ダンジョンに夢を求めるのは間違っているだろうか   作:虎神

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11話

月が空に浮かび、地上を照らす。まるで自然の街頭だ。

僕は一人、その光の下を走る。向かう方向はダンジョン。遅い時間ではあるが、まだ人が歩いていて、それを掻き分けながら進む。

 

「はぁ、はぁ...ふぅ〜っ!」

 

走り続けること数分。僕はダンジョンの1階に立っていた。

目の先には最弱のモンスター《ゴブリン》。相手はまだ気づいていないようで、僕はそれに向かって手を突き出す。

 

(落ち着け...落ち着け...)

 

目を軽くつぶって呼吸を整える。そして、息を少し吸い込み...

 

「【ライトホーリー】!!」

 

放った。

次の瞬間、真っ白な雷のような物が自身の右手から現れる。例えるならば槍。白く輝くソレは《ゴブリン》の頭にすごい速さで飛び...

 

「え?」

 

貫通した。目の前には頭の部分が綺麗に消えた《ゴブリン》の死骸。自らが放った白いソレは壁にぶつかり砕け散った

 

「か、貫通...した?......っつ!!」

 

僕は放った右手を眺め、思わず笑みがこぼれる。

 

(使えた。僕にも魔法が使えた!!)

 

そう、心の中で大はしゃぎしまくる。そのあとの事は簡単だった。

 

「【ライトホーリー】!」

 

『グギャ!?』

 

「【ライトホーリー】!」

 

『『グギャ!?』』

 

「【ライトホーリー】!!」

 

『『『『『グギャ!!?』』』』』

 

「あははははっ!!」

 

走りながら、見つけては放つ、見つけては放つの繰り返しだった。しかも笑顔で。

そして、敵が見つからなくなり一旦立ち止まる。

 

「って、ここ5階層じゃないか。いつの間に....とりあえず戻...ってアレ?」

 

自分がどこにいるか気が付き、戻ろうとする。だが、そこで僕の体は地に落ちた。

一瞬、何が起こったのかわからなかったが、すぐに自分が倒れたのだと気が付いた。

 

(あれ...なんで、からだ...が....)

 

僕はそうして、ダンジョンのど真ん中で意識を失ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....?」

 

「どうした、アイズ」

 

5階層に二人に冒険者が足を踏み入れた。

だが、彼女たちはベルのように上からではなく下からだ。女神にさえ引けを取らない美貌を持つその冒険者は、ダンジョンのど真ん中で倒れる人影を見つける。

一人は黄金のように綺麗な金髪の髪を持つ【ロキ・ファミリア】所属、アイズ・ヴァレンシュタイン。

もう一人は透き通った緑色の髪の女性。そのファミリアの副団長を務め、このオラリオ最強の魔導士と呼ばれている、リヴェリア・リヨス・アールヴだった。

 

「人が倒れてる」

 

「...モンスターにやられたか」

 

そう言って、彼女たちは白い髪の少年に近づき、からだを調べる。

 

「この少年は..。.見たところ外傷はなし、毒なども受けている様子もないな。きっと典型的な精神疲労(マインドダウン)だろう」

 

実は、魔法とは何も代償を払わず使えるものではない。体力と反対の位置にあたる精神(マインド)。これを消費することで発動することができるのだ。

つまりはどこかの白兎みたく、何も考えず撃っていると、倒れてしまうのである。これは、魔法を扱う者として一番気をつけなければならないことなのだが...。

 

(装備から見るに、魔法が発現して、いてもたってもいられなくなったというところか)

 

リヴェリアは倒れている少年を見ながらはぁ、と息を吐く。

 

「おい、アイズ。この少年は...」

 

「うん。あの時の子」

 

「そうだな...。さて、どうしたものか」

 

リヴェリアにもこの白髪の少年には見覚えがあった。というか忘れられるわけがなかった。酒場であんなことをしたのだから。

 

(にしてもあの時はもう少し利口に見えたが...まったく。他のファミリアの団員は注意しないものなのか?)

 

再度、少年の装備を見てため息を吐くリヴェリア。それもそのはずだ。彼がつけているのは支給品のナイフが一本のみだったのだから。

規律を誰よりも重んじるリヴェリアからしたら、許されるものではなかった。

 

「ん...」

 

「む、起きるか?」

 

少年から声が聞こえ、アイズとリヴェリアは少し顔を近づける。

そして、少年の目が少し開かれた。

 

「大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

硬い地面だ。

ところどころゴツゴツしていてからだが痛い。僕は今、寝ているのか?

 

「...たか?」

 

誰かの声がする。

僕はそう思い、閉じていた目を少し開ける。そこには金色が見えた。

 

「大丈夫?」

 

ああ、この声は知っている。僕が目指し、憧れている人。

そう、名前は....

