俺が助けた彼女はもう死んだ   作:図らずも春山

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あとでなおす。いつかなおす。


優悟の出発前夜

「おいおいおい!ちょっと待てよ!」

 優悟は狼狽していた。

「まぁ、難しい問題だからな。ゆっくり時間を使っていいぞ」

「いや、そういう問題じゃなくて!」

「じゃあなんだと言うんだ」

「ここがどこかもわからないのに訳のわからない質問をされたら余計訳わかんなくなるっつってんだ!」

「あぁ、そういうことか…」

 管理人のおっさんはコホン、と咳払いをしてからいった。

「ここは平たくいえば第二の天国ってところかな」

「第二の天国…?」怪訝な顔で優悟は聞き返す。

 「そ。最近地球の人口が増えてきただろう?それで死ぬ人も増えて、天国がパンク状態になってしまっているんだ」

「なるへそ。それで天国に行くべき人はこっちに来るようになってんのか」

 優悟が口を挟むがおっさんはかぶりをふった。

「実は今のところ、死んだらどんな人でも地獄に行くようになっているんだ」

「なんで?どうして?その意味は?」

「地獄にいった地球人は地球の輪廻の輪から外されて他の世界の輪廻の輪に入れられるようになっている」

「じゃあ、地獄にいったらもう二度と地球に生まれてくることが出来なくなるのか?」

「そういうことになるな」

 優悟は恐怖におののいた。

「じゃあ結局ここは何する場所なんだ?」

「まぁそう急かすな。後で話すから」

「チッ…」

「何かいったかい?」

 おっさんが恐ろしいほどいい笑顔で聞いてきた。

「い、いえ」

「あ、そう?じゃあ続けるよ」

 そういって再びおっさんは話し始めた。

「そんなこんなで、死んだ人がみんな地獄にいってるから地獄までパンクしそうなんだ」

「そこで、ここの出番だ」

「おぉっ!ついにやってきましたか!」

「ここの目的は天国の早期復帰、それと拡大だ」

「そこでひとつ厄介な問題があるんだ」

「何?」

「人口減却計画だ」

「は?」

「人口減却計画だ」

「いや、その意味は?」

「人口がこのまま増える一方だといろんな問題がでてくる。ならいっそのこと強い奴が生き残り、弱い奴が死ぬようにして人口を減らしてしまおう、という計画だ」

 

                    ★

ここからはちょっとかいつまんで説明しよう。

 例の計画が地獄のパンクに繋がると考えたおっさんは、計画をぶっつぶすために死んだ人の中から未練たらたらの人を選らんでここに呼んだ。

 そいつらを現世に送りこみ計画を止めさせようと考えたのだ。

 ようするに生き返させる、ということだ。

 しかし生き返ったらいくつかの制約がでてくる。

 それは自分の未練の原因をなくしてしまうと、そいつはもう二度と復活することができなくなってしまうことだ。

 それ以外で死んでも十回ぐらいは生き返ることができる。それにいろんな【技】を使うことができる、というわけだ。

 

                      

 あれから少しして二時間ほどの説明会があった。

「はいちゅーもーく!」

 おっさんが声を張り上げる。すると口々におしゃべりをしていたみんながシン、とだまりこくった。

 ーーーその数、約200人。みんな再び地球へ送り込まれる人だ。年代も性別も別々な人たちだ。

 みんなが静かになったのを確認したおっさんはしゃべり始めた。

「えー、私ここの管理人をやっている者です。よろしくお願いします」

『おねがいしまーす』

「みなさんお手元の資料2の14ページをみてください。そこに書いてある通りに明日から早速地球に行ってもらいます」

 そして今一度みんなの顔を見渡すとおっさんはさらにつづけた。

「中にはこんな少ない人数で世界を救えるのか不安な人がいるかもしれません」

 …俺だ。優悟は密かに心の中で呟いた。

「でも大丈夫です。ここに集まっているのはごく一部に過ぎません」

 なん…だと…?優悟は戦慄した。もうすでにここにいる人の数より多くの人が死んでいるのかと。

「ですので今日はもうお休みなってください。部屋はさっき配った資料の中に部屋番号を書いた紙を入れといたので、それを見て確認してください」

 優悟はいわれた通りに番号の確認をした。

「4219…か」

 なんだかいやな番号だ。なんでこんな番号なんだ。ふざけんな。と文句をいいつつも仕方なく部屋を探す。

「ん…。ここか」

 これでやっとゆっくりできそうだ。優悟は割りと勢い良くドアを開けた。

「あなた、お帰り。お風呂にする?ご飯にする?それとも…」

 優悟は物凄い勢いでドアを閉めた。

 あれ?おかしいな?ここのはずなんだが…

 念のためにもう一度確認してみたが、やはり4219だった。

 今度はソロリと開けてみた。しかしやはり誰かいる。容姿は優悟と同じくらいの年つきの少女だ。服装は…メイド服という…その、なんていうか…マニアックな服装だ。向こうを向いているため顔はよく見えない。

