機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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D.O.M.E.編
第29話


「私の心を感じて下さい。私はここに居ます、D.O.M.E.」

 

 まぶたを閉じるティファは静かに呼び掛ける。一切の光が届かない暗闇の中で、ガロード達もその様子を見守るしかない。

 施設内の一室、どこまでも広がる空間の中で4人はD.O.M.E.に導かれてようやくここまで辿り着いた。

 ニュータイプの真実を知る為に。

 

「私達に教えて下さい。ニュータイプの意味を……」

 

 静かに、とても静かに時が流れる。周囲の流れから自分達だけが切り離されたように、この空間だけが独自の時間の流れに存在し、時間を支配していた。

 星々の光は幾千年の時を流れ行き、そしてティファとガロード達は対面する。

 闇の奥底から現れるのは無数に光る蝶の群れ。小さな羽ばたき音が耳に届き、群れが自分達の所を過ぎて行くのを待つ。

 

「来ました……」

 

 ティファの言葉に3人は身構える。更に奥から現れたのは光り輝く球体。初めて見る現象にガロードは素っ頓狂な声を出す。

 

「これが……D.O.M.E.だって?」

 

『良く来たね、ティファ・アディール。君はガロード・ラン』

 

「俺を知ってるのか!?」

 

『君だけじゃない、彼らもそうだ。ジャミル・ニート、そしてアムロ・レイ』

 

「アンタは一体何なんだ? 機械か何かか? それとも人間……」

 

『私はD.O.M.E.と呼ばれている。だがそうなる以前、人々は私をこう呼んだ」

 

 

 

第29話 ファーストニュータイプ

 

 

 

『肉体を失っても尚、その概念は存在し続けている。それが私だ。ティファ、君は私に何を求める?』

 

 光の球体は浮遊するようにしてゆっくりとティファの両手の中へ移動していく。D.O.M.E.を抱えるようにして見つめるティファは力強い意思で口を開けた。

 

「ニュータイプがきっかけとなり今までにも沢山戦争が起こりました。今もそうです。その原因となるニュータイプが何なのかを私は知りたい。そして私自身が何者なのかを」

 

『戦争か……よくも飽きずに続けるものだ。ニュータイプを神として崇める者。その力だけを利用しようとする者。かつて力を持っていた者。そして人間として受け入れる者。人それぞれが、ニュータイプと言う言葉を捕えている。だがそれが、また戦争の引き金になってしまった。でも仕方のない事なのかもしれない。僕らはニュータイプと言う幻想で繋がった世代だからね」

 

 幻想、人間が作り出した偽り。ファーストニュータイプであるD.O.M.E.はそう答える。それを聞いたジャミルは1歩踏み出し、15年前から今日に至るまでに自らが経験した事を問い掛けた。

 

「ニュータイプが幻だと言うのか? だが私は確かに時を見た。いつか時間さえも支配できるような……」

 

『それはあくまでも君の能力だ。ニュータイプの能力ではない』

 

「私はその力こそが人の革新であるニュータイプなのだと思って来た。違うのか?」

 

『ニュータイプの存在を信じる者からすればそう思いたくなるのもわかるけれど、残念ながらそうではない。人を超えた力と人の革新とは全くの別物なんだ。アムロ・レイ、君の方が良く知っているのではないか?』

 

 ティファの両手に収まるD.O.M.E.はアムロに問い掛けた。

 ジャミルと同様に、アムロも少年だった頃に時を見た事がある。

 後に1年戦争と呼ばれるようになる戦いの最中、ララァ・スンと確かに心を交わした。

 

「全ての人類がニュータイプにでもなれば世界は変わるかもしれない。だがそんな奇跡を信じているようでは人は前に進めない。俺の事をニュータイプと呼ぶ人間も居たが、だからって何ができた訳でもない。結局は1人の人間さ」

 

『フフフッ、大人になったね。ララァ・スンの呪縛に囚われていても君は成長できた。それで良いんだ』

 

「だがシャアは囚われたままだ。そうなってしまった一端は俺にもある」

 

『相手の事を思いやる気持ちが、わかり合う為の第1歩だ。けれども人間はそんなに便利じゃない。大人になった君にならわかるだろ? アムロ、真実を伝えよう』

 

「真実?」

 

『君も薄々感づいてる筈だ。この世界と君が居た世界とは似て非なるモノ。別世界と言っても良い』

 

「そうか、そうだろうな……」

 

