クラップスタナーは2度鳴る。   作:パラプリュイ

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春休みが終わったことにより、3日に1度程度の更新スピードになります。


猫のはなし。

 超生物、後に殺せんせーと呼ばれる教師がE組にやって来てから1週間が過ぎようとしていた。今日は朝早くから来ている生徒が多いようで、クラスの席の3分の2ほどが埋まっていた。その理由は磯貝君の提案したクラス一斉射撃にある。

 

「さすがの先生も全員いっぺんに攻撃したら当てられると思うんだ」

 

「そんなこと言うけどよ、磯貝。あいつ速すぎだろ?!」

 

 前原君は銃を机に置いて文句を言った。

 彼は昨日先生にナイフを当てようとして失敗し、着崩した制服の「お手入れ」をされてしまった被害者の1人である。その時の前原君は完全にチャラ男というアイデンティティーを失いかけていた。

 

「あ、浅野君おはよ〜」

 

 茅野がフレンドリーに挨拶をした。彼女は去年の浅野君を知らないため、他の全員と違って浅野君には好意的に接していた。浅野君はそれに対してシンプルに挨拶を返すと人だかりに向かって尋ねた。

 

「銃を抱えて何の相談だ?」

 

「一斉射撃するんだって」

 

 ぼくは大きめの銃を掲げる。1周目の時から銃は得意とまではいかなくとも、そこそこできた。それも手に収まる銃より遠くから狙撃する大きな物の方が断然ぼくには向いていたらしく、潜入からの狙撃ならかなり良い線を行っていた記憶がある。

 もちろん、2周目ではまだ狙撃訓練は受けていないため今のレベルは分からない。ただ、経験値がプラスの状態でのスタートなので期待はできそうだ。

 

「へえ……そうとなればカメラを設置すべきだな」

 

「カメラ……?」

 

 カメラに1番詳しい岡島君が反応する。彼は中2までは写真部に居たため、カメラについてはこの中で1番詳しい。何を撮っていたのかについては誰も聞かないようにしていた。

 

「いくらマッハの怪物とはいえ行動パターンに癖ぐらいあるだろう。最近のカメラにはスローモーション機能があるし、僕たちには見えない動きが見えてくるはずだ」

 

「確かに!そうしたら私たちも何で当てられなかったのか分かるよね」

 

「よし……俺の1番のカメラを後ろに設置しとくぜ」

 

「ああ、頼む。三村、君は確か動画の編集が得意だね?」

 

「よく知ってるね。分かった、そこは引き受けるよ」

 

 クラスメイトに助言をし、必要とあれば命令のような提案をする。浅野君は暗殺を通してクラスを若干支配しかけているように思えた。クラスメイトの性格や趣味、特技は全部熟知しており、それを上手く活かして暗殺に役立てる。

 支配者としてかなり完成された中学生だ。

 

「はっ、殺せるまでに時間かかんないといいけどな!」

 

 遅めにやって来た寺坂君グループが一斉射撃の相談をするぼくらを嘲った。E組には何人か射撃に参加しないという人たちがいて、彼らはそんな生徒の一部だ。狭間さんなんかはさっきから本をずっと読んでいて、銃なんてそっちのけである。

 

「お前参加しないのか?せっかくだから、みんなで殺るのが1番だと思う」

 

 磯貝君は寺坂君に交渉するが、彼には自分のことしか見えていないようだった。クラス全員での暗殺は、賞金がかなり減り、1発大きく儲けたい寺坂君としては面白くないのである。それは吉田君と村松君も同じだ。

 

「誰がするかよ」

 

 きっと寺坂君には1周目と同じように案があるのだろう。

 手榴弾を使うというやり方が。

 ぼくが初めて先生の暗殺をする時に行った方法だ。自殺行為だと分かっていて先生に暗殺しようとする緊張感は未だに忘れていない。

 

「そういえば浅野君はまだ暗殺しないの?」

 

「まだ技術が未熟なのに今やったところで仕方ないだろう」

 

 銃の扱いは1度したことがあるようで、素人風味のある他の生徒たちとはだいぶ違う。それでも彼は自分が未熟だと思っているのだ。あくまで想像だが、銃を初めて使った時に理事長(ほんもの)の射撃を見てしまったんだろうな。あの理事長なら銃なんて簡単に扱いそうだ。

