機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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第18話

 ゾンダーエプタ―へと到着するフリーデン。全方位からモビルスーツに銃口を向けられて、抵抗したその瞬間一斉攻撃で沈められる。艦内のクルーも武装解除を余儀なくされ、ガロード達は人工島ゾンダーエプタ―に足を踏み入れた。

 港に着けば武装した兵士が大勢出迎えてくれる。クルー達は両手を上げて彼らの指示に従い動くしかなかった。ブリッジのジャミルも無抵抗のままにカトックと共に港へ降り、乗組員全員が一箇所に集められる。

 その中でアムロは人の隙間を縫いながら合流したジャミルの隣へと行く。

 

「すまない、何もできなかった」

 

「無理もない。こちらもティファを人質に取られどうにもできなかった。相手の思惑通りに動かされた」

 

「だがコイツラの目的はティファだけか? どうして俺達まで連れて来る」

 

「他にもあるガンダムが目的とも取れるが……。それにあの男が言っていた事も気になる」

 

「あの男?」

 

「15年前の亡霊、どう言う意味だ?」

 

 サングラス越しにカトックを睨むジャミルだが相手は意にも変えざすニンマリと笑みを浮かべるだけ。

 ティファがそのまま連れて行かれるのを指を咥えて見てるしかできない。

 ジャミルもアムロも、そしてガロードも。

 彼女の背中が遠く手の届かない所にまで行ってしまう。次第に小さくなっていくその姿をガロードは目に焼き付けた。

 

(ティファ、必ず助ける。それまで待っててくれ)

 

 ガロードの心がティファに伝わったかどうかはわからないが、彼女は最後にちらりと後ろに振り返る。その瞳から伝わる感情は恐怖よりも悲しみが伝わった。

 けれどもそれも一瞬、カトックに急かされティファは彼らの見えない所に行ってしまう。それと入れ違いにフリーデンのクルー達が集まる所へ2人の男がやって来た。1人は全員が知るあの男。

 

「久しぶりだね、ガロード・ラン。ゾンダーエプタ―にようこそ」

 

「お前……オルバ!」

 

「また会えて嬉しいよ」

 

「よくそんな事が言えるもんだな」

 

「まぁ、そんなに怒らないで。今日は兄さんも居るんだ。それとジャミル・ニート、アナタもこちらへ来て貰う」

 

 黒い制服とブーツを身に纏うオルバ、そしてその隣には兄であるシャギア・フロストが居た。圧倒的優位な立場に居る事もあるが、彼らは前回ガロードと接触した時のように余裕の表情を浮かべている。

 言われたジャミルは前に出るとオルバに銃を突き付けられ、そのままティファが向かう先へと連れ出されてしまう。

 残るシャギアはガロードを見下ろすと久しぶりの再開に口を開く。

 

「ここまで生き残ってるようで何よりだ。ガロード、君は私達兄弟の宿敵なのだから」

 

「お前らが勝手に決めただけだろ! それより、こんな所で今度は何を企んでるんだ?」

 

「ペラペラとここで喋ると思うか? 私はね、君にもそうだがもう1人のパイロットにも興味があるんだ。オルタネイティブ社で戦ったもう1機のガンダム。そのパイロットだ。名前は前に教えてくれたね? たしか……アムロ・レイ」

 

 シャギアの鋭い視線が、プレッシャーがアムロに突き刺さる。だがアムロも長い戦争を潜り抜けて来た歴戦のパイロット、このくらいで動じたりはしない。プレッシャーを跳ね除け、現れたシャギアの元へ向き直る。

 

「俺に用があるのか?」

 

「あるとも。私はモビルスーツ戦で今までに負けた事がない。だが貴様の白いガンダム、私はあのガンダムに初めて負けた」

 

「たったそれだけの事で?」

 

「貴様にはわからずとも私達には意味がある。フフッ、その時が来るのを楽しみに待っている」

 

 不敵な笑みを浮かべるシャギアとオルバは言いたい事だけを言うとその場から立ち去ってしまう。短い会話の中でアムロはシャギアから伝わって来るドス黒い感覚を感じる。

 

