私はL1NEのトーク画面を開いた。イトナ君とのチャット履歴はほとんどなかった。何か大切なことは電話で伝えるし、プライベートで会うような仲ではないからだ。
『渚か。今牢屋にいる』
「あ、イトナ君? 牢屋からで大丈夫。この前新作のドローンができたって言ってたよね。今持ってる? 良かった。それで烏間先生を追跡してほしい。律に頼めばみんなに情報拡散してくれるはず」
『了解』
わたしは走りながらスマホを耳に当てていた。片手だけの状態にもかかわらず、崖を駆け上がったりと人間離れした行動を取っている。
「岡島がやったよ。
男子と連絡を取っていたカルマ君がある一箇所を強調して報告する。横でカエデが鋭い殺気をカルマ君に向けていた。完全にカルマ君に弄ばれている。
それにしても殺せんせー、ちょろすぎるんじゃない?まるで 悪い大人の見本だよ。
「よし、じゃあ次は買い物かな」
「裏山で何が買えるって…………そっか、律」
カルマ君はクラスメイトの万能自販機のことを思い出したようだ。
「なるほど! 律さんの自販機を使うんですね」
奥田さんが納得して頷く。それに驚きを見せたのはモバイル律だった。
「えっ、渚さんは本体の方に向かっているのですか?」
「うん、そうだよ。なんで?」
「いえ、まさかケイドロ中に自販機を利用するとは思わなかったので……」
私たちはやっと裏山と校庭の境目にたどり着くと、烏間先生が来るのをいち早く察知するために前後左右を見張る役目を杉野君とカルマ君が引き受けた。
自販機の前には紺のスーツ姿の男が立っている。横でカエデがわたしの手を強く握ってきた。
「ごめん、律。お取り込み中だった?」
わたしは男の人をちらりと見やる。癖っ毛の強い髪が印象的の若い男だ。大学生か大学卒業したばかりぐらいに見える。
イトナ君に見つかったら間違いなく嫉妬される現場だけど、律のことだし浮気ではないよね。
勝手に決めつけていると、律は可愛らしく小首を傾げた。
「皆さんはケイドロ中のはずでは?」
「そうだよ。でも欲しい物があって。その人は?」
「私のマスターです」
「…………………ああ」
長い間をあけて、その人が頷く。
どう見ても日本人なのに?!
思わず国籍に突っ込んでしまったが、言うべきは年齢な気もする。律のマスターにしては若過ぎるからだ。
「渚」
カエデがわたしの名前を呼ぶ。彼女の表情も態度もさっきからまるで変わっていない。ただ、握られた手が強くなるにつれて、見えなくて聞こえない嫌悪の感情が伝わってきた。意識の波長がだんだん激しくなっていく。
「ごめんなさい。わたしたち、今体育の授業中なので急がないと! 律、対先生糸出せるだけ」
わたしは急いでるふりをして、その場を乗り切ろうとする。律が大量の糸が入った袋を受け口から出した。
「今回は特別に無料で提供しますね。暗殺頑張ってください!」
今日は気前がいいなあ。
少し驚きつつ、手元の袋から糸を取り出す。律に見送られながら、裏山に戻った。
「やばっ、烏間先生がこっち来てる!」
杉野君の言葉に危機感を覚える。すぐに律のアプリを開き、烏間先生の追跡情報を手に入れた。100メートル先の南に烏間先生の信号。まずい、距離が近い。
「前後左右バラバラに逃げろ!」
杉野君が叫ぶ。この時既に烏間先生に居場所がバレていたのだと思う。裏山の奥の方の空気が一変したのが分かった。迫り来る笑顔の烏間先生。ぶるっと体が震える。
「わっ!」
「茅野さん逮捕」
石につまずいて転びそうになったカエデを烏間先生が起こしながら捕まえた。
カエデが捕まった。わたしは咄嗟に木の上の方に逃げる。対先生糸を木の上にくくりつけて固結びをする。
「赤羽君、杉野君、奥田さん、神崎さん逮捕。おかしいな、6人いたはずだ」
知らぬ間に全員捕まっていた。烏間先生は人数を確認して、1人足りないことに気づいた。
大丈夫だ、ここなら烏間先生も____
