「もう我慢出来ん。俺様は十分待った。少なくとも、ダンブルドアへの義理立ては済んだはずだ。もう文句はないだろう」
テストを間近に控えたある日、バーソロミューがもう我慢出来ないという様子で言った。
流石にダンブルドアも待たせ過ぎだと思ったので、レイブンクローも特に反対はしなかった。なんせ、テストが終われば後は一週間ほどで学校は終わってしまうのだ。いかにお人好しのレイブンクローと言えど、ダンブルドアは約束を守る気がないのではないだろうかと思い始めていた。
今日はダンブルドアがクィレルの裁判で学校に居ないので、バーソロミューはこれから『賢者の石』を取りに行く事にした
「アン、メアリー。誰もここを通すな。ただし、殺しは無しだ」
「「畏まりました」」
バーソロミューはアンとメアリーに仕掛け扉を守らせた。その後、ホグワーツで唯一『姿あらわし』が出来るダンブルドア用に『転移不可呪文』をかけた
「『ルーモス 光よ』。ふむ、『悪魔の罠』か」
光で下を照らしてみると、巨大なツタ植物がびっしりと生えていた。どうやら、フラッフィー以外の守りは今も健在の様だった。
このツタ植物は『悪魔の罠』と呼ばれる闇の植物で、不用意に近づけばあっという間に絡め取られてしまう。
その根源は植物というより、むしろ闇の生き物に近い。なので暗黒と湿気を好み、光と火を嫌う
「『ルーモス・インセンディオ エイビス エンゴージオ 雄大な
バーソロミューは、まだ不完全の代物だが、『
「メアリー、トランクをよこせ」
バーソロミューが命じると、メアリーは恭しく古い大きな木製のトランクを手渡した。バーソロミューはそれを担ぐと、躊躇うことなく仕掛け扉の中へと飛び込んだ
「『アレスト・モメンタム 動きよ止まれ』」
下の部屋は何キロも下にあったが、バーソロミューは動きを止める呪文を使い無事に着地した。目の前には奥へと続く石の一本道。
周りはジトジト湿っていたが、バーソロミューは濡れるのもお構いなしにずんずんと進んでいった。やがて通路を出ると、そこには眩く輝く部屋が広がっていた。
高いアーチ型の天井には『鍵虫鳥』と呼ばれる、鍵の形をした鳥がキラキラと無数に羽ばたいていた。
部屋の最奥には分厚い木の扉があり、どうやらこの扉に合うたった一羽の『鍵虫鳥』を見つけるのがこの部屋の試練の様だ
「鍵か、ならば『アロホモーラ 開け』」
一応試してみたが、やはり鍵は開かない
「……よし、レイブンクロー。扉の中に入って鍵の穴の形を見て来い」
『分かりました』
バーソロミューの意図を理解したレイブンクローは扉の中に頭を突っ込んだ。そして十秒ほど鍵穴の内部構造を見ると、頭を引き抜いた。その後バーソロミューがレイブンクローのコメカミに杖を当て、白いモヤの様なものを取り出した。
バーソロミューはその白いモヤの様なものを頭の中に入れると、物凄い勢いで羊皮紙に何か書き出した。そして書き上げた羊皮紙の上に、トランクから出した銀の塊を置いた。
バーソロミューが指を鳴らすと羊皮紙は光り、次の瞬間には鍵になっていた。その鍵を鍵穴に入れて回すと、ガチャリという音と共に扉が開いた。
先ほどの白いモヤの様なものは、レイブンクローの記憶だ。バーソロミューは彼女が鍵を見ていた部分の記憶を抜き出し、自分の中に入れた。そしてその記憶をたよりに、新たな鍵を作成したのだ
「一応、持っていくか」
バーソロミューは銀の鍵をポケットに入れ、次の部屋へと進んだ。何の魔力も篭っていない代物だが、万が一にもこの鍵から自分がここに侵入したことが発覚するかもしれないからだ。
次の部屋の試練はチェスだった。大きなチェス盤と、それにふさわしい大きな駒が並べられており、バーソロミューは黒い駒の側に立っていた