 

「珍しいね。そんなこと言うなんて」

 

 自分の力量を発揮するなら早い方がいいとか言いそうだったのに。

 

「それに殺すんならギリギリに殺す方が注目度も高くなる。英雄なら難易度が高くて誰も殺せなかったところを殺すと思うよ」

 

 ……案の定浅野君は浅野君だった。

 

  「ぼくも準備してからかな」

 

 いろいろ、ね。

 

 前回は早々に自爆したからもっと慎重にやらなきゃ。

 そうなるとまだ今は暗殺の時期には適してない。

 

「にゃー」

 

「あれ?今猫の鳴き声しなかった?」

 

 茅野が窓を覗き込んだ。ぼくが思わず窓を開けるとメルが顔に飛びついてきてびっくりする。

 

「大丈夫か、この猫」

 

 浅野君が片手で首の皮を掴む。雑巾みたいな持ち方に浅野君は猫に触れ合う機会が無さそうだなと思った。浅野君はメルを抱きかかえ、ぼくに渡した。

 

「おかしいな……確かにアパートに置いてきたはずなんだけど」

 

 バルコニーの窓の鍵もかけ、玄関の鍵も閉めたはずだ。でもメルは賢いからドアの鍵ぐらい平気で開けてしまいそうだなあ。

 

「というかよくここが分かったな。この猫何者だ」

 

「メルダリンは少し賢いんだよ」

 

 なんて言ったって元殺し屋、それも世界最高峰の殺し屋だった死神の飼い猫だったわけだ。ちょっとやそっと芸達者でも驚くことはない。

 

「メルダリン……もしかしてMörderinの事を言ってるのか?」

 

「知ってるの?」

 

 発音良く外国語風に言った浅野君だが、ぼくはその単語に聞き覚えは無かった。そうなると英語、スペイン語、フランス語、中国語ではないということになる。知らない単語というだけかもしれないけど、そこまでマイナーな単語だとは思えないため、ぼくが使わない言語なのだろう。

 

「渚が名前を付けたわけではないんだな……しかし、偶然か?前の飼い主は随分恐ろしげな名前を付けたようだね」

 

「恐ろしげ……メルダリンが?」

 

 始業の鐘が鳴り、ペタッペタッという触手が教室に近づく音が聞こえてきた。ぼくはメルを抱いたままとりあえず席に座る。

 

「それではHRを始めましょう。日直の人は号令をお願いします」

 

 教卓の前で超生物は普通の先生のように言った。

 

「き、起立!」

 

 菅原君が号令をかけ、クラス全員が銃の用意をする。一足遅れたぼくは慌ててメルを離し、銃を構えた。

 

「気をつけ!!」

 

 弾の準備をする全員に対し、緑のしましま顔で超生物はぼくらを眺めた。いわゆる余裕の顔というやつだ。

 そんな顔されると殺したくなるなあ。

 

「れーーーーーい!!!」

 

 発砲音は全てを誤魔化すために存在する。メルが射撃の間、ナイフを咥えて先生に向かって走り出したことにぼくは気づかなかった。

 弾丸を全て避けながら出欠を取る先生は全てが見えているはずだった。ただ1匹、先生の視界の枠外を通ってやって来たネコを除いて。先生も完璧ではないのだ。

 

「停学中のカルマ君以外は全員出席……と。にゅやっっ!!」

 

 メルは机の上を堂々と歩き、銃より下の位置にいることで見事に死角を通っていた。教卓の上に飛び乗り、銃撃戦が終わって少し気を許したところを顔に飛びつく。その一部始終を見た生徒たちはあまりに突然の出来事にただ猫を見ることしかできなかった。

 強烈な肉球パンチを触手で受け止め、超生物は初めて戸惑っているように見えた。

 

「メルダリン?!」

 

 先生が息切れ混じりにそう言葉を発する。口に咥えたナイフを相手に刺そうとしたが先生は辛うじて避け切った。狼狽を顔から漂わせており、それはメルを二度見するほどだ。

 

「にゃー」

 

「タコみたいって言ってるね〜」

 

