ハリー・ポッターと欲望の錬金術師   作:ドラ夫

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第4話 組み分け帽子

 ハーマイオニーがコンパートメントを出た後、バーソロミューは手早く制服に着替えた。窓から外を覗くと、深い紫色の空の下に山や森が見えた。列車は速度を落としている様だ。

 バーソロミューがローブを羽織ったちょうどのタイミングで、車内に声が響いた

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていって下さい」

 

 その知らせに他の一年生が緊張で顔を青くする中、バーソロミューはやはり不機嫌そうな顔をしていた。

 列車の通路は少しでも早くホグワーツへ行こうとする一年生で溢れていたが、バーソロミューはそれでも自分のコンパートメントから動かなかった。

 汽車は益々速度を落とし、やがて完全に停止した。

 他の一年生が押し合いへし合いをしながら列車の戸を開けて外に出て、やがて人がほとんどいなくなった後、やっとバーソロミューは外に出た。

 プラットフォームは暗く、ほとんど人が居ないにも関わらず、バーソロミュー達は多くの生徒達から注目を集めた。

 もしバーソロミューが不機嫌そうな顔を解き、愛想の良い表情を浮かべたのなら直ぐにでも多くの人間が話しかけて来たことだろう

 

イッチ()年生! イッチ()年生!はこっちだ! おお、バーソロミュー!あんまり姿を見せねえから、俺に挨拶もなしで行っちまったのかと思ったぞ!さあ、ついてこいよ──あとイッチ()年生は居ないかな?足元に気をつけろ。いいか!イッチ()年生、ついて来い!」

 

 ハグリッドのその声に反応したのはハリーだ。

 オリバンダーの店を出た後、あの杖を選んでくれた少年がバーソロミュー・フラメルという名前だという事をハグリッドから聞いていた。

 ハリーは滑ったり、つまづいたりしながら、険しくて狭い小道を、バーソロミューを探しながらハグリッドに続いて降りていった。

 しかし何故か、あの目立つ容姿の彼を見つける事は出来なかった。

 みんな黙々と歩いた。ヒキガエルに逃げられたばかりの少年、ネビルが一、二回鼻をすすった

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」

 

 ハグリッドが振り返りながら言った

 

「この角を曲がったらだ」

 

「うぉーっ!」

 

 一斉に声が沸き起こった。

 狭い道が急に開け、大きな黒い湖のほとりに出た。向こう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。

 大小様々な塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。それを見たバーソロミューは不機嫌そうな顔をほんの少し綻ばせた

 

『あの城のデザインは私が設計したのですよ』

 

 感動する生徒達を満足そうに見渡し、レイブンクローは誇らしげに言った

 

『ゴドリックはもっとキラキラと派手に、サラザールはもっとオドロオドロしく荘厳に、ヘルガはもっとマルビを帯びて可愛くと言ったのですが、やはりこの位が良いですよね』

 

 少なくとも可愛くならなくて良かった、とバーソロミューは思った

 

「四人ずつボートに乗って!」

 

 ハグリッドが岸辺に繋がられた小舟を指差した。

 バーソロミューが乗り、アンとメアリーが続いて乗った。

 バーソロミュー達は確かに全員美形なのだが、バーソロミューがあまりに不機嫌そうな顔をしているせいか、近寄りがたい雰囲気を放っていた。

 その為一緒のボートに乗り、話してみたいのだがどうも気後れする様で、中々最後の一人が決まらなかった。

 しかしようやっと、一人の少女が乗り込んだ

 

「はあい、私はダフネ・グリーングラス。よろしくね」

 

 少女、ダフネ・グリーングラスは人懐っこい笑みを浮かべた。

 対し、バーソロミューは不機嫌な表情を保ったままだ。しかし一応、自己紹介だけはした

 

「バーソロミュー・フラメル。こっちはアンとメアリー」

 

 アンとメアリーが微笑みながら頭を下げた。

 簡素な自己紹介の何処が面白いのかったのか、ダフネはニコニコとしながらお辞儀を返した

 

「みんな乗ったか?」

 

 ハグリッドは大声を出した。一人でボートに乗っている

 

「よーし、では、進めえ!」

 

 ボート船団は一斉に動き出し、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みんな黙って、そびえ立つ巨大な城を見上げていた。向こう岸の崖に近づくにつれて、城が頭上にのしかかってきた

 

「頭、下げぇー!」

 

 船頭の何艘かが崖下に到着した時、ハグリッドが掛け声をかけた。

 目の前には蔦のカーテンが広がっており、これを潜って崖の入り口に進むようだ。生徒達がみな、ぶつからないように頭を下げていく。

 しかし、この男は違った!