 しかし優悟はその後ろ姿になんとなく見覚えがあった。

「あ、あのときの!」

 そう、その少女はあの時優悟が助けようとした少女だった。

 優悟の声に反応してその少女が振り向いた。ふわふわっとしたショートの髪の毛がゆさっとゆれる。

 その子は優悟の顔をみるやいなや優悟に抱きついてきた。

 そして彼女は言った。

「…会いたかった!」

 ちょっと待って。

 今どういう状況?

 

                       ◆

 

「私は月夜野 |楓«かえで»」

「は、はあ」

 優悟と少女は向かいあって座っていた。

「あなたは…?」

「成瀬 優悟…です」

「…優悟」

「は、はい…?」

「すごく会いたかった。会えて嬉しい」

 優悟は状況が飲み込めなくて動揺していた。

「ちょっ、ちょっと待って!」

「何?」

 少女は無表情のようなその顔を僅かに傾けた。

「君と俺って、その、全然面識ないじゃん?」

「死ぬ間際にあった」

「いや、そうかもしれないけど、無いに等しいじゃん?」

「…………。」

 少女は少しうつむいた。

「だからさ、なんで君が俺に会いたかったのかわかんないんだよね」

 少女は優悟と目をあわせる。優悟がたまらず下を向いたが、さほど気にしていないようだった。

それから言った。

「私はあなたに惚れたの」

「へっ?」

 数秒して、その言葉の意味を理解した優悟の顔が一気に赤くなった。

「え、えっ!えぇっ!?」

 優悟の反応を無視するかのように少女は続ける。

「でも私はあなたを死なせてしまった。でもまたこうしてあなたに会えた。だから嬉しい」

 

 もう何が何だかわからない優悟であった。

                    ◆

 しばらく耐えがたい沈黙が流れていた。それに耐えきれなくなった優悟は口を開いた。

「あー、月夜野さん?」

 彼女はまるで話しかけられるのを待っていたかのような早さで返事をした。

「楓でいい」

「あー、そのぉ、楓さんは何でメイド服を着ているんですか?」

ーーしまった!俺はなんてことをきいているんだ!!

 と、言った後に気づく優悟。

「…嫌い?」

「いや!そういうわけじゃなくて、その、なんでかなぁって」

「じいが“男の人は皆メイド服姿の女の子は憧れなんじゃ”って言ってたけれど」

 どんなじいさんだ。しかし優悟はあまりメイド服は好きではなかった。

「あの、着替えある?」

「うん」

 そういって彼女は袋から新しい服を取りだしその場で着替えようとした。「ちょっと待ってっ!」

「何?」

「悪いんだけど向こうに行って着替えてもらえないかな…?」

 さすがにここで着替えられるのはこまる。

「いや」

「あ、でも…」

「いや」

 優悟は時計を見た。10時39分だった。

「あーもうこんな時間かぁ。明日は早いからもう寝ないとなー。」

 わざとらしくそう言って備えつけのベッドに向かった。…否、向かおうとした。

「待って」

 楓が優悟の手をつかむ。それは少しひんやりしていて不覚にも優悟はドキッとしてしまった。

「…一緒に寝よう」

「はいッ!?それはさすがに…」

 ふと、優悟の脳裏に今朝のシーンがプレイバッグされた。

 その時は彼女と裸でベッドに…

 再び優悟の顔が赤くなった。

「…いいでしょ?」

 優悟はあとずさった。しかし彼女はその距離をうめてくる。

「い、いや…」

 ついに優悟は壁際に追い詰められてしまった。楓が優悟の後ろの壁に両手をつけ、さらに身を寄せてきた。

「…一緒に寝よう?」

 ーー頼む!誰か、誰か、助けてくれ!

 その時、ドアが勢いよく開かれた。

「やっほー!よろしくルームメイトさん!」

 一瞬にしてその場の空気が凍り付いた。

「…失礼しました~…」

 優しくドアが閉められる。

 助けを求めたことを激しく後悔する優悟だった。

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