「魔法使いのチェスか。クソほど簡単だな」
絶対の記憶を持つバーソロミューにとって、決められた通りしかないチェスは、丸ばつゲームと大差なかった
✳︎ ✳︎ ✳︎
バーソロミューとレイブンクローが『賢者の石』を求めて最深部へと歩みを進めている一方、地上ではちょっとした騒ぎが起きていた。
クィレルを連行しに来たディメンターの影響で、禁じられた森の生物が暴れ出してしまったのだ。特にケンタウロスや
そこで白羽の矢が立ったのが、罰則を受ける予定のバーソロミュー・フラメルだった。バーソロミューを好いているハグリッドの強い要請もあって(ハグリッドは危険な魔法生物に会わせる事を微塵も危険だと思っていない。それどころか、フラッフィーに興味を示していた事もあってか、最高の罰則だと思っている)彼の罰則が禁じられた森の調査に決まった。
しかし、いざ罰則を受けさせようという時になって、肝心のバーソロミューがどこにも居なかったのだ。
そして今現在、現場を目撃した教師であるマクゴナガルと、担任であるフリットウィック、それからフィルチがバーソロミューを手分けして探していた
「先生、お話があるんです」
マクゴナガルがもぬけの殻だったレイブンクロー寮を出ると、ロン・ウィーズリーが息を切らせながら駆け寄ってきた
「なんです?」
マクゴナガルは冷たく言った
「重要な事なんです。バーソロミュー・フラメルの事です!」
ロンがそう言うと、マクゴナガルは急に話に真剣になった様だった
「あいつの狙いは『賢者の石』です。校長先生が居ない今、それを取りに行っています」
マクゴナガルは目に見えて激しく動揺した。
詳しくは知らなかったが、ダンブルドアが『賢者の石』とバーソロミューに関連しての事でここ数ヶ月悩んでいるのを知っていたのだ。
それに加え、この間の暴行事件。ちょうどバーソロミューの人格を疑っていたところだ。
その上、バーソロミューは人間性に多少の難があるが、魔法使いとしてはこれ以上ないほど優秀だ。自分達が仕掛けた罠を突破していても不思議ではない。それに、もう『賢者の石』を狙う者は居ないと思い、ここ最近は罠の手入れもしていなかった。
ロン・ウィーズリーの言葉を無下にするには、心当たりが多すぎた。しかし、しかしだ
「貴方がどこでそれを聞いたのかは分かりませんが、『賢者の石』は彼の祖父の物です。確かに今はダンブルドア先生の元にありますが、それを奪う様な真似はしないでしょう」
そう、『賢者の石』は彼の祖父であるニコラス・フラメルの物だ。しかし、ロンはその反論を予想していた
「あいつは家を追い出されてます!」
ロンの言葉に、今度こそマクゴナガルは反論の言葉がなくなった様だった。それどころか、『賢者の石』を狙っていたクィレル逮捕に協力してのは同業者を排除する為だったのか、とさえ思った。
そして一度疑ってしまえば、疑惑が確信に変わるのはすぐだった
「貴方は何処でアレの存在を知ったのですか?」
「ハリーと一緒に校長先生から聞きました」
「なるほど」
ダンブルドアはハリーを特別に気にかけている節があった。あの少年になら、『賢者の石』の事を話していても不思議ではなかった。
そしてハリー・ポッターとロン・ウィーズリーは親友だ。仮にハリーだけに話したとしても、すぐにロンに話してしまう事は容易に想像がついた。
きっとダンブルドアも自分と同じ結論に至り、二人に話したのだろうと思った
「では、ポッターはどうしたのです?」
「ハリーはクィディッチの練習をしてます。レイブンクローに負けたら、優勝を取り逃がしますから」
マクゴナガルはそれを聞いてすぐに黙った。後少しのところで、悲願の優勝を成し遂げる事が出来るのだ。ハリーがロンと別れて行動していたとしても、何も不思議ではなかった。
