機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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第30話

 先行するガロードのダブルエックスはコロニーレーザーにエネルギー供給を続けるヴァサーゴの元へと向かう。だが立ち塞がるは新連邦のドートレス部隊。

 コロニーレーザーの一撃で艦隊は大打撃を受けたが、まだ動ける部隊は首謀反であるフロスト兄弟を討ち取らんと行動に出る。

 それでもダブルエックスも新連邦からすれば敵に変わりない。無数のドートレスがビームライフルの銃口を向けてダブルエックスに立ち塞がる。

 

「クッ! 邪魔すんじゃねぇ! またコロニーレーザーが使われる前に!」

 

「ガロード、あの人の憎しみが……」

 

「シャギアか?」

 

「この世界を消し去る、それ程の憎悪を秘めています」

 

「ティファ、もう過ちは繰り返しちゃいけない。絶対に止める!」

 

「はい!」

 

 ペダルを踏み込むガロードはメインスラスターを最大出力にして戦場を突っ切る。Gファルコンの推進力も合わさりそのスピードは他を寄せ付けない。

 

「パーラ、支援は頼む!」

 

「任された!」

 

 加速しながらビームライフルのトリガーを引き続けるダブルエックス。更にGファルコンも拡散ビーム砲を撃ち続け、迫るドートレスに攻撃を叩き込む。

 轟くビーム音、連続して発射されるビームは次々にドートレスのボティーを撃ち抜いていく。

 

「手加減なんてしてやんねぇからな! やれる事はなんだってやってやる!」

 

 散り散りになる手足、細かなネジやビス。ダブルエックスが通過した後には力を失くして宙に浮くドートレス。

 ガロードの猛攻を前に量産機では相手にならず、戦闘不能になる機体の数々。立ち塞がる敵を撃ち落とし、目前に迫るコロニーレーザー。

 そして因縁の相手であるシャギア・フロスト。

 

「うおおおォォォッ!」

 

「来たか、ガンダム!」

 

 向けるビームライフルの銃口、クロービーム砲の銃口とがピッタリ重なる。発射されるビームはぶつかり合い、激しい閃光が両者を照らす。

 ちらりとコンソールパネルに視線を移すガロード。ここに来るまでにビームライフルのエネルギーを使い過ぎており、さっきの1発が最後だった。

 操縦桿を引き躊躇なくビームライフルを投げ捨て、サイドスカートからハイパービームソードを引き抜く。メインスラスターの出力を上げてヴァサーゴに接近すると右腕を振り下ろした。

 だが、シャギアも操縦桿を瞬時に動かしてビームサーベルを引き抜きこれに応戦する。高エネルギーのビーム刃が交わり閃光が走った。

 

「もうこれ以上やらせるもんか! これ以上、過ちを繰り返しちゃダメなんだ!」

 

「この一撃こそが我々が望む世界を創る第1歩だ! そしてガロード・ラン! 貴様とガンダムを討ち取る事が私の悲願だ!」

 

「お前のせいで、何人の人間が死んだと思ってるんだ!」

 

「それは貴様とて同じだ。生き延びる為に屍を築いてきた。そのガンダムの力で! だが、私の野望を成就させる為には、まだ屍は足りん!」

 

 ダブルエックスを押し返す。腹部の装甲を展開するヴァサーゴはトリプルメガソニック砲を展開し、ダブルエックス目掛けて拡散ビームを発射した。

 しかし、ガロードの反応も早い。

 

「くっ!? サーベル!」

 

 空いたマニピュレーターでもう1本のハイパービームソードを引き抜き両腕を前方に構える。ハイパービームソードの出力を上げて長く伸ばし、握るマニピュレーターを高速回転させて機体前面にビームの膜を形成させた。

 無数に迫るビームの雨はビームの膜に防がれる。

 すぐさま体勢を立て直すガロードはペダルを踏み込み再びヴァサーゴへ突っ込む。

 

「シャギア、お前だけは止める!」

 

「もはや手遅れだ! ステージは最終段階を超えた。ニュータイプ諸共、ニュータイプを信じるバカ共をこの世から消し去る!」

 

「させるかァァァッ!」

 

 握るビームサーベルで袈裟斬り。ヴァサーゴのビームサーベルと再びぶつかり合う。

 

「初めて戦った時と比べて成長はしているようだな。宇宙空間での戦闘も少しは慣れたか。だがな……」

 

「僕達に勝つのは無理だよ」

 

 背後からオルバのアシュタロンが迫る。シャギアの声を受け取り、ランスローの妨害を振り切ってここまで追いついて来た。

 ドッキングするGファルコンを蹴りつける事で体勢を崩させ、衝撃がパイロットを襲う。

 

