空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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第3話 話し合い

 「ううぅ、起きたら、なぜか頬が痛いし、頭が痛い……」

 「セラス・ビクトリアから受けた攻撃の後遺症だろうな」

 (平然とごまかしましたなー)

 

 U-890を叩き起こしたマキナと副艦長は、今の状況の整理をするため、U-890を伴ってマキナ側の操舵室に移動していた。

 そして操船を副艦長に任せ、中央にある大きなテーブルを囲って話し合いを

していた。

 

 「さて、U-890。さっそくで悪いが俺が誰か分かるか?」

 「え、えっと、ミレニアム空中艦隊旗艦ーDeus ex machina(デウス・ウクス・マキナ)さんですよね?」

 「そうだ。長いからマキナでいい」

 「了解です、マキナさん。ところで、一体どうなっているんですか?

 あの記憶は……」

 「お前もあの記憶を見たんだな?まぁ待て。今の状況の説明をしてやるから。といってもこっちも分かっていることも少ないがな」

 

 そこでマキナはお互いが見た記憶に差異がないかどうかの確認と、今分かっている範囲内で状況を説明していった。

 

 

 

 「侵略を始めた『深海棲艦』と呼ばれる者達と、その対抗策である

『艦娘』ですか……」

 「もしかしたら、平行世界から飛ばされたのかもな。

 まだ確証も何もあったもんじゃねーが。

 というかはっきり言えば今は遭難しているという事の方が深刻だ。

 とりあえず陸地を見つける事が最優先だな」

 

 話の途中から、妖精さんに持ってこさせていた、バンホーテンのココアとクッキーを二人で味わいながら、艦娘としての体を得てからの初めての飲食を堪能しながら

今後の方針について話し合いをしていた。

 

 「……仮にあの記憶が事実だったとして、マキナさんはどうします?

どちらの陣営で戦争をします?」

  「んー、まだ何もわからないに等しい有様だからな。情報を集めてから

吟味しよう」

 

 当然のごとく、戦争に参加することを前提に質問をするU-890と、それに対し、平然と答えを返すマキナ。

 彼らにとって、これほどに楽しそうな戦争に参加せず静観するという選択肢は最初から存在しない。

 そして、人類側に味方する必要もないと考えていた。

 少しでも長く戦争の歓喜を味わえるように。

 このためならば、深海棲艦側に立って戦争することも厭わないし、第三勢力を作り出すことも考慮に入れていた。

 ある意味でミレニアムの思想を正しく受け継いだ二人の狂った話し合いは

続いていく。

 

 

 

 

 

――――1999年5月3日 AM:12;00

 

 

 

 北に向けて飛行を始めてから約四時間。太陽が完全に真上に昇りきった頃、対水上

レーダーに四つの船体の反応が現れた。

 そのことを感じとったマキナは大きく息を吐き、U-890にこのことを伝えた。

 

 「さてさて、こちら側の住人との初めての接触だ。無線で呼びかけろ」

 「どちら側ですかね?」

 「まだ分からん。だがすぐに敵対する必要もないだろう。

 何せこちらはほとんど情報がないからな。

 友好的ならば、そこから情報を集めてもいい」

 

 ひとまず簡単な方針を決め、操舵室の妖精さんに四隻の不明艦に対し、無線での呼びかけを行うようにに指示を出した。

 しかし、四隻の不明艦はこちらの呼びかけにも一切反応を示さず、マキナ側から

ギリギリ不明艦の船体が見える距離まで近づいてきていた。

 そして操舵室のスクリーンに四隻の不明艦の映像が映し出される。

 その映像を見た瞬間、マキナとU-890は同時に顔を顰めた。

 

 「………なんだ()()は」

 「………まぁ艦娘ではないでしょうね」

 

 スクリーンに映し出されていたのは、各国の船の船体、艤装を寄せ集めて一つに固めたような、船として完全に破綻している、鉄の塊だった。

 映像を見る限りでは乗組員などは一人も見えず

その船体にはは赤黒い血管のようなものが無数に張り巡らされていた。

 

 「十中八九、深海棲艦とかいう奴らだろうな…」

 「どうします?」

「無線が壊れている可能性もあるだろう。もう少し近づいてモールス信号でも

呼びかけろ。」

 

 モールス信号を送るため船体の高度を少しづつさげ不明艦に近づきながら

今度はマキナ自身が無線で呼びかけた。

 

 『こちらミレニアム所属 空中艦隊旗艦 空中戦艦Deus ex machina――――――』

 

 しかし、深海棲艦だと思われる四隻の船はこちらのモールス信号、無線での

呼びかけを完全に無視し輪形陣を組み、対空砲を打ち上げ始めた。

 今はまだ距離があるため、弾幕は当たりはしないが、完全に相手側がこちら側に対し

敵対行動を取ってきていることは明白である。

 それが分かると、マキナは頬は釣り上げ、狂喜の笑みを浮かべた。

 その横でU-890は楽しそうに声を弾ませながらでマキナに問いかけた。

 

 「こちらかの呼びかけを完全に無視し、あまつさえ対空弾幕まで打ち上げ

始めましたが、どうします?」

 「ハハハ!!!上等じゃないか!!!これよりミレニアムは不明艦と

戦闘状態に突入する!!!

 Ⅴ1改発射準備、目標不明艦!身の程知らずな奴らに、一発づつぶち込んでやれ!」

 

 マキナが不明艦との戦闘状態を宣言し攻撃命令を出すと同時に戦闘指揮所も兼ねた

操舵室は極限まで空気が張りつめ、副艦長以下、妖精さん達が慌ただしく動き出す。

 それと同時に飛行船の船体下部側面のハッチが四つ開き、中から飛行機のようなものが姿を現した。

 第二次世界大戦において大英帝国に対しドイツ第三帝国が使用した兵器。

巡航ミサイルの元となったⅤ1を改良した、Ⅴ1改である。

 

 『発射準備完了!』

 「feuer(発射)!!!」

 

 エンジンに火が点り、パルスエンジンからジェットエンジンに置換されたⅤ1改は

ジェットエンジン特有の甲高い音と大量の煙を巻き上げながら、四隻の目標に

向けて飛翔していった。

 不明艦側も高速で飛来してきているⅤ1改に気付き、撃ち落とそうと弾幕を張るものの

亜音速で向かってくる物体に対し、有効な対抗手段を持ち合わせておらず、

すべてのⅤ1改がそれぞれの艦中央部付近に命中。

 850㎏もの高性能炸薬が凶悪な熱と衝撃を生みだし、船体は内部から破裂するように、真っ二つに割け、火薬庫に引火したのであろう大規模な爆発を繰り返しながら、すべての船が海中の中に引きずり込まれていった。

 

 『四隻の不明艦の反応消失!』

 「ハッ!ザコどもがっ!」

 「うーん、それぞれの船から()()()者が一人も漂流していませんね」

 

 報告された結果に満足するマキナと、捕虜を獲得できなかったことを残念がるU-890。

 しばらく戦闘海域上空を飛行した後、進路を再度、北に向けその場から

離れていった。

 


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