「ひゃっ!」
後ろから首を掴まれた。赤い手形がべっとりと首に付着する。ゆっくりと振り返ると、烏間先生の笑顔が至近距離に見えた。もはやホラーである。
「渚さん、逮捕」
烏間先生は颯爽と次の泥棒を捕まえに別方向に走っていった。
「渚も捕まっちゃったか」
カエデが残念と肩をすくめる。神崎さんもため息をついた。
「上手く逃げたと思ったんだけどな」
重い足取りで牢屋に向かう。わたしはジグザグにフリーランニングをしながら、その後を追った。木の枝に巧みに糸を絡みつけ、2メートルより上の位置で結ぶ。その動きは周りには奇妙なものにうつったようだ。
「渚ちゃん何やってんの?」
「殺せんせー対策その2。対先生糸を張り巡らせて、殺せんせーが空を飛ぶのを阻止しようと思って」
「おーすげー」
杉野君の素直な感心する声が嬉しい。烏間先生対策よりも殺せんせー対策に力を入れていて良かったと思ってしまった。
牢屋に向かう途中の泥棒は自然と烏間先生の視界から消える。だから罠を仕掛けても気づかれにくいし、気づかれたとしてもそれが殺せんせー用の罠なら烏間先生が撤去することはない。次の暗殺に活かせるからだ。
「渚ちゃんってたまにカルマ君みたいなこと思いつくんだね」
神崎さんの言動に、わたしは褒められているのか反応に困った。神崎さんは良い意味で言っているのだと、意識の波長から察せる。
でも本人には言えないけど、カルマ君みたいってずる賢いとか、悪魔みたいってことなんじゃ……
「そうだね、カルマ君ならどうするかなって考えているからかも」
「ふ〜ん、それは光栄だね」
「ずる賢いし、人の嫌がることするの得意だし……カルマ君より得意な人っているのかな?」
カエデに尋ね、周りを見回す。それぞれ横に首を振った。カルマ君だけ考え込んだように眉を寄せている。少し言い過ぎたかもしれない。
「自覚があるだけに否定できないね〜」
カルマ君はけろっとした顔で肯定した。
良かった、気にしてないみたいだ。
「普段の行いな」
杉野君がははっと笑い飛ばした。
「それじゃ、ちょっとずるい手使おっか。裏山で烏間先生には捕まるけど、殺せんせーに絶対に捕まらない場所ってどこだと思う?」
「そんな場所あるか〜? どう思う、神崎さん?」
杉野君が神崎さんの方を向く。こういうなぞなぞみたいな話は謎解きゲームの得意な神崎さんのが詳しい。神崎さんは顎に手を当てて、謎が解けると美しい微笑を浮かべた。神崎さんはあざとく杉野君の耳元に顔を近づける。内緒話みたいだ。
「もしかして____じゃないかな?」
「あ、うん。そう、だと思う」
杉野君は照れてそっぽを向いた。神崎さんがふふっと大人びた笑みを浮かべて、髪を耳にかける。
「殺せんせー、水苦手だからね」
そうか。
わたしは答えを理解し、口の端を上げた。
*
殺せんせーが解き放たれるまで残り5分。わたしたちはケーキバイキング割引券と引き換えに何とか脱獄に成功していた。
わたしはカルマ君たちと離れ、1人別行動をしている。理由は他の残っているグループと合流するためだ。
「渚ちゃん、こっちこっち!」
片岡さんがわたしを発見して近くに呼び寄せる。一班のメンバーが全員集まっていた。一班は運動神経が良い人が多い。学級委員の2人がいて、暗殺にも積極的なので、自然とクラスの中心になっている。
「渚ちゃんが来てくれて良かった」
「ほんと。実は4人の小隊を作ろうって磯貝君が提案したんだけどね、うちの班7人だからどうしようかと思ってさ」
岡野さんの説明になるほどと頷く。確かに4人なら前後左右を見張るのに効率がいい。すぐに烏間先生の方向をつかめるだろう。
「でも烏間先生の居場所ならイトナ君のドローンが追跡してるよ?」
さっきから信号が止まって動く気配ないけど。
「それがイトナ君のドローン、もう烏間先生に破壊されちゃったから追跡できないんだって」
