 

 あれは戦争という行為自体に楽しみを見出しているような、まごう事なき戦争狂。

 どこまでも刹那的で、どうしようもなく享楽的なイカれた集団だろう。

 もちろんそれは、あの男の部隊だけである可能性もあるが、少なくとも国に忠を尽くし、重要な兵器の試験運用を任せられるほどの、お行儀のいい連中ではない。

 

 

 「……自称飛行船の艦娘と名乗る男の言葉に嘘が無いと仮定するなら、ミレニアムというのが奴等の組織の名前だろう。

 ラストバタリオンは………それの実働部隊名といった所か。」

 

 「ミレニアム………千年王国ねぇ。そっちには心当たりはないが……。

 しかし………ラストバタリオン、か。

 ………やっぱ最後の大隊(ラスト・バタリオン)っていったら……あの(・・)?」

 

 「………まあ、ナチスにハーケンクロイツと来たらあれ(・・)と無関係ではないだろうな」

 

 

 二人は、同じ心当たりについて(・・・・・・・・・・)考えていると分かると、揃ってため息をついた。

 

 

 ―――真のハーケンクロイツの日にラストバタリオンは姿を表し、ユダヤを倒し世界を支配する。そしてナチスは蘇る。

 

 

  第二次世界末期の1945年、米ソの手が首都ベルリンのすぐ近くまで伸び、敗色濃厚だったナチスドイツにおいて。

 ナチス・ドイツの総統にして、ナチス政権の最高指導者アドルフ・ヒトラーが演説においてその存在を口にした謎の戦闘集団―――letzte Bataillon(ラストバタリオン)

 別名、最後の大隊、または最後の最大の大隊。

 

 その詳細は一切不明。ドイツ国防軍や武装親衛隊の部隊名にも一切記録のない、ヒトラーだけが存在を仄めかす謎の軍隊である。

 もちろん、あのヒトラーが口にしたということもあり、戦後アメリカとソ連がそれについての調査を行ったらしいが、結局何一つ実在したという証拠は見つからず、結局ただのホラ話として処理された。

 たが、この者たちが残した痕跡、そしてその名は、ただの偶然では片づけられないほどの一致を見せている。

 

 

 「……実際、ドイツ敗戦直後の混乱に紛れ、武装親衛隊や国防軍、ナチスの党員などの一部が、『オデッサ』や様々な秘密機関の手を借りて、多数の親ドイツ国家郡があった南米へ逃れたという話もある」

 

 「そのナチスの残党共が集まって作ったのがミレニア厶。

 ヒトラーの言う、ラストバタリオンの正体ってか?

 ……そして、あの一連の『未知』の技術も、そのミレニアムと合流したナチの科学者共により生み出された産物と?

 スジは通らんこともないが………、随分無理矢理やな?

 まぁ仮にそうだとして、なんでそいつ等が今になって動き出す?

 しかも、ナチと一切関係ない、しかも拠点にしているであろう南米から最も遠い東南アジアで。

 まさかホントに伍長閣下の言う、真のハーケンクロイツの日が来たからってわけではないやろ」

 

 「深海棲艦に南米のねぐらを追われ、偶然ここまで来たのか。

 それとも何か目的があるのか、まだ分からん。

 ……だか、わざわざ東南アジア連合内に『内通者』を作っていた以上、東南アジア自体に用があるのは確実だろう」

 

 「ええい、ただでさえ、深海の屑の処分で忙しいってのに厄介な……」

 

 

 そう言って苛立たし気に頭をかいた橋本少将であるが、深呼吸をして気分を切り替えると、ミレニアムへの対策について話し始めた。

 

 

 「まぁミレニアムが何の目的でこの東南アジア戦線に現れたのかは知らんが……今回の一件で自身と繋がる『内通者』の存在が暴かれつつある今、そうそう迂闊に動かれへんやろ」

 

 「だか動きにくくなったとはいえ、それは情勢的にだ。

 奴らに物理的な制限はない以上、ミレニアム自体は動こうと思えばいつでも動ける。

 我々に攻撃を仕掛けることも含めてな」

 

 「結局、ミレニアムへの対策は必須ということか……。

 なら直近の対策として……対空監視の強化か?

