そこは森の中だった。緑が生い茂り鳥のさえずりが聞こえる。
そして目の前の木に
青年は何か自分に向かって喋っているが僕にはその声が聞こえない。
なにかを伝えようとしている?
僕も声を出そうとするが声が出ない。そして、周りの風景が白くなっていく。すると最後に声が少し聞こえた。
『君が望むならば<¥&%#>は力を貸そう』
名前の部分がよく聞こえなかった。だが、それでこの世界は消えた。
「ん...ふぁ〜」
朝だ。いつの間にか僕は寝ていたらしい。
なにか夢を見たような....まぁ、夢だし忘れてもしょうがないか。
そうだ。僕は昨日無防備でダンジョンにいき、ボロボロになって帰ってきたところ、神様に今日はベットで寝なさいと言われベットで寝たんだった。
「やぁ、起きたかい?ベル君」
「あ、おはようございます神様今日は、早いですね?」
今の時刻は5:30。いつもなら神様はまだ寝ているはずだ。
「たまたま目が早く覚めてね.....ベル君今日もダンジョン行くのかい?」
どうやら昨日のボロボロになった僕を見て心配になっているらしい。
「はい、だって僕が強くなれるって言ってくれたのは神様ですよ?だったら僕は、それに向かって頑張ります」
「っつ....そうかい。なら絶対に約束してね。危ないことはしない、そして絶対に僕を一人にしないでね」
「もちろんですよ。僕は神様をおいて行きませんよ」
「あ、ベル君。今日ボク、夜出かけるから帰ってくるのが遅くなるんだ」
「そうなんですか?わかりました。夜冷えるかもしれないので暖かい格好で出かけてくださいね」
そろそろ行くか...
「では、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい!」
バタンとドアを閉め僕は部屋を出た。
「あぁ〜顔合わせにくいな」
僕は、ダンジョンに行く前にある場所によっているそう昨日僕がいろいろやってしまった『豊饒の女主人』の前に来ていた。
昨日のことを改めて謝りに来たのだ。
ふぅー...よし
「ご、ごめんくださーい」
僕は店の中に足を踏み入れた。
「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中です。時間を改めてお越しになっていただけないでしょうか」
「まだミャー達のお店はやってニャいのニャ」
店でテーブルにクロスをかけていたエルフの店員とキャットピープルの店員がこちらにきずいて近寄ってきた。
「すいません僕はお客じゃないです。シル・フローヴァさんはいらっしゃいますか、あと女将さんも」
「あ、お前は昨日のシルに迷惑だけかけて自分はそそくさと帰った暴力白髪男ニャ!」
「貴方は黙っていてください」
「ぶニャ!?」
キャットピープルの店員がエルフの頭に殴られ地に伏せた。
い、今拳が見えなかったぞ...。
「失礼しました今シルとミア母さんを呼んできます」
エルフの店員は地に伏せたキャットピープルの少女をズルズルと奥に引っ張っていった。
...あれ、大丈夫か?
すると奥から
「ベルさん!?」
シルさんが出てきた。
昨日の事もあり顔が見にくいが今はきちんとしないと。
「昨日は、すいませんでした。店で暴れご迷惑をかけてしまって」
「いえ、そんな...こうして戻ってきてくれただけで嬉しいです」
この人は昨日のようにて笑顔でこちらを見て微笑む。自分のためにこんな思ってくれるなんて涙が出そうだ。
「坊主が来てるって?シルあんたは、仕事に戻りな」
カウンター奥から女将ーミアさんが出てきた。僕なんかより断然でかいその体に僕は少し仰け反った。シルさんがはいと言い仕事に戻った
そして僕は頭を下げ
「昨日はこのお店にご迷惑をかけてしまって本当に申し訳ありませんでした!」
首が千切れんばかりに思いっきり頭を下げた。
「ハハハハハ!!なんだいそんなことを言いに来たのかい?」
「い、いえあんなことをしてそんなこととは思えなくて」
僕が殴り飛ばした時酒の瓶が何本か割れていたような気もする。
「まぁ、昨日のあれは坊主だけが悪いんじゃないんだ。別に気にすることじゃないよ。しかし、シルに礼を言っておきなよ?うちには血の気が多い奴が多いからもしシルが止めなきゃ今頃あんた池に浮かんでいるよ?」
ま、まじか....
そのあと聞くと、シルさんは僕を追いかけてくれたらしく、しかし会えなかったため塞ぎ込んでしまい先ほどのエルフの店員リューと言う少女が、真剣を持って僕を斬ろうと出て行こうとしたらしい。
ぼ、僕って結構危ない橋を渡っていた?
「坊主」
「なんですか?」
「冒険者なんてカッコつけても無駄な職業だ。結局最後までその足で立って私の店で酒を飲む...な?これだけで勝ち組だろ?」
!!...そうだよな惨めでも鈍臭くても最後に立ってた奴が勝ちなんだ僕はいったい何を焦ってたんだろ。
「いい顔になったね。ま、この話は一旦終わりだ!次は....大人の話をしようかね?」
え?
「坊主が殴った時に割れた酒代はロキの方が出してくれたが...皿も何枚か割れててねぇ?」
....え?
「さぁて...どうするんだい?」
ええええぇぇぇぇぇ!!?