 D.O.M.E.から告げられる真実にアムロは別段動揺はしなかった。ただ静かにまぶたを閉じて俯くだけ。

 

『けれども君は、何も知らないこの世界の中で生き延びる事ができた。人間にはそれだけの力がある。特別な事ではない。戻りたいかい?』

 

「できる事ならな。でもここにだって帰る場所はある」

 

『そうか。ならこれ以上言う事はない』

 

 会話が途切れ、ガロードはアムロに向き直った。

 

「アムロ、初めて俺に会った時に言ったよな。ニュータイプでもそうでなくても関係ない。俺が判断しろって。俺、その言葉は忘れない」

 

「そうだな。それができれば人はどんな事だって乗り越えられるさ」

 

「うん……」

 

 静かに、とても静かに時間が流れていく。ニュータイプは幻想、それが全てだった。

 

『アムロだけじゃない。生きとし生けるモノ全てが成長すべく前に進んでいる。どの様な方向であろうと、生き続ける限り前に進むんだ。また戦争が起きようとも、人は前に進んでいる。今も、そしてこれからも。それはニュータイプと言う言葉に囚われなくてもできる。私はそう信じている。そうだろ、ガロード?』

 

「できるよ。これからもティファと一緒に居る事にニュータイプかどうかなんて関係ない。未来を作るのは自分自身の力だ」

 

『そこまでわかっているのなら、もう残す言葉はない。ティファ、これが最後だ。ニュータイプと言う言葉を捨てるんだ。そうすれば君は真に自由になれる。みんなもそうだ。ニュータイプと言う言葉を捨て、新しい時代を作って欲しい……』

 

 光が消えて行く。輝きを失うD.O.M.E.は闇の中へと消えてしまった。ついさっきまで見ていたモノは幻覚か、幻か。薄暗く広い空間に4人は只呆然と立っているだけ。

 ニュータイプが失くなった世界で、ガロードは力強く前に出た。

 

「行こう! まだ戦いは終わってない!」

 

///

 

施設内部から爆発が起こる。鉄製の扉を吹き飛ばすフロスト兄弟はマイクロウェーブを送信する為のコントロールルームへ足を踏み入れた。

 防衛装置でもあるビットモビルスーツは全て破壊し、悠々と内部に潜入する2人が目指すのはガロード達が行く先とは違う。

 マイクロウェーブの送信先をヴァサーゴにも設定する事で、サテライトランチャーを使う為のエネルギーチャージを大幅に短縮できる。それはGXのサテライトキャノンを使えるのと同義。

 コンピューターのキーを叩くオルバは設定が完了させて振り返る。

 

「これでマイクロウェーブを僕達も使う事ができる」

 

「ならば次のステージに行くとしよう。まずは邪魔な革命軍共を潰す」

 

「わかったよ、兄さん」

 

 フロスト兄弟以外はガロード達しか居ないこの施設で、内部の音は静かなモノだ。

 コントロールルームから出る2人は外に向かい、待機させてあるヴァサーゴとアシュタロンのコクピットに乗り込む。

 操縦桿を握る2人は機体を動かし、スラスターを吹かして月から離陸する。モビルアーマー形態に変形するアシュタロンとドッキングするヴァサーゴ、メインスラスターから青白い炎を噴射して一気に加速した。

 サテライトキャノンと同じく長距離からの高出力ビームにより敵軍を一掃できるように開発されているサテライトランチャー。アシュタロンの内部から展開されるとヴァサーゴはエネルギーケーブルを接続しそのトリガーを握る。

 

「マイクロウェーブ照射」

 

 月の送信装置から照準用レーザーが発射され、ヴァサーゴのバックパックに吸い込まれていく。内部から設定を切り替えた事でこの2機は完全にサテライトランチャーを使用する事が可能になった。

 数秒後には高出力エネルギーがマイクロウェーブに乗せて送信される。ヴァサーゴは背部の黒い翼を展開し放熱と機体冷却を進めながら、宇宙革命軍の指令塔を狙う。

 

「エネルギーチャージ完了。いつでも行けるよ」

 

「ニュータイプを神として崇めるなどと、思い上がりも甚だしい。宇宙の塵となれ!」

 

 トリガーを引くシャギア。それと同時にサテライトランチャーから高出力のエネルギーが発射された。周囲を一瞬の内に光へ変えるエネルギーは一直線に宇宙革命軍の艦隊へと迫る。