「ぐぅッ!? オルバまで来たのか?」

 

「兄さんの邪魔はさせない。ガロード・ラン、君との決着もここで付けさせて貰う!」

 

「2対1だと不利だ。新連邦も来る!」

 

「ガンダム、沈めッ!」

 

 合流したアシュタロンだが、機体の特徴でもあり主力武器でもあるギガンティックシザースは破壊されてもうない。残っているのはビームサーベルとマシンキャノンのみ。

 けれどもダブルエックスの武装ももう少ない。接近して連携攻撃をされればいつまで持ち堪えられるかもわからないし、状況が増々不利になるだけ。

 Gファルコンに残る赤外線ホーミングミサイルを全弾発射した。

 

「これなら……」

 

「甘いよ!」

 

 マシンキャノンから弾丸を発射するアシュタロンはホーミングミサイルを撃ち落とす。爆発するミサイルが他のミサイルの誘爆を生み、更にビームサーベルで残るミサイルを斬り落とした。

 

「でも煙幕くらいにはなる!」

 

「だから甘いって言ってるんだ!」

 

 煙を利用してアシュタロンの懐に飛び込もうとするが、ヴァサーゴの腕から伸びるストライククローが背部の装甲を殴る。

 

「グッ!?」

 

「我々のツインシンクロニティがあれば……」

 

「ガンダムを倒せる!」

 

 更にアシュタロンが腹部装甲を蹴りつける。連続する打撃にコクピットは激しく揺れてガロード達を襲う。

 

「キャアアアッ!」

 

「グッ!? ティファ、大丈夫か?」

 

「え……えぇ……」

 

『少しはこっちの心配もしろよな! それよりも機体が流されてるぞ! 姿勢制御!』

 

「まだ増援が!?」

 

 パーラの声に反応してペダルを踏みスラスターで崩れる姿勢を正す。アシュタロンから繰り出された攻撃の衝撃によりダブルエックスは距離を離されてしまった。

 そしてそれを見て新連邦のドートレス部隊が一気にダブルエックスへ迫る。

 

「不味い、コロニーレーザーが!? お前ら、15年前の悲劇が繰り返されても良いのかァァァッ!」

 

 両手にハイパービームソードを握るダブルエックスは接近するドートレス部隊を一度に相手する。確認できるだけでも7機。

 それでもガロードは一切怯まない、引く事はない。

 発射されるビームを潜り抜けて、ドートレスのコクピットにビームサーベルの切っ先を突き立てる。

 

「フフフッ! これでトドメだ、ガロード・ラン!」

 

「サテライトランチャー、展開!」

 

 ガロードが新連邦の相手をしている間にアシュタロンはモビルアーマーに変形、サテライトランチャーを展開しヴァサーゴがドッキングした。

 狙う先は懸命に戦い、抗い続けるガロードのダブルエックス。

 

「マイクロウェーブ照射!」

 

 月の送信システムから高エネルギーを乗せたマイクロウェーブがヴァサーゴ目掛けて発射される。その光景は他のパイロットからも見えており、ダブルエックスを取り巻くドートレス部隊も蜘蛛の子を散らすように離れていった。

 ガロードは横一閃してドートレスの1機を胴体から分断させ、エネルギーを充填するヴァサーゴとアシュタロンに向き直る。

 

「アイツラ、まだ!? もうこれ以上、過ちは繰り返させない!」

 

 右手に握る操縦桿のガジェットを押し込むガロード。

 マイクロウェーブ送信施設ではマニュアル制御でヴァサーゴにも送信できるようにされているが、優先されるのは正式な手順でサテライトシステムを登録した機体だ。

 ヴァサーゴへの照射は中断され、送信システムはダブルエックスに照準を変更しエネルギーを照射する。

 2本の砲門を前方へ向け、背面と両手足のリフレクタを展開させた。

 

「ば、馬鹿な!? 送信システムは掌握した筈だぞ!」

 

「どうするの、兄さん!?」

 

「ダブルエックスを撃つ!」

 

「でもチャージが……」

 

「構わん!」

 

 シャギアは対面するダブルエックス目掛けてサテライトランチャーのトリガーを引いた。

 エネルギーの充填は充分ではないが、サテライトランチャーの砲門から高エネルギーのビームが発射される。

 同時にガロードも操縦桿のトリガーを引く。

 

「させるかァァァッ!」

 

 リフレクターがまばゆく光り、ツインサテライトキャノンも発射される。ぶつかり合う強力なエネルギーは周囲の景色を白く染めた。

 

「ぐあああァァァッ!?」

 

