最新話です!
「...ん...。」
朝の光が射し込み、目が覚める。いつの間にか寝てしまっていた、と気づくのに5秒とかからなかった。
意識がハッキリした頃に、昨日あったことを思い出す。
気がつけば背後に中年女性。
そして何故かその女性に恐怖を覚えていた。
...何故ならその女性こそ、俺を轢き殺そうとした張本人なのだから。
「...どうなるんだ...。」
ただ天井に、そう呟く。
答えが返ってこないのも分かっている。
だが、それほど参ってしまっているのだ。
守ると誓ったツバサちゃんを、本当に守りきれるのか。
...そもそも、俺自身生きて帰ってこれるのかどうかも分からない。
相手は俺を轢き殺そうとしたほどのサイコパス。
こう言ってはなんだが、平気で人を殺せるほど狂っているはず。
そんなヤツ相手に、俺が敵うのかどうか。
わかるはずもない。
だが、一つだけハッキリしていることがある。
「 "やれるだけやるしかない" んだよなぁ...。」
そう、やれるだけやるしかない。
敵わなかったとしても。例え俺が死んだとしても。
...なんとかしてツバサちゃんを守りたい。
そして少し横を見る。
「...スゥ...」
「...いたのか...。」
ふと何気なく横を見ると、そこには俺の腕を抱きかかえたツバサちゃんがいた。
...ちなみに寝ている。
幸い今日は休日。
...昨日のことをじっくり考えることの出来る、いい機会だ。
どうケリつけるかも、考えてやる。
1時間後
「...ハッ!?」
どうケリつけるかも、考えてやる(キリッ)。
そう言ったにも関わらず1時間も寝ていた。
自分のマヌケっぷりに呆れるばかり。
そのことに頭を抱えていると、彼女が丁度起きた。
「...ん...。」
「あぁ、ごめん。起こしたか?」
「いえ...大丈夫よ...。」
そう言って体を起こす彼女。
だが今日に限って様子が変。
いつもなら笑顔でおはよう、と返してくれる筈なのだが今日はそれがない。
それに笑顔が消えている。
...俺はそのことが気になり、理由を聞いてみることにした。
「...何かあったのか?」
「え!?...えぇ、嫌な夢を...ね...。」
「へぇ、どんな夢だったんだ?」
「...。
私があなたを忘れてしまう夢。」
「ゆ、ゆゆゆゆゆ夢だろ?そそそんなの」
「動揺しすぎじゃないかしら...。」
そりゃそうだ。こんなに一緒だったのに忘れられる。
そんなことあってたまるか。
そんなツッコミを胸に押さえ込みながら、続きを話すように促す。
「しかもね...。
あなたが...殺されちゃったの...。」
「えまってこわい」
本当にシャレにならないのだ。
...つい昨日、身近に現れたばかりなのだから。
やれるだけやる。
そうじゃない。 "絶対に無事で帰る" 。
彼女の目に浮かぶ涙を見て。
そう、決意が変わった瞬間だった。
「大丈夫だよ...。絶対に死なないから、な?」
「...えぇ...。」
...だが、何故だろうか。
ここまで決意を固めても。
ここまで守ると誓っても。
不安や恐怖が残るのは。
...彼女は一人になりたいと言い、家に戻った。
しっかり鍵を閉めろ、誰か来ても扉を開けるな。
そんな親のようなことを言っておいたが...。
やはり心配ではあるのだ。
理由を聞いても
「大丈夫だから」。この一点張り。
これ以上押し問答のようなことが続いても意味がない。
そう思い、俺は彼女を家に帰した。
...ちなみに俺はというと、不運なことが起こらないようにと、神社に来ている。
少しでも保険がある方がいい。
ご利益など信じない主義だが、この時だけはご利益にすがりたかったのだ。
賽銭箱にお金を投げ込み、手をあわせる。
...彼女を守りきれますように。
...ただ、そう願った。
「...へぇ...。熱心にお参りしとるねぇ。」