と矢田さん。烏間先生も自分の居場所が特定されていることにいち早く気づいたみたいだ。信号に動きがないのもそれが理由だ。
ごめんイトナ君。
心の中でイトナ君に謝る。
「それにしても、すごいアイデアだね」
「うん。カルマ君の案。時間ないから急いで分かれよう。グッとパーでいい?」
「そうだね」
2度目で見事に4人ずつに分かれた。わたしは倉橋さん、矢田さん、磯貝君と同じグループ。岡野さん、前原君、片岡さん、木村君がもう一つのグループだ。
「時間ないから手短に済ませるね。烏間先生に遭遇したら、すぐにプールとは逆方向に誘導。1分前まで持ちこたえて」
「うん、また後で!」
「あと3分か。何事もないといいけど」
「ねえ、殺せんせーが1分前にスタートってことは、牢屋の方が手薄になるんじゃない?」
倉橋さんが思いついて聞く。磯貝君は首を振った。
「殺せんせーのことだから分身を飛ばすよ」
「うん、裏山程度だったらどこでも分身飛ばせると思う」
「あと残り1分10秒。10、9、8、7、6……」
矢田さんが腕時計を見ながら、カウントダウンを始める。
「5、4……」
磯貝君が対先生ナイフを片手に警戒態勢に入った。わたしもナイフをポケットから取り出す。
「3、2、1……」
「ゼロ」
スタートからわずか8秒後の一瞬の出来事だった。ものすごい強さの風が吹き抜けて、わたしたちの脇を過ぎ去っていく。それが殺せんせーだと気づくのに時間はかからなかった。肩に付着した真っ赤な触手跡がそれを物語っている。
「捕まっちゃったね」
倉橋さんは何の感慨もなく言った。
「うん」
わたしたちは捕まってもいい。わたしたちはただの捨て駒だから。
律の逮捕者リストに目を移す。10秒そこらで名前が増えていき、30秒過ぎた頃にはほぼ全員の名前がそこにあった。リストにないのはカルマ君と杉野君、そしてイトナ君だけ。
残りの30秒はひたすら長く感じた。さっきと同じく矢田さんがカウントダウンをし、彼女がゼロを言い終わった瞬間みんなで喜んだ。
昼休みに烏間先生は約束通り、大きなホールのケーキを買ってきてくれた。カエデには要望通りプリンもある。
「やった〜! プリン!」
「はしゃぎすぎじゃない?」
わたしはカエデに向かって言う。カエデはプリンを口に運んで、至福の笑みを浮かべている。
「ん〜! 渚だってケーキ食べれて嬉しいくせに。かなり本気だったよね」
「そんなことなかったよ! ね、烏間先生」
烏間先生は電話越しに誰かと話しているようだった。口ぶりからそれが目上の人物だと分かった。
「そんな馬鹿な……何かの間違いでしょう! あなた方の勘違いで、生徒たちにトラウマでも植え付けたらどうするつもりですか?」
烏間先生が声を荒げて、クラス全体の注目が彼に集まる。教室のドアがガラリと開いた。何人もの黒いスーツ姿の男たちが殺せんせーを取り囲む。
「椚ヶ丘中学校3年E組担任教師、殺せんせーと呼ばれている超生物はお前で間違いないな?」
「にゅやっ! あなたたちは一体____」
殺せんせーは殺し屋を疑って「手入れ」の準備を始める。触手にはヘアメイクのセットがあった。
「椚ヶ丘連続通り魔殺人事件の容疑者としてご同行願いたい」
黒いスーツを着た男数名が殺せんせーに向けて紙を差し出した。殺せんせーが驚いたように顔を青白くする。ヘアメイクセットは無残に床に落ちていった。
わたしたち生徒も同じような反応で、誰もが動揺している。
殺せんせーが殺人事件の容疑者として連行された。その意味は殺せんせーが人殺しをしたということで。
殺すという行為が日常になりかけていたわたしは初めて現実を突きつけられた。
*
「君はアイスティーでいいかな?」
目の前の男が優しい笑みを向ける。来たことのないカフェの店内。気怠げな女性店員が困ったようにわたしの返事を待っていた。
あれ、わたし何でこんなところに?