全ての疑問が消えたマクゴナガルは、バーソロミューを捕らえる為『賢者の石』がある部屋に向かった
✳︎ ✳︎ ✳︎
マクゴナガルがロンに説得されていたのと全く同じ頃、フリットウィックとハーマイオニーも全く同じ状況にあった。
ハーマイオニーはダンブルドアが居ない今日、遂にバーソロミューが『賢者の石』を取りに行ってしまうのだろうと思った。そして『賢者の石』を取ってしまったら、彼は学校を去ってしまうと予感していた。
ハーマイオニーは図書室で本を読むバーソロミューを観察していたが、ここ最近はとうとう読む本がなくなってしまっている様子だった。常に“未知”を追い求める彼の事、“未知”がホグワーツから無くなればここを去ってしまうとハーマイオニーは思ったのだ
「分かりました。それでは、確認してきましょう」
フリットウィックがキーキー声で言った。彼もマクゴナガルがロンに説得されたのと同じ様に、ハーマイオニーに説得されたのだ。
フリットウィックがハーマイオニーと共に『賢者の石』が置かれている部屋を目指していると、ドアの前でマクゴナガルとロンに出会った
「あら、フリットウィック先生」
「ああマクゴナガル先生、やはりそうなんですか?」
「どうやら、その様です」
フリットウィックは聡明なマクゴナガルが、バーソロミューが『賢者の石』を奪うのを阻止しに来たと聞いて、ハーマイオニーの話を益々信じた。
そしてマクゴナガルもまた、有能なフリットウィックがバーソロミューを止めに来たと聞いて、益々ロンの話を信じた。
「ハーマイオニー、君もあいつの邪魔をしに来たのかい?」
ロンが囁いた
「放っておいて」
ハーマイオニーがぴしゃりと言った。
ロンは一瞬怒り出しそうになったが、自分の使命を思い出しとどまった。
四人が部屋に入ると、中にはアンとメアリーが控えていた。フリットウィックやマクゴナガルを見ると、いつもにこやかに話しかけて来る二人だが、今日は何やら様子が違った
「どうしてお二人はここに?」
「お答え出来ません」
「あなた方がいるという事は、やはりフラメルは奥へ行ったのですか?」
「お答え出来ません」
二人の態度に、マクゴナガルが業を煮やし部屋に踏み込もうとした。しかしマクゴナガルが第一歩を踏み出すより早く、メアリーがナイフをマクゴナガルの足元に投げた
「そこより一歩でもこちらに来れば、敵対行動とみなします」
メアリーがナイフを指差しながら言った。いつ取り出しのか、もう片方の腕にはカットラスが握られている
「我々は殺しは許可されていないが、それ以外は許可されている。敵対するのであれば、痛い目にあってもらうゾ」
アンが口を三日月にしながら言った。彼女の両腕には1メートルほどあるマスケット銃が握られている。バーソロミューが居ないからか、口調がいつもよりも大分砕けたものになっている
「我々教師を脅すのですか?」
マクゴナガルの言葉に、アンとメアリーは困った様に顔を見合わせた
「これは困りましたね。脅しではなく、忠告の意味で申し上げたのですが……」
「クヒヒ!ハッキリ言っておくが、戦えば我々が勝つ。そう落胆するな。お前達が弱いのではなく、我々が強すぎるだけだ」
「私達はご主人様によって作られた、地球上で最も強い生物です。ご主人様が自ら設計された運動力学上最高効率の骨格に、アダマンタイトとヒヒイロカネで作られた骨。筋肉には狼人間になった吸血鬼の物を、血液には不死鳥の涙とドラゴンの血液を使用しております」
メアリーが腕を思いっきりカットラスで斬りつけた。しかし皮膚と筋肉は切断されたものの、骨には傷一つ付いていなかった。また斬りつけられた部分も、ものの数秒で完治した
