やったぜ。
長かったですね...。
ではどうぞ!
「それが、 "俺の復讐だ" !!!」
ヤツに向かって、そう叫ぶ。聴く人にとっては怒りの咆哮にも聞こえるだろう。
俺の叫びは力強く、どこか虚しさも持ち合わせ、倉庫内をこだました。
ツバサちゃんを守ることが出来た。そのことで安心してしまったのだろう。
...その安心が落とし穴になるとも知らずに。
「へぇ...。身を呈して守るのがお前の復讐か...。
...だが痛いんじゃないか?...全身がそんなザマじゃあねぇ...?」
ヤツは嘲笑も交えながら冷酷にそう言い放つ。
確かに痛い。全身は擦り切れ、左肩に至っては脱臼している始末。
誰が見てもボロボロだ。そう答えるだろう。
「...ボロボロだからどうした。俺は死んでもこの子を守るって決めたんだ。」
命を投げ打ってでも守ると決めた。
...いじめられていて、悲しい顔ばかりしていた彼女。
なのに今はどうだ。
とても素敵な笑顔ばかり見せてくれる。
これからも辛いことはあるだろうが、それを二人で乗り越えると決めたんだ。
「だから...お前に復讐なんかさせない!!」
「...ほう...。そうか...。残念だな...。」
そうしてヤツは階段を降りてくる。
一段...また一段と。残り段数は、あと僅か。
「...ツバサちゃん、下がって。」
「...嫌!」
彼女は珍しく拒否をした。
...だが今は一刻を争う。俺は焦りを感じつつ、彼女にもう一度同じことを言う。
「...向こうに智樹や大輝がいるから。行ってくれ、頼む。」
「嫌!」
また彼女は拒否をする。
残り段数はもう無いに等しい。...悠長にしている暇はない。
悪気を感じつつ...。
「行け!!!!」
...怒鳴ってしまった。
彼女は俺のことを思って行かないことを選んだかもしれないのに。
...それが彼女にとっての優しさだったかもしれないのに。
だがこれは効果があったようだ。
彼女は渋々と向こう側へ歩いて行く。
「...怒鳴ってごめん。絶対に、そっちに行くから...待っててくれ...。」
怒鳴ったことを謝るとともに、彼女の不安を取り除こうと、こう発した。
彼女は物悲しそうな顔で振り向いた後、優しく微笑み。
「...うん、待ってる。」
そう、優しく。だけど力強く、そう言った。
彼女が向こう側へ歩いて行くのを確認し、正面に向き直る。
ヤツは階段を降りきった。俺の正面に、どんどんと歩いてくる。
...まるで足踏みの地響きで、心臓が揺らされているかのように。
...俺の鼓動は、早鐘を打ち始めた。
「...私の復讐を邪魔するなら、まずはお前だな。」
「フッ、やってみろよ...!」
そう言って格好ばかりのファイティングポーズを取る。
肩も動かない。全身が痛い。
...だが、負けたくない。
「...そうか...。なら遠慮なく...っと!!!」
「っ!!」
ヤツは近くに予め置いてあったであろう鉄パイプを、こちらに振り回す。
何とかバックステップで躱し、大輝の方を向く。
「大輝!!...っ!警察を!!智樹はツバサちゃんを!」
「「わかった!!」」
ギリギリのところで躱しながら智樹と大輝に手伝ってもらう。
警察が来れば、コイツも大人しくなるはず。
それまで、何とか耐えないと。
「避けるだけなのか!?」
そう言ってヤツは鉄パイプを振るスピードを、段々と上げていく。
少しずつ後ろに避け、誘導する。
数分間バックステップをし続けていると、やがて壁にぶつかる。
...実は、これがチャンス。
ここには、角材を纏めてあるケースがあるのだ。
...その一本を手に取る。
「...くそっ...。」
「口だけだなぁオイ!!」
そして勢いよく、鉄パイプを上から振り下ろす。
...今!