 あの意味分からんテレポートみたいな手段で侵入されたらほとんど無意味やろうけど、それでも現れて直ぐに見つけることが出来れば、多少はマシやろ」

 

 「そうだな」

 

 「その他には……捜索かねぇ」

 

 「ん?何の?ミレニアムのか?」

 

 「いやいや何言うてんの、どっかにミレニアムに拉致されバッタの改造人間にされてしまった若き科学者が、人間の自由と尊厳を守るために日夜一人で怪人と戦ってるかも――――」

 

 「〇面ライダーじゃねえか」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 今後の方針を話し合っていた橋本少将が帰り、再び静寂の訪れた執務室内で。

 東条少将は、一人、すっかり冷めてしまったコーヒーを手に、考えを巡らせていた。

 

 橋本少将の睨んだ通り、レジェス大将の政敵たちによる査問委員会から始まった、この一連の騒動は東条少将が仕組んだものだ。

 

『英雄』の席と、政敵たちの抹殺を対価に、レジェス大将を味方に引き入れた東条少将は、ジャワ島防衛作戦の裏で集めた『内通者』の情報と物的証拠を利用し、レジェス大将の政敵たちをミレニアムへの『協力者』に仕立て上げ、真の目的を偽る事で、おおよそ当初の計画通り(・・・・・・・)ミレニアム拿捕の失敗による劣勢をひっくり返し、作戦遂行の為に行なった各種裏工作の痕跡をもみ消す成功していた。

 

 東条少将の、ありとあらゆる状況を『想定』して組まれた綿密な戦争計画。

 そして、ありとあらゆる状況を『想定』して組まれた計画である以上、彼の『想定』という手のひらから抜け出た―――『負けた』場合の計画も含まれていないわけがない。

 

 いつもであれば計画はされているものの、常に勝ち続けるがゆえに、日の目を見ることのなかったそれらはではあったが、彼にとって初めての『想定外』、勝ち続けた彼の戦争での初めて『敗北』に際し、初めて役割を与えられ、彼の『想定』通り、表面上問題なく機能した。

 

 だが、万事順調に推移しているように見える東条少将の戦争計画も、その全てが上手くいっているわけではなかった。

 

 

 「……ここまで、手を加える必要に迫られるとはな」

 

 

 東条少将は険しい表情を浮かべながら、そう呟いた。

 

 そう、問題なく機能しているのは表面上だけ。

 本来であれば、ありとあらゆる状況を『想定』して組まれているがゆえに、僅かな軌道修正のみで問題ないはずの彼の戦争計画には、いくつもの綻びが出始めていた。

 

 まあそれも仕方ない事ではある。

 そもそもこの戦争計画を立てたのは、ジャワ島防衛作戦より前、まだミレニアムの正体が明らかになっていなかった時だ。

 必然的に、彼の戦争計画は『既知(合理)』に基づいて立てられていた。

 その為にもはや計画自体が、ミレニアムから齎された『未知(不合理)』に対応出来なくなって来ていたのだ。

 

 東条少将がその都度手を加え、臨機応変に対応することで上手く回っていたものの、手を加えなければ、その綻びが亀裂となり、そして致命的な破綻をきたすまで、さほど時間は掛からなかっただろう。

 

 幸い、今回の事後処理を最後に、ジャワ島防衛作戦より前から進めていた東条少将の戦争計画は完遂することになる為に、計画の破綻を気にする必要はないものの、だからといって、戦争計画に綻びが出始めることになった原因まで、計画完遂と同時に消えてなくなってくれるわけではない。

 

 

 「……ミレニアム、そしてラスト・バタリオン、か」

 

 

 東条少将は、その原因に思考を巡らせた。

 