 倉橋さんは間のびした声でそんなことを言い始めた。意想外な発言に一瞬反応が遅れてしまう。

 

「って倉橋さん猫語分かるの?!」

 

「動物の言葉なら大体分かるよ?」

 

 倉橋さんは天使ちゃん何言ってるのと頭の上にクエスチョンマークを置いていた。

 むしろ君が何を言ってるの。倉橋さんにそんな特技があったとは。動物好きなのは知っていたけど2周目で初めて知ったよ。確かにイルカとか使った暗殺してたな、うん。

 

「にゃー」

 

「陽菜乃ちゃん、これは?」

 

 矢田さんが聞いた。何故か倉橋さんの表情は少し曇っていた。

 

「え……メルちゃん本気なの?」

 

「何て言ったんだ?」

 

 三村君は質問をぶつけた。倉橋さんは言うべきなのか躊躇し、含みのある短い沈黙の後で口を開けた。

 

「殺しに来たよ、だって」

 

 メルは一体何を考えているんだろう。先生を殺す理由はメルにはないはず。超生物を殺したところで賞金は猫には意味のないもので、浅野君が欲しい英雄の座も猫にとってしてみれば塵に等しいだろう。そんなものをくれるなら猫缶かかつお節をくれという話である。

 

「何で猫が殺しに来るんだ……」

 

「でも、殺しに来たってことはE組の仲間だよね?」

 

 倉橋さんが周りに「ね?」とうるっとした目を向けた。純粋無垢な表情にうっと言葉を詰まらせる生徒も多い。

 メルはかなり愛らしい容姿をしている。犬派の人間でさえ虜にしてしまいそうなぐらい。かくいうぼくも元は犬派だったのにいまや猫派になってしまった。

 

「いいと思う」

 

 猫派代表の速水さんがふにゃっと顔を緩めた。その姿にこれがデレか!と赤面する男子もいるようだ。あえて誰とは言わないでおこう。

 

「にゃんにゃん……」

 

 岡島君は意味深にキメ顔をした。想像していることがえろいので正直決まってない。

 

「先生は認めませんよ?!」

 

「面白そうだね。こんなに動揺している時点で入れる価値はある」

 

「浅野君まで?!」

 

 こうしてE組に新たな生徒(非公式)が加わった。ぼくもこんな展開になるとは思わなかったので些か呆気にとられていた。

 

 

「倉橋さん倉橋さん」

 

 休憩時間になり、先生が麻婆豆腐を食べに行っている間に倉橋さんを呼んだ。

 

「なあに?」

 

「先生にはぼくが飼い主っていうのは内緒にしてもらえるかな?」

 

「わかった〜」

 

 いつか気づかれそうだけどね。

 冷たい汗が滲み出た。メルが脱出した理由は先生を殺すためなんだろうか。しかし理由を考えようとすると、メルが猫だということで思考が行き詰まってしまうのだ。

 別のことに意識を戻していくうちにぼくの直感が別のところで発揮された。

 

 そういえば、寺坂君のポケットには既にアレがあったな。

 

 浅野君にはメルを捜しに行くと伝え、ぼくは校舎裏へと向かった。そこにはやっぱり寺坂君たちがいて、手榴弾をどう使うかの相談をしている。姿を見せるわけにはいかないため、聞き耳を立てて彼らの話に集中していた。

 

「そこは弱そうなやつに持たせるのが1番だろ?」

 

「うちのクラスで1番か弱そうなのって天使だよな」

 

 失礼だなあ。ぼくはこれでも体術を習っていたから村松君ぐらいすぐ倒せるのに。か弱そうに見えるのも殺し屋目線なら褒め言葉だから良しとするか。

 

「止めとけ。バックに浅野が付いてるぞ!」

 

「そもそもよ、タコに近づく勇気がある奴なんぞいんのか?」

 

「……居たな、そーいや」

 

 寺坂君たちの会話はそこで終了した。ぼくが彼らを除くと既に解散した後で、そこを通りかかったメルだけがぼくを見上げていた。話はどう終結したんだろう。声だけじゃなくて覗き見していればよかった。

 気が付いたところでもう遅い。どうせ実行されるのは今日だ。寺坂君たちが何を考えてどう暗殺するつもりなのか、2度目の暗殺劇を楽しもうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み後の授業は国語から始まった。ぼくらは古典の俳句についての説明を受け、先生の希望により何故か短歌を作ってみようということになる。

 

「触手なりけりで終わる良い短歌をお願いしますよ。ポイントはいかに触手を美しく表現できたか。出来た人は先生のところまで持ってきてください」

 

 触手なりけり……ってどうやったら美しく表現できるっていうんだ!