「あの男がシャギア・フロストか……」

 

 フリーデンも、モビルスーツも、武器も、ティファさえも奪われアムロ達に抵抗する術は残されてない。

 今はまだ。

 

///

 

 カトックはティファを人質としてアイムザットが待つ部屋にまで連行している。鉄製の壁や天井に囲まれた通路を歩きながら、ティファはちらりとカトックを見る。

 

「安心しろ、殺しはしねぇよ。まぁ、そうは言ってもお嬢ちゃんくらいの年頃の子にそんな事言っても無理か。俺だって銃を突き付けるつもりなんて本当はねぇ。でもこれが仕事なモンでね」

 

「アナタは……」

 

「あん?」

 

「アナタは前に進まなければダメになる。ガロードも言ってた。絶望に立ち止まっていてはいけないって」

 

「ふふふッ……」

 

 ティファの言葉に思わず笑みをこぼす。心のどこかでは気が付いていた。けれどもそれを踏み越えて行ける程カトックも強くはない。

 歩みを止める事で何とか精神を維持できていた。そうする事でしか家族が死んだ悲しみを癒やす事ができない。

 いや、正確には癒やしていたのではなかった。ガロードの言う通り只立ち止まっていただけ。

 

「それはニュータイプだからわかったのか?」

 

「あの時……微かだけれどアナタの心を見てしまいました。ガロードとジャミルも同じ」

 

「そうか……15年前の戦争のせいで苦しんだのは俺だけじゃないってか? そんな事頭ではわかってる。でもな、簡単に整理できる程人間の心ってのは便利じゃねぇ。心の底、俺の中の芯の部分が、あの戦争を忘れられないんだ。今でも家族の夢を見る」

 

「忘れる必要はありません。でも乗り越える必要はあります。みんな今を必死に生きてる。だからアナタも生きて下さい。死に場所を求めて生きるなんて悲しすぎます」

 

「かもしれないな。だが、俺には無理だよ」

 

 カトックに背中から銃を突き付けられながら進むティファはある1室に招かれる。その部屋は広く、内装もきらびやかだ。床には赤い絨毯が敷かれ、壁には絵画が飾られている。目の前に映るのはテーブルに彩色の施された食器と温かい料理。

 その先に居るのはゾンダーエプタ―の司令官、アイムザット・カートラル。

 

「キミがニュータイプのティファ・アディールか、良く来た。カトック、お前の経歴から見れば今回の作戦成功は称賛に値する」

 

「お褒めに預かり光栄です、大佐」

 

 上官を目の前にしてもカトックの態度はいつもと変わらずニヤニヤと笑みを浮かべてふてぶてしい。

 アイムザットはそんな彼に不快感を覚えながらも、ようやく手に入れる事ができたニュータイプに心躍らせた。

 彼が思い描く計画を実行に移すにはどうしてもニュータイプと呼ばれる存在が必要不可欠。

 

「まぁ良い、これで準備は整った。新連邦と渡り合えるだけの戦力、新たなガンダム、そして象徴であるニュータイプ。この力があればブラッドマン卿も迂闊にては出せない。私の立場も確約されたも同然だ」

 

「ほぅ、クーデターでも起こす気ですか?」

 

「違うな、新連邦と対立した所でさほどメリットはない。戦えば戦力は疲弊する、そうなれば地球圏の統治にも時間が掛かる。私は今の地位を更に上げられればそれで良い」

 

「その為にこんな手の込んだ事を?」

 

「必ず成功させる必要がある。でなければ私の存在は軍に消されるだろう。失敗は許されない」

 

「へぇ、ようやく地球にも人が住めるようになったと言うのに、アンタが目指すのは軍での立場か。こりゃ傑作だ」

 

 嫌味を込めて言うカトックにアイムザットは鋭い視線を向けるだけ。その頃になってようやく、ジャミルを連れたオルバも部屋にやって来た。

 

「アイムザット総括官、ジャミル・ニートを連行しました」

 

「ご苦労、下がれ。カトック、お前もだ」

 

「へいへい」

 

 頭を垂れるオルバは部屋から立ち去り、カトックも背を向けると出口に向かって歩き出そうとした。瞬間、ティファの表情を覗く。彼女のその表情は強張ってるようにも見える。

 

(生きる為にもがき抗う、俺がいつもして来た事だ。ニュータイプってのは未来が見えると聞いた事があるが、あの娘もそうなのか? 初めて出会った時にそう言ってたが、だとすればこれから先の事も知ってるのか?)