 ミレニアム―――最後の大隊(ラスト・バタリオン)

 

今回、ジャワ島防衛作戦初めて姿を現したその戦力は、こちらの想像をはるかに超えていた。

 

かの組織が開発したであろう従来の技術形体から大きく外れた、独自に進化していったとしか思えない異様な飛行船は、単艦で深海棲艦・空母機動部隊を航空部隊諸共、真正面から殲滅せしめ、それに付随する数々の『未知』の技術は、現代の科学技術による調査の手すら跳ねのけた。

 

東条少将が、ジャワ島防衛作戦に仕組んでいた『ミレニアム拿捕作戦』も、包囲された状況で忽然と姿を消すという『未知』の現象により失敗に終わり、真の目的である『戦力調査』も、手の内をある程度暴きはしたが、科学方面からの調査は『未知』に阻まれ、その全てを暴き出せたとは言い難く、戦争という行為自体に楽しみを見出すような刹那的で、享楽的な『不合理』な行動原理の為に動きを予想するのも難しい。

 

 

 「まさか、ここまでとはな……」

 

 

 ミレニアム『未知』の技術と、彼ら『不合理』な行動原理。

 『未知』と『不合理』の象徴ともいえるそれは、何処までも『既知』と『合理』の範囲から逸脱し、こちらの対処を難しくさせる。

 しかし―――

 

 

 「だが……完全無欠というわけではないようだ」

 

 

 東条少将は、机の引き出しから『内通者』の書かれた書類に視線を落とした。

 

 ミレニアムが東南アジア連合の上層部に、自身と繋がる『内通者』を複数用意することに、どんな意図があったのか定かではない。

 東南アジア連合の動向を正確に知りたかったのか、それとも別の理由があるのか。

 だが、その理由自体はさして重要ではない。

 

 この際、ミレニアムが何の目的で『内通者』用意したのかは重要ではないのだ。

 ミレニアムが『内通者』という手段を取ったという事こそが重要なのだ。

 

 そう、彼らミレニアムが真に『未知』と『不合理』の象徴であるならば、わざわざ東南アジア連合内に『内通者』を作る必要はない。

 誰にも理解の及ばない『未知』の力を振りかざし、自身の気の赴くままに好き勝手に、それこそ神のように『不合理』に暴れ回ればいいのだから。

 

 にもかかわらず、彼らは『内通者』という手段を取った。

 

 『未知』と『不合理』の象徴であるはずのミレニアムが。

 戦争という行為自体に楽しみを見出すような刹那的で、享楽的な集団である彼らが。 

 『既知』で『合理』な手段の極地ともいえる『内通者』という手を取り、しかもわざわざ東南アジア連合の上層部に複数用意するという手間暇をかけたのだ。

 

 それはミレニアムが未だ『既知』と『合理』の軛から完全には脱しきれてはいないことの証左である。

 

 ならば問題はない。

 ミレニアムの『未知』と『不合理』が、『既知』と『合理』の直線上にあるのならば。

真に『未知』と『不合理』の象徴でないのであれば。

 

 いくらでも付け入るスキはある。

 その為にわざわざ『内通者』の特定に繋がる直接的な情報がぼかされた(・・・・・)書類をレジェス大将に渡したのだら。

 

 東条少将が机の引き出しから取り出した『内通者』の書かれた書類は、レジェス大将に渡したそれとは大きく異なっており、東南アジア連合の上層部に存在する ミレニアムと繋がる複数の『内通者』(・・・)の名前が書かれていた(・・・・・・・・・・)

 

 もし『内通者』の特定に繋がる直接的情報がぼかされた書類ではなく、こちらの方の書類をレジェス大将に渡していたのならば、『内通者』を素早く的確に捕まえることが出来ただろう。

 だがそれでは意味がない(・・・・・・・・・・・)

 

 『内通者』は、言うなれば『既知(合理)』と、ミレニアムの『未知(不合理)』とを繋ぐ架け橋だ。

 