「...えぇ。色々ありまして。」
話しかけてきたのは紫の髪をした巫女さん。
年は俺と同じくらいか。
「...そやなぁ...。辛い過去やね。」
「...わかるんです?」
「うん、ぜーんぶ、ね。」
そう言って巫女さんは、ニッコリと微笑む。
本当に何でもお見通しなのかと怖さを感じたが...。
だが、詳細までは分からない筈だ。
こんな過去を、誰にも知られたくない。
何故かそう思ってしまう自分がいたのだ。
なのに...。
「いじめをかばって、一生守るって誓ったんやね。かっこいいやん!」
「...何者だ、アンタ。」
正直なところ、俺は今疑心暗鬼なのだ。
昨日あんなことを言われた時から、誰かがグルなのではないか。
そう考えてしまうのだ。
「ウチは占いが得意でな。なんでも分かってしまうんや。
...一つだけ言っとくね。
まだまだ辛いことは続くよ?」
彼女は真顔になり、俺もそう言う。
一瞬周りの空気が凍ったかのように感じるほど、冷たい視線だった。
「そんなこと知ってるさ。そういうもんだろ、人生って。」
「...ふふっ、まあそうやな。」
「まあ...忠告ありがとな。肝に銘じとく。」
そう言って片手を上げ、その場から立ち去ろうとする。
すると。
「待って!」
「ん?」
急に呼び止められた。俺はそれに反応し、後ろを振り返る。
「ウチは東條 希!キミは?」
「俺は相沢 駿だ。」
名を名乗り返すと、彼女はとても嬉しそうな笑顔を見せる。
「そしたら駿くん!!良いこと教えてあげる!
...お参りは効果あったみたいやで!」
「...そうか。朗報だな、そりゃ...!」
柄にもなく喜んでしまう。もしかしたらデタラメかもしれない。
なのに、信じたくなってしまう。
何故だかわからないが、彼女と一緒にいてそう思った。
「じゃあな、希。」
「うんっ!また来てな!」
そう言って小さく手を振る彼女に、俺も手を振り返した。
「...お参りは効果あり、かぁ。...ラッキーだな、ホント。」
彼女に言われたその言葉がどうしようもなく嬉しい。
まだ良いことが起こると決まったわけでもないのに、何故か妙な安心感を感じてしまったのだ。
「あれが巫女さんのパワーなのか...。」
そんな意味不明なことを言いながら帰路につく。
少し信じてみてもいいかな、なんて。そう思えたのだった。
「...あんなこと言っちゃったけど...。
...ホントは、悪い運勢が出てるんよ...。
でも、未来は切り開くもの。
駿くん、楽しみにしてるで。」
そう、私は彼に嘘をついてしまった。
本当はとても悪い運命しか見えなかったのに、安心させてあげたい。その気持ちの方が勝り、その結果、偽ってしまった。
こんなもの、優しさなんかじゃない。
...自己満足だというのはわかっている。
だが。
「...あそこまで辛い過去を抱えてる人は初めてや...。
...ウチなんかよりもずっと...辛い...。」
そう、空に向かって呟くのだった。
帰ってみるとツバサちゃんは落ち着いた様子を見せた。
「もう大丈夫よ!」
そう言った彼女の顔は先ほどより数倍元気に見えた。
「そうか!明日も学校だし、今日は早く寝よう!」
「えぇ!」
そこからはいつも通り、晩飯を食べ、風呂に入り、ベッドに入る。
ツバサちゃんも疲れたのか、すぐに寝ているようだった。
この寝顔を見ていると、だんだんと昨日のことが信じられなくなってくる。
それに一層、守らなきゃ、という気持ちになったのだった。
「...明日からが本番って、占いは言うとった...。
頑張ってや、駿くん。...死なないで。」
怪しいですねぇ...これは怪しい。
のんたんの母性にくるまれたい人生だった。
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