「そうっ...かもなッ!!」ヒュッ
振り下ろす瞬間に斜め前へ進む。
すると鉄パイプが壁に直撃し、隙が出来た。
その無防備な背中に1発、角材の打撃を叩き込む。
「ぐっ!?...げほっ!!げほっ...!」
これで少しだけだが、肺に衝撃が行き、息が苦しくなったはず。
そこで相手に背中を見せ、安心できる距離まで走る。
「...口だけなのは...どっちだよ...。」
「駿ちゃん!警察呼んだで!!すぐに到着するはずや!!」
「わかった...って、うぉっ!?」
「クソォォォ!!!」
ヤツはいつの間にかこちらに近づき、横振りの打撃を与えてくる。
なんとかしゃがみで避けることはできたが、ヤツも必死のはず。
...ということは、もっと攻撃頻度が上がるはずだ。
しゃがんだ後にまたバックステップ。
そして一気に距離を取る。
「...ッ!?マジか!?」
...だがヤツもそのパターンが読めていたのか、同時に前進し、距離を詰めてくる。
今までの攻撃方法から考えると、上から振り下ろすか、横振りのはずだ。
そう考え、心構えをしていた。
...だが、読まれていたのは、俺の方だった。
「ぐぁっ!?」ゴスッ
...ヤツは鉄パイプを振ると見せかけ、俺の鳩尾に突いてきたのだ。
苦しさに耐え切れず、その場にうずくまってしまう。
その間にもヤツは、鉄パイプを振り上げ、俺の胴体に落とす。
「があああああっ!!!!」バキッ
「駿くん!!」
ツバサちゃんの叫ぶ声が、微かに聞こえる。
...だが段々と目の前が暗くなってきた。
約束を、果たせなかった。
彼女を絶対に守ると誓ったのに。
それを心残りに俺は...。
静かに、目を閉じた。
「いやああああああああああ!!!」
「うああああああああああっ!!!!!!」グシャァッ
「がっ...!」
目を閉じた瞬間に聞こえたのは。
ツバサちゃんの悲鳴と、智樹の、叫び声。
そして、誰かが倒れる音。
「...や...っちまった...。お...俺が...殺した...のか...?」
まだ意識が残っている。最後の力を振り絞り、目を開く。
そこには、真っ赤に染まり、自分の手を驚嘆の目で見ている智樹の姿があった。
奥には倒れているツバサちゃんの姿が。
「...とも...き...。」
腹の底から声を出しても、出るのは虫の羽音ほどの大きさの声。
「し...駿...。やっちまった...っ!!俺っ!お前が危ないって思って!信じてくれって!!!!」
「...あ...あ...。ごめん...な...?」
彼が俺を守ってくれたのは分かっている。
...俺の初めての、親友なのだから。
だが、タイミングが悪すぎたのだ。
「警察だ!!武器を捨てろ!!」
「...えっ...?」
「お前の事だ!!」
「ひっ...!」
智樹は、完全に怯えてしまっている。
警察官に武器を下ろせと言われ、手に持っていた鉄パイプを落とす。
その瞬間、警察官がぞろぞろとなだれ込んできた。
...智樹に向かって。
「ち、違う!!俺じゃない!!嫌だあああああああ!!!!!!!!」
警察官たちは、智樹を取り押さえ、手錠をかける。
...そして倉庫の外まで連れて行く。
「とも...き...は...!ち...がう...!!!」
俺は、この言葉をずっと繰り返し続けた。
...彼が戻ってきてくれるのなら1億回でも、10億回でも言ってやる。
...だが、皮肉にも俺を助けてくれた恩人は、犯人扱いされてしまった。
「智樹は違う。」
俺が言いたかった言葉。だが、声が出ない。
その無力な声は、誰にも届くことなく。
空気に、溶け込むだけだった。
大変だ大変だ。
さて、次は悲しい番外編を。
...先にお気に入り300記念をしようかな?w
どちらかがきますよ〜