 艦艇で現場の指揮を取る総統のザイデルは、通信兵から伝えられる状況に思わず立ち上がった。

 

「高エネルギー反応接近」

 

「サテライトキャノンだと言うのか!? 全速前進で回避しろ!」

 

「来ます!」

 

「こんな事で私は……」

 

 檄を飛ばすが既に間に合う距離ではない。最後に見えた閃光は彼の肉と骨、髪の毛1本とて残さずこの世から消し去る。

 サテライトランチャーの一撃により宇宙革命軍の指揮は大きく乱れた。総統であるザイデルの戦死、戦力である艦隊の4割近くが破壊され戦闘継続は困難。モビルスーツ部隊も撤退を初め、新連邦の勝利が見えて来る。

 

「成功だね、兄さん。なら次は……」

 

「コロニーレーザーへ向かうぞ」

 

2人の目的はこの戦争に勝つ事ではない。次なる目的の為に、ヴァサーゴとアシュタロンは宇宙革命軍の用意したコロニーレーザーに向かって飛び立つ。

 ようやくその頃になって、ガロード達もモビルスーツに乗り込み戦線に復帰した。目の前に広がる光景にガロードは何が起きたのかを察する。

 

「あいつら、サテライトキャノンを使ったな!」

 

「ビットモビルスーツも破壊されてる。ガロード、どうするつもりだ?」

 

「2発目を撃たせる訳にはいかない。パーラ、追い付けるか?」

 

「行けるけどよ」

 

 Gファルコンとドッキングするダブルエックスはジャミルやアムロを置いて単独で先行する。宇宙革命軍の戦力は確実に減少しているが、それでも新連邦の部隊は残っているし、敵対するモビルスーツの絶対数もまだまだ多い。

 それでもガロードは構わず前に出た。

 数秒遅れでジャミルのGXとアムロのラズヴェートもマイクロウェーブ送信施設から発進するが、Gファルコンとドッキングするダブルエックスに追い付く事はできない。

 

「引き返せガロード、前に出過ぎだ!」

 

「でもこのままだと、またサテライトキャノンが撃たれる。絶対に止めないと」

 

「だが1人では!」

 

 通信で呼び掛けるがガロードとの距離は見る見る内に離れていくばかり。メインスラスターの出力を上げて少しでも早く合流しようとペダルを踏み込む。すると、撤退を始める宇宙革命軍の機体から通信が割り込んできた。

 聞こえるのは15年前のかつてのライバル。

 

「そのGXに乗っているのはジャミル・ニートだな?」

 

「この声……ランスローなのか?」

 

「まさかこんな所で再会を果たすとはな。先行するガンダムタイプは私に任せろ。援護くらいはしてやる」

 

「頼む!」

 

 ランスローに任せたジャミル。バックパックからビームライフルを引き抜き、迫る新連邦のモビルスーツ目掛けてトリガーを引く。

 発射されるビームにドートレス部隊は回避行動を取った。

 

「ガロードの事も気になるが、サテリコンの艦隊も攻撃される訳にはいかん!」

 

 混戦する戦場。拮抗が打ち破られた事で3陣営の戦力が入り乱れる。その中で確実に新連邦の部隊が他の陣営を制圧しつつあった。

 ドートレスの宇宙部隊を相手取るジャミル、正確に発射されたビームは敵機の頭部と胴体を撃ち抜く。

 だが1機や2機を破壊した所で新連邦の猛攻は止まらない。背を向ける宇宙革命軍のモビルスーツは無慈悲に撃破され、サテリコンの艦艇も1隻沈められてしまう。

 

「新連邦め、艦隊を壊滅させるつもりか? これ以上死者を出す事がどう言う事かわかれッ!」

 

 15年前のような、人類が死滅するかもしれない戦争を繰り返させる訳にはいかない。操縦桿を匠に操るジャミルのGXはビームライフルのトリガーを引く。

 敵機の腕を撃ち、コクピットを撃ち抜き、次々と戦闘不能にする。

 

「あのモビルスーツ、ガンダムとか言う……」

 

「GXは新連邦のモノだろ! 敵の手に渡るなどと!」

 

「来るか……」

 

