東方干渉想   作:nagatsuki

4 / 7
神話を知っている人は、亜月の神名に気づくかもしれません


第四話 亜月と双姫

 この薄暗くて悪路が続くこの樹海を俺と亜月が一緒に歩く。

 

 

 俺は亜月と一緒に行動することになった。というか亜月がそう望んだからだ。その亜月が、トコトコと俺の後ろについてくる。俺が振り向くと、ニコッと微笑みながら。

 

 しかし、この樹海はホントに歩き辛い。転びそうなったのはいくらでもある。でも、100年近く暮らしてれば、慣れてくるもの。

 

 しばらく、樹海の中を歩き続けたら、後ろにいる亜月は次第に空の上へ視線を送るようになり、空を気にしはじめた。

 

 「どしたの?空を気にして」

 

 「どうやら、あの双姫が来ますね……」

 と亜月が答える。

 

 双姫って一体何なんだろう?

 俺はそう疑問を持つ。

 

 「双姫?」

 

 「それは、主様。しばらくここにいれば分かります」

 

 此処にいれば分かる?

 もしかしてその双姫とやらが来るのか?

 

 しばらく経つと、空が光り始めた。

 そして、2つの光柱が空から降ってきた。

 その光柱が俺の近くに降ってきたので、さすがに俺も驚いて、腰を抜かしそうになった。しかし、この光柱は一体?

 

 しばらくその光柱を見ていると、光柱から二人、白い羽織に赤い袴を着た女性が現れた。

 

 その二人は凛とした女性だ。

 

 そしてその二人は、亜月に対して跪く。

 

 「「やっと見つけました……我が創造主様」」

 

 と、その二人は言葉を合わせて亜月に言う。

 

 創造主様?亜月が?

 確かに、創造する能力は亜月は持つが、亜月はこの二人と何かしらの関係はあるのか?

 

 「お久しぶりですね……討貝比売(きさがいひめ)蛤貝比売(うむぎひめ)

 

 と、亜月は、二人の女性に答える。

 どうやら、この二人は、キサガイヒメとウムギヒメというらしい。

 しかし、何故この二人は此処に来たのだろうか。

 

 「私たちは必死に創造主様を探しておりましたが、まさか此処にいたなんで……」

 

 女性の一人が言う。

 つまり、亜月を探してこの樹海まで来たらしい。

 

 「どうやら、苦労をかけたみたいですね。実は私の神霊玉が呪蛇に封印されてしまい、この樹海まで墜ちてしまったのです」

 

 「なるほど……呪蛇ですか。確かに神力や能力、存在すらも封印してしまう呪蛇に封印されれば、さすがに捜索は難しいですね。しかし、あの呪蛇に一度封印されると、自力ではどんな神でも解除できないはず。どうやって解除したのですか?」

 

 亜月と女性たちの話しがどんどん続いていく。

 なんか俺、空気になっていないか?

 

 しかし、空気になっていた俺を亜月が助け舟を出してくれた。

 

 「それは、こちらの主様が助けてくれたのです」

 

 と亜月は頬を染めて答えた。

 そして二人は俺の方を向き、

 

 「「あ、主様ぁああ!?」」

 

 二人の女は大声を出した。

 

 間近に大声を出されたので、耳が痛い……。

 

 

 

 ……

 

 まあ、そんな感じで俺はこの二人の女性に自己紹介した。最初は二人共、疑いの目で俺を見たが、俺と亜月の経緯を話し、亜月の神霊玉が俺を受け入れたことを亜月が話せば、二人共納得したらしい。

 

 ちなみにこの二人とも……いや、この二柱とも神様である。そしてこの二柱を双姫という。

 

 「あっ、そういえば私、主様に名前をつけてもらいました」

 

 亜月は思い出したかのように、二柱に話す。

 

 「新しい御名ですか?」

 

 「はい。亜月とつけて頂きました。今度から二人とも亜月とよんでくださいね」

 