 この男はそれがたとえ無機物()であれ、頭を下げるという事が我慢ならなかった!

 何とも幼稚で傲慢な考えだが、彼は今の今までそれを突き通してきたのだ!そしてそれは、今日になっても変わらない!

 

「メアリー」

 

「かしこまりました」

 

 メアリーは何処かからカットラスを取り出し、蔦のカーテンを切り刻んだ。それを見たダフネは手を叩いてメアリーを褒めた

 

「恐れ入ります」

 

『わ、私が丹精込めて育てた蔦のカーテンが!』

 

 レイブンクローの悲鳴もなんのその、蔦の破片が浮かぶ湖を進み、崖の入り口へと進んだ。

 城の真下と思われる暗いトンネルを潜ると、地下の船着き場に到着した。全員が岩の小石の上に降り立った

 

「ホイ、おまえさん!これ、おまえのヒキガエルかい?」

 

 みんなが下船した後、ボートを調べていたハグリッドが声を上げた

 

「トレバー!」

 

 ネビルは大喜びで手を差し出した。ヒキガエルを受け取ると、大事そうに両手で包んだ。

 対しトレバーはまた直ぐに逃げ出す機会をうかがっていた。

 生徒達はハグリッドのランプの後に従ってゴツゴツした岩の道を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。

 みんなは石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 バーソロミュー達だけは唯一、少し離れたところから見つめていた

 

「みんな、いるか?おまえさん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」

 

 ハグリッドは大きな握り拳を振り上げ、城の扉を三回叩いた

 

 

     ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

「ホグワーツ入学おめでとう」

 

 エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女、マクゴナガル教授が挨拶した。

 眉間に深い皺が寄っていて、とても厳格な印象を受ける。実際にはお茶目な一面を少なからずあるのだが。

 生徒達はホール脇にある小さな小部屋に集められていた。詰め込まれた生徒達は全員窮屈そうにしつつも、密着している事で得られる安心感を得ていた

 

「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が皆さんの家族のようなものになるわけですからね。寮は全部で4つ、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。どれも輝かしい歴史があり、偉大な魔女や魔法使いを輩出しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは属する寮の得点になりますし、反対に規律に違反した時は減点対象となります。そして学年末には最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられますから、どの寮に入るにしても皆さん一人一人が寮の誇りになるよう望みます。まもなく組み分けの儀式が始まります。準備を整え次第戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

 マクゴナガルはそう一気に説明すると、大広間へと戻っていった。組み分けの儀式と聞いて、周りの生徒達が騒めきだした。

 生徒達の大半は、組み分けの儀式がどの様な物なのか不安で仕方がない様だ

 

「貴方はどの寮だと思う?私はきっと、スリザリンだわ。代々親戚も含めて、スリザリンなのよ」

 

 とダフネが言った。

 ダフネの家、グリーングラス家は『聖28一族』と呼ばれる間違いなく純血だとされる一族だ。そして『聖28一族』のほとんどがスリザリン寮を出身している

 

「俺様は何処の寮でも構わん」

 

「どこの寮でもいい!?ダメよ、ちゃんと考えないと。そういう考えだと、あとあと苦労する事になるわよ」

 

『私の前で堂々と何処の寮でもいいと言いますか……。ですが、その予想は間違っていないでしょう。貴方はきっと、どの寮に入ろうと問題ないと思います。……しかし、しかしです。貴方は間違いなく、レイブンクロー寮が合うと思いますよ。ええ、間違いなく。創設者の私が言うのですからレイブンクロー寮にしておきなさい。いえ、他意はないのですが、貴方はレイブンクロー寮が合う、そんな予感がします。そして私の予感はよく当たります』

 

 ダフネがもっとしっかり寮について考えないといけないと説教し、レイブンクローが滔々とレイブンクロー寮の良さを語っていると、前の方の生徒達が悲鳴を上げた。どうやら、ゴーストが横切った様だ。