 新連邦のパイロットは目の前に現れたGXを相手に奮闘するが、並のパイロットが勝てるような相手ではない。

 それはニュータイプとしてではなく、ジャミルのパイロットとしての資質が高い故。

 ビームライフルをシールド形態にさせ左手に握らせ、右手でビームサーベルを引き抜くとリフレクターを展開して加速。

 3機居るドートレスはビームライフルでGXを寄せ付けまいとトリガーを引くが、AMBACとスラスター制御で回避するGXの装甲に攻撃が当たる事はない。

 接近するGXはビームサーベルを振り下ろしドートレスの右腕を切断。すかさず腹部を蹴り飛ばし自機との距離を離させる。

 

「やられるものか!」

 

 更に接近するドートレスもビームサーベルを抜きGXへ振り被る。ジャミルもビームサーベルで横一閃。ビームの刃が交わり閃光を生む。が、ジャミルの動きは早い。

 相手が体勢を整えるよりも前に一旦距離を離し次の手を打つ。振り下ろす切っ先はドートレスの両膝を斬った。

 

「あと1機!」

 

「こいつ……ニュータイプ!?」

 

 GXの戦闘力に舌を巻き、ビームで牽制しながら後退しようとする敵機。ジャミルはそれを逃さんとペダルを踏み機体を加速させるが、別方向からのビーム攻撃が2発。

 ライフルを握るマニピュレーター、次に頭部が撃ち抜かれる。振り返った先に居るのはビームライフルを握る黒い機体。

 

「アムロか、助かる」

 

 GXに近寄るラスヴェートはマニピュレーターを肩部に接触させて通信回線を開く。

 

「逃げる事を考えないと戻れなくなるぞ。この戦力差、状況は新連邦に傾いている。ガロードは何をしている?」

 

「敵のサテライトキャノンを止めに行った」

 

「オルバ・フロストか……」

 

「私はサテリコンの艦隊の護衛に回る。アムロは?」

 

「いいや、敵の動きが早いぞ」

 

 レーダーと目視で確認するアムロ、コロニーレーザーに取り付くヴァサーゴとそれを守るアシュタロンがダブルエックスと対峙する。

 コクピットの脇にティファを乗せるガロードは操縦桿を握りながらも彼女の事を心配した。

 

「ティファ、怖くないか?」

 

「大丈夫、ガロードとみんなが居るから」

 

「こっから先は戦闘だ。しっかり掴まれよ!」

 

「はい!」

 

 メインスラスターを吹かして加速するダブルエックスは正面からアシュタロンを迎え撃つ。

 

「オルバ、ここで終わらせる!」

 

「その機体、ガロード・ラン!」

 

 赤外線ホーミングミサイルを一斉射撃、アシュタロンもギガンティックシザースのビーム砲と頭部バルカンでこれを撃ち落とし、両者の間に爆発と煙が遮る。

 先に動いたのはアシュタロン。

 

「遅いよ!」

 

「爪が来る!?」

 

 残る1本のギガンティックシザースがダブルエックスを襲うが、反射的にシールドを構えるガロードは鋭い切っ先を何とか防ぐ。

 だが強靭なハサミにシールドが奪われると容易く破壊されてしまう。

 すかさずサイドスカートのハイパービームソードを引き抜き袈裟斬り。ギガンティックシザースのアームを切断した。

 

「これ以上の人殺しなんてさせてたまるか!」

 

「人殺し? 間違っているぞ。僕達がするのは戦争だ!」

 

 アシュタロンもビームサーベルを引き抜き互いの切っ先が交わる。激しい閃光が両者を照らす。

 

「ニュータイプを盲信する宇宙革命軍も、それを道具としてしか見ようとしない新連邦も、僕達兄弟にとって目障りな存在だ!」

 

「新連邦? 味方じゃないのか?」

 

「フフフッ、その方が動きやすかったに過ぎない。今から奴らに鉄槌を下す!」

 

 ダブルエックスを蹴り上げるアシュタロンは距離を離し、単独でコロニーレーザーに取り付いたヴァサーゴの行方を見る。ガロードもその方向を見ると、コロニーレーザーはひとりでに発射角度を変えていた。

 取り付いたヴァサーゴがケーブルを伸ばしコンピューターと接続させると、その向きを新連邦の艦隊へ向ける。

 

「アイツ、撃つきか!? でもチャージが?」

 

「見るが良い、ガロード! そしてニュータイプよ! これが虐げられた僕達兄弟の恨みだッ!」

 