「えっと、ごめんなさい。記憶が混乱してて……」
「さっきからぼーっとしてたからそうじゃないかなって思ったんだ。とりあえずアイスティー2つください」
「かしこまりました」
店員が店内の奥へと消えていく。店内にはちらほら人はいたが、年齢層が高めで学生がほとんどいない。
「仕事の帰りに見かけて、浮かない顔をしていたから思わず。ごめん、無粋な真似したね」
頰をかいて謝る。相手の顔をよくよく見て、目の前の印象の薄い男が花屋さんだと気づいた。どうやら浮かない顔をしたわたしを心配してカフェに連れてきたらしい。
「いえ。嫌なことがあったのは本当ですから」
「そういう時は花を見て癒されるといいよ。買って行くかい?」
「花屋さんらしいアドバイスですね」
くすりと笑みをこぼす。本当に花を愛しているのだろう。後で買っていってという言葉が無ければそう思ったのに、これじゃただのセールストークだ。
「癒しになるものなら何でもいいけどね。僕の場合、それが花と猫なんだ」
「猫、飼ってるんですか?」
意外、というほどでもないが、雰囲気から犬派を連想していた。猫派だったのか。妙に親近感を感じる。
「シャム猫を飼っていたんだけどね」
「あ、わたしの飼ってる猫もシャム猫です」
「偶然だね。僕は1年前に失くしてしまって……そうか、いいな」
目を細めて彼は心底羨ましげに呟いた。悪いことを聞いてしまったかなと口をつぐむ。
さっきとは別の店員がアイスティーを2つ持ってきた。コップの形がジャム瓶みたいでオシャレだ。
ストローを口につける。
「あ……美味しい」
「良かった」
わたしの漏らした微かな言葉にパァッと笑顔になる。
この人といると穏やかな気持ちになるなぁ。ずっと前からの知り合いみたいに落ち着く。びっくりするようなことがあったばかりなのに不思議だ。
「会計一緒で」
アイスティーを飲み終わって、店のレジの前で花屋さんが財布を取り出した。わたしは慌ててそれを止めにかかる。
「そんな、悪いですよ。ちゃんと払います」
「こういうところは男に払わせるのが礼儀だよ、渚」
花屋さんは大人な微笑でわたしの反対を押し切って、素早く会計を済ませてしまった。申し訳なさで胸がいっぱいになる。
代わりに何か、花屋さんが喜ぶこと……そうだ。
「それじゃあ、お礼に今度うちの猫を見に来ませんか?」
「……いいの?」
目の奥がキラキラ輝いて見える。すごく猫が好きなのが伝わってきた。
「はい、土日にでも……あれ?」
店の外に2人で出て、わたしは首を傾げる。見たことのない光景だ。ぼーっとしていたせいか、知らない街に迷い込んでしまったようである。
「すみません、ここどこですか?」
「その様子だと家までの道も分からなそうだね。送って行くよ。君の猫はその時でもいいかい?」
「そう、ですね。わざわざありがとうございます」
「じゃ、乗って」
花屋さんはトラックの助手席にわたしを乗せる。住所を口頭で伝え、トラックはわたしのアパートまで向かった。
「ちょっと狭いですけど……」
窮屈じゃないだろうかと花屋さんの顔色を窺う。花屋さんは首を横に振った。
「そんなことないよ。君の猫は?」
「まだ帰ってませんね。待ってますか?」
「そうしよう」
メルは夕食の時間になると必ず現れる。食い意地が張っているので、何があっても夕食を食べる気なのだ。
わたしは花屋さんに水を出す。
「悪いね。あ、あのバラ飾ってくれてたんだ」
花瓶には白いバラがいまだに飾られていた。こまめに水をやっているからか、まだ枯れていない。
わたしはそちらに目を向ける。
「花が一輪あるだけで部屋の印象が変わるなと思って」
「そうだね。懐かしい…………昔、先生に花を生けるのは私より上手いって言われたっけ」
…………? 花の先生かな。
「素敵な才能ですね」
「才能、ね」
「あ、帰ってきたみたいです」
窓の前にメルの姿を発見し、窓を開けてやる。メルは花屋さんをじっと見上げ、わたしの方に視線を向けた。
花屋さんはニコニコしたまま、メルを見下ろす。
「久しぶりだね、
メルがバツが悪そうな顔で彼から顔を背ける。
「え」
メルダリン?
