長らく更新できず、申し訳ありませんでした!
後書きに、嬉しい人には嬉しいかもしれないお知らせがありますので是非ご覧ください!
ではどうぞ!
「ふぅ...あの患者さんの胸水も、随分抜けたな。」
「そうですね...一時はどうなることかと...。...っとと、それでは僕はこっちなので失礼します、西木野先生。」
「ああ。お疲れ様。」
そう言って同伴していた看護師と別れる。彼とは肺がんの患者への回診を一緒に済ませ、歩いていたところだ。
途中で十字路に差し掛かり、彼は右に曲がってナースステーションへ。
私はそのまま直進し、診察室へ戻ろうとしていた。
ふと廊下を見ると、昇った夕日が窓枠を床に照らし出し、病院内を彩っている。先を見ると、十字の影。その先を見ても、十字の影。
その先のその先も...。
...だが、ずっと先には、明らかに窓枠とは思えない形の影も、床に映し出されていた。
「...ん...?」
その形に不審感を覚え、恐る恐る近づいて行く。
影で出来た十字の中を歩く姿は、檻の中の囚人の様だった。
...まさに屋上で起きている、柵の "向こう側" のように。
「...この形...?」
判別可能な位置まで近づき、視線を窓に移す。
夕日の眩しい光。
...そして。
「っ!!何をっ!!!」
...誰もが見たくないであろう光景が、彼の目を貫いた。
夕日の光は電気信号のように彼の身体を屋上へ向かわせ...。
...衝撃的な光景は、彼の頭を真っ白にさせていた。
伸ばした手が届くかどうかも分からない。
それほど混乱し、そして錯覚を起こしている。
智樹の身体が蜃気楼のようにとても遠く...極端に近くも見える。
どの "智樹" を信じて良いのか分からない。
だが、がむしゃらに手を伸ばす。その先に、智樹の手があるのを信じて。
...最後まで、親友を信じ抜き、助けたい。
その想いは...。
「ぐああああああぁぁぁっ!!!!」
「...駿!?」
肩が外れる、鈍い音。そして同時に聞こえた...パシッという確かな音。
身体の支えを柵で担いながら、手を間から通す。
その衝撃で、肩の関節が外れ、鈍い音を上げる。
...その痛みに耐え切れず、叫び声を上げる。その叫び声を心配したのか、それとも何故助けたのかを疑問に思っているのか。
智樹が名前を呼ぶ。
それに呼応するかのように、駿は厳しく語りかける。
「...俺が...許さねぇよ...!!」
「...。」
「恩人を...死なせる事なんて出来ない!!」
「...さっきも言っただろ!!恩人でもなければ、ヒーローでもない!!俺は人を殺したんだよッ!!」
彼は、人を殺してしまった。
その罪は消えない、許されることではない。
「でも俺を助けてくれた!!お前は俺にとって正義のヒーローなんだよ!!」
「...ッ!!」
正義のヒーロー。その言葉を聞いた瞬間、智樹が黙り込む。
その瞬間。
「駿君!!」
「西木野先生ッ!!」
「私も引っ張り上げる!!だからもう少し頑張ってくれ!!」
「...はいッ!!」
院長の手は駿の腕を掴み、上へと引っ張り上げる。
智樹の身体がだんだんと持ち上がる。
...だが。
「...分かってくれ...駿...。」
...俯きながら、消え入る声でそう言った。
直後、握っていた手を...
