ダンジョンに夢を求めるのは間違っているだろうか   作:虎神

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6話

『キシャアァァァ!』

 

「はっ!」

 

ガキンと自分の武器と目の前の『キラーアント』の歯がぶつかる。

 

「あぁ!硬いな!」

 

そうは言いながらベルは右手に持つ《ラスト・オーダー》で歯を受け上手く頭と体の間の柔らかい部分を左に持った《ヘスティア・ナイフ》で斬る。

 

『ギシャァァアア...』

 

そしてキラーアントが動くことを停止した。

 

「さすがベル様!お強いですね!!」

 

「あ、ありがとうリリ。でも、僕なんてまだまだだよ」

 

もっと早くもっと強く...僕が憧れるあの金色の髪の女性はもっと強い。

 

「でも、リリも早いね魔石を取り出すの」

 

先ほどからリリは、倒した敵は一箇所に集め手慣れた様子で魔石を取っていく。それに僕の邪魔にならぬよう最大限注意しながらだ。

 

(これだけの腕があってパーティーからはぶられるのか?)

 

少し疑問に思ったが次の敵が出てきた。と、言ってもキラーアントの大群だが...6匹か。

 

「べ、ベル様!?いくらなんでも多すぎです!ここは、撤退しま「リリは、危ないから下がっててね?」え?」

 

「【世の理を覆し鬼よ

酒に酔いし我、友と共にこの世を否定せん

ひとつちぎれば恐れられ

ふたつ喰らえば逃げ出され

みっつ引き裂きゃ死合いを望まれたもう

我の名聞きたきゃ目を覚ませ】」

 

 

 

 

 

 

 

本当にこの冒険者は駆け出しなのだろうか?

リリ自身かなりの数の冒険者を見てきたがこの少年くらいの歳でここまで戦い慣れているのは初めて見た。

そして、7匹目だろうか...彼がキラーアントを倒したあと奥からキラーアントの大群が押し寄せてきた。そして、リリはそこに山積みにされていたキラーアントを見て振り返る。

 

(しまった!キラーアントの死骸を置きすぎた!!)

 

キラーアントは死ぬ直前に仲間を呼ぶ特別なフェロモンを出す。もうこと切れているとはいえその直前に出したフェロモンがまだ残っていたのだろう。これはさっさと魔石を取り出さなかった自分の責任だ。

 

「べ、ベル様!?いくらなんでも多すぎです!ここは、撤退しま「リリは、危ないから下がっててね?」え?」

 

まさかあの量のキラーアントを相手にするつもりか?

無理だ。いくらなんでも無謀すぎる。

しかしリリのその不安はなぜか次の彼の行動で消えた。

 

「【世の理を覆し鬼よ

酒に酔いし我、友と共にこの世を否定せん

ひとつちぎれば恐れられ

ふたつ喰らえば逃げ出され

みっつ引き裂きゃ死合いを望まれたもう

我の名聞きたきゃ目を覚ませ】」

 

魔法だろうかと一瞬思ったが何も起こらない。いや、起こってはいたのだそれは、目の前の少年ベルの髪が白から銀に変わり赤い目も蒼く染まった。

 

(なんですかアレ...)

 

ただ髪と目の色が変わっただけだった。だが、なぜだろう先ほどまでの不安はまったく消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-おぉ、ベル久しぶりに呼んだの?-

 

あはは、すいません

 

-怒ってはないぞ、自らの力で乗り越えることは良いことだ-

 

あ、ありがとうございます。

 

-ふむ、しかしまぁ...呼ばれたからには仕事をしようかの?-

 

はい!では...行きます!

 

そう心の中で童子さんに言いキラーアントの群れに突っ込む。

 

「はぁぁぁああ!!」

 

まず先頭のキラーアントに剣で斬りかかる。しかし周りのキラーアントが邪魔をしてきて当てることはできなかった。

 

「クソ!」

 

-ベルこれを使え-

 

そう童子さんが言うと前みたいに頭の中に言葉が浮かんできた。

 

「《友を守ると契りをたて全てを切り伏せよ》」

 

「シュゴテン」

 

そう唱えまたキラーアントに突っ込む次はナイフを投げる。キラーアントはそれを頭で弾こうとしたその時

 

「っふ!」

 

『ギシャアァァァア!?』

 

目にも留まらぬ速さでそのキラーアントを斬り裂いた。

それは先ほど投げたナイフをキラーアントに当たる直前に追いかけて手で掴みそのまま繋ぎ目を斬ったのだ。

実はベルが唱えたあの言葉正しくは新しいベルの力《限定色魔法(リミットカラースペル)》の効果だ。

 

-この言霊...お主で言えば《魔法》は、《シュゴテン》

効果は自らの敏捷と防御力を上げる。そして最後に守る対象が近くにいればその思いによって効果は上昇するという効果じゃ-

 

現在ベルの後ろにはリリがいるためさらに上乗せされているということだった。

ベル自身その効果に驚いてる。体が勝手に動いたとはいえあんなことできるなんて思わなかったからだった。

 

「す、すごい...」

 

おそらくリリの声だろう。ポツリとこぼしたその言葉にキラーアントが反応する。

 

「っつ!」

 

キラーアントが僕からリリにターゲットを変えたのがわかりすぐさま足を動かす。

 

「《種は違えど命は等しく》」

 

「オーガキラー」

 

武器に言えば貫通能力を与える《魔法》を唱えキラーアントに剣で斬る。すると先ほどまでとは違い甲殻ごと一体のキラーアントを斬り伏せた。

 

