ダンジョンに夢を求めるのは間違っているだろうか   作:虎神

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2話

「おい、何してんだ役立たず!」

 

うるさい

 

「まったく、荷物運びもろくにできねのかよ」

 

うるさいうるさいうるさい

 

「っち、モンスターが出てきて危なくなったらその時は頼むぜサポーターさん(・・・・・・)?」

 

あぁ本当にうるさい、醜い、汚い連中だ。あたりまえのように殴りあたりまえのように囮になれと言ってくる。

本当にまったくもって、貴方達冒険者は見限るに困らない奴等だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、ルームと言われるダンジョン内で正方形の形をしている開けた空間。

僕はそこで逆手にした《神様のナイフ》を左手に、《ラスト・オーダー》を右手に持ち、ソイツと向かい合っていた。

 

『キラーアント』

7階層になって初めて現れるモンスター。6階層の『ウォーシャドウ』

と並んで『新米殺し』と言われている。

 

『ギギッ』

 

キラーアントが歯をカチカチと言わせながら威嚇してくる。こいつの歯は鋭く噛まれれば致命傷は免れない。しかも自分がピンチになると特殊なフェロモンを出して仲間を呼ぶらしい。

 

「まったく...めんどくさいことこのうえない」

 

僕は右手に持ったラスト・オーダーで斬りこむ。キラーアントは、それを避け横から攻撃してくる。

 

『ギギャァア!!』

 

「っち!」

 

そんなキラーアントの攻撃をラスト・オーダーで弾きかえすと、今度は左手のナイフをキラーアントの顔めがけ投げた...が、しかし硬い甲殻に阻まれてしまう。

 

『ギャウ』

 

「それでいい!」

 

だが、僕はそれを読んでいた。顔めがけ投げたナイフは攻撃は通らないが相手を怯ませることはできる。

 

「もらった!」

 

『グギャァァア!?』

 

僕は跳躍しキラーアントがひるんだ隙にラスト・オーダーでキラーアントの頭と胴体の隙間を切り離す。

そして、キラーアントは沈黙した。

 

「終わったぁ...『ギャウ』っつ!?」

 

とっさに右手の剣で防ぐ。見るともう一体キラーアントがあらわれた。

 

今、完全に油断していた。

ここは、ダンジョン少しの油断で命を落とすところ。僕はそれをあらためて実感した。

先ほど投げたナイフを手に取り、最後のキラーアントに突っ込む。

 

『グギャ「うるさい」ギャァアア!!?』

 

僕はラスト・オーダーをキラーアントの頭に全力で突き刺し、最後にヘスティア・ナイフで先ほどと同じように首を斬った。

 

「はぁ、ちゃんと気をつけないとな僕も」

 

『そうじゃぞベル、主はちと詰めが甘い。そんなことではいつかは死ぬぞ』

 

「うっ...ごめんなさい童子さん」

 

『まったく...さぁ、そろそろ帰るぞベル。あまり長くいても集中力が低下していい動きができん』

 

「はい、そうですね」

 

僕はそう答え出口に歩き出す。

彼女は、茨木童子(いばらきどうじ)さん。なぜだかわからないが僕と契約というものを結び今は僕の中...つまり意識の奥にいる...らしい。

僕自身も童子さんも、なぜそこにいるのかはわからないらしい。

 

『それよりもベル。お主このななかいそう?と、やらに来て良かったのか?あの耳が長い娘に何か言われてなかったか』

 

.....あ

 

僕は少し帰る足が遅くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ななぁかぁいそぉ〜?」

 

「っひ!?」

 

案の定超怒っていた。

 

「キィミィは!私の言ったことわかってるの!?いや、わかってないからこんなことになってるんだよね!!5階層超えた上にあまつさえ7階層!?迂闊にもほどがあるよ!!」

 

「ごごごごごごごめんなさい!!」

 

テーブルをバンと叩きその音にビクッとする僕。先ほどからその繰り返しだった。

 

「一週間前にミノタウルスに殺されかけたのは、一体どこの誰だったかな!?」

 

「え、僕ですけど?」

 

「わかってるならなんでさらに下層に降りるの!?ていうかなんであたりまえみたいに言っているの!!?」

 

「す、すいませぇん」

 

こうもエイナが怒るのは、本当にベルのことを死んでほしくないと思っているからだ。

しかしそのベル自身が今回...いや、今回も(・・・)いろいろやってしまったため、これほど激怒しているのだ。

 

「キミには圧倒的に危機感がたりない!絶対に足りてない!今日はその心構えについて徹底的に一から教えてあげる」

 

「ひぃ」

 

余談だがこのエイナのスパルタ授業は、あの【ロキ・ファミリア】に所属する一人の幹部からも「あれは、はっきり言って怖いな。私も結構厳しい方だと思っていたがあれを見てから優しい方だと思ったよ」と言わせるくらいやばいのだ。

 

「ま、待ってください!?ぼ、僕もあれから結構成長したんですよエイナさぁん!?」

 

「.....アビリティがHがやっとのくせに、成長だなんて言うのはどの口かな?」

 

やばい!?信じてないうえにさらに威圧感が増した!!?

