【ヘファイストス・ファミリア】
それはここオラリオで、最大規模の鍛冶を主に扱うファミリアであり、バベルのうえにある武器売り場だ。幾多の鍛冶職人が切磋琢磨するそこは、数多くの冒険者に大人気である。
そして、このファミリアは主神ヘファイストス。赤く炎のような色の髪を持ち、右目に眼帯をつけているが、それでもなお彼女の美貌は凄まじく、同じ女性でも目を奪われるだろう。
そして、今ボクはそんな彼女の目の前で頭を下げている状態だった。
「ヘスティア、あなたいつまでそうしている気?仕事の邪魔なんだけど」
「.......」
「....はぁ、それにその格好はなに?」
「土下座タケミカヅチが教えてくれた。物を頼むときの最終手段だって」
「あいつは....ねぇ、どうしてあなたはそこまでしているの?」
「ボクは....ボクはベルくんの力になりたい!今あの子は本気で強くなろうとしている。でもボクはそれを見ているだけしかできない!ボクは今、一方的に養ってもらうだけだ。でも!ボクだって彼の...ベルくんの主神だ。だから胸を張って彼の力になってあげたいんだ!!」
「....」
ヘスティアはファミリアを作る前、ヘファイストスのとこで居候もといニート生活をしていた。だからこそ彼女が変わったと一番分かっているのはヘファイストス自身であった。
いつもあんなにグーたらしていたヘスティアが、自分からなにもしなかったこの子が、自身の子のために頭を下げ、その彼の主神と誇りたいと言ってきたのだ。
ヘファイストスはそれが嬉しかった。
「....はぁ〜、もうわかったわよ!ただし、お金はどれだけかかっても返しなさい!」
「っつ!い、いいのかい?」
「あなた私がいいというまでそこにいるでしょう?なら、早くどいて欲しいのよ」
「あ、ありがとうヘファイストス!!って、うわ!?」
「危ない!」
ヘスティアはずっと正座していたため、急に立ち上がろうとして転びかけるが、ヘファイストスが胸を抱えた。
えへへ、とヘスティアは少し恥ずかしそうに笑っている。
「まったく...で、あなたの子はいったい
「ま、まさか君が打ってくれるのかい!?」
「あんたと私のプライベートを子供たちに任せられるわけないでしょう....」
「いや違うんだよ!ボクは君に打ってほしいんだから!!
そう言ってくれるとお世辞にも嬉しくなる。
「えっとベルくんの武器は....」
「どうしたのよ、まさか使っているものがわからないなんて言わないわよね?」
使っていない武器を使わすなんて危ないし武器にも失礼だ。
「え、違うんだよ。ただ...」
「なによ」
「前にベルくんが言ってたんだ《僕はナイフも使えますけど、普通の直剣も同じくらい使えますよ》って」
ナイフと剣も使える....どうしようか。
そう悩んでいると、前にいたヘスティアがポンと手を叩いた。
「あ、そうだ。いっそのこと二本つくってしまえばいいんだ!」
「は?」
自分でも驚くくらい低い声が出た。
「あ、いや何でもないです」
シュンとするヘスティアだったが、それでも迷う。どちらも同じくらい使えるからといっても、少しは偏りがあるはずだ。
「...あぁ〜もう!わかったわ。両方作るけど値段も倍だからね!?」
ほぼヤケクソだ。
「ま、マジでかい!!?なんかもうヤケクソになって...「なってるわよ!!」だよね!?」
冒険者にとって、武器は最も大事な命綱。少しでも使い慣れないのなら、作っても意味がないのだ。
「さぁ、作るからあなたも手伝いなさい」
私は奥にある自分用の鍛冶場の扉を開けそう言った。
ヘスティアは、うん!と元気一杯に答えながらついてくる。
ほんと私って、この子に甘いわね。
駆け出しに持たせる第一級武器。
「さて、どうしようかしら?」