「酷いじゃないか。僕を置いて違う飼い主を探すなんて。それとも____」
メルの頭に彼が銃を突きつける。メルは鋭い目を彼に向け、歯を見せて唸った。
「彼女が最強とでも言うのかい?」
「どういうことですか……? どうしてあなたがメルのこと」
「渚、君はもう少し人を警戒するべきだったね。死神を易々と家に招き入れてしまったんだから」
銃を上に投げ、空中で一回転させる。彼の意識の波長は快楽と歓喜の絶頂にいた。
「死神……う、そ」
「まさか君の方から家に誘ってくれるなんて、猫好きなアピールをした甲斐があったな。猫好きなのは本当だよ。メルダリン以外の低俗で劣等な猫には興味がないけどね」
わたしが驚いて何も話さないのをよそに、死神はペラペラと話し続ける。わたしはすぐに護身用のスタンガンをポケットから取り出し、後ろに隠した。
「わたしが何も反撃できないと思ってる?」
「しないよ、君は。させないからね」
死神はわたしの目の前で両手を強く叩いた。その瞬間、脳に大きな衝撃が走る。脳内にダブって聞こえたもう1つの記憶の音が反響して、現実の音と重なった。そして思い出したのだ。
これはクラップスタナーだ、と。
『強いていうなら、女子に生まれて欲しかったわ』
流れ込んだお母さんの声に息を呑む。鏡の前で言いなりになる自分の姿が脳内に映し出された。
『大好きだよ、殺せんせー。死んで』
突然触手で殺せんせーを殺そうとする茅野。それを驚いた表情で見つめる男子の制服を着た自分。髪型も少し変わってる。
『先生は誓ったんです。触手を皆さんから離さないと』
殺せんせーの言葉が胸に響く。殺せんせーは後ろからの銃弾によって息を絶え、生徒たちはその場に取り残された。
『君は何故あいつを殺したんだ?』
烏間先生は聞いてきた。その問いに答えは無かった。
プツリとそこで意識が途切れた。これが潮田渚の人生の覚えている限りの終わり。
『何でお父さんがいるの?』
純粋に不思議に思って尋ねる小さな自分。きっと大石渚はここから始まったんだ。
『あなたの大切な人をちゃんと見ていてください』
初代死神に告げた。それなのに研究所は爆発してしまった。自分の手に握られたカプセルに触手の種が入っている。
場面は反転し、病室で触手で雪村先生に触れる少女を自分は見つめていた。
『約束するよ』
心の中で彼女を助けることを誓った。雪村あかりという、雪村先生の妹を。
茅野カエデを。
『渚がE組に来るのは2度目なんじゃないか?』
そう、2度目。大石渚の人生は2度目だ。ゲームでいう強くてニューゲーム。
『クラップスタナーは1度しか鳴らせないんだよ』
何でもない言葉が妙に生々しく耳に残っていた。今なら違うと言えるかもしれない。それは確かに2度聞こえたから。
クラップスタナーは2度鳴る。
1度目は記憶の中で。
2度目は現実世界で。
ぼくは潮田渚の二周目だ。
原作からの変更点
・イトナのドローン
・対先生糸(対触手繊維でできた糸)の使用
・殺せんせー逮捕される
・ナンパされて家まで上げる渚ちゃん
・今回の話の要約。初代死神に捕まる。初代死神が捕まる。2代目死神に捕まる。
タイトル無理矢理回収回。出会ったら即ぶっ殺なイメージの死神。でも原作だと結構失敗してるし、本当はそこまで殺す気無さそう(原作が死者ほぼゼロの健全漫画だから仕方ない)
渚は学秀、殺せんせーがいないとセキュリティーが超ゆるいです。でも死神じゃなかったらたぶん渚は家までは上げてません。完全に誘導されました。
次回からオリジナル展開がスタートします。