 しかしバーソロミューはとっくにゴーストについての研究を済ませており、全く興味がなかった

 

「さあ、一列になって。ついてきてください」

 

 やがて戻ってきたマクゴナガルがそう告げると、生徒達はノロノロと動き出した。

 一年生は小部屋を出て玄関ホールに入り、そこから二重扉を開けて大広間に入った。そこには見事な光景が広がっていた。

 普段不機嫌そうな顔をしているバーソロミューでさえ、驚嘆と感動が入り混じった様な顔をした。

 空中には何千という蝋燭が宙に浮かび、爛々と四つのテーブルを照らしていた。テーブルには生徒、恐らく上級生が着席し、全員が期待に満ちた目で一年生達を待ち構えていた。更にテーブルの上にはキラキラ輝く黄金の皿とゴブレットが所狭しと並んでいた。

 大広間の上座には五つ目となるもう一つ長テーブルがあって、教師達が横に並び座っていた。

 マクゴナガルは驚く生徒達を一喝した後、上座のテーブルが置いてあるところまで一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、教師達に背を向ける格好で一列に並ばせた

 

『上を見てください。あの天井はヘルガが設計したんですよ。彼女は何というか、多分にロマンチストでして』

 

 レイブンクローの言葉にバーソロミューが上を見上げると、ビロードの様な黒い空に星が点々と光っていた。

 『ホグワーツの歴史』で天井がこの様になっているのは知っていたが、やはり文字で見るのと実際に観るのとでは訳が違った。

 バーソロミューの実家も山奥にあり、常に美しい空が広がっているが、この天井には負けると思った。

 バーソロミューが天井を見ながらヘルガが如何にしてこの天井を作ったのか聞いていると、いつの間にやらマクゴナガルが四本足のスツールを置き、その上にボロボロで汚いとんがり帽子を置いた。

 やがてとんがり帽子はピクピクと動き出し、皺が人の顔の様な形になった。そしてその顔の形の様な皺を動かし、歌を歌い出した

 

『きれいじゃないけど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと長い

私はホグワーツ組み分け帽子

私は彼らの上を行く

君の頭に隠れたものを

組み分け帽子はお見通し

かぶれば君におしえよう君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢で騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的を遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん! 恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!』

 

 帽子が歌い終えると拍手が巻き起こった。

 やがて静かになった生徒達を見届けたマクゴナガルが再び、声を上げた

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けてください」

 

「アボット・ハンナ!」

 

 早速、一人目の生徒が呼ばれていった。

 最初の一人目がハッフルパフに選ばれると、右側のテーブルから歓声と拍手が巻き起こった

 

「ご主人様、ABC順ですと私が先に呼ばれてしまいます。いかがいたしましょう?」

 

 本来アンに姓はないが、入学証では『Anne・Flamale』つまりイニシャルが“A”となっていた。対し、バーソロミューは『Bartholomew・Flamale』イニシャルが“B”だ。

 これではアンが先に組み分けを受ける事になる

 

『先に行く寮を決めておくのはどうです?例えば、レイブンクロー寮にみんなで入る事にしておくとか』

 

 実はバーソロミューも同じ結論に達していた。

 先に入る寮を決めておけばいいと。勇気も忠実さも賢さも狡猾さもアンとメアリーには設定して(・・・・)ある。恐らく、希望すればどの寮でも入れるだろう。

 別にどの寮でもいいが、ここでレイブンクロー寮を選ばなかったらこれから先、レイブンクローはいつまでもこの話を引きずるだろう。

 それはさぞかし鬱陶しいに違いない。

 レイブンクローの言いなりになる様で癪だったが、結局レイブンクロー寮に入る事にした

 

「……アン、レイブンクローを選べ」

 

「かしこまりました」

 

 やがて何人かの生徒が組み分けされていき、いよいよフラメル御一行の番となった

 

「フラメル・アン!」

 

 呼ばれたアンは粛々と椅子に向かっていった。

 彼女が帽子を被ること三分ほど、バーソロミューの言いつけ通りにレイブンクロー寮に選ばれた。

 美しい彼女をとったことでレイブンクローの上級生達は大いに沸き立った

 

「フラメル・バーソロミュー!」

 

 しかし、バーソロミューが呼ばれた途端、誰もが口を閉ざした。

 その理由の一つに、彼の名前が有名である事が挙げられるだろう。

 バーソロミュー・フラメルの名前は偶に新聞にも掲載されるし、本だって出版している。ハリー・ポッター程ではないにしろ、それなりに有名な人物だ。

 しかしそれならば、沈黙するのではなく沸き立つのではなかろうか?

