東方干渉想   作:nagatsuki

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能力は果たしてチートなのか。


第二話 樹海は怖い。

 能力が2つある。

 

 "干渉する程度の能力"

 

 "封印する程度の能力"

 

 この2つの文字列が脳に浮かび上がっていると、どうしてもその能力を試してみたくなるのは必然か。

 

 仮説だが、自分は別の世界にいる。東方の世界が一番可能性が高いか。こうして、脳内にある能力名の文字列がそうであるという証拠になる。

 

 しかし、よく分からない能力だ。能力名自体、抽象的なのだ。

 

 干渉する程度の能力?

 何に干渉するのか?

 どのような効能を発揮するのか?

 なんのメリットがあるのか?

 使用した所で、何かしらのリスクはあるのか?

 

 封印する程度の能力?

 何を封印するのか?

 なんでも封じ込めるのか?

 封じ込めて何になるのか?

 

 等など。

 

 こうして俺は樹海の倒木に座りながら、考察する。

 

 この能力をすごく試してみたい。そういった欲が、俺を支配する。

 しかし、何らかのデメリットも、あるのかもしれない。その能力を発動したら、とんでもない事態に発展してしまうかもれない。もしかしたら、数日間動けなくなるというパターンとかあるかもしれない。

 

 そうやって俺は思考の渦に飲み込まれていく。

 

 

 顎に手をつけて考えるていると、ガサガサと自分の後方に音がした。

 振り返ってみるとそこにいたのは、巨大な獣。イノシシみたいな胴体に、額と側頭部からネジ曲がった角が何よりも印象的だった。そして、とにかく大きい。

 

 俺はその獣を見た時、恐怖のどん底に陥れられた。

 その獣は獲物を見つけたような眼で俺を見ていたのだ。

 

 確実にやられる……

 そう悟ったら、

 

 「ひぃ!!」

 

 なんとも情けない声が俺の口から出てしまった。怖いのだ。

 今まで命の危険とかけ離れた生活を送ってきて、このような死と直面するような場面に出くわしたことがない。だからこそ怖いのか。

 そしてこんな獣、見たことがない。元いた世界で、胴体が5m以上ある獣なんて見たこと無いのだ。

 

 頭のなかが真っ白になる。"そいつ"に対して抵抗できる手段が何もない。銃などの武器も全くない。どうすればいいのか分からない。

 

 いや、逃げればいいのか。そうか、逃げればいい。なら話が早い。

 

 動け!動け!動け!俺の足よ!

 

 俺は足にそう念じ、竦んでいた足はなんとか動き出した。

 

 俺はこの樹海の中、ひたすら走り続ける。転びそうになってもひたすら走り続ける。心臓がバクバクと言っているのが聞こえる。しかしそれを気にすることが出来ない。

 

 もう走りすぎて死んでしまうんじゃないかと思ってしまう。でも獣から逃げるために死ぬなんて本末転倒だ。

 

 でも、俺はひたすら走り続ける。これでも走るのは得意なんだ。樹海という悪路でも走り続ける。

 

 走り続けることによってまわりの木々が流れるように通り過ぎ去っていく。

 だいぶ疲れ、走るスピードが段々とゆっくりとなっていた。

 そして体感的には一時間ぐらい走ったのだろうか。さすがにここまで走れば追ってこないだろう。

 後ろを振り返ってみる。

 

 

 そこにあったのは、巨大な獣の口。

 "そいつ"は今にも俺を喰おうとしていたのだ。

 

 どうやら"そいつ"は俺を走らせることによって疲れさせ、抵抗がなくなった時に喰らおうとしたのか。まるでマグロの一本釣りのように。

 

 そして俺は、目をつぶり、それを覚悟した。

 

 

……

 

 

 目を開けてみると、時間が止まったかのように、獣は動作を止めていた。

 何故、そうなったのかは知っている。

 

 自分が喰われるそうになる直後に、脳内にまた、"干渉する程度の能力"という文字列が浮かんだ。そしてその能力が発動したからだ。

 

 この能力によって、"獣の動作に干渉"した。獣の動作に干渉したことによって、獣の動作を止めたのだ。

 

 そして一息つく。

 だが、能力を発動することによって、息を止めたような苦しさが俺を襲う。

 