「まあそういうことだ。これは脅しではなく、忠告だ。例えドラゴンを1ダース連れてきても、我々を突破する事は不可能だ」
「……なるほど、よく分かりました」
直感でだが、マクゴナガルはこの二人の言葉が嘘はないのだろうと思った。バーソロミューの祖父であるニコラスが『賢者の石』という最高傑作を作った様に、バーソロミューもまた『アンとメアリー』という最高傑作を作ったのだと、そう理解した
そう理解した上で、マクゴナガルは一歩を踏み出した
彼女は教師なのだ。相手がどれ程強くあろうと、生徒である以上、自分が間違っていると思ったのなら、正さなくてはならない。
マクゴナガルの信念に同調する様にフリットウィックが続いた。
フリットウィックが杖を振るうと、部屋にあった壁や床が宙に浮き、板や釘に細かく分解された。そしてマクゴナガルが杖を振るうと板は大盾に、釘は大剣へと変わった。
続いてマクゴナガルが杖を踊らせると大楯と大剣から羽が生え、自由に飛び始めた。更にフリットウィックが杖をクルリと回すと、何処からともなく銀の兵が出現し、大楯と大剣を手に構えた
「凄い……」
ハーマイオニーが感嘆の声を上げた。
それもそのはず。今マクゴナガルが使った、質量保存の法則を捻じ曲げる『巨大化の術』や、フリットウィックが使った無機物に生を与える『創生の術』は、『変身術』や『呪文術』の頂点と言っても良い技なのだ。
しかしアンとメアリーはそんな大魔法を目の前にしながら、それでも尚駄々をこねる子供を見る様な顔をした
「はあ、仕方がありませんね。分かっていただけないのであれば、実力行使のほかありません」
「手早く済ませて、ご主人様がお戻りになる前に壊れた床と壁を直さなきゃな」
アンとメアリーは銀の兵達へと駆け出した
✳︎ ✳︎ ✳︎
「アンとメアリーが教師達と戦闘になった様だ」
アンとメアリーから送られてきた音声を聞きながら、バーソロミューは言った
『では早く『賢者の石』を手に入れて援護に行きましょう』
「言っておくが、あの二人は俺様より強いぞ」
アンとメアリーという切り札が使えなくなったことにほんの少しの不安を覚えながら最後の部屋に入ると、拍子抜けした事に、ただそこにポツンと鏡があるだけだった。
バーソロミューはすぐにそれが『みぞの鏡』である事を察した。またどの様に『賢者の石』が隠されているのかも理解した
『この鏡、何処かで見た様な……』
レイブンクローが何かぶつぶつと呟いたが、バーソロミューは焦った様に無視して、急いで鏡の前に立った。
鏡にはレイブンクローは映っておらず、バーソロミューがただ一人で立っていた。やがて鏡の中のバーソロミューは不機嫌そうな顔を引っ込め、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
鏡の中のバーソロミューは右手をポケットの中に突っ込んだ。そして、中から血の様に赤い石──『賢者の石』を取り出し、再びポケットの中に入れた。
すると、途端にバーソロミューのポケットの中に重みが出来た。鏡の外のバーソロミューがポケットに手を入れると、そこにはしっかりと『賢者の石』が握られていた
「ようやく、ようやく手に入れた」
バーソロミューは初めて安堵した顔を見せた。そして急いで地上に戻ろうと踵を返した瞬間、何かが横切った
『そんな!』
レイブンクローが鋭く叫んだ。
バーソロミューがレイブンクローが見ている方を見ると、レイブンクローの娘であるヘレナ・レイブンクローが『賢者の石』を握りしめていた。
本来なら石を奪われる様なミスはしないが、“不運”にもバーソロミューは石を手に入れた達成感から油断してしまっていた
『お久しぶりですね、お母様』