 「わ、分かりました」

 

 ウムギヒメが了承する。

 

 「では、私が封印されている時のことを教えなさい」

 

 「わかりました」

 

 亜月は微笑みから、真剣な顔になり、双姫に命令する。

 キサガイヒメとウムギヒメはこの国を、亜月が封印されている時に調査していたらしい。

 そしてキサガイヒメとウムギヒメは亜月と俺に報告をする。

 俺にとって、この世界を知る為のいい参考になるはずだ。

 

 双姫は報告を始める。

 

 瀕死になっていた出雲の大巳貴尊(おおなむじのみこと)を亜月がキサガイヒメとウムギヒメを派遣することによって回復させた。

 

 大巳貴尊が、少彦名尊(すくなびこなのみこと)大物主尊(おおものぬしのみこと)と一緒に、酒造のやり方や農耕、医療術を広め、国作りを行った。

 

 国作りを行ったことによって、この国はかつてない繁栄を迎え、高天原の統治者、天照大御神(あまてらすおおみかみ)はそれに注目した。

 

 天照は、高天原から幾度も大巳貴尊に使者を送り、国譲りを迫った。大巳貴尊も条件付きで交渉にのった。これにより、国譲りは成った。しかし、大巳貴尊の存在を邪魔だと思った天津神の誰かが、大巳貴尊をフェムトファイバーで封じ込めた。

 

その後、天照の孫である、番能邇邇芸命(ほのににぎのみこと)がこの国に降臨したという。ちなみにこの神は、大山津見尊の娘である木花咲耶姫尊と結婚した。

 

 などなど、双姫は報告する。

 

 「てか、天津神ってなに?」

 

 報告を聞いていた俺は、とある疑問を思いついた。

 

 「神といってもそれぞれ属しているところがあります。高天原に属するものは天津神といいます。それに対して、出雲や地上の土着神を国津神といいます。例えば、高天原を追放された建速須佐之男命(たてはやすさのおのみこと)はかつて天津神でしたが、根之堅州国に落ち着いてからは国津神となりました。私は出雲の神に贔屓していましたが、高天原に属していた天津神でございました」

 

 亜月は答える。

 正直俺は、神は物凄く偉くて人間よりも優位な存在としか思っていなかったが、神様といってもいろいろあるらしい。

 

 「では、私たちはまだ仕事がありますので。これにて失礼」

 

 どうやら双姫は仕事あるらしく、そちらに戻るらしい。

 

 双姫はまた光の柱となり、空の先へと飛んだ。

 

 ……なんか嵐が通り過ぎ去ったような感じだな。

 

 「では行きましょうか」

 

 亜月が催促する。

 そう、俺達はこの樹海を脱出しなきゃならない。亜月は、私に掴まって飛んでいきましょうか?と打診するが、やはり亜月に甘えるのはダメだと思う。

 

 だからこそ自分の足でこの樹海を突破しなきゃいけない。

 

 この樹海の中を歩いている最中に、いろいろと亜月と話した。亜月は自分のことをなんでも教えてくれた。

 

 亜月は原初の神である。神世七代の神々が成る以前の神のことを別天津神といい、これらの神を原初の神と言われている。別天津神は五柱がいて、そのなかに亜月がいるという。

 そして、原初の神は信仰を必要とせずに神力を扱えるという。もはやチートである。

 

 ちなみに神世七代は、七代に渡って高天原を統治した神々のことで、最後の代によって不安定だった世界は完全に安定したという。そして神世七代の七代目である神は三貴子を生み、三貴子で一番最初に生まれた神、天照が恒久的に高天原を統治することになったという。

 

 などなど、亜月は教えてくれた。

 やはり、神様のことを知りたいなら神様に聞いたほうが良い。

 俺はそう思う。

 

 そしてそうこうしていると、霧が晴れてきた。そして目の前に開けた土地が見える。

 

 これでやっと樹海から脱出できた。

 

 




ご感想・ご指摘をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。