 月のマイクロウェーブ送信施設が動く。照準をヴァサーゴへ向けると数秒後には高エネルギーのマイクロウェーブを機体目掛けて発射した。

 背部の翼を広げるヴァサーゴはマイクロウェーブを受信すると、その全エネルギーをコロニーレーザーに回す。

 通常なら太陽光をエネルギーに変換するのを待たなければならないが、これならサテライトキャノン程に早くはないが数秒でチャージが完了する。

 そしてコクピットでトリガーを握るシャギアは1人ほくそ笑む。

 

「ジャミル・ニートはサテライトキャノンのトリガーを引いて絶望した。だが私は違う。この一撃で世界が変わった瞬間、私は歓喜する!」

 

 ゆっくりではあるが角度を変えるコロニーレーザー。それでも広範囲に発射されるビームは艦隊を飲み込むだろう。

新連邦の総司令官であるブラッドマンは向けられる銃口に恐怖した。

 

「どうしてコロニーレーザーが動いている! シャギアとオルバは何をしている!」

 

「反応をキャッチ、コロニーレーザーに取り付いています」

 

「奴ら、撃つ気か……」

 

 味方に付いた新連邦に艦隊に目掛けて、シャギアは躊躇なくトリガーを引く。

 エネルギーが充填された巨大なコロニーから光が溢れた。

 

「ガロード……」

 

「ティファ、こいつは……」

 

「これは憎しみの光……悲しみだけが広がって……」

 

「クッ! アイツを止める!」

 

 アシュタロンを無視して加速するダブルエックスは、コロニーレーザーへ進路を向ける。マイクロウェーブによるエネルギーチャージが可能になったコロニーレーザー。次を撃たせる訳にはいかない。

 だがオルバもガロードを見逃す筈もなかった。進路を遮るように前へ立ち塞がる。

 

「行かせる訳がないだろ!」

 

「邪魔だ、どけぇぇぇッ!」

 

 ハイパービームソードを振り下ろすダブルエックス。攻撃を受け止めるアシュタロンはそれを押し返し更に斬り付ける。ビームの刃が交わり、激しい火花と閃光が走り、何度となく繰り返される攻防にダブルエックスは前進も後退もできない。

 

「お前らのせいで、これ以上人を殺されたたまるかァァァッ!」

 

「それこそが僕らの望んだ未来だ! ニュータイプを生んだ世代を消し去らなければ、僕達の乾きは癒やされない!」

 

「オルバ、お前もD.O.M.E.に触れれば……」

 

「そんな必要は……ない!」

 

 ビームサーベルが交わる。こうしている間にもコロニーレーザーは発射角度を変えて次なる一撃を放とうとしており、一刻の猶予もない。

 焦るガロードに、相棒であるパーラは通信越しに提案した。

 

『ドッキングを解くぞ、こいつはアタシが何とかする。その間にサテライトキャノンをぶち込め!』

 

「パーラ、頼む!」

 

 コンソールパネルに手を伸ばしGファルコンとのドッキングを解除しようとするが、寸前の所で別の通信が割り込んでくる。

 そして別方向からのビームライフルがオルバのアシュタロンを襲った。

 

「クッ!? アムロ・レイは追い付いていない筈だ。誰が来た!」

 

「これ以上、好き勝手にやらせる訳にはいかんのでな!」

 

 指揮官用にチューニングされたクラウダが2機の戦いに乱入する。その機体は、ガロードにティファの場所を教えてくれた機体と同じだ。

 

「ガロード、あの人は味方です」

 

「俺にティファの場所を教えてくれた機体と同じ。パイロットもか」

 

『聞こえているな? このガンダムタイプは私が受け持つ。君はコロニーレーザーを止めに行け!」

 

「頼む!」

 

 ランスローはこの場を請負い、ガロードはシャギアを止めるべく先行する。

 

(兄さん、ガンダムがそっちに行ったよ)

 

(サテライトキャノンを使われれば厄介だ。ランチャーを使う。合流できるか?)

 

(わかったよ)

 

 モビルアーマー形態に変形しダブルエックスを追い掛けようとするが、そうはさせまいとランスローのクラウダーが立ち塞がる。

 

「行かせないと言った!」

 

「僕達の邪魔はさせない。計画はこれから最終段階に入るんだ。邪魔をする奴は全員消えろ!」




鉄血のオルフェンズが最終回を向かえてしまいました。
ネットを見ると賛否両論いろいろあるようですが……。
いずれは鉄血を題材にした作品も作ってみたいものです。
ご意見、ご感想お待ちしております。

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