 『あのバーソロミュー・フラメルだ!』とか『本物だろうか?』といった風に。

 しかしそうはならなかった。何故か?

 有名な人物である彼を、誰もが一目見ようと全員が見たからだ。

 組み分けの儀式にそれほど興味がなかったり、友人との談笑に夢中になっていた生徒なども全員、彼を見た

 

 ──ただ彼を見た

 

 言ってしまえばそれだけの事で、全員が口を噤んだ。

 そわそわと自分の組み分けを待つ一年生、すでに寮が決まりこれから始まる学校生活に胸を踊らず一年生、過去の自分を思い出しながら新入生を歓迎する上級生、もう何年もこの組み分けの儀式を見てきた教師陣。みなが言葉を忘れ、考えることを止め、彼を見ることにのみ腐心した。

 そして、その光景を見たダンブルドアは強烈な既視感に襲われた

 

(何もせずとも誰もが跪くこの光景はまるで……。いやしかし、あの子はフラメルの孫、その様な事は……)

 

 ダンブルドアがそう思考する中、バーソロミューは音も無く椅子に座った。

 踏ん反り返り、足を組むその姿はふてぶてしいことこの上ないが、それが妙に様になっていた。

 そして彼が帽子を被ること数分、帽子が沈黙を破った

 

「グリフィン──」

 

 しかし、帽子は途中で彼の所属する寮を告げる事を止めた。

 前代未聞だった。

 偉大なるゴドリック・グリフィンドールが作り出したとされる『組み分け帽子』が自分の判断を誤り、訂正する事など誰が予想出来ようか。

 誰もが戦慄する中、組み分け帽子はそれからも何事か口に出すが、結論を中々出さなかった。

 それから実に、三十分程時間の時間が経った。恐らく、後にも先にもこれ程組み分けに時間がかかる事はないだろう。

 もう上級生と一年生達の腹の虫が騒ぎ出す頃合いだが、バーソロミューの組み分けを急かす様な人間は皆無だった。

 やがて、組み分け帽子が諦めた様に結論を下した

 

「……レイブンクロー!」

 

 こうして、バーソロミューの寮が決まった

 

 

     ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

 時は少し遡り、バーソロミューが組み分け帽子を被った頃

 

「ふむ、君は面白い精神構造をしておる……。智に飢え、欲望に忠実だ。しかし自分の欲のためなら狡猾にも、勇敢に、我慢強くもなれる。そしてそれに相応しいだけの才能もある。……ならばあえて、グリフィ──」

 

『何をしているのですか、ゴドリック!』

 

 組み分け帽子がバーソロミューをグリフィンドール寮に入れようとした瞬間、レイブンクローが鬼の様な形相をして止めた。

 バーソロミューはそれを不機嫌そうに眺めている

 

「ろ、ロウェナ!!!??君こそどうしてここに!?」

 

『貴方、組み分け帽子の中に自分を籠めていたのですね。その上立場を利用して自分が気に入った生徒のみグリフィンドール寮に入れるなど、恥を知りなさい!』

 

「違う!私はこの男の勇敢を讃えただけだ!」

 

『いいえ、違います!貴方は昔から、贔屓が過ぎる人間でした!サラザールもそうでしたが、彼は自分の贔屓を認めていただけまだマシです』

 

「それを言うなら、君だってそうだろう!」

 

 そのままグリフィンドール(とんがり帽子)レイブンクロー(古い杖)は口喧嘩を始めた。

 バーソロミューはそれを聞きながら、『ホグワーツの歴史』の、完全に差別無く学問の扉を開くよう提案したのはヘルガ・ハッフルパフだけだという記述を思い出していた。

 サラザール・スリザリンは純血のみに

 ゴドリック・グリフィンドールは志が高い者のみに

 ロウェナ・レイブンクローは知恵を求め続ける者のみに教育を施そうと提案した。

 しかしヘルガ・ハッフルパフだけはどの様な人間、生物にも教育を施す様に提案したと文献に残っている。どうやらそれは真実だった様だ、とバーソロミューは思った

 

