ビーラビットも異世界から来るそうですよ? 作:shin-Ex-
・・・・どうなるかは見てのお楽しみです
それでは本編どうぞ
「オ・・・・・ズ」
か細い声で名を口にしながら、アリスは石と化してしまったオズに一歩一歩近づいていく。その間にコミュニティ"ペルセウス"の者たちが現れ、その場に居た・・・・オズが庇った金髪の吸血鬼、レティシアを巡って騒がしくなっているが、その喧騒はアリスの耳には届いていない。
「オズ・・・・・」
石となったオズの身体に触れるアリス。そこに普段の温もりも安心させるような柔らかさもない。ただただ・・・・冷たく、硬い。
(なんだ・・・・これは?なぜ・・・・・こんな?)
まるで暗く、深い穴に落ちていくかのような感覚にアリスは苛まれる。
なぜオズが石になってるのか?なぜそのせいで自分がこんなにも苦しく、悲しい気持ちに陥ってしまっているのか?なぜ・・・・どうして・・・・・?
絶望感を心に抱くアリス・・・・・やがてその悲しみの絶望感は、抑えきれぬ怒りへと移り変わってゆく。
(誰だ?誰がオズをこんなにした?)
アリスはオズを石に変えたのは誰なのかと・・・・オズから喧騒のする方へと視線を移した。初めにアリスの目に映ったのは黒ウサギに庇われるようにしているレティシアであった。オズは彼女を庇い石になってしまった。オズが石となる原因の一旦はレティシアにあるといってもいい。
だが・・・・アリスはすぐにレティシアから視線を逸した。確かに原因をつくったのはレティシアではあるだろうが、オズを石に変えたあの光を出したのは彼女でないことをアリスは理解していた。故に、原因は彼女にあろうとも、それはアリスの怒りの対象にはなりえなかった。
では怒りを向けるべきなのは誰なのか・・・・・次にアリスの目に映ったのは"ペルセウス"の兵達であった。何が起きてるのかはアリスにはよくわかっていないが、それでもレティシアを渡せと言っていることだけは理解できていた。
レティシアというのがオズが庇った少女だということは話の流れからしてアリスは察した。そしてレティシアを狙っている"ペルセウス"の連中が・・・・レティシアを連れ去るためにあの光を放ったのではないかとアリスは思い至った。
(そうか奴らが・・・・奴らが私のオズを)
怒りの矛先を定めたアリスは、喧騒の中に身を投じる。
「ア、アリスさん?」
「アリス?お前何して・・・・?」
黒ウサギと十六夜がアリスの名を呼ぶが、アリスは反応しない。ただじっと"ペルセウス"の連中を睨みつけている。
「な、なんだ貴様は!」
「"名無し"のこ、小娘が・・・・何を睨んでいる!」
"ペルセウス"の者達はアリスに怒鳴るが、アリスの怒気に当てられたせいか萎縮しきってしまっている。
そしてそんな彼らに・・・・・アリスは冷酷に言い放つ。
「・・・・・殺す」
「え?」
「な、何を・・・・?」
殺すと言われ、連中の中の二人がビクリと反応を示す。そんな二人に・・・・・二本の鎖が放たれる。鎖は二人の首を締め上げ、見せつけるかのように体が持ち上がる。
「き、貴様!何を・・・!」
「貴様らが・・・・貴様らがオズをあんなにしたんだ。その罪・・・・死をもって償え!」
アリスの怒りは・・・・いよいよ本格的に解き放たれてしまった。
アリスの周囲にはいくつもの鎖が展開され、その手には禍々しいほどに黒々とした大鎌が握られている。
「覚悟しろ!貴様ら全員血祭りに・・・・いや、血祭りでさえ生ぬるい!無様な肉片に変えてやる!」
「「「ひっ!?」」」
アリスの怒気に、殺気に完全に怯えてしまった"ペルセウス"の者達は、顔面を蒼白させて震え上がる。
そして、そんな連中を手にかけようとアリスが一歩踏み出したその時・・・・
「・・・・悪いなアリス」
「がっ!?」
ドスっと・・・・アリスは腹部に強い衝撃を受けたのを感じた。十六夜がアリスを殴りつけたのだ。
「いざ・・・よい。きさ・・・・ま・・・」
アリスはキッと十六夜の事を睨むが、意識を手放し気絶してしまった。
(オズ・・・・・なぜお前は・・・・)
「ここ・・・は?」
目を覚ましたアリスがまず見たのは、見慣れない天井であった。
「お?起きたかアリス」
名を呼ばれ、声のした方に目を向けるアリス。そこには十六夜が居た。十六夜はアリスが眠っていたベッドの傍らに置いた椅子に腰を下ろしている。
「十六夜・・・・私はなぜ・・・・!?」
目を覚ましたばかりでぼんやりとしていたアリスであったが、やがて脳は完全に覚醒する。そして・・・・意識を失う前のことを思い出した。
「十六夜、貴様ぁ!!」
ベッドから飛ぶように起き上がったアリスは、十六夜の胸ぐらを掴んだ。