さっきまでいい雰囲気だったのにいきなりこんな話になるの!?
こ、これが大人のやり口か!!?
「え、えっとちなみにおいくら...「15000ヴァリス」うわっほい!?」
15000ヴァリス!?今持っているお金でも足りないですよ!!?
まずい、お金はありませんなんて言えるわけないし....あ、僕終わった。
「....はぁ〜、その様子じゃ持ち合わせないようだね。あんた今からダンジョンに行くのかい?」
「は、はいそのつもり....でした」
僕は最悪このまま警察にゴーしなきゃいけないけど....
「しょうがないね」
ま、まさか待ってくれーーー
「はいこれ」
「え?」
渡されたのはモップだった。
「ダンジョンに行くのを少し遅らせな。今は店の手伝いをするんだ、わかったね?」
「え、でも....」
「返事は!!」
「は、はい!!りょ、了解しました女将さん!!!」
いきなり声を上げられ少し声が裏返ったのを聞いてシルさんの笑い声がかすかに聞こえた。
....ひどい、で、でもこれも僕のせいだ今はきちんとやることをやろう!。
「じゃ、あとはリューに教えてもらいな」
そういい先ほどのエルフの店員をもう一度指差すミアさん。
え?でもあの人真剣持って僕を追いかけようとした人ですよね?本当に大丈夫、僕!?
しかしミアさんはそれを言うとカウンター奥に入ってしまった。
と、とりあえず話しかけないと。
「あ、あの....」
「...はい、なんですか?」
そういいこちらを向いたエルフの店員さん。
やっぱりすごく綺麗な方だった。顔は無表情だが、それぞれのパーツが整っている。
エルフだからだろうか制服の緑が似合い立ち振る舞いも凄く凛としていた。
「ミアさんがリューさんに教えてもらえと言われまして」
...っは!つい名前で呼んでしまった。おじいちゃんにエルフはプライドが高いって聞いていたしもしかしたら「名前で呼ばないでくれますか」とか言われたら僕立ち直れる自信ないよ!?
「そうですか、でしたらモップでそこの隅をやってくれますか」
「え、あ、はい」
あれ?なんにも言われないかった。
そして僕は言われたところとついでにその周りも掃除した。
「おわりました。次に何すればいいですか?」
「....もう、終わったのですか?」
そういいリューさんは僕の掃除したとこを点検した。
そして
「はい、ちゃんとできています。早いですね」
「え、い、いやー...そんなことないですよ。ただ慣れてるだけです」
「ふふ、褒めているのですよ。面白い人ですね」
っつ...一瞬笑ったその顔に僕は目を奪われてしまった。美人のエルフが微笑むともはや凶器だな。
そのあとクロスがけ皿洗い在庫補充にその他いろいろリューさんのもと手伝って今は昼過ぎだった。
「ふぅ〜、さすがに疲れた...」
「お疲れだねぇどうだいやってみて」
いつの間にか立っていたミアさんに声をかけられ椅子に乗っけていた尻を上げた。
「い、いえ楽しいかぎりであります!!」
「ガハハハ、でかい口叩くんじゃないよ」
ミアさんは僕の背中をバンバン叩いてくる。
「痛い痛い!痛いですよミアさん!?」
「男が小さいこと言うんじゃないよ」
理不尽だ。
「まったく....でも、やっぱりこういうのいいですね」
「ん?なにがだい?」
そうミアさんが聞いてきたので僕は向こうに座って喋っているシルさんたちに目を向けた。
「ああやって仲のいい人と喋り、このお店にくる人とも喋り笑顔にする。そして料理やお酒などと一緒に笑顔も届ける。本当に凄い人ですねシルさん達は。僕は、こんな性格なので真似できそうにありません」
「....人ってものはね、誰しも一つはなにか重い物を抱えて生きてるんだよ。でもそれをほっておくんじゃなく、どうすればいいかなどを考えて生きていくもんだ。....あの子達だって何かしら抱えてるんだよ。それでも今、ああして笑顔になっている。私はそれだけで満足さ。だからね坊主、きっとお前にも何か転機があるはずだよ。その時に坊主がそれを乗り越えるのかが問題なんだよ。だから...そのチャンスきっと手にしなよ?」
「....はい!」
僕はミアさんの言葉をよく聞きおそらく、生きている限り耳に残るであろうその話を心の中にしまった。
「ま、これでとりあえず借金はチャラにしといてやるよ。またきなよ、今度は喧嘩すんじゃないよ」
「はい、いろいろありがとうございました「ベルさん!」ん?」
「これ、どうぞまだお昼食べていないでしょう?だから受け取ってください」
「でもこれ....」
「いいんですよ。もしお腹が減ってダンジョンで倒れたりしたら大変ですもん!」
いやいや、一食抜いただけでそんなのにはならないと思うけど...
「....では、ありがたくもらっていきます」
「はい!」
「あ、シルさん」
僕は店を出ようとした時にもう一度後ろを振り向きシルさんに呼びかけた。
「はい?」
「僕はシルさんい出会えて本当に良かったです。僕のために落ち込んでくれたりもして...本当にありがとうございます!」
「は、はいこちらこそ...」
あはは、やっぱり可愛い人だな。
「では、また今度」
僕はそういい店を出た。