42話です。今回、またまた駿くんには引っ込んでいて頂きます。
僕のツバサちゃんを襲った罪は重い。(R18のアレ)
前回の続き、智樹視点です。
「...ひ...久しぶり...あんじゅちゃん...」
「...ええ。」
虚無。...そこにあるのは僅かな沈黙と、少しの言葉だけ。
まるで冷たい風が今吹こうかという状況の中、智樹はあんじゅとの思い出を辿る。
...するとその追憶を無理やり途切るように、あんじゅが言葉を挟む。
「...あの時は、ありがとうね。」
「...あの時って...まさか?」
「ふふっ...そのまさか!」
そう言って悪戯っぽく笑うあんじゅ。
"あの時" その言葉はあんじゅのことを智樹に思い出させるのには、十分すぎるほどの言葉だった。
...それを狙ったが故の悪戯っぽい笑みなのか、はたまたそうでないのかは誰にも知る由がない...が。
それよりも確実な事、重要な事が、一つだけある。
...それは...
「...あなたが、私の "夢" を後押ししてくれた時!」
過去の歩み、ただそれだけ。
「...そんな風に思ってたのか。」
目を見開き、驚いた様子のままあんじゅへ一言。彼女の夢を後押しした。
...それらしい思い出はあるといえばあるのだが、そう思われているとは考えてもみなかったのだ。思われている事をそのまま言われてしまった智樹は少し気恥ずかしさを覚え、そっぽを向きながら頬を掻く。
その点についてもあんじゅは言葉を挟む。
「...ふふっ♪...照れたらそっぽを向いてほっぺを掻く癖...治ってないわ♪」
「なっ...!?」
例えるなら世間でよく言われる言葉。...自分のことは、自分が良く知っている...はずなのに。
自分が無意識に行動し、記憶にも残っていない行為が。
あんじゅには見抜かれていた。
その事に智樹は、明らかな驚きを見せる。
その姿にどこか懐かしさ、可笑しさを覚えたのかあんじゅがクスクスと笑いだす。
「ふふっ...やっぱり、あなたなのねぇ♪」
「...意味がわかんねぇよ...」
智樹にとっては意味がわからない言葉。だがあんじゅにとってはこの言葉が、これ以上ない存在確認のようなもの。
智樹の癖を見抜き、幼馴染ということも認識した。
あんじゅにとって、この確認が出来たことが何より嬉しかったのだ。
その嬉しさを物語るかのように彼女は智樹に、そっと微笑み...
「...あの時、私たちの関係は終わっちゃったけれど...」
「これから...よろしくね!」
物悲しげに...だが、はっきりと。
その言葉を紡いだのだった。
「...そうだよなぁ...小中と、違う学校だったもんな...」
「そうねぇ...智樹くんがいなくて寂しかったわよ?」
「茶化すなよ...」
「ふふふっ♪」
近くにあった公園のベンチに2人で腰掛け、昔の話をする。
頭の中にある引き出しを一段。そしてまた一段と開き、あんじゅと共に笑いあう。
...最近は辛い経験ばかりしていたがために、この時間がとても愛おしく思う。
そんな感覚が心に浮かんだ智樹は、まるでその事に同意するかのように密かに微笑む。
...だがその微笑みも、あんじゅにとってはお見通し。
「どうしたのかしら〜?」
「何でもねぇよ!!」
こうしてまた、茶化されるのであった。
そんな些細なことにも笑いあい、空気も次第に暖まっていく。
その後も昔の思い出話に花を咲かせる...が。
時間が経つにつれ、話題はあんじゅの転校の話へと移った。
...だがその時体の芯まで冷え渡るような、寒い風が2人の間をすり抜け、どこか奇妙な雰囲気を醸し出す。そんなことを気にもとめず、あんじゅはベンチから立ち上がる。
そして背中を向けたまま、静かに話し始める。
「...急にいなくなってしまって...ごめんなさい...」
「いいんだよ、そんなの...。事情があったんだろ?」
「...まだ...話してなかったわよね...」
あんじゅがクルッと体を智樹の方へ転換させる。...彼に向けられた顔は目が細められ、どことなく物悲しそうなものだった。
智樹はその顔に何か違和感のようなものを覚え、返事をすることも忘れ...