「なぜ邪魔をした!奴らはオズを石にした・・・・八つ裂きにしなければならなかったのだ!それなのになぜ・・・・なぜだ!」
激情のままに十六夜を怒鳴るアリス。十六夜が仲間でなければ、おそらく鎌で斬りかかっていたことだろう。
「落ち着けアリス。そんなに怒ると皺が増えるぞ?」
「うるさい!そんなのどうだっていい!」
「冗談も通じないか・・・・・オズ関連となるとからかえねぇか」
「ごちゃごちゃうるさい!たたっ斬るぞ!」
軽口を叩く十六夜に、アリスは怒りを募らせる。これ以上はぐらかすのはよくないと判断した十六夜は、アリスに事情を話し始める。
「マジで少し落ち着けよアリス。あの時、あそこでお前が"ペルセウス"の連中を殺しちまったらそれこそオズを元に戻すのが難しくなっちうだろ。だから止めたんだよ」
「オズを元に・・・・そうだ!オズは・・・・はどうなった!元に戻ったのか?」
「あ~・・・・それは・・・・・」
アリスが問うと、十六夜はバツが悪そうに顔を逸した。
「悪いな。あの後色々あって"ペルセウス"のリーダーと話はしたんだがオズを元に戻す事はできなかった」
「なに?なぜだ?」
「それを説明すると色々と面倒なんだがな・・・・・"ペルセウス"は非はこっちにあるってことにしたいらしくて、だからオズを元には戻さないんだと」
「なんだと・・・・そんな馬鹿なこと・・・まさか貴様、それを受け入れたのか?」
「いいや。流石にそこまで物分りはよくねぇよ。非があろうがなかろうが実害を受けたのはこっちなんだ。だから1週間後にギフトゲームをして、勝ったらオズを元に戻せることになった」
「・・・・ゲームに勝てば、か」
十六夜の説明を聞き、オズを元に戻すことができるとわかってひとまずアリスは安堵した。ギフトゲームで勝たなければならないのは面倒ではあるが・・・・・それはそれでアリスにとっては好都合であろう。なにせ、"ペルセウス"の連中を八つ裂きにする機会が得られたのだから。
「ちなみに金髪ロリ・・・レティシアって名前なんだが、勝てばそいつももらえることになってる」
「ふんっ、それはどうでもいい。オズさえ元に戻せるのなら・・・・それ以外は知ったことではない」
「そうか」
「オズは今どこにいる?」
「今はオズの部屋にいる。中庭に放置するわけにも行かなかったんでな」
「・・・・わかった」
十六夜からオズの居場所を聞いたアリスは、ベッドから立ち上がり、オズのいる部屋へと向かった。
「・・・・オズのことがそんなに大事か。そのせいで面倒が起きなけりゃいいが・・・・」
「・・・・オズ」
オズの部屋についたアリスは、オズの頬に手を当てて名前を呼ぶ。
「馬鹿が・・・・・こんなふうに硬くなってしまっては頬を食うこともできないではないか」
悲しそうに・・・・寂しそうにそう呟くと、アリスはオズ抱きしめる。
「・・・・オズ。私が元に戻してやる。待っていろ」
抱きしめる腕の力を強め、アリスは誓う。
オズへの愛おしさと・・・・・"ペルセウス"への憎しみを心に秘めながら。
今回はあとがきお茶会はお休みさせていただきます
というかできない。オズは石だしアリスは・・・・結構ヤバイし。というか怖いし
その代わりと言ってはなんですがいくつか本編の補足を
アリスが気絶したあとですが、"ペルセウス"の兵達はアリスに恐れをなして一目散に逃げていきました。情けないと思うかもしれませんが二人ほど殺されかけているので仕方ないですね
そしてその後は原作通り"サウザンドアイズ"の支店でルイオスと邂逅。原作と違うところは石になってない状態のレティシアが同行してることですね
そして話し合いが始まるわけですが・・・・ルイオスは案の定相手が"ノーネーム"だっていうことでまともに取り合おうとはしませんでした
しかし、オズが石になってしまった手前、なんの償いも無いというわけにはいかず、勝てばオズを元に戻し、レティシアを貰い受けるという条件でギフトゲームをすることになりました
ちなみにオズを元に戻すだけならゲームをする必要はないのですが・・・・レティシアを手に入れるために、十六夜がゲームを提案しております。もしこの場にアリスが居たら怒り狂っていたことでしょう
なお、黒ウサギと飛鳥は渋々十六夜の提案に賛同しておりました。レティシア取り戻すためだから仕方ないね
そして一同は"ノーネーム"の本拠地に帰って来て、十六夜はアリスに事情説明するために待機していたということです。まあ、その事情説明も肝心なことだけ話して色々と端折っておりましたが
トータルで見るとオズが石になってしまったのはマイナスですが、原作と違ってすんなりゲームが出来ることになった点はプラスと行っていいと思います
では、補足はここまでとさせていただきます
次回もまたきてくださいね!