 どうやら、この能力は継続時間に限りがあるようだ。限りといっても、時間が立つたびに苦しくなるだけだが。

 

 俺は一つ目の能力、"干渉する程度の能力"を発動した。そして発動中は段々と息を止めたような苦しさが自分を襲うことが分かった。これだけでも、良い収穫かもしれない。

 

 近くに落ちていた木の皮が棒状に丸まったものを拾い、カッチコッチに固まった獣をそれで叩いてみる。

 

……まったく反応なし。

 

 さて、こいつをどうしようか。放っとけば能力が切れてまた俺を襲うかもしれないし、だからといってずっと能力を発動していれば、俺が苦しくなっていく。

 

 ならば、2つ目の能力を試してみよう。

 

 まず、獣から少し離れて、干渉する程度の能力を切る。

 この能力を切った事によって苦しみがなくなるが、動きを止めていた獣は動き出す。

 しかしすぐに、

 

 "封印する程度の能力"

 

を発動。

 

 獣は光となり、消えた。

 

 「ど、どこにいったんだ?」

 

 獣は光になって消えたが、一体何処に消えたのだろうか。

 いきなり目の前で消えてもらっても困る。

 

 そう考えていたが、自分の右手にさっき拾った木の皮が棒状に丸まったものが未だに握られていることに気づいた。

 

 その木の皮を広げてみた。

 

 広げた木の皮には、獣を墨と筆で描かれた絵がそこにあった。それは、俺が獣に対するイメージが絵になったものだった。

 

 しばらくそれを見つめていると、強烈な頭痛が俺を襲う。

 

 「ぐぅうう!」

 

 痛い、痛い、痛い!

 

 頭を手で抑えて、あたりを転げまわる。それによって、木の皮が手から離れる。

 激痛がやまない。痛い、痛すぎる。こんな激痛なのは人生で初めてだ。

 

 

 気がついたら、目の前の世界が90度回転していた。どうやら、俺は樹海の地面に倒れていたようだ。そしてなんとか立ち上がる。痛みは多少引いたようだ。

 それにしても、何故あんな頭痛が起きたのだろうか。

 

 能力を発動したからか?

 多分、そうだろう。

 

 しばらく休憩し、痛みが完全ではないが引いた。

 

 

 とりあえず能力を研究してみる。どちらも能力名が抽象的すぎて曖昧な部分が多すぎるのだ。

 この2つの能力に関して、思い浮かぶこと全てを試していく。

 何が出来るのか。どうなるのか。何を対象にできるのかなどなど。

 

 それは、太陽が沈まるまで続いた。

 

 研究したことによって、能力についておおまかに知ることが出来た。

 

 干渉する程度の能力。

 かなり抽象的な能力名だが、対象も抽象的なものに発動できるらしい。そして、"概念"に対しても発動できる。例えば、昼間の獣の動作に干渉し、動きを止めたこと。"獣の動作の事象"というのは酷く抽象的である。そしてこの能力は概念としてその事象を捉えた。よって、"獣の動作という概念"に能力によって干渉し、獣の動きを止めた。

 

 八雲紫の"境界を操る程度の能力"も、概念に対して発動できる。ある意味、八雲紫の能力に似ているのではないかと思う。

 

 そして、発動中はすこし苦しい。息を止めたような苦しみが己を襲う。しかし、能力の発動回数が多くなるに連れて、それは段々と緩和される。

 体力が削られることに関してはあまり変わりないが。

 

 2つ目の能力である封印する程度の能力。

 これは、その名の通り、対象を封印する能力だ。そして抽象的な対象でも、発動することが出来る。

 しかし、この能力を発動するためには、封印するための媒体が必要であることが分かった。

 昼間の獣の件については、落ちていた木の皮が棒状に丸まったものが媒体となった。

 

 この媒体については、なんでもいいらしい。というか樹海にあったもの全てが媒体にすることが出来た。

 

 そして、頭痛に関しては、この能力も発動していくうちに、解消していった。

 どうやら、初めて能力を発動すると、体が慣れていないために苦しくなるらしい。

 

 これで、自分の能力を大体だが知ることが出来た。

 あとはこれからどうするかだが……。

 

 




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