東方干渉想   作:nagatsuki

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第六話 国産みの柱と娘の食物神

 イザナギ。

 

 伊弉諾もしくは伊邪那岐と書く。

 

 大八洲(オホヤシマ)、つまり日本列島を作り上げた神であり、自然万象の神々を生んだ神でもある。別天津神の御言により、雲の上にある神の国、高天原を七代に渡って統治してきた神世七代(かみよななよ)の最後の代である。

そして、恒久的に高天原を統治する、天照大御神を生んだ神。

 

 また、"生命生産の神"とも言われる。

 八百万の神々でも代表的な神である。

 

 亜月曰く、目の前にいる神主っぽい好青年こそが、イザナギだという。

 

 「失礼ですが、名をお聞きしても?」

 

 と神主っぽい青年は、俺達に聞いてくる。そういえば、自己紹介もせずに青年のことをああだこうだ言うのは失礼だ。

 

 「申し訳ない。俺はトヨツカ ミツキだ」

 

 「主様であるミツキ様から頂いた名で、亜月といいます」

 と俺と亜月は自己紹介をする。

 

 「では、亜月殿。なぜ私を伊弉諾尊と思うのです?」

 

 神主っぽい青年は、腕を組み、顔を微笑みから訝しめの表情に変わり、亜月に問うた。

 俺としも、何がなんだか分からない。

 イザナギといえば、国土生成やあらゆる神を生んだ、八百万の神でも有名な神である。そのイザナギが、目の前にいる神主っぽい青年だったとしたら、それこそ驚きである。

 

 「神力を封殺しても、少しながら漏れています。おまえが生んだ、三貴子(みはしらのうずのみこ)のアマテラス、ツクヨミ、スサノオや、その他の天津神、国津神を騙せても、私を騙すことはできませんよ? 最後の神世七代よ」

 

 亜月は神主っぽい青年に答えた。

 亜月はそう言うが、神力というのを俺は全然見えない。いくら神主っぽい青年を凝視しても、唯の人間には分からない。

 どうやら、これこそ神のみぞ知るというやつか。

 

 いや、でも、天皇の先祖である太陽神アマテラスや月夜の神ツクヨミ、暴虐不尽の神スサノオでも分からないことを、分かるなんて亜月は物凄い神ではないか。その亜月にびっくりだよ。

 

 ということで、俺が空気なりつつも、亜月は続ける。

 

 「それに、おまえとおまえの妹が国土形成に使用した、"天の沼矛"を創造したのは私ですよ。私がおまえを知らないということはありません」

 

 亜月はそう説明する。

 それを聞いた、神主っぽい青年は、訝しめの表情から、微笑みに戻った。

 

 「どうやら、私の負けのようです。私が伊弉諾です」

 

 神主っぽい青年が自分の正体を明かした。

 やはり、イザナギだったらしい。

 

 そしてイザナギは続ける。

 

 「お二方、ようこそ多賀の社へいらっしゃいました」

 

 イザナギは、ぎこちない笑みで言った。

 

 「あの、イザナギさん? 俺には敬語いらないですよ?」

 

そう、イザナギという大神に、敬語で話されるというのは俺としてもむず痒いものである。

 

 「わ、わかりまし……分かった。なら、私のことをイザナギでいい」

 

 どうやらイザナギも了承してくれたようだ。

 そしてイザナギは続ける。

 

 「しかし、亜月殿。あなたはもしや、別天津神(ことあまつかみ)の一柱ではありませんか?」

 

 別天津神。神世七代の神々が生まれる以前に成った神で、五柱がいるとされる特別な天津神。その別天津神は原初の神であり、持つ力は絶大で、他の神の力とは比べ物にならないほどである。

 

 その別天津神の中に亜月がいるのだ。

 

 「ええ、確かに私は別天津神五柱の一柱です。それにおまえとおまえの妹とは高天原で一度会ってますよ?」

 

 亜月とイザナギと既に会っていた。つまり此処で初対面ではないのだ。

 

 そしてイザナギは、

 

 「……やはり」

 

 と、何かを確信しているようだ。

 

 

 そして例によって空気になっていた俺は、提案する。

 

 「二人で神様しか分からないお話をするのはいいが、とりあえず休憩させてくれ」

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 まあ、そうやって俺達はイザナギによって社の中へと案内された。

 ずっとイザナギによって案内されているときに思っていたが、この社の中はとても綺麗である。ちゃんと掃除が行き届いているようだ。もし、汚してしまったらどうしようと、心の中でビクビクしている。

 そんな感じに、社の奥へと案内された。

 

 客間? みたいな場所に案内されて、しばらくしていると、白い羽織に赤い袴を着た、女性が現れた。亜月の部下であるとキサガイヒメとウムギヒメの双姫と格好に似ている。てか神社で白い羽織に赤い袴を着た女の人というのは完全に巫女さんだよね。

 

 「よろしければ、お取り回しください」

 

 その巫女さんは、俺と亜月にお茶と菓子を差し出した。

 お茶と菓子を差し出された亜月は、ジーっとお茶や菓子を見つめる。そしてそれらに興味を失ったように視線を外し、俺を見る。

 

 「問題ないようです。頂いてみては?」

 

 亜月はどうやら茶やお菓子を毒見していたらしい。

 俺はありがたく、それをいただく。

 

 「私の娘である、大宜都比売(おおげつひめ)だ」

 

 イザナギは白い羽織と赤い袴を着た巫女さんを紹介する。そしてイザナギは、言葉を続ける。

 

 「すまないが、亜月殿に見せたいものがあるので、しばらく失礼をする」

 

 とイザナギはこの部屋から出て行く。亜月に見せたいものって一体何なんだろう、と疑問に持つ。

 そして、この部屋には、俺と亜月とオオゲツヒメさんの三人になった。

 

 「えっと、俺がトヨツカ ミツキで、隣にいるのは亜月です」

 

 気まずい雰囲気になるのは嫌なので、俺はオオゲツヒメさんに自己紹介する。そして俺は言葉を続ける。

 

 「それにしても、美味しいですね。このお茶は」

 

 オオゲツヒメさんに出されたこのお茶と菓子は、社交辞令でもなく、純粋に美味しいのだ。いや、ほんとにいい娘さんをお持ちのようですね、イザナギは。

 

 「あ、ありがとうございます。そう言ってくれて。昔は不味くて、弟のスサノオに斬られたものです。妹のアマテラスは美味しいと言ってくれたのですが、それ以来、必死に、美味しい茶を出せるようにがんばりました」

 

 とオオゲツヒメさんは笑顔で言い切った。

 このお美味しい茶を出すために、壮絶な過去があったらしい。そして斬られたこともあるという。いくら不味くても斬るのはおかしいと俺は思う。てか、やはり伝説と違わずスサノオは荒ぶる神なんだな。

 

 「アマテラスにスサノオ……確か、三貴子ですね」

 

 三貴子。イザナギが生んだ神々で、特に貴い三柱のことである。ちなみにアマテラス、ツクヨミ、スサノオが三貴子である。

 

 「はい。しかし、兄弟とはいえ三貴子と私のような神に、違いがあります。三貴子は父上、つまりイザナギ様のみから生まれた神々であり、私はイザナギ様と、イザナギ様の妻であったイザナミ様の間から生まれました」

 

 オオゲツヒメさんは説明する。

 つまり、オオゲツヒメさんには母がおり、三貴子には父しか存在しない。

 そしてオオゲツヒメさんは続ける。

 

 「だからこそ、三貴子は私のような神よりも貴く、尊重されるのです」

 




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東方キャラは、次々話か、それ以降に出します。
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