 

「...アイズ..ヴァレンシュタインさ...え?」

 

「大丈夫?どこかの痛いとこない?」

 

「アイズ、少しからだを持ち上げてやれ」

 

目の前の状況が理解できず、ベルは固まったままだ。ベルはダンジョンに出会いを求めているが、超がつくほど女性と話したことがない。

そんな女性への対抗がないベルが、女神と張り合うほどの美貌を持つ美女二人に見つめられたらどうなるか。

 

「ふぇ....ふぁ....ふぇ?」

 

もちろんこうなる。

ぼ、僕!とりあえず落ち着け!!状況を理解しろベル・クラネル。確か僕は魔法が発現して、ダンジョンに潜って、魔法撃ちまくって...そう、倒れたんだ!!

 

「つまり、これは夢ってことでいいはず!」

 

「?...何を言ってるかわからないけど...夢じゃないよ?」

 

「どうやら混乱しているみたいだな。アイズ、マジックポーションを飲ませてやれ」

 

エルフの女性がそう言い、アイズさんは僕にマジックポーションを飲ませようとする。

 

「い、いったい何が...というかなんでヴァレンシュタインさんが!!?」

 

「君はダンジョンで倒れていて、たまたま私達が見つけた。それとアイズでいいよ?」

 

100%僕が悪かった!!というか名前呼びでいいって言われた!!

 

「い、いえ、とにかく大丈夫ですからお構いな...」

 

「飲む」

 

「いえ、ですから」

 

「飲んで」

 

「いや、その...」

 

「....」

 

「飲ませていただきます」

 

アイズさんの無言の圧力に負け、僕は青いポーションを喉に通す。少し、苦かった。

 

「って、あれ?体が重くなくなった....」

 

「君は精神疲労(マインドダウン)...つまりは魔法を使いすぎたようだったからな。今飲んだのは、ソレを回復するポーションだ」

 

そうエルフの女性は答えてくれた。

だが、いっこうに状況がわからなかった。何故、僕はアイズさんに抱えられて頭を撫でられているのだろう。

 

「あ、あの...もう大丈夫ですから離してくれて....」

 

「....」

 

「あ、アイズさ〜ん?」

 

「....」

 

「こら、アイズ。そろそろ離してやれ」

 

「....もう少しだけ」

 

いや、意味がわからないですから!!?僕そろそろ恥ずかしさで死んじゃいますよ!!?

心の中でそう叫ぶが、まったくアイズさんには伝わらない。横にいたエルフの女性もやれやれと頭を抱えていた。

 

それから数分後ーー

 

「うん、満足」

 

「いや、僕としてはもう一度精神的にヤバくなりそうです」

 

「...すまんな、うちのアイズが」

 

エルフの女性はそう僕に謝ってくる。本来こちらから礼を言うはずなのに律儀な人だと思った。さすがエルフ。

 

「君は...前に酒場であの馬鹿に一発いれた少年だな?」

 

「え、あ、あの時はすいませんでした!!そ、それと今回助けていただいてなんといったらいいか...」

 

「いや、酒場での事は謝らなくていいさ。あれは私達の落ち度だった。改めて謝る、すまなかった」

 

「ごめんなさい...」

 

アイズさんとエルフの女性はそう言い頭を下げる。

こんな美女二人から頭を下げられて、ダメとかいう奴いるだろうか?いや、もしいたならそいつは男じゃない。

 

「そ、そんな、こちらこそすいませんでした」

 

...なんだこの状況。ダンジョンで女性二人と男一人が頭を下げる光景って...。

 

「そうか。許してくれたのならそれでいいが...で、時に少年?」

 

「は...っひ!?」

 

「!!」

 

「どうして、ダンジョンで...しかも装備もほとんどしないで倒れていたのだ?」

 

突如、目の前のエルフの雰囲気は一変した。顔は笑ってはいるが...目が笑っていない。

 

「え、えっとその...」

 

「君はダンジョンでいつも装備をしないまま潜るのかね?」

 

「い、いえ...」

 

「リ、リヴェリア落ち着い「アイズは黙っていろ」....」

 

アイズさーん!!?

アイズさんはその女性からの一言で黙った。そのあと僕は理由を説明し、さらにそのエルフの女性。あ、名前はリヴェリアさん、に怒られました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、わかったかベル!」

 

「はい、本当に申し訳ありませんでした」

 

僕はこれまでエイナさんが一番怖いと思っていたが...はっきり言ってリヴェリアさんのほうが何倍も怖い。

硬い地面の上に正座させられた僕は、少し涙目になっているはずだ。

 

「だが、ファミリアに自分以外いないとはな」

 

「は、はい、すいませんでした」

 

「っふ、何を謝ることがあるんだ?ベルはあんなにも自分のファミリアが言われた時に起こったじゃないか。それは誇っていいことだ。だが、二度とこんな真似はしないように。ここはダンジョンで、いつ危険があるかわからない場所だ」

 

「はい、肝にめいじておきます」

 

僕はそう言ってゆっくり立ち上がる。少し足の感覚がないが、僕の自業自得だ。

 

「じゃあ、僕はそろそろ...「待って!」あ、アイズさん?」

 

突然アイズさんに呼び止められた。

 

「あ、あの....あの時はごめんなさい」

 

「え?」

 

「ミノタウルスの時、私のせいで...」

 

....

