Angel Beats! ―SCHOOL REVOLUTION― 作:伊東椋
ここは死んだ後の世界。
そう言われても、大半の人が納得できないことだろう。それが普通だからだ。
でも、あたしはあっさりと納得できた。
自分が死ぬ、その瞬間まで、体中でじわじわと感じていた感覚。そして、その感覚が徐々になくなっていく様。
それらの、自分が死ぬまでの過程をしっかりと身に焼きつくように覚えているから。
まだこれっぽっちの年数しかなかった人生でも、その間にあたしは父に連れられて色んな国を回り、普通の子には滅多に体験できないようなこともたくさん経験してきたし。
ああ、やっぱり私は死んだんだな。
ただ、そんな感想が漏れた。
でも、死後の世界というのも案外生きていた頃の世界と大して変わりないように見える。今まで色んな国を見てきたが、この雰囲気と静けさは、あたしの祖国が一番近い。
―――と、思いきや。
「天使出現! 現在交戦中ッ!」
「もっと引き寄せろッ! 総員、一斉射撃用意ッ!」
「巻きあげの予定はまだまだ先だッ! 出来るだけ持ちこたえろよッ!」
「新人ッ! お前の実力、見させてもらおうか」
……前言撤回、ここは私がよく父と共に訪れていた治安の悪い国にそっくりだ。
まぁ、むしろあたしにとってはこんな世界の方が、慣れているんだけど。
度重なる銃撃音、爆発音。無駄遣いと言うのも生易しいくらいの量で、たった一つの目標のために目一杯弾丸が集中、炸裂する。
だが、これだけの火力を一斉に浴びせても、目標は健在だった。その見かけによらない強固さはあまりにも異常だと言えるかもしれない。
一見、それが華奢な少女であるからこそ。
「……上等じゃない」
あたしの手元には、一丁の拳銃が握られている。生前、使い方を教えてもらい、馴染みがあったせいか、ここに来て最近の人間にしては、人並みの手法を心得ている。
さぁ、私も参加しよう。この笑ってしまうような、おかしな世界の戦いへと。
あたしにだって、未練はあるのだから。
―――このまま易々と、死んでたまるか。
あたしは一言、呟く。
「―――ゲーム、スタート!」
死後の世界での、あたしの戦いが幕を開けた瞬間だった。