「止めろ!!!」
開いた。
駿はそっと目を閉じ、彼の身体が地に落ちるのを待っていた。
だがいつまで経っても、音が響かない。
...恐る恐る目を開くと。
「...ぐっ...駿君...!まだ...だ...!!」
院長は柵の下方部分の隙間に、足を引っ掛け、身を乗り出しながら智樹の手を...。
力強く、握っていた。
「...はい...!!」
「私も手伝うわ!!」
そしてツバサが駿の横に並び、智樹の手を掴む。
...駿も、もう一度手を伸ばす。
もう一度、あの頃に戻るために。...今度は、自分が助けるために。
「...なんで...お前ら...」
「皆お前を助けたいんだよ!!!」
「ッ!!」
「行くぞ!...いち...にの...さんっ!!」
院長の号令と同時に、3人は一気に力を込めて、彼を引き上げる。
そのまま彼らの方向へ引きずり出し。
「「「はぁ...はぁ...」」」
「...。」
智樹を助けることが、出来た。
「...なんで助けるんだよ...。」
「何回目だよ!!...言っただろ、死なせない...って。」
「...でも、正義のヒーローなんかじゃ...。」
「バーカ。」
そう言って駿は、智樹の額にデコピンを喰らわす。
それも、結構強めのデコピン。
「いてっ!?」
「...正義ってのは、迷惑なもんなんだって。」
「...え...?」
「...正義って結局は、その人自身の自己満足なんだよ。お前の正義は、俺を命懸けで助けてくれたこと。...それも、俺を助けるために人を殺した。...正に自己満足みたいなもんだよ。」
「...。」
殺した、そのワードが出てくる度に智樹は黙り込んでしまう。
その沈黙を打ち破るかのように、駿が言葉を紡ぐ。
「でもな。」
「...?」
「...俺も、お前の意思を無視して助けた。...これこそすごい自己満足だろ?...これが俺の、正義だったんだよ。」
「...ふっ...。」
「...やっと、笑ったな。自己満足野郎め!」
「お前もだよ!」
そう言っては2人で一緒に笑い合う。その光景に懐かしさ。そして嬉しさを感じてしまって。
そして、2人の友情を確かめ合うかのように。
「...ごめんな、駿。」
「...ありがとう...だろ?」
「...ああ、そうだな。ありがとう、駿!」
「どういたしまして!」
固い、握手を交わした。
「ガミガミ!」
「はい...はい...すいません...。」
今、智樹は院長に説教を受けている。
...それもそうだ。自分の病院で自殺を図ろうとした。
それ以前に、命を投げ捨てようとしたのたから。
そして一通り説教した後は、諭すような口調で語りかける。
「...君のした事は...許される事じゃない。」
「...はい...。」
「...けどね。...親友を命懸けで救った事は...誇れるんじゃないか?」
「...。」
「...まだ何回でもやり直せる。...死ぬには、早すぎるとは思わないかい?」
「...はい...!」
「...頑張ってみなさい。」
「はい!!」
遠目からでも、智樹が徐々に立ち直っていく姿が見える。
それを見ていた駿とツバサは。
「この肩どうすれば治るの!?えっ...えーと!えーっと!!...こうっ!!」
「なんで腕に抱きつくの!?柔らかいんだけど!?っつかポンコツかよ!?」
「ポンコツって何よ!?」
ツバサは混乱しながら、駿の肩を治す術を試行錯誤していた。
その結果、腕に抱き着く事であった。
...男をヘブン状態にするだけである。
「...わかった!!整形外科に!!」
「今更かよ!?っつか痛い!?引っ張るなよ!?」
「早く行かないと!!!」
「痛いって!!誰か助けてえええええええ!!!」
...駿の叫び声も虚しく、屋上から駿の姿は消えてしまった。
「...怖いか?」
「...あぁ...少し...。」
今、駿たちがいる場所は教室の前。
...智樹が怯えているのを、駿とツバサが宥める。
「大丈夫よっ!皆、あなたの事を歓迎するはずよっ!」
「...そう...か...?」
「じゃあ...開けるぞ!」
扉を勢いよく開く。
...未来への扉。...心を閉ざしていた過去とは、もうおさらばだ。
...これからは、ずっと明るい未来。辛い過去をバネにして、明るい未来を作ってやる。
「皆、おはよう!」
「智樹!!久しぶりじゃねえか!!」
「お前、相沢のこと守ってあんなことになっちまったんだろ?」
「俺らは絶対に、お前の味方だ!」
「...な?大丈夫...だったろ?」
「...ああ!」
...その未来の扉を、俺は。
「よっしゃあ!今日も授業乗り切るぞ!!」
強固な自信、決意を胸に、くぐり抜けた。
智樹くんたすかってよかった!
感想や評価、お待ちしております!ウザ絡みでも大歓迎ですよ(ゲス顔)
あ、そうだ(唐突)
ツバサちゃんのR-18が出来上がりました。
活動報告の方で募集をかけますので、欲しい方は活動報告のほうにコメントをお願いします。
メッセージでお送りいたしますよ!