自分に対する呆れの方が大きいが、この初めてする作業に、心なしか私は胸が踊っていた。
「んー、神様いつ帰ってくるんだろ?」
神様が家を出かけもう3日目だ。必ず帰ると言っていたから大丈夫だと思うけど....。
先ほど神様と仲がいい【ミアハ・ファミリア】の主神、ミアハ様に出会いポーションをいくつか分けてもらった時に、神様のことを聞いたがとくに知らないと言われた。
しかし、帰ってきた時に「お金が溜まりました」などと報告できる方がいいだろう。
よし、ならもうちょっと頑張ろう!。
「おーい待つにゃ、そこの白髪頭!」
「誰が白髪頭だ!?」
失礼この上ないその声の方向を見ていると【豊饟の女主人】で見たことがあるキャットピープルの女の子が、こちらに手を振っていた。
一応、周りに他の白い髪の人を探したが、いなかったため、ため息を漏らしながら彼女に近づく。
「おはようございますにゃ。いきなり呼び止めて悪かったにゃ」
「あ、いえ、おはようございます。何かご用ですか?」
「ちょっと面倒にゃことを頼むにゃ。はいこれ」
「へ?」
渡されたのはお金が入っているだろうがま口財布だった。
「えーとこれは...」
「白髪頭はシルのマブダチニャ。だからコレをあのおっちょこちょいに渡してほしいにゃ」
「すみません話が見えません」
全く話の内容がわからない。届けろ?シルさんにということだろうか?
「アーニャ。それでは説明不十分ですクラネルさんも困っています」
すると、そんな様子を見兼ねてか、店の奥からエルフの店員、リューさんが出てきた。
余談だが僕はこのリューさんに名前を呼ばれ少しばかり感動している。
「リューはバカにゃー。店番サボって祭り見に行ったシルに、忘れた財布を届けてほしいって言ってることくらい言わなくてもわかるにゃ」
「と、いうわけです。すいません言葉足らずで」
「あ、いえ、ようやくわかりました。というかシルさん店をサボったんですか?」
「いえ、きちんと休息をもらって行きましたので、サボっていませんよ」
「リューってば本当にバカだにゃ。この忙しい時にどこかに行くのはサボったと同じなのにゃ!」
うわ、凄い理論。
「まったくあなたは...後でバカといった回数分だけやり返します」
「うにゃ!!?」
今小声で何か言ったような気がするが、僕はなにも聞こえていない。うんちょっと声のトーンが低い言葉など聞こえていない。
「まぁ、わかりました。そういえばお祭りっってなんですか?」
「ああ、
「あはは...オラリオに来てまだ3ヶ月ぐらいなものですから」
「だったら、ニャーが教えてやるにゃ!
調教...ああ、
「で、ダンジョンのモンスターは調教しにくいから...」
「それを見世物にするってことですね」
「そゆことにゃー!」
でも、よくモンスターを見世物きするとか考えたなぁ。やはり神様の考えることは違うな。
「本当は、ニャー達だって行きたいにゃ。でも母ちゃんが許してくれないのにゃ。そんでシルにおみあげ買ってきてくれって頼んでのに、財布を忘れるという事態にゃ。まったくシルはおっちょこちょいだにゃ」
「アーニャ、あなたが言えたことではありませんよ」
エルフって身内に容赦がないな...。
とにかく、内容はよくわかった。
「わかりました。では行ってきます」
「はい、闘技場の東メインストリートはすでに混雑していますから、その波に流れていけば現地に苦なくつくはずです」
「シルは今行ったばかりだから早く行ったら追いつくにゃ〜」
そう言われ僕はもう一度頭を下げ、シルさんを探しに行った。
「ところでアーニャあなたがバカといった回数分...覚えてますね?」
「え?ちょ、ちょっと待つにゃ!?リュー許し...ぎにゃぁぁぁぁあああああ!!?」
僕はなにも聞こえていない。