 

 スラスラと書いている人は神崎さんのように古文が得意な人であり、苦手分野とはいかないにしろあまり好きではないぼくはどうにも書けそうになかった。

 

「せんせー、質問いいかな?」

 

「……何ですか、茅野さん」

 

 反応が1秒ほど遅れ、先生が返事をする。

 

「今さらだけど名前何て言うの?他の先生と呼び分ける時言いづらいよ」

 

「名乗るほどの名前はありませんねえ。何ならみなさんで名付けてください。とにかく今は課題に集中ですよ」

 

 先生がうとうとするのを見て、そろそろ何かが起こると確信した。寺坂君たちが顔色の違いに気づいてるかは置いておいて、手榴弾を使うのなら今だろう。

 ぼくは先生の顔色が薄ピンクに変わる様子をじっと観察していた。先生の膝にはメルが乗っている。

 

 ……あれ、いつの間に?

 

 ぼくが異変に気がついた時、全ては進行形で行われている最中だった。メルが先生の頬にペタッと肉球を押し当て、先生はそれを退ける。

 

「2度目は効きませ、んよ……?」

 

 メルの首にぶら下げられているものに先生がハッとしたが、止める間もなく先生を中心に爆発が起きる。後ろを振り返ると寺坂君が起爆スイッチを押してニヤリと笑っていた。

 成功を確認した寺坂君、吉田君、そして村松君が歓声を上げた。他の生徒たちは呆気にとられた顔でそれを見つめている。

 

「っしゃあ!」

 

「やったぜ!百億いただきィ!」

 

「まさかこいつも猫に自爆テロかけられるとは思ってもみなかったろ!!」

 

 ぼくはとっさに天井を見上げた。寺坂君のことを暗い顔で見る先生と目が合う。今の話は全て筒抜けだ。

 

「寺坂君、メルに何持たせたの?!」

 

「あ?おもちゃの手榴弾だよ。火薬使って対先生弾がすげー勢いで飛び散るようになってるだけで」

 

「なっ、自分が何してるのか分かってるの?!」

 

「心配しなくても治療費ぐらい払ってやるよ」

 

 寺坂君はメルがいると思われる場所に近づき、全くもって無事なことに気がついた。周りを薄い皮で覆われているのだ。

 

「実は先生月に1度ほど脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺しました」

 

 天井から真っ黒になって怒っている先生がネタを明かした。寺坂君は汗を垂れ流しにして恐怖していた。いつもは基本スマイルフェイスの先生が本気で怒ることなんて、1周目でも数えるほどしかなかったはず。

 ぼくでさえど怒りの先生に顔向けはしたくない。

 

「寺坂、吉田、村松。首謀者は君らだな」

 

「いっ、いや……あの猫が勝手に!」

 

 どこに自分で手榴弾を仕込む猫がいるんだ。

 ぼくは少し呆れて浅野君に同意を求めた。彼は案外冷静に今の状況を観察している。

 

『そうか、1番成功率の高い暗殺方法だとは思ったんだが。あくまで教師か』

 

 浅野君がそんなことをスペイン語で漏らす間に先生は天井から降りていた。顔には紫でバッテンが描かれていた。

 

「動物を粗末にするような暗殺は禁止します。もちろん、人が自爆するようなこともです」

 

「お、俺らがどんな暗殺してきても関係ないだろう?!」

 

 先生の怒りに当てられ半泣きしている寺坂君に対し、先生は「とんでもない」と答えた。この流れは前回と大体同じのようである。

 

「アイデアは非常に良かったんですが。寺坂君たちはメルダリンを大事にしなかった。暗殺のために命を犠牲にするのは暗殺者失格です」

 