「おい、何でもいいが早く俺様をレイブンクローに入れろ」

 

 資格があるならいいだろ、とバーソロミュー。

 それを聞いたレイブンクローは勝ち誇った様に言った

 

『ほら見なさい。バーソロミューの最も優れている点は勇気ではなく知恵です。本人もそれを自覚してます』

 

「フラメル、君は本当にレイブンクロー寮でいいのかね?グリフィンドール寮に入れば、君は間違いなく偉大な事を成し遂げるだろう」

 

「心を読んだなら分かるだろ。俺様はそんな物に興味はない。俺様の目的はただ一つだ」

 

 グリフィンドールはその決心が固い事を読み取り、心底歯痒く思った。何故なら彼の途方も無い才能に対し、目的があまりにあんまりだからだ

 

『ちょっと待ってください。バーソロミュー、貴方には何か目的があったのですか?』

 

 どうやら、レイブンクローはバーソロミューの目的を分かっていない様だった。

 それを理解したグリフィンドールはバーソロミューを自分の寮に入れる事が出来ないせめてもの抵抗として、レイブンクローが問いただす前に寮の名前を告げてやる事にした。

 渋々ながらだが

 

「……レイブンクロー!」

 

(本当に何故あれ程の才能をラブドール作りなどに……)

 

そう思わずにはいられないグリフィンドールだった

 

 

     ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

 バーソロミューが長い組み分けを終えた後、メアリーも無事にレイブンクロー寮に決まった。

 しかしバーソロミューの組み分けに神経を使いすぎた上級生達からはまばらな拍手しか送らなかった

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

 “F”の次は“G”だ。つまり、すぐにハーマイオニーの番になった。

 ハーマイオニーはバーソロミューのいるレイブンクローか、自分が元々希望していたグリフィンドールか迷いながら歩を進めた。

 結局、決めるのは組み分け帽子だと楽観的に考えれば良いのだが、生真面目なハーマイオニーはそんな訳にも行かなかった

 

「ふむ。まず知恵はある。それを求めてもいる。しかし……志も高い。正義感にも溢れておる。迷っているね?グリフィンドールかレイブンクローか」

 

 組み分け帽子に能力と性格を認められ、ハーマイオニーは嬉しくなった。また、この帽子には誤魔しは通用しないんだ、とも思った。

 故にハーマイオニーは、正直に心の内を曝け出す事にした

 

「ええ、迷っています。私が尊敬してるバーソロミューはレイブンクローに行きました。ですが、ダンブルドア校長を始めとした偉大な魔法使い達はグリフィンドールを出ました……」

 

「君は、何か大きな勘違いをしている様だ」

 

「え?」

 

「ダンブルドアは確かに、グリフィンドールで偉大な魔法使いとなった。バーソロミューも恐らく、レイブンクローで目的を成し遂げるだろう。しかし君が彼等と同じ道のりを辿る訳ではない。大切なのは誰が何をしたかではなく、君が何をするかだ」

 

 ハーマイオニーはその言葉にハッとした。

 確かに、自分の意思がそこに介在してなかった。これではハーマイオニーが最も嫌いな、他人に頼ってばかりの金魚の糞のような奴らと一緒ではないか。

 ハーマイオニーはグリフィンドールとレイブンクローの席を見渡した。どちらの上級生、一年生も輝いて見えた。

 しかし、一際輝いている人物がいた。それは勿論、バーソロミュー・フラメルだ。

 両隣にはアンとメアリーが座っている。今レイブンクローに入ればバーソロミューと向かい合った席だ……。

 ハーマイオニーはどちらの寮に入るか決心した

 

 

 

 

 

「グリフィンドール!」

 

 グリフィンドールから歓声が沸き起こった。

 彼女は結局、恥ずかしがり屋だった











【知らない人の為に一応解説】

・ダフネ・グリーングラス──『聖28一族』の一人。原作では影が薄いスリザリン生。妹のアステリア・グリーングラスはマルフォイと結婚してる。
妹のアステリアは『ポッターモア』に記事があるのに姉のダフネにはない不遇の人


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