『へ、ヘレナ?!ほ、本当にヘレナなのですか?何のつもりでこんな……それに、どうしてここに居るのですか!?』
訳が分からないと叫ぶレイブンクローに、娘のヘレナは怒りの表情を見せた
『とぼけてないで!またそうやって私が何も知らないと思って……私、知ってるのよ!お母様が私に復讐するために来てることを!“あの人”から全部聞いたの!』
レイブンクローはヘレナの言葉に大きな衝撃を受けた様だった。自分の元を離れた娘だが、心の何処かで信じていた部分があったのだろう。
しかし今、きっぱりと拒絶されたのだ
『私が
ヘレナは見せつける様に
『声が聞こえたの。呼んでいたのです、私の名前を『ヘレナ、ヘレナ』と。暖かな声でした。最初は何処から聞こえたのか分からなかった。けれど導かれる様に校長室に行くと、そこにはこれが、“あの人”がいた。そして昔に私を裏切った事には意味があったことや、お母様の事や、バーソロミュー・フラメルの事を教えてくれたのです』
ヘレナはうっとりした顔を浮かべながら言った。そして次の瞬間には、鬼の様な形相になりバーソロミューを睨みつけた
『バーソロミュー・フラメル、貴方の目的は分かってる!お前に“あの人”は殺させない!』
そう言うや否や、ヘレナは『賢者の石』を『火消しライター』のくぼみにはめ込んだ。それがどういう意味なのか察したバーソロミューは、怒りに震えながら叫んだ
「貴様ァ!それ以上は許さんぞ!」
『ふふっ、いい気味ね』
それを見たヘレナは愉悦の笑みを浮かべた
『これも全て、貴方が捨てた“幸運”のおかげよ』
ヘレナが取り出したのは空ビンだった。
絶対の記憶を持つバーソロミューは、それが自分が適当に置き去りにした、全ての企みが上手くいく薬、『フェリックス・フェリシス』のビンだと気付いた
『これとお母様の髪飾りのお陰で、私と“あの人”の企みは全て上手くいったわ』
『ああ、どうして…ヘレナ……』
次にヘレナが取り出したのは、レイブンクローの失われた髪飾りだった。それを見たレイブンクローは、呆然とした顔で涙を流した。
レイブンクローは生前、ヘレナの裏切りをホグワーツの他の創始者達にさえ秘密にした。ヘレナが帰ってきたとき、また居場所がある様に、と。
そして病に伏せる中、娘にもう一度だけでも会いたいと願いながら、娘も同じ気持ちだろうと信じながら、ゆっくりと息絶えて行った
『お母様の髪飾りは私に素晴らしい知恵を授けてくれました。告白しましょう、私は愉悦に浸りました。偉大はお母様を出し抜き、髪飾りを手した事に。賢いお母様に近づいた事に、深い愉悦を覚えたのです』
レイブンクローは絶望に打ちひしがれ、とうとう立てなくなってしまった
『そしてそれだけでなく、髪飾りを寝ているウィーズリーの子孫に着けさせ、頭脳を冴え渡らせることで貴方たちの足を引っ張る様仕向けられました』
ヘレナは心底楽しそうに言った
『そして最後に、『フェリックス・フェリシス』のお陰で私と“あの人”の『賢者の石』を手に入れる事が出来ました』
うっとりした表情で『賢者の石』と『火消しライター』を見つめた。やがて、『賢者の石』が埋め込まれた『火消しライター』を使おうと、ゆっくり指を動かした
「それは貴様と“ヤツ”のモノではない、俺様の物だ!さあ、返して貰おうか!」
バーソロミューが目に止まらぬ動きで杖を抜き取り、ヘレナを成仏させようと魔力を“神聖属性”のモノへと変えた。
しかし──
『ま、待ってください!』
「レイブンクロー!貴様、自分が何をしているのか分かっているのか!今止められなかったらマズイことなるぞ!」
しかしそれより早く、とっさにレイブンクローがバーソロミューの魔力を、今まで散々自分が受けてきた“吸魂鬼”のモノへと変えてしまった
カチリ