 

「どうしたカトック、早くしろ」

 

「いやね、こう言う話を知ってますか? ある貧乏人が金持ちの貴族にこう言った。金のある奴は苦労も知らなくて羨ましい、ってね。そしたらその貴族はなんて言ったと思います? お前なんかに金持ちの気持ちがわかってたまるか! ってね」

 

「何が言いたい?」

 

「いいえ、別に。では失礼しますよ」

 

 ようやくカトックも部屋から出て行き、残るのはアイムザットとジャミルとティファだけ。話を聞いたティファはすぐには意味が理解できずにいたが、用意された椅子に座るジャミルは解説するかのように言う。

 

「力があるモノとそれを利用しようとするモノ、どちらも同じ愚かさを秘めている」

 

「ほぅ、同じ愚かさか。私も、そしてキミも」

 

「今更自分がしてしまった事を言い訳するつもりはない。それよりも、新政府はまたニュータイプを利用しようとしてるのか?」

 

「当然だ。だがそれよりも前に私が使わさせて貰うがな」

 

「あれ程の戦争を引き起こしておきながら……あの惨劇を目の当たりにしてもまだそんな事を考えるのか?」

 

「そうだ。だがキミは違うようだな。だからニュータイプの保護を考えた。しかしだ、私とキミは根ざしてるモノは同じだ」

 

「どう言う事だ?」

 

「私もキミと同じ、あの戦争を肌で感じた。そしてあの時代を生きたモノはニュータイプの呪縛から逃れる事はできない。ならば利用するしかあるまい」

 

「それが……今までティファを狙っていた理由か?」

 

「そうだ、だが呪縛はそれだけではない。キミもだ、ジャミル・ニート」

 

「私もだと?」

 

 突然の事に驚くジャミル、アイムザットは用意されたフォークとナイフを手に取り鶏肉のソテーに手を付ける。ひと口大に切られた肉を口に運び、咀嚼する度に溢れる肉汁を味わう。

 彼が食べ終えるまでジャミルもティファも何も言えない。その事をわかっていながら、さも気付かないかのように振る舞うアイムザット。

 

「どうした、料理が冷めるぞ?」

 

「私も呪縛に囚われているとはどう言う事だ?」

 

「お前達バルチャーは名を馳せているがいつも食事にあり付ける訳でもあるまい。自慢ではないがそこらのよりも良い食材を使わせている。遠慮するな」

 

 轟音が響く、ジャミルが握り拳をテーブルに叩き付けたからだ。珍しくもジャミルは感情をあらわにして激怒している。その様子にティファは思わず目を見開くも、アイムザットは至って冷静だ。

 

「どうした? 何を怒っている? いや、焦っていると言った方が正しいか」

 

「くっ! 15年前の亡霊、呪縛とは何だ?」

 

「フフフッ、良いだろう。キミには知る権利がある。私はね、極秘裏に新型のガンダムを開発していた。サテライトシステムを搭載した新しいガンダム。だがシステムを起動させる為にはニュータイプが必要だ。その辺りはキミの方が詳しいだろう?」

 

「あぁ、そうだ。ティファはその為の?」

 

「いいや、違う。いつ捕まえられるかわからんニュータイプを待って機体の完成を先延ばしにする事はできん。そこでだ、我々はフラッシュシステムのロックを解くべくあるモノを探した」

 

「あるモノだと?」

 

「そうだ、貴様が15年前に乗っていた機体。ガンダムだ」

 

 サテライトシステムを起動させるにはニュータイプが必要不可欠。だが軍には、ニュータイプは未だに確保できておらず、彼らがニュータイプを手に入れたい理由の1つがそれだった。その中で見付けたのがティファ・アディール。