...返事の代わりに首を縦に振り、ゴーサインを出す。
あんじゅは智樹の意思を汲み取り、小さく口を開き始めた。
...だが先ほど感じた嫌な雰囲気と似たようなものを、智樹は感じ始める。
...嫌な雰囲気の中で起こる物事は———
「...私ね...というより、私の親がね...。
...いなくなっちゃったの。」
「...え...?」
———...絶対と言っていいほどに、恐ろしいことばかりなのだ。
「...いなく...なった...?」
「...えぇ。...全て、話すわね。」
——あれは、幼稚園の卒園式が近づいてきた...2月...だったかしら?
「おかあさん!ただいま!」
「おかえり、あんじゅ!今日も楽しかった?」
「うんっ!!」
その日は特に幼稚園での生活が充実してたの。だって...
「ねえねえ!智樹くんがお洋服褒めてくれたの!!」
「あら!良いじゃない!...将来は智樹くんのお嫁さんかしらね?」
そう言ってお母さんは口元を押さえて笑ってた。口元を隠していても分かったわ...。
「...きゅ!急に何言うの〜!!」
「あらあら♪」
...すごく、すごく。心の底から楽しそうだったのが。
でもすぐに、お母さんからそんな感情は消えた...。
「...何で消えたんだよ?」
「それは...」
楽しい。そういう感情が消えた理由を述べようと開いた口は。
「ん?あんじゅ。こんなところで何してるんだ?」
偶然来た誰かによって遮られてしまった。
智樹は振り返り、遮った者が誰なのかを確認する。そこにいたのは、眼鏡をかけ、温厚そうな顔をした中年だ。見たところとても優しそうな印象を受ける。ただ一つ、謎なのは。
「...この人は?」
あんじゅの名前を知っていたことだ。
謎が残ったままでは心がモヤモヤしてしまう。...そう考えた智樹は、あんじゅに男の正体を尋ねてみる。...すると。
「あ、おじさん!」
彼女は正体不明の男に対しパァー、という擬音が付くほどの笑顔を見せる。おじさん、という曖昧なワードが聞こえた智樹は未だ困惑している。
近所のおじさんとも取れるし、叔父という意味のおじさんにも取れるのだ。
この2つの答えで、智樹の心の針は迷っていた。前者へ針が動いては、後者へ針が動く。...まるでメトロノームのように揺れ動く彼の心の針は、その男の言葉によって止められることになる。
「今日もお疲れ様、あんじゅ。...ん?そっちの子は?」
「あ、この男の子は 加藤 智樹くん。私の幼馴染なの。」
「おぉ...そうだったのか...。はじめまして、あんじゅの叔父です。」
「あ...ご丁寧にすみません...。加藤 智樹です...。」
結局彼の心の針は叔父で固定され、正体が判明し、ホッとする。
だが叔父の方は少し警戒しているのか視線を、智樹に張り付けて動かさない。
その視線にむず痒さを覚えた智樹は覚悟を決め、何故こちらを見ているのかを聞くことにした。
「...あの...なんでずっと俺を?」
「...!あぁ、申し訳ないね...。ボーッとしてたみたいだ...。」
「...そ...そうですか。」
その質問の答えは、適当にあしらわれたようなものだった。
...智樹にとっては。
それ故、智樹も黙り込んでしまい、嫌な空気が3人を包み込む。
公園では子供たちが遊んでいるにも関わらず、その3人の空間だけは、とても暗い。
...そんな状況に耐えかねたあんじゅは。
「...あ、そうだわ!...ねぇおじさん!」
「ん?どうした?」
「智樹くんに家に来てもらおうよ!」
「え?」
...急に何を言い出すんだこの娘は。そう言わんばかりの視線をあんじゅに向ける。だが肝心のあんじゅにその視線は届かず、叔父に真意を拾われてしまう。
そのため叔父はやんわりとその提案を断ろうとする。
「それは...彼が迷惑だろう?」
「今日は暇って言ってたわよ!」
「言ってないんだけど!?」
...ついに嘘の証言まで作られてしまう始末。もうどうしようもない...と思ったところで、心強い味方。とどのつまり叔父に助けて、と言わんばかりの視線を送る。
その先にあったのは...