 

「アイズさんは...」

 

「え?」

 

「アイズさんは僕の恩人です。あなたがいなかったら僕はここにいませんからね。だから...ありがとうございました。それと、あの時逃げてしまってすいませんでした」

 

そう、僕が彼女に礼を言うことがあっても、彼女がそのことについて謝る必要など全くない。

ここはダンジョンであり、いつも死と隣り合わせの場所なのだから。

 

「僕は...あなたと出会えてよか...」

 

『『『『『『グギャ!!』』』』』』

 

「「「!!」」」

 

突如、周りにモンスターの鳴き声がして武器を構える。そこには数十匹はいる《シャドウゴースト》の群れだった。

 

「少し喋りすぎたか...ベル、君はここから...」

 

「嫌ですよ。僕は逃げません」

 

「そうは言ってもだな...事実これくらい私かアイズ一人でも余裕があるんだが」

 

確かに。アイズさんはLv.5。リヴェリアさんは先ほど聞いたが、さらにその上のLv.6だ。こんな階層の敵など武器を使わないでも勝てるだろう。

でも...

 

「僕は...冒険者です」

 

「!!...そうか。アイズ、手を出すな。これはベルの冒険だ」

 

「リヴェリア、でも...あの武器でこの数は」

 

「危なくなったら手を貸してやれ。でも、それ以外は見ておいてやろう」

 

アイズからしたら、他のファミリアであるベルをここまで気にしているリヴェリアはすごく珍しいような気がしてならない。リヴェリアは、誰に対しても友好的ではあるが、ファミリア以外ではそれなりに線を引いていた。それなのに初対面のベルに向かい説教をかまし、その上、戦闘の手伝いをしてやれと言っているのだ。

 

(そんなにベルが気に入ったのかな?)

 

そう考えながら、アイズは一歩後ろに下がった。前には、心もとないナイフを持つベル一人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ...!!」

 

僕は全力で《シャドウゴースト》の群れに走り出す。

 

『グオォオ!!』

 

「【友を守ると契りをたて全てを切り伏せよ】シュゴテン!」

 

「「!!」」

 

僕は走ったまま(・・・・・)魔法を唱え速度を上げる。右手に持ったナイフでシャドウゴーストの腕を斬り、怯んだうちにもう一撃をいれる。

 

『『『グオォォォォォォ!!』』』

 

「【全てを粉砕せし力よ我が身に宿れ】コンゴウリキ」

 

向かってきた三体に威力を上げた蹴りを数発いれ、ナイフを突き刺す。その時後ろから5匹のシャドウゴーストが接近してきており、僕は急いで横に飛んで避ける。

そして、すぐさま体制を立て直し再び突っ込む。

 

「っち!はぁぁあああ!!たあ!!」

 

『グギャ!?』

 

「うぉぉおおお!!」

 

『『『『『グオォォォォォォ!!』』』』』

 

僕はシャドウゴーストの群れで暴れまくる。攻撃を避け、防ぎ、隙を見て攻撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、数が多すぎた。

 

「っぐ!」

 

『グォォオ!!』

 

背中に一撃もらい僕は体制を崩した。その瞬間、ほとんどの敵が僕に向かって集まってくる。

 

「アイズ!」

 

「うん!」

 

時間がゆっくりに見え、そのシャドウゴーストの隙間からは僕がピンチだと思ったのか、アイズさんがこちらに剣を持って向かっているのが見えた。

ああ、またか。また、僕は....

 

「そうじゃないだろ...」

 

そう呟いた時、知らない声が僕の頭に響いた。女性の声だ。

 

『違うくない、君は弱い』

 

知ってるさ。僕は弱い。

 

『なら、彼女に助けて貰えばいい』

 

いや、駄目だ。

 

『どうして?あなたは弱い。彼女よりも...ならば助けてもらってもおかしくない』

 

ああ、確かにそうかもしれない。でも...

 

『でも?』

 

僕は....男だから

 

『....そう、そこまで言うならわかったよ。少しだけ...少しだけ力を貸してあげる。だから...』

 

私を飽きさせないで?

 

「もちろん..だ!!」

 

瞬間、ベルの周りのモンスターが消えた。

 

「な、なんだ!?」

 

「...ベル?」

 

その時、二人が見たのは真っ白だった髪を真っ赤に染め上げた、ベルの姿だった。

 

「...悪い、心配かけた。...すぐ終わらす」

 

普段のベルからは考えもしない男らしい口調を使いながら、右手のナイフを前に構える。

 

「ふぅ...じゃあな、お前ら(・・・)

 

『グォォォォオオオオオオオオ!!』

 

残った20に近い数のシャドウゴーストがベルに向かって牙を向けた。

 

「【全てを喰らい尽くせ】」

 

『グォォォォオオオオオオオオ!』

 

「ロードイーター」

 

その瞬間、モンスター達の姿は何もなかった。あったものは、一人ポツンと立つ赤髪のベルの姿と。

 

「なにが...おこったんだ」

 

ベルを囲むようにくり抜かれた地面だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




できればあと2話でこの章を終わらせるつもりです。
これからも頑張っていくのでよろしくお願いします!!
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