ダンジョンに夢を求めるのは間違っているだろうか   作:虎神

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9話

あたりが少し暗くなってきており、それと同時に複数の店に光が灯る。時刻はただいま六時を過ぎようとしていた頃だった。

 

「そろそろ約束の時間だけど...」

 

僕は一人、待ち合わせの場所である、アモール広場にある噴水前で立っていた。僕は髪型を少し気にしながら、約束の相手を待っていた。

 

「ベルく〜ん!」

 

「あ、神様!」

 

そう。その待ち人こと待ち神は、僕のファミリアの主審である、ヘスティアその人だった。いつもの真っ白な服ではなく、今日は少しおしゃれなワンピースの服を着ていた。

 

「ごめんねベルくん?待ったかい?」

 

「いえいえ、僕も今来たところなので気にしないでください。それよりも可愛らしい服ですね!似合ってますよ」

 

「ふぇ!?あ、ああ、そうかい?ありがとベルくん」

 

何故か神様が顔を赤くし出したけど大丈夫かな?やっぱり、まだ体調が治ってないんじゃ...。

女心がわからないベルは、ヘスティアが何故、顔を赤くしたのかが分からないようだった。

 

「さ、さぁ!じゃあベルくん行こうか!」

 

「はい、そうです....ん?何か聞こえませんか?」

 

「へ?」

 

ヘスティアはそう言われ、耳をすます。すると...

 

「「「「「「ヘスティアー!!」」」」」」

 

「ゲッ!?」

 

「か、神様?」

 

声がした方へ振り向くと、そこにはアモール広場に複数人の女性が、ヘスティアの名を呼びながら走ってきていた。

そして、その彼女たちはヘスティアの周りを囲む

 

「ほらほら!見て!!あのヘスティアがオシャレをしているのよ!!」

 

「本当だわ!いつも引きこもりだったヘスティアが!」

 

「ええ!あの根暗だったヘスティアが!!」

 

「ちょっと君達、好き勝手に言い過ぎじゃないかな!!?」

 

周りの女性たちは、ヘスティアに褒めているのかわからないが、各自笑いながら、ヘスティアで遊ぶ。

その光景にポカンとしていたベルは、きっと悪くない。

 

「で!ヘスティアの相手の子は...この子ねぇ〜!」

 

「うわっぷ!?」

 

「んな!!?」

 

ベルは突如振り返った、かなり胸が大きい女性に抱きつかれ、息ができなくなる。

 

(い、息が!!?)

 

ベルはその大きな胸に挟まれながら、息ができなくなる。まさしく天国と地獄だろう。

 

「ちょ、ちょっと、デメテル!!僕の子を返しておくれ!!」

 

ヘスティアはそう叫び、ベルをその胸から引っこぬく。

 

「ぷはっ!?はぁはぁ....た、助かりました神様....」

 

「少し顔がにやけている気もするが、後回しだ!とりあえず逃げるよベルくん!!」

 

「え、ちょ、ちょっと神様!?」

 

ヘスティアはベルの手を持ち、その女性た達から逃げる。負けずとその女性達も全力で追いかけた。

結局、この騒動は長い時間がかかることになり、ベルとヘスティアの食事会は、また今度ということになった。

ヘスティア、哀れなり....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偉業。それは言った何を表すのだろう。いや、そもそも偉業とは、どこからどこまでが偉業なのだろう。

答えは簡単だ。周りの人にはできないこと。つまりは、誰にも真似をできない事をやってのければいい。

そして、それは...いつの日も突然やってくるものだ。

 

 

 

「ん?」

 

ベルは突然足を止めた。

 

「どうかしたんですかベル様?」

 

「いや、今ダンジョンが揺れなかった?」

 

あまり自分でも確信が持てないが、何か下から衝撃が足に伝わったような気がしたのだ。

しかし、横を歩いていたリリは、何も感じなかったと言ったので、きっと気のせいであろう。

 

「さて、そろそろ帰ろうかリリ」

 

「はい、そうですね。かなり予定より長引いちゃいましたし...」

 