『火消しライター』が静かに鳴り、青白い光が飛び出した。
光はふわふわと浮遊すると、やがて人の形となった
『おかえりなさい、トム!』
ヘレナは満面の笑みで“あの人”──『闇の帝王』トム・リドルに抱きついた
『えっ?』
トム・リドルはニッコリとヘレナに微笑みかけると──ヘレナの胸に手を突っ込んだ
『と、トム?どうして……?』
「君の協力には感謝してるよ、とてもね。究極の物質『賢者の石』で作られた肉体。今世紀最高の魔法使いお手製の『火消しライター』で蘇らせた精神、最高だよ。でも、僕が完全に復活するにはもう一つの要素、魂が足らないんだ。そこで、ホグワーツ創始者の子孫である君の強力な魂を貰おうと思ってね」
『そ、そんな。私は貴方をあ、愛してたのに──』
トム・リドルが腕に力を込めると、ヘレナは光の粒子となって消えた。トム・リドルの手には光る白い玉の様なものが握られていた。
それを自身の中に入れると、それまでゴーストの様に薄かった彼の体が人間の様に濃くなった
「よし、これで『闇の帝王』の完全復活だ」
トム・リドルは爽やかに言った
『お前ええええぇぇぇええ!!!』
それを見たレイブンクローは激昂した。目からは涙が止めどなく流れ、美しい黒髪は逆立っていた。いつもの温和で美しいレイブンクローは見る影もなかった。
しかしそれに対し、バーソロミューは落ち着き払っていた
「落ち着け、レイブンクロー」
『落ち着け?何を言って──ですが、ですがバーソロミュー!あいつは、あいつは私の娘を!ヘレナを!!』
「落ち着け!レイブンクロー!!貴様が一人で行っても、娘の様に吸収されのがオチだ」
『ですが、あいつは──』
「わかってるから、落ち着け」
激しく取り乱すレイブンクローに、バーソロミューは優しく語りかけた。すると自分でも驚くほど、レイブンクローは安堵した
「貴様の怒りはよくわかる。しかし、霊体である今の貴様では勝てない。分かるな?」
レイブンクローは涙でくしゃくしゃになった顔でうなづいた
「故に、代わりに俺様がケリをつけてやろう。安心して俺様に任せておけ」
『俺様は自分のため以外には行動しない』。いつ聞いた言葉だったか、レイブンクローはその言葉を思い出した。そして、自分が考えてよりもずっと、バーソロミューは自分を大切にしてくれていたのだと理解した。
バーソロミューはレイブンクローに見せた優しげな表情を消し、トム・リドルの方へと向いた
「俺様はバーソロミュー・フラメル!最高の錬金術師にして、この世のありとあらゆる“未知”を解き明かす者!!!ヴォルデモート、貴様に“死”という“未知”を錬金してやろう」
「『死の飛翔』、ヴォルデモート。その名前は使って欲しくないな。あれは若気のいたりってやつなんだ。まったく、恥ずかしいことにね」
バーソロミューの言葉に対し、トム・リドルは柔かく返した
「僕はトム・マールヴォロ・リドル。最強の魔法使いにして、この世のありとあらゆる“魔”の頂点に立つ者。バーソロミュー・フラメル、君に“死”という“魔法”を送ってあげよう」
【オリジナル呪文解説】
・『巨大化の術』──一見すると『肥大化の術』と変わらないが『肥大化の術』が面積だけを変えるのに対し、『巨大化の術』は密度も巨大化させる事が出来る
・『創生の術』──名前の通り生き物を作れる。魔力を込める量によって寿命や大きさ、賢さが変わる。しかし生命を冒涜しているとの声が大きく、アメリカなどでは禁止させている
ここからは余談になります。
この話を書くためにハリー・ポッターシリーズを読み返しました。その時に『ハリー・ポッターと死の秘宝(下)』p344に書かれている
「ヴォルデモートが就職を頼みに来た夜だ!」というハリーの言葉がすごくツボに入りました