 けれどもそれまで開発をストップさせる訳にもいかず、アイムザットはあるモノを見つけ出す。それこそが、15年前にジャミルが乗っていた機体。

 最終決戦で左腕と頭部を破壊されてしまっていたが、サテライトシステムに影響はない。

 

「ガンダムだと!?」

 

「15年前、キミが使っていた機体が。それなら初期動作の為にニュータイプを用意する必要はない。システムをごっそり載せ替えたのさ。我々が開発した新しいガンダムに」

 

「そうか、15年前の亡霊とはそう言う事か」

 

「わかって貰えたかな?」

 

「そして新しいガンダムを開発したのか? あの時の過ちを繰り返すつもりか?」

 

「私はそこまで愚かではない」

 

「どの口でそんな事を言う」

 

 ジャミルに何を言われた所でアイムザットは意にも返さない。圧倒的優位な立場から来る自信と、これから成し遂げるべき作戦を前にしての高揚感。手に入れた力と目前にある地位が、彼を強気にさせる。

 

「私は過ちを繰り返したりなどしない。地球連邦の再建、そして地球圏と宇宙の統治。その為の象徴としてニュータイプを使う。そして力の象徴は新たなるガンダムだ。その名は――」

 

 

 

第18話 ガンダムダブルエックス

 

 

 

 フリーデンのクルーは一箇所に収容されていた。今は危害を加えてないが、用が失くなれば抹殺するつもりでいる。それを考えれば数カ所に別けるよりまとめておいた方が処理し易いからだ。

 ガロード達が居る場所は部屋と言うより格納庫と言った方が正しい。鉄の壁に囲まれ外へ繋がる窓の1つもない。空調装置から空気だけは送られて来るので窒息の心配はなかったが、いつまでもここに居る訳にもいかなかった。

 エアーダクトから格納庫の外を偵察に行ったガロードは、ゾンダーエプタ―の全貌を調査しに行く。そして脱出する為の経路と必要な武器、そしてフリーデンと自分達のモビルスーツの場所を掴んだ。紙に簡単な地図を書きながらガロードは皆に説明する。

 

「フリーデンとモビルスーツは別々の所に置かれてる。だから俺とロアビィ、アムロはモビルスーツデッキに。他のクルーはフリーデンに向かった方が良い」

 

「ガロードもなかなかやるなぁ」

 

 珍しく褒めるロアビィに笑みを浮かべる。

 

「でもアムロのガンダムは見当たらなかった。多分フリーデンの中だと思う。どうする?」

 

「どの道νガンダムは使えない。この基地にある機体を使うしかないな」

 

「だったらモビルスーツデッキに幾つか機体があった。見た事のない機体もあったから多分新型だと思う」

 

「ならそれを拝借するか」

 

 νガンダムもフリーデンのハンガーに固定されたまま。ドートレスも以前の戦いで損傷して戦闘できるだけの状態ではない。

 ガロードからの情報を聞いてサラ達も行動に移るべく準備を始めた。徐ろに髪の毛へ手を伸ばすと小さなスイッチを取り出す。

 

「何だそれ?」

 

「発信機になってるの。これで外のウィッツに信号を送って奇襲を掛けて貰う。そうしたらこちらも動きやすくなるでしょ?」

 

「そんなの隠してたのか!?」

 

「どんな時でも用意は周到にね。この格納庫を出て180秒、ウィッツのエアマスターが奇襲を掛ける」

 

「良し、それならさっさと――」

 

 行動に移ろうとしたガロードだが、クルー達に交じる1人の女を目にしてしまう。思わず言葉を途切れさせ彼女へと視線を向けた。そこに居るのは因縁浅からぬ相手、エニル・エル。

 

「エニル……」

 

「ガロードッ!」

 

 殺気の漲る視線、エニルは怒りをあらわにしてガロードの元にまでやって来る。その様子に思わず後ずさりしてしまうガロードだったが、彼女は何も手出ししない。

 

「今だけは見逃してやるよ」

 

「え……」

 

「流石にこんな状況でドンパチするつもりはないよ。下手したらここで殺されるかもしれないんだ。この島を脱出するまでは協力するよ」

 