「10円...っと...。」
「希望なんてなかったんや!!」
「?...どうしたの急に?」
このデンジャーゾーンから一目散に脱出、そして自販機で呑気にコーヒーを買っている叔父がいた。
「あぁっ!!なんでおでん缶なんだ!?」
((...なにやってるのかな...))
訂正。おでん缶が出てきたようだ。
2人ともそんな叔父の背中を哀れむような視線で見つめ、叔父が戻ってくるのを待つ。
すると彼はこちらに向きを変更、ゆっくりと歩いてくる。
「ごめんね。さぁ、行こうか。」
「あ、僕の意見は無視ですか。」
叔父に向かってそう零す。すると叔父はその言葉にムッとすることもなく、智樹に耳打ちをする。
「...ああいう時のあんじゅは言う事を聞かなくてな...ごめんね。
...きっと、君とまた会えて、とても嬉しいんじゃないのかな。」
「...なんか、照れますね...。」
「フフッ...そうか!」
...この会話を通して少し、叔父との親交が深まった智樹であった。
「ただいまー!」
歩いて約10分、ようやくあんじゅの家に到着。
あんじゅが先陣を切り、家へ入ると。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
あんじゅの叔父が扉を開けておいてくれる。
一言感謝を述べ、ありがたく思いつつ家の中へ。
そして先陣を切って行ったあんじゅの後を追うと、リビングに出た。
そのリビングの広さに智樹は驚きを隠せない。
驚いて止まってしまっているので、後ろを着いて来ていた叔父も苦笑い。
「おぉ〜...って、あっ!すいません!!」
「ははは!面白いね智樹くん!」
「いや...広すぎるんですって...。」
ポケーっとしていた智樹は、後ろにいたあんじゅの叔父に気づき、急いで道を開ける。その焦りようがあんじゅの叔父にとってはツボだったのか、智樹に向かって笑いかける。
そんなことをしているとあんじゅがこちらへ戻ってくる。
あんじゅは、彼らの様子に笑いを隠せずにいる。
馬鹿にされてる、そう感じた智樹は少しだけ口を開く。...が。
「笑うことな「今日の夕飯は私が作るわね〜♪」...聞いてくれ...。」
ドンピシャのタイミングで、智樹の言葉が遮られてしまう。
だが、その後の智樹の言葉に反応することもなくあんじゅはキッチンへと向かってしまう。
その様子を見かねた彼女の叔父は。
「...ドンマイ...だったかな?」
「...覚えてないなら無理に使わないで大丈夫ですよ?」
彼なりの慰めをしてくれた。...まるで無視された智樹を憐れむかのように...。
「...そうだ、智樹くん。...ここに座ってくれ。」
そう言って指示された場所は、机を挟んだ2つの椅子。
智樹はその内の、世間で下座と呼ばれる方の椅子に座る。
上座にあんじゅの叔父が座ると...。
「...今日あの娘、過去について話そうとしてただろ?」
「...!」
表情が、一変した。
今まで笑みを浮かべていたが...今ではその笑みも消えてしまった。
一言で表すなら... "真剣" 。
「...あんじゅにとっては辛い過去だ...。僕から話そう。
...君も気になるだろう?」
「...はい。」
「...なら幼馴染の君にも、知る権利はあるはずだ。」
そう言ってあんじゅの叔父は、静かに話し始めた。
いかがでしたか。
あ、そうだ(唐突)
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