「ご、ごめん」

 

僕たちは今、毎度のごとくダンジョンの中にいた。つい先ほどまで、モンスターに群がたれていたので、時間を全く気にしていなかった。

そのあと、帰るときにバベルの塔の話をしたのだが、なんでも人々が作ったソレを最初に来た神様が激突して、ぶっ壊れたらしい。

なんだろう。何故かその神が心なしか笑顔に見える。

 

『確かに我の生きていた時代でも武神と戦ったことはあるが、基本あやつらは自らが面白ければ良いと考える連中だからの』

 

いや、それってどんな野蛮な神ですか。

僕は童子さんの言葉にうなだれる。というか、武神と戦ったことがあるとか、童子さんって本当に何者なんですか?

 

『ふっふっふ、女には隠し事は多いのじゃよベル』

 

それは、よくお爺ちゃんに聞きました。

僕は一つはぁ、と息を吐く。それというのも最近、妙に戦い方に違和感があるような気がしてならないのだ。別に調子が悪いとかではないので、気にはしないが...。

 

「ベル様?どうかしましたか?」

 

「え、いや、なんでもないよリリ。じゃあ、換金して帰ろうか!」

 

「はい!」

 

僕達はそのままギルドで換金をして別れた。僕を見つめるその視線に気付かないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日ー

 

「っふ!たぁ!!」

 

僕はリリとダンジョンにきていた。今、相手取っているのは《ニードルラビット》可愛らしい見た目とは裏腹に、恐ろしく尖った角が生えているモンスターだ。

 

『キューーー』

 

「鳴き方も可愛いけどっ!」

 

『キュ!?』

 

「これで...終わり!!」

 

突進してきた《ニードルラビット》の角をナイフで受け流し、反対の手で持っていた剣で叩っ斬った。そして、《ニードルラビット》は力尽き、地に沈んでいったのだった。

 

「ふぅ、これでおしま...」

 

「ベル様!後ろ!!」

 

「っ!!?」

 

リリに言われ僕は後ろを振り向くと、すぐ目の前にもう一体の《ニードルラビット》が突撃していた。

《ミノタウルス》の時と同じ、死への恐怖がそこにはあった。

あ、これはダメだ。僕では避けれない。

 

「ダメーーーーー!!」

 

「....イブ...」

 

しかし、リリの叫び声が響いた時にはもう...《ニードルラビット》の姿は消え去っていた。

 

「...え?」

 

そして、そこに立っていたのは赤く染まった髪を持ったベルの姿だった。しかし、それは一瞬で白く染まる。

リリは状況が飲み込めないのだが、すぐさまベルのそばに駆け寄る。

 

「ベル様大丈夫ですか!!?」

 

「え...あ、リリ。大丈夫だよ」

 

ベルはそう言って何事もないように笑顔をリリに向ける。

 

「あのベル様。先ほどの髪は...」

 

「ん?どうしたの?」

 

「....いえ、なんでもないです。それよりベル様!油断してダメだとあれほど言ってでしょう!!」

 

リリは先ほどのことは一旦忘れ、ベルに向かって怒る。

 

「ご、ごめんリリ。...それって、魔剣?」

 

リリはしまったと自分の右手に持った魔剣を隠す。先ほどベルが危なくなった時に、反射的に手に取ってしまったのだ。

 

「え、えっとその...まぁ、そうです。たまたま、リリの手に渡ってきまして...」

 

「ふぅ〜ん。それよりもリリ、明日一旦ファミリアに戻るって言ってなかった?」

 

ベルは特に興味がないようにリリに問いかける。リリとしては、聞かれるよりはマシだろう。

 

「はい。月に一度の現状報告の日なので...。ですが何故?」

 

「え、えっと...リリってファミリア内で、孤立しているって言ってたし...ちょっと心配だったんだよ」

 

「...別に大丈夫ですよ。ですが、心配してくれてありがとうございますベル様。さぁ、もう行きましょう!」

 