「やっぱり簡単には殺せないね、先生は。茅野?」

 

「殺せない先生……あ、名前殺せんせーは?」

 

 ぼくの言葉で閃いたようで、茅野は少し大きめの声で言った。

 

「ヌルフフフフ、いい名前ですね。皆さん今度から私のことは殺せんせーと呼んでください!」

 

 ウキウキした様子で楽しそうに触手をうねらせる超生物はその名前に大層喜んでいた。

 これでようやく殺せんせーって呼べるようになった。茅野が名付けたこの名前は結構好きだったので浅野君の登場で変わってしまわないか少し不安だった。結論としては何も変わらなかったけど。

 

「あはは……随分気に入ったみたいだね」

 

 名前といえば。

 ぼくは浅野君がメルダリンの名前について言及していたことを思い出した。そういえばメルダリンって死神が付けた名前のはずだけど、どういう意味なんだろう。

 

『浅野君、メルダリンって何て意味なの?』

 

 フランス語で浅野君に質問を投げかけた。彼はそんなことを話していたなと神妙そうな顔で静かに答えを述べる。

 

『ドイツ語で暗殺者って意味だ』

 

 道理で分からなかったわけだ。英語とドイツ語は似ていると言うが、響きが似ているのはフランス語と英語。同じ暗殺者でも英語はAssassinで、ドイツ語だとMörderinになってしまうというのだから違いは大きい。どっちかと言うと殺人鬼を表すmurderが近いように思える。

 

『ドイツ語かあ……浅野君教えてくれない?』

 

『止めとけ。渚には4ヶ国語で充分だ』

 

『だめ?』

 

『だめだ』

 

 むーっと頬っぺたを膨らませる。浅野君は最近ケチだ。体術の練習もそろそろ止めようとか言い出すし、何故か銃の使い方を知っているにも関わらず一緒に練習することは避けようとする。

 女子だからって弱いと思って馬鹿にしてるのかな。

 

『先生もドイツ語話せますよ。良ければ教えましょうか?』

 

 話を聞きつけた殺せんせーがそう申し出た。ぼくは先生からそういう声掛けがあったことよりフランス語で話しかけられたことにびっくりする。よくよく考えたら万能な殺せんせーに話せない言語なんてほとんど無さそうだけど。

 

『いいの?って先生フランス語も話せるんだね』

 

 殺せんせーはニヤニヤして浅野君を眺めていた。浅野君はイラっとしたようで殺せんせーの元に行こうとするぼくの腕を掴む。

 

『……渚、やっぱり僕が教える』

 

『え、殺せんせーが教えてくれるって__________』

 

『いいから黙ってろ』

 

 浅野君はむすっとしていた。教えないって言ったのに結局教えてくれるのか。何だかんだでそういうところ優しいんだよなあ、浅野君。

 

『ありがと、浅野君』

 

『……ふん』

 

 浅野君は素っ気なくそう返したが意識の波長が一瞬ズレた。照れてる……のかな。

 

「ヌルフフフフ……青春ですねえ」

 

 殺せんせーはメモ帳に素早く何やら書き込んだ。その様子を見ていた生徒たちは内容を知ることはできなかったものの、2人のやり取りに察し始める。

 

「ね、ねえ、浅野君ってもしかして……」

 

「もしかしなくてもそうだろ、あれ」

 

「しかも天使は気づいてなさそうだ」

 

(鈍いな〜天使ちゃん)

 

 密かにクラスメイトたちが浅野学秀という人物に理解を深めていたことを、そしてその日の内に数名のメンバー構成による「生徒会長と天使をくっ付けようの会」が結成されたことを、もちろんぼくは想像すらしていなかったのだった。






原作からの変更点

・浅野君と渚ちゃんはまだ暗殺しない
・突如乱入するメルダリン
・倉橋さんは動物の通訳が得意
・寺坂グループは猫を使うことに決めたようです(動物愛護法とかに引っかかりそうだけどそこら辺どうなんだろうか)
・ドイツ語を習おう
・「生徒会長と天使をくっ付けようの会」設立

浅野君と渚ちゃんの暗殺はまだ当分出てきません。楽しみにしてた方すみません!次回はカルマ君登場になると思います。

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