ラブライブ! 過去と今   作:頭文字F

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38話です!




第38話 ヒーロー

 

 

 

「...ふぁぁ...眠いな...。」

 

 

夕日に見守られながら、ツバサちゃんの記憶が戻ったことを喜び合ったのは、もう昨日のこと。

 

自分の病室に戻れ、と看護婦さんに怒られ、俺が渋々と帰ってきたときには、夕日は沈んでいた。

消えないで夕日、戻ってきて夕日。...そんな気持ちを胸にしまいながらあっという間に寝てしまった。

 

そして現在、午前9時。

内臓の病気など、そういったものを患った患者は午前6時に採血の時間として叩き起こされる。

だが、俺は内臓系の病気じゃないんだなぁ。それゆえ、俺は寝ていても放置されている。

起こしてくれなきゃナマケモノになってしまう。

木にしがみつける様になってしまう。

 

重たい瞼を無理やりにでも開き、目の焦点を合わせる。

その瞬間、ある人物が病室を訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...駿...大丈夫か...?」

 

「...お前の方が大丈夫かよ...智樹...。」

 

「...大丈夫...じゃ、ないな...。」

 

 

...痩せ細り、目の焦点も合っていない、変わり果てた親友だった。

 

 

「...なんか、良いことあったのか?」

 

「あ、あぁ。ツバサちゃんの記憶が戻ったんだ。」

 

「おぉ!おめでとう!今度どっか飯食いに行こうぜ!」

 

 

そう言って無理やり笑顔を作る智樹。

そこには以前まであった無邪気さ、何より、楽しさが感じられなかった。

切れかかった電球のような、そんな笑顔を浮かべたのだ。

 

 

「ありがとう。...んで、智樹はどうしたんだよ?」

 

「...そうだな...。この苦しみから解放される...楽になれる、方法を見つけた。」

 

「...やっぱり、きついよな...。ごめんな、智樹...。」

 

 

このとき俺は、苦しみ、というワードにトラウマを持っていた。

...俺を守るために、智樹が苦しみを背負ってしまった。それゆえ、智樹は変わり果ててしまったのだから。

 

 

「...駿は悪くない。...悪いのは俺なんだよ...。」

 

「...智樹...?」

 

 

目が見開かれ、尋常ではない冷や汗を流している智樹の姿に、俺は恐る恐る名前を呼んでみる。

すると、智樹の口から出てきたのは。

 

 

「...毎晩毎晩あの時の事が夢に出る...。...しかも殴って殺しちまった後は...起き上がって...俺に...っ!!」

 

「落ち着け!!」

 

 

智樹は全ての出来事から目を背けたい、そう言うかのように顔を、爪を立てた手で覆った。

そしてその中からは、嗚咽が聞こえる。

 

まるで、決して出ることの出来ない檻に入れられた、囚人のように。

 

 

「大丈夫だ!もう終わった!!」

 

 

咄嗟の言葉。

...だが、この言葉のせいなのかもしれない。

 

 

「...そう...だよな...今日でこの苦しみから...。」

 

 

「駿、元気付けようとしてくれて、ありがとうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、さようなら。」

 

 

俺には最後まで、意味がわからなかった。

さようなら。この部分が、特に。

 

 

だが直ぐに、分かることになる。

 

希望の夕日は、昇るのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

智樹が俺の病室から出て行った後、一人で智樹の言葉を思い返していた。

ずっと、さようなら、の部分がリフレイン。

何度も何度も、俺の頭に刻み込まれる。

 

一体どういう意味だったのか。

今でも全くわからない。

 

そうして頭を抱えていると。

 

 

「駿くん、お邪魔します。」

 

「ツバサちゃん...なんでそんなに畏まってんの...。」

 

「雰囲気よ、雰囲気!」

 

 

今度はツバサちゃんが病室に。

そこから他愛もない話をする。

 

入院生活が辛かっただとか、学校へ全く行けていないだとか。

自虐をしては、二人で笑いあう。

 