 

「ほ、本当です!僕のステイタスいくつかDに上がったんですよぉ!」

 

「....D?」

 

一瞬ポカンとした顔をするエイナさん。その後、エイナさんは何度も何度も指をABCDABCDと言いながら折っていく。

 

「そ、そんな出まかせ言ったて、騙せれるわけが....」

 

「本当です。本当なんです!!なんかこのごろ伸び盛りというか、とにかく熟練度の上がり方がすごいんです!」

 

「....本当に?」

 

「は、はい」

 

「....本当に、D?」

 

「は、はい」

 

なぜここまでエイナが信じれないというと、アビリティというのは上からS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iとなっている。

Dといえば上から五つめだ。はっきり言ってそんなこと普通はありえない。

ベルは冒険者になってまだ一週間ほどしかたってない。エイナのこれまでの知識では、半月という時間幅で冒険者が達することのできる妥当なラインが、H()なのだ。しかもかなり腕のいい者に限った話。

 

Gならば出来過ぎで、それ以上は....いくらなんでも早すぎる。

 

「....ねぇ、ベルくん」

 

「は、はい?」

 

「キミの背中のステイタス、私にもみしてくれないかな?」

 

「.....えっ?」

 

「別にキミのことをしんじてないってことじゃないんだけど」

 

そう、いくらなんでも早すぎる。もしかしたらヘスティア様がベルになぜだかは知らないが、嘘の情報を教えている可能性もなくないからだ。

 

「で、でも、冒険者のステイタスって、一番バラしちゃいけないんですよね?」

 

ベルの言うこともあっていた。

Lv.などは、各個人のランク付けやファミリアの強さの指標として、公開する義務があるが...冒険者のステイタス。それは、言えば自分の手の内を晒すということだ。たとえば特殊な《魔法》や《スキル》を持っている者もいる。しかしそれがわかってしまえば、その能力の弱点などがわかってしまう可能性があるかもしれないからだ。

そのためにステイタスは主神、そして自分以外にばれてはいけないことだった。

 

「今から見ることは誰にも言わないと約束する。もしベル君のステイタスがおおやけになるようなことがあれば、私は全責任をおってキミに絶対服従を誓うよ」

 

ぜ、絶対服従って....

 

「はぁ...女性がそんなこと言うものじゃないと思いますけど...そ、そもそもエイナ【神聖文字(ヒエログリフ)】読めるんですか?」

 

「え、あ、うん。ちょっとだけどステイタスのアビリティくらいは読めると思う」

 

どうしたんだろ歯切れが悪いな?

 

「と、とにかく!この目で確認させてもらわなかったら、私、いつまで経ってもベル君5階層言っちゃダメーって言うよ?」

 

「そ、それは勘弁してもらいたいです。...わかりましたいいですよ」

 

「ありがとうベル君!」

 

そう言って僕は服を脱ぐ...はっきり言おう。死ぬほど恥ずかしい、でもここで恥ずかしがって見せなかったら、5階層より先にいけない!!

 

そう思い平然を装った。

だからといってエイナの方はーーー

 

(うっ....やっぱり男の子の裸を見るのって恥ずかしいな。で、でもこれもベル君のため。さっさと終わらせてあげなくちゃ!でも、ベル君以外といい体つき...)

 

結構いっぱいいっぱいだった。

 

しかし早くしなければならないと思う方が強かったのか、すぐに【神聖文字(ヒエログリフ)】の解読に入った。

 

 

ベル・クラネル

Lv.1

 

力:E448

耐久:G216

器用:D502

敏捷:D583

魔力:H107

 

(うそ....)

 

それを見てエイナは絶句した。まず敏捷がもう少しでCに近いこと。はっきり言って全部異常だがさらにびっくりしたのが魔力。

魔力は《魔法》が発動した時に現れるもの。つまりベルは魔法を覚えているということになる。

 

(....少しくらいなら)

 

そう思いスキルスロットのほうを見るが...ダメだ。自分ではこの文字を解読できない。

実は、ヘスティアはもしもの時用に【神聖文字(ヒエログリフ)】にプロテクトをかけていた。

そのため【神聖文字(ヒエログリフ)】を完全に理解してないエイナにはこれは解読できなかったのだ。

 

(でも、魔力があるってことは魔法が発動しているはずだけど....ないな)

 

やはり背中のどこを見ても《魔法》がかかれてない。

つまりーーー

 

(《魔法》が出現したことをまだベル君にヘスティア様は話してない?)

 

「....」

 

「え、エイナさん。そろそろ...」

 

「あ、ご、ごめんもういいよベル君」

 

そそくさと服を着なおすベル。

一方で、エイナは頭を抱えていた。

 

(先ほどのことをベル君に言うべきか....もしくは黙っているべきか....)

 

だが、神ヘスティアがコレを意図的に教えてないということなら何か理由があるはずだ。それを自分が教えるわけにはいかない。

そうエイナは決心した。

 

「.......」

 

「え、エイナさん?」

 

はっきり言って、このステイタスはソロでやっても充分行けるラインだ。

だが、そうなると次に巻き起こるのはまた別の懸念だった。

 

「ベル君」

 

「は、はい?」

 

「明日って空いてる?」

 

「.....へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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