-ベル右じゃ!-

 

「っつ!!おりゃぁぁぁあああ!!!」

 

右から飛んできたキラーアントを全力で蹴り上げる。そのままキラーアントは天井に突き刺さり絶滅した。

あと、3匹

 

『『『キシャァァァアアア!』』』

 

-ふむ...ベルよ。もうひとつ使ってみよ-

 

そう言いまた頭に言葉が浮かぶ

 

「《我が声を聞き答えよ 我らを滅し忌々しきその刀 我が身を斬り伏せたその刃 再臨せよ今この時のみ我らに力を貸せ》」

 

唱えたベル自身この詠唱は先ほどまでのものとは違うことがわかった。

桁が違う(・・・・)そのように感じたが最後の言葉を口にする。

 

「キシンガリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すごい...そう口に出てしまいキラーアント達が自分に的を変えてくる。

 

(っく!こうなったら魔剣で!)

 

そう思い魔剣を取り出そうとすると先ほどとは違う言葉を呟いた彼がすごい速さで飛んできて一匹のキラーアントを甲殻ごと斬り伏せた。

あの、硬いな甲殻を斬るなんて...もう、その時には自分は彼ではなく彼の二本の武器(・・・・・)に目がいっていた。

そして、彼は自分の目の前に立ちまたも先ほどとは違う言葉を呟いた。

 

「《我が声を聞き答えよ 我らを滅し忌々しきその刀 我が身を斬り伏せたその刃 再臨せよ今この時のみ我らに力を貸せ》」

 

「キシンガリ」

 

ゾクッ...それは何だかわからなかった。突然彼の二本の武器が紅いオーラのようなものを出し始めた。ナイフと剣...なぜか長さが違うその武器が同じぐらいの長さの細い剣に見えた。

しかし...もうあれをちょっと優れた武器など言える自信はもうなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッグ...なんだこれ力が吸われ...

 

-ベル!お主ではまだ長時間使えん一撃で決めろ!-

 

一撃で...普段は無理だと言うところだが何故かその時はできない....そんな風に思わなかった。

だから、僕は振るったその朱色に染まった自分の武器をそして叫んだその武器の名を

 

()を滅せ 鬼切(おにきり)!!」

 

一瞬視界が紅く染まる。

そして振るい落としたその剣の先にはもう何もなかった。あるのはただ自分がつけたとされるえぐるような地面の傷だけだけ。

 

「これは...い...たっい...」

 

「ベル様!?」

 

そこで僕の意識は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル様!?」

 

いきなり倒れた彼を支える。どうやら気を失っているだけにようだ。

 

「......」

 

今、リリの頭の中では二つの選択肢があった。一つは狙っていた武器を盗みこの場から消えること。そうするとおそらくベルの命は風前の灯に等しいだろう。そして二つ目がこの場からベルを抱え逃げることそうするとおそらくこの少年はより自分を信用するだろう。

 

「......はぁー」

 

一つため息を吐くとリリは、ベルに肩を貸しそのまま歩いて行った。

 

(うぅ....重い...まったくなんでリリが冒険者なんかを...でもリリのせいで死なれたなんて目覚めが悪いですし!そうですこれは助けてなんていないただ借りを返すだけです!)

 

と、誰に言い訳しているがわからないが息をはぁはぁと吐きながらベルを抱え出口に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...ここは」

 

「気がつきましたかベル様?」

 

「リ、リリ...っは!ダンジョンは!?」

 

「もう、大変だったんですよ?いきなりベル様が倒れて一人でここまで運んだんですから!」

 

そうだ僕確かダンジョンで気を失って...

 

「ご、ごめんねリリ!?け、怪我とかない!?どこも痛くない!?」

 

「ちょ、ちょっと!ベル様顔が近いです!!」

 

「あ、ご、ごめん」

 

「はぁ、いいですけど。それと...はいこれ魔石換金しときました」

 

リリは一つ袋を渡してくる。

まさか自分が気を失っている時にこんなことまでやってくれているとは本当にありがたい。

 

「ありがとうリリ。いろいろごめんね?そういえばここはどこ?」

 

「ここはリリが住んでる宿ですよ。それよりも...今日の分け前のことですが「あぁー、うんはい!」....え?」

 

今回の報酬の7800ヴァリスのうち4500ヴァリスをリリに渡す。

 

「べ、ベル様!?なんで私の方が取り分が多いんですか!?」

 

「だって、リリがいなかったら僕は死んでたもしれないんだよ?そう考えたら別にいいさ。それにこの宿のお金払わなきゃいけないんでしょ?少ないけど取っといてよ。あ、これ雇い主の命令ということで!」

 

そう言ってお金を突き返す。

リリはでも...と言っているが僕が嫌でも受け取らないため諦め

 

「はぁ、わかりました。ならこれはもらっておきます。しかしベル様...あれは一体なんですか?」

 

アレとは最後のあの剣のことを言っているのだろう。しかし自分にもよくわからないため

 

「さぁ?」

 

「さぁ!?」

 

「僕にもよくわからないんだよ。気づいたらああしてたっていうか」

 

「...まぁ、ベル様がそう言うなら信じますけど...しかし今度はしないでくださいね!?もう運ぶの嫌ですよ!」

 

「はい、すいませんでした」

 

と、ピシッと頭を下げる。

そのあと少し話をして今日は帰ることにした。

 

 

 

自分の腰後ろにナイフのカバーしかないことに気づかずに....

 

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