そんな時間を過ごしていると。

 

...何か、嫌な予感がしたのだ。

 

そう感じている俺の気持ちを、ツバサちゃんは読み取ったようで。

 

 

「...どうかしたの?」

 

「...何か...嫌な予感がして...。」

 

「...嫌な予感?」

 

 

ツバサちゃんが首を傾げる。

自分でも何を言っているのか分からない。

...だけど。

 

 

 

 

"あの時" のような、そんな雰囲気を感じてしまうのだ。

 

昨日、あんなに励ましてくれた夕日も、今日は見えない。

...それに、どちらかというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は、"絶望" の夕日しか出ない筈。

 

 

だって。窓の外を見た時に見えたのは。

 

 

「...!?智樹ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上の柵を乗り越えようとする、智樹の姿が見えたのだから。

 

俺はそれを見た途端、扉を乱暴に開け、病室を飛び出す。

ツバサちゃんは何があったか分からない様子だが、こちらについて来ていた。

 

未だに "?" が浮かんでいる彼女だったが、俺の焦燥感を目の当たりにし、何も聞かないでいてくれていた。

 

走って向かう先は、屋上。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「智樹ッ!!!」

 

 

半ばタックルの様な形で、屋上のドアを無理やり開く。

その行為に智樹は驚く様子も見せず、器用なことに此方へ向き直る。

 

 

「...駿。」

 

「こんなことやめろって!!」

 

「...速いっ...わ...よ...え!?加藤...くん!?」

 

 

ツバサちゃんも後から追いつく。

その顔は恐怖に怯え、そして焦っている。

 

俺はその間にも説得を続ける。

無駄なことかもしれない。が、時間は稼げるかもしれない。

そんな淡い希望を持ちながら。

 

 

「...お前、あの時のこと覚えてるか?...俺を助けてくれた日のこと。」

 

「...幼稚園の時か...。」

 

「そうだ。...あの時、お前のことをすっげぇカッコいいって思ったんだ...。」

 

 

一呼吸置き、でも。と繋げる。

その間俺は、智樹のいる方へジリジリと近づいていく。

 

 

「...でも。今はどうだ?...俺の知ってるお前は、自分から命を投げ捨てない筈だ。人の幸せを何よりも喜ぶ奴だった筈だ!」

 

「...変わるんだよ。」

 

「ああ変わった!悪い方向にな!!」

 

「...っ...。」

 

 

そうだ。俺はこいつに憧れて。

 

 

「俺はお前に会って初めて、人を救いたいって思ったんだ!...だから...今度は!」

 

 

こいつに憧れたからこそ。俺は。

 

 

「今度は俺が、お前を助ける!!」

 

 

智樹に向かって一直線に、その言葉をぶつけた。

何も間違った事なんて言ってない。俺は、こいつを助けたい。

そう思ったのだから。

...いわば、恩返し。

 

その気持ちを、今。

 

 

「だから、そんなことやめてくれ!!!俺の "ヒーロー" !!!!」

 

 

ありったけ、ぶつけてやる。

 

...その結果は。

 

 

「...そうか...俺は...お前にとってのヒーロー...だったのか...。

...でも、人を殺すヒーローなんて...いやしない。」

 

 

...暗い表情。暗い言葉。

 

 

「...世の中は罪と罰で成り立ってるんだよ。...だから、これは俺に対する "罰" 。」

 

 

...彼は、柵越しに俺に、そう告げる。

"こっち側" と "向こう側" が、まるで別世界のようだった。

 

"よう" じゃない。"別世界" だ。

 

 

「だから...ありがとう、駿。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、ありがとう。」

 

タンッ!

 

響くのは、無機質な音。

 

 

少年は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院から、飛び降りた。

 

 

 

「止せええええぇぇぇ!!!!!」

 

 

その声。その手。

 

差し出した手に。希望は?

 

 

 

 

 




マズイですよ!?

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