 『既知』と『合理』の住人である東南アジア連合内の上層部を、『未知』と『不合理』の存在であるミレニアムは何らかの理由で『内通者』として欲した。

 そしてその理由は定かではないものの、わざわざ東南アジア連合内の上層部に狙いを絞って『内通者』を作った以上、彼らが欲しているのは人ではなく、その立場であることは明らかだ。

 であるならば、『内通者』に危機が訪れた場合、彼らは動かざるを得ない。

 自身の少なくないリソースを割いてまで作り出した『内通者』を助けるために。

 そしてその為には、ミレニアムが欲した立場を持つ『内通者』を助けるためには、ミレニアム自身もその土俵(・・・・)に上がらざるをえないのだ。

 

 だからこそ、レジェス大将に渡した書類には『内通者』の特定に繋がる直接的な情報こそぼかされてはいるものの、調査を進めればいずれ発見できるように調整したのだ(・・・・・・・)

 その為に『内通者』と同じ立場になる『協力者』を先立って粛清し、その末路を見せつけたのだ。

 

 『内通者』たちが、真綿で首を締められるように、徐々に包囲網が狭まっていくことに危機感を覚えるように。

 自身の未来の姿ともいえる『協力者』の末路に恐怖し、『内通者』たちが必死でミレニアムへと救援を求めるようにと。

 

 そう、ミレニアムの動きを予想するのが難しいのであれば、ミレニアムから来てもらえばいい。

 

 東条少将とってはるかに与しやすく、読みやすい戦場

『未知』と『不合理』の通じない『既知』と『合理』のホームグラウンド。

 策謀と陰謀渦巻く、政治闘争の場へと。

 

 

 「さあ、第二ラウンドだ。ミレニアム」

 

 

 ―――『未知』なる存在は、『既知』の存在へと塗り替えられ。

 

 ―――かつての『不合理』は、今日の『合理』に置き換わっていく。

 

 

 であるのならば

 

 『既知』と『合理』の軛から完全には脱しきれてはいないのならば

 

 『未知』と『不合理』が、『既知』と『合理』の直線上にあるのならば

 

 

『未知』と『不合理』に座するミレニアムを、『既知』と『合理』の奈落へと引きずり墜としてやればいいだけのことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――同日 シンガポール 高級ホテル 会議室

 

 

 

 マレー半島の先端に位置する国家―――シンガポール。

 東南アジア連合の暫定政府が置かれ、日本のシーレーン防衛の要衝して重要視されているこの場所には、深海棲艦との絶滅戦争の最前線に近い場所に位置しているにもかかわらず、ありとあらゆるヒトやモノが集まり、その繁栄を享受していた。

 

 そしてその首都、歓楽街の中心部にあるホテル。

一泊するだけでも一般的なシンガポール市民の年収ほどもあるその最高級ホテルにある会議室には、身なりの良い男達が集まっていた。

 

 十数人もの男達が集まってもなお、息苦しさを全く感じさせないほどの広さを持つ豪奢な会議室で、重厚な長机を挟んで別れ、向かい合って座っている壮年の男達。

 その身に纏う雰囲気は正反対といってもよく、しかし互いに向ける感情は決して友好的なものでもなかった。

 

 入口より向かって右側、全体的に鋭利な刃物といった雰囲気を醸し出している者たちは、眼前に映る存在に対して、隠そうともしない侮蔑を。

 向かって左側、絡みつくような蜘蛛の巣を彷彿とさせる笑みを顔に貼り付ける者たちは、その瞳の奥にあらん限りの軽蔑を互いに向けていた。

 

 とても会議をするために集まったとは到底思えない、それどころか会議という名の殴り合いさえ始まろうかという、一触即発と言っても差し支えのないほどの危険な空気ではあるものの、しかし不思議なことに、その火ぶたは切られることなく、まるで誰かを待っているかのように両者共に黙し、その場を動こうとはしなかった。