リリはそう言ってダンジョンの奥に歩いていった。僕も倒した《ニードルラビット》の魔石を拾いついて行く。

しかし...何故か最後のリリの顔は、少し悲しそうな顔をしているような気がした。

その後、僕達は数時間ほどダンジョンに潜り、いつものように別れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ...お主以外と面倒見が良いのじゃの』

 

『.....別に』

 

真っ白な銀線世界で、童子はここの新たな住人と話す。

 

『もしもこの子が死んでしまったら、私...達がどうなるかわからない...し』

 

なんだツンデレかと思う童子であったが、ソレを言えばいきなり斬りかかってくるかもしれないので、心の中にしまう。

彼女が言っているのは、先ほどのベルが《ニードルラビット》に攻撃されそうになった時のことだ。目の前の紅の髪の女性は、一瞬だけベルの体を乗っ取りその危険を排除したのだった。

 

(しかし、こやつ本当に喋らんの。まぁ、話したいというわけではないのじゃが...)

 

だとしても、この娘との会話などほとんどないに等しい。いきなりここに現れたと思えば、いつもポツンと木に寄りかかり座っているだけだった。

 

『ねぇ』

 

『!!、な、なんじゃ?』

 

そんなことを考えていると、急にこやつの方から我に話しかけてきたのだった。

というか、初めてじゃないか?こやつから我に話しかけたのは。

 

『...どうして、あなたはこの子に取り付いているの?』

 

『...どういう意味じゃ?』

 

『その言葉の意味のまま。あなたほどの力の持ち主だったら、この子を乗っ取るなんて簡単なはず。なのに何故それをしないの?私にはわかる。あなたはそんなに善人ではない』

 

いつもなら絶対に聞かないようなその娘の長文に驚いた我だったが、とりあえずその問いに答えた。

 

『まぁの、我はおぬしの言うように善人などというものの反対にいるような人物じゃ。しかし、それでベルを乗っ取る乗っ取らないの話とは関係ないじゃろ?』

 

『...あなたの魂は黒く染まっている。それは並大抵の悪行を働いた者の色じゃない。人を殺し、貪り、滅した者ではないとそんな魂にならないはず』

 

これは驚いた。どうやらこやつは魂の色が見えるらしいの。

魂というのは、最初は真っ白だ。しかし、その人物が悪行を成せばなすほど、黒く、濃く染まっていく。

そして、我というと真っ黒なはずだ。なんだって茨木童子が生きていた時代での最強角の化け物だったのだから。もちろん人を殺した人数なんて数計り知れない。

 

『我だって、もしもベルが我の力のみを頼りにするような輩であれば、即刻乗っ取って暴れまわるところじゃが...どうやらこやつは違うらしい』

 

『?』

 

『こやつは我に力をあまり頼らん。むしろ我が暇すぎて嫌になるくらいにの。こやつは自身の力で、技術で、覚悟で、敵と戦っているのじゃよ。だとしたら...そんな面白い物、見守るしかないじゃろ?おぬしもわかるはずじゃ赤いの』

 

『....』

 

『いつの時代、いつの時も...弱者が強者を貪り、喰らう。それを見るのは我ら強者の楽しみじゃよ』

 

希望とは、絶対に強者の中からは生まれない。弱く、小さい存在が強大な何かを討ち破った時のみ生まれるものだ。

ベルはまだまだ弱い。だからこそ面白く、興味が尽きないのだ。

 

『...あなたがそう言うのなら私は何も言わない。けど...もしもこの子が気に食わなくなったら...覚悟しておいて』

 

『まぁ、そんなことにはならないとは思うが...その時は我が全力でお前を止めよう。【血の魔剣】よ?』

 

『分かった。その時は相手をしてあげる【銀鬼】』

 

娘はそう言うと、我の前から立ち去った。

 

(ふふっ、ベル。お主頑張らんと...奴に喰われるぞ?)

 

童子は少し笑いながら、瞼を閉じて寝ることにしたのだった。

そして、童子自身も予想していなかった速さでベルが偉業を成し遂げるのを知るのは、まだ先の話である。

 

 

 

 

 

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