「エニル……わかった!」

 

 目的を共有したガロードとエニル、フリーデンのクルーは脱出に向けて動き出す。クルーはフリーデンへ、パイロットはモビルスーツデッキに向かい自分の機体を取り戻しに行く。

 閉じ込められた格納庫の出入り口のロックを解除して皆が走りだす。

 

「モビルスーツデッキはこっちだ!」

 

「じゃあ、後で合流しましょう。キャプテンとティファの事もお願いね」

 

「了解!」

 

 クルーとパイロットで進路を別れ、ガロード達はモビルスーツ確保の為に急ぐ。けれども不自然な程に、途中の通路などで兵士を1人も目にしない。その御蔭で妨害なく目的地に向かう事ができるが、心の中に不安が募る。

 

「どう思う? どうして人っ子一人居ないんだ?」

 

「わからないけど進むしかないでしょ。どちらにしても時間になったらウィッツは仕掛けて来る」

 

「そうだ。引き返す事はできない。進むぞ」

 

 3人はとにかく進むしかなかった。そして向かった先、ガロードが偵察で見付けたモビルスーツデッキにまで来ると、その空間にあったのは自分達のモビルスーツ。

 ガンダムX、レオパルドがご丁寧にハンガーに固定されている。けれども彼らの行く手を遮るかのように、ライフルを構えたカトックの姿もあった。

 

「オッサン!? 邪魔する気か!」

 

「ボウズ、俺はまだオッサンて言われる歳じゃねぇ。それにな、カトックって名前があるんだ」

 

「何しにココに来た?」

 

「気持ちはわかるがそう邪険にするな。手伝いに来たんだ」

 

「手伝いだって? どう言う風の吹き回しだよ?」

 

 ガロード達の目の前に現れたカトックは武器を手にしてるにも関わらず攻撃して来る素振りを見せない。

 だが、自分達の艦を乗っ取りティファを人質として奪い去った相手を簡単に信用する事もできなかった。

 

「ボウズ、お前言ったよな? 絶望に立ち止まるなって。ボウズに言われてるようじゃ世話ないって思ってよ。だから今だけは手伝ってやる」

 

「本気なのか?」

 

「本気だよ。それよりも急ぐぞ。嬢ちゃんもジャミル・ニートも、もうここには居ない。アイムザットの野郎、今頃船で島から離れてる所だ」

 

「離れる? この基地を放棄したのか?」

 

「だから急ぐぞ。ボウズはモビルスーツに乗り込め!」

 

 カトックに言われてガロードはハンガーのGXに向かって走る。ロアビィもレオパルドへと乗り込み、アムロはデッキに置かれている青いモビルスーツに目を付けた。

 青い装甲、ビームライフル。空中でも自在に動けるように設置された背部スラスター。ドートレスをベースとして新たに開発された機体、バリエントのハッチを開放させてコクピットのシートに座る。

 

「操縦系はドートレスと同じか。武器もビームライフルとサーベル。ガロード、GXは問題ないな?」

 

「キッドがメンテしたままだ。快調に動くぜ」

 

「ロアビィも行けるな?」

 

「OKよ。それじゃ、反撃開始と行きますか!」

 

 意気込むロアビィは操縦桿を握り締め、ガンダムレオパルドのツインアイが輝く。ガロードのGXもエンジンを起動させて固定されたハンガーから1歩踏み出す。

 アムロも初めて乗る機体のエンジンを起動させてペダルを踏み込もうとするが、脳裏に敵からの殺意が流れて来た。

 

「これは……動けガロード! ロアビィ!」

 

「え……」

 

「何だって言うんだ!?」

 

 鋼鉄製の壁が高熱により溶かされ、高出力のビームがモビルスーツデッキ内部に襲い掛かって来た。突然の事に逃げる暇さえなく、GXは左脚部を持って行かれてしまう。

 

「ぐあああッ!」

 

「ガロード! チッ、こっちにもかよ!」

 

 高出力のビームは照射されたまま、ロアビィの機体にも襲い来る。強固な筈の壁を飲み込みながら、一方的にレオパルドに迫って行く。狭いデッキでは避けるスペースもなく、太いビームは右腕を飲み込んだ。