 

 両者の無言の睨み合いが続いて幾ばくか、両者のそれぞれの代表と思しき二人に、SPが近づき小さく耳打ちする。

 代表と思しき二人が軽くうなずき、そしてそれの意味を即座に理解した他の者たちは、その視線を会議室の入口へと向けた。

 

 会議室の掛け時計の秒針が嫌に響き渡る中、会議室の外から聞こえてくる複数の足音は次第に大きくなっていき、会議室の入口付近に控えていたSP達が扉を開け放てば、そこには三つの人影が見えた。

 

 中心に立つ人影の左右を固める、黒いスーツを身に纏った、大きなジュラルミンケースを手に持つ二人の男。

 おそらくは護衛だろうその二人の身体は、対人警護を専門とする男達のSP達と比較してもなお、遜色なく鍛え上げられており、そしてその身のこなしからも、二人が戦いにおける一線級の兵士であることが伺える。 

 

 だがその護衛と思わしき二人に挟まれて立つ小さな人影。

 

 その彼女(・・)はこの会議室の場において、明らかに異彩を放っていた。

 

 真銀の長く美しい髪をゆるやかに巻いた、群青色のドレスを着る17歳くらい少女。

 その容姿は恐ろしいほどに整っており、そのドレスとも相まって、最高級のビスクドールを彷彿とさせた。

 

 ここがホテルであることを考えれば、社交場に招かれたお偉方の令嬢のように見える少女がいることに、さほど違和感はないが。

 腹に一物抱えた、一癖も二癖もありそうな男達が揃うこの場のおいては、明らかな異物でしかない。

 

 たが、入ってくる場所を間違えたとしか思えない、場違いでしかないこの少女をつまみ出すものは誰もいなかった。

 いや、それどころか左右に立つ二人を完全に無視して、この可憐な少女のみを見据える男達の瞳に、侮りや油断の色など一切なかった。

 そう、この場において誰よりも幼く、非力見えるこの少女こそが、男達が待ちわびていた存在であり、そして誰もが会議に参加する資格のある、自分達と対等な、油断の出来ないプレイヤーとして見ているのだ。

 

 その中身を探るような無数の視線。大の大人でも怯みそうな圧の伴った視線が集まってもなお、その少女は柔らかい微笑みを崩すことはない。

 そしてその少女は、会議室を見渡し、一つ頷くと鈴を転がすような声を上げた。

 

 

「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

 

 

 まるで会議の主催者であるかのように口上を述べ始めた少女であるが、そのことに不満の声を上げる者はいない。

 

 

 「さて、先の会議にて皆様方には、計画の前倒しについて賛同いただけたかと思いますが、昨今の状況を鑑みるに……、向こうには中々優秀な参謀(・・)がいらっしゃるようで。

 さらなる計画の前倒しと共に、新たな手を打たざるを得ないことは、賢明な皆様には必ずや(・・・)御理解いただけると信じております」

 

 

 下手に出ているようでいて、その実、端から同意以外を求めてはいないその少女の言葉に、何人かの男達が殺意の籠もった視線を向けはしたものの、それでもこの場に否定を示す者はいなかった。

 その様子に満足げに頷いた少女は、自身の左右に立つ二人に目を向ける。

 

 その意味を正確に受け取った二人は、自身が手に持っていた大きなジュラルミンケースを長机の上に置きその蓋を開け放った。

 

 その中に納まっていたのは、大量の書類。

 

 男達のSPの手も借りながら、全員に書類が行き渡った事を確認すると、少女は本当の意味での議会の開始の宣言をした。

 

 

 「では始めましょうか。我々の戦争を」

 

 

 

 

 

 




 レジェス「いくらワイの政敵だったとはいえ、可哀想やない?」
 
 東条 「先に仕掛けたのは向こうだからセーフ」(なお予想済み)

 レジェス「せやな!」

この物語のほとんどの登場人物はクズ、外道、狂人で構成されています



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