 

「グゥゥッ!」

 

 アムロはバリエントにビームライフルを握らせて、ビームを照射して来る相手の敵意を感じ取り狙撃した。

 

「そこだな!」

 

 正確に発射される1発のビームは溶かされた壁から外に向かって飛んで行く。その先に居る敵、シャギアのガンダムヴァサーゴはメガソニック砲の照射を止めると回避行動に移った。

 特徴的な腹部のビーム砲を格納し背部の黒い翼を広げて飛び立つと、夜の闇にツインアイが不気味に輝く。

 

「仕留めきれなかったか。そしてあの正確な攻撃、機体は違うがアムロ・レイだな」

 

「手応えがない? この感覚はあの男か」

 

「貴様と決着を付けるのはまだ先だ。だがアイムザットの動きを邪魔されれば私達の計画にも支障が出る」

 

「ウィッツの奇襲はどうした? と言う事は、状況は不利か」

 

「オルバ、そちらはどうなっている?」

 

 時間になってもエアマスターの奇襲攻撃は開始されてない。寸前の所でウィッツはオルバのガンダムアシュタロンに行く手を阻まれていた。

 両手に握るビームライフルでアシュタロンに照準を定めるが右往左往で避けられてしまう。けれども相手は余裕を見せ付けるだけで積極的に攻撃を仕掛けても来ない。

 

「クソッ! 時間稼ぎのつもりか!」

 

「悪いけど行かせられないよ」

 

「ゲテモノが!」

 

「ティファ・アディールはこちらの手中にある。フリーデンも、ましてやモビルスーツもなければこちらに追い付けまい。これで新連邦が動き出す」

 

 オルバに翻弄されてウィッツはゾンダーエプタ―に上陸できない。アムロはその状況を想像して当初の予定を変更して独自に動く事を考える。攻撃を受けたモビルスーツデッキを見渡し2人の機体の損小具合を見てみた。

 

「ガロードのGXは動けそうにないか。レオパルドはどうだ?」

 

「片腕だけだからなんとかね。でもこっちは空飛べないよ。こりゃキツイな」

 

「ならこのままフリーデンに合流しろ。ガロードもだ。この新型のスラスター出力なら空中機動もできる筈だ」

 

 アムロに言われたからではない、ガロードはGXのコクピットから出ると急いでモビルスーツデッキに降りた。左右に首を振って視野を広げ、グチャグチャになったデッキで彼の事を探す。

 

「カトック……カトック、どこに行った!」

 

「聞こえてるよ」

 

「カトック!?」

 

 声がした方向に振り向く。鉄とガレキの山の中からホコリまみれになってカトックは這い出て来た。

 

「カトック、無事か?」

 

「ボウズに心配される程……柔にできちゃいねぇよ。で、どうする?」

 

「距離を離される前に中へ乗り込むしかない。さっきの攻撃でGXもやられた。アムロに全部を任せる事もできない。難しいけどこうするしか」

 

「へへ、なら決まりだ。気合入れろよ!」

 

「わかってる!」

 

 強い決意の眼差しを向けるガロードにカトックも心打たれる。

 様子を見ていたアムロも機体を近付かせ片膝を着くと左のマニピュレーターを地面に伸ばす。2人は互いに頷きマニピュレーターの上に乗り体が飛ばないように支える。

 

「聞こえているな、ガロード。時間に余裕はない、中に侵入したら各自の判断で動け。俺はモビルスーツの足止めをする」

 

「わかった。ティファとジャミルは俺が何とかする」

 

「おい、兄ちゃん。俺が途中で振り落とされても一切気にするな。ボウズが乗り込めさえすればそれで良い」

 

「了解だ。出るぞ!」

 

 メインスラスターから青白い炎を噴射するバリエントは大空に飛び立つ。




遅れて申し訳ありません。意外に長引いてしまい次回に持ち越しとなってしまいました。
アニメとは少し違う展開、ガロードはティファを取り戻す事ができるのか?
ご意見、ご感想お待ちしております。

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