 光りの渦に飲み込まるダブルエックスとヴァサーゴ。伝わる衝撃にパイロットも身動きが取れなくなってしまう。

 そして数刻経過した。

 どうにか意識を取り戻すガロード、隣に座るティファに手を差し出し体を揺らす。

 

「ティファ……ティファ!」

 

「ガ……ガロード?」

 

「悪い、もう少しだけ我慢してくれ。ツインサテライトキャノンはもう使えない。パーラ、Gファルコンは動けるか?」

 

『いって~、すんげー衝撃。こっちは何とか大丈夫だ。機体もな。でも推進剤だってもう残り少ない。でも補給してる暇なんてないだろ?』

 

「あぁ、シャギアとオルバのガンダムもまだ動ける。それにコロニーレーザーも。絶対に止めないと。地球に攻撃なんてさせない」

 

 ツインサテライトキャノンとサテライトランチャーのぶつかり合い。相殺される互いのエネルギーだが、機体が無事で済む筈もなかった。

 ツインサテライトキャノンの砲門は破壊され、リフレクターもボロボロ。ボディーは頑丈な装甲のお陰で致命傷を負ってはいないが、節々からガタが出始めている。

 操縦桿を動かした時の反応が鈍い。

 

「行くぞ、パーラ!」

 

『了解!』

 

 加速するダブルエックスは未だ健在のヴァサーゴとアシュタロンに迫る。モビルアーマー形態のアシュタロンの装甲は分厚く、エネルギーの余波を受けてもダメージが少ない。

 

「兄さん、もうサテライトランチャーは使えない。パージ」

 

「だが最終ステージはもう進んでいる。アイツラがどれだけ足掻いた所で結果は変わらん」

 

「ダブルエックスが来る!」

 

 モビルスーツ形態に戻るアシュタロンとヴァサーゴはダブルエックスを迎え撃つべくビームサーベルを手に取った。迫る敵に対して、オルバが先行する。

 

「僕が前に出る。こっちにはまだメガソニックも残っている」

 

「オルバ!」

 

「ガロード! 今日こそお前を!」

 

 ビームサーベルを振り上げるアシュタロン。だがダブルエックスはサイドスカートのハイパービームソードを抜こうとしない。

 コンソールパネルを叩くガロードはGファルコンとのドッキングを解除し、背部に背負う大型のBパーツをそのまま加速させた。

 急速に接近して来るBパーツにオルバは反応できない。

 

「こいつは!? ぐあああッ!」

 

「お前の相手は後だ。シャギア!」

 

 加速するBパーツと共に流されて行くアシュタロン。ようやく1対1の状況に持ち込んだ所でガロードのダブルエックスも再びハイパービームソードを抜いた。

 

「うおおおォォォッ!」

 

「サテライトキャノンはもう使えないようだな」

 

 互いのビームサーベルで鍔迫り合い。激しい閃光が両者を照らす。

 

「フフフフッ」

 

「何がおかしい!」

 

「もはや手遅れだ。もう貴様らに我々の計画を止める事はできない!」

 

「何だって?」

 

「15年前の再来だ! そしてニュータイプの存在をこの世から消し去る!」

 

 ちらりと視線を脇に反らす。そこで見た物は、地球に向かって進み始めるコロニーレーザーの存在。

 

「コロニーレーザーが動いてる!?」

 

「レーザー砲の一撃を地球に撃ち込めれば簡単な物を、お前達が邪魔になるのは想定している」

 

「でも、10年以上使われてないコロニーのエンジンが生きてるなんて……マイクロウェーブか!?」

 

「そうだ。マイクロウェーブはレーザー砲を使う為だけのエネルギーではない。核パルスエンジンを起動させる為でもある。そして世界は私達が望む方向へと向かう!」

 

 ダブルエックスを押し返すヴァサーゴは伸びるストライククローで更に機体を殴り付ける。だが姿勢を崩しながらも腕を掴み上げるダブルエックスはハイパービームソードでそれを切断した。

 左腕を失うヴァサーゴだが、パイロットの闘志は失われていない。

 だがそれはガロードも同じ。再び過ちを繰り返させない為。

 

「お前らの思い通りになんてさせない! それにな、ニュータイプを恨むお前が1番ニュータイプに囚われてる」

 

「この私が? あり得ん!」

 

「ニュータイプが居なくても俺達は前に進める。進み続ける! お前もニュータイプを捨てるんだ!」

 

「その為の戦争だ!」

 

 ガロードとシャギアが激戦を繰り広げる中、オルバは揺れるコクピットの中で操縦桿を何とか押し倒す。

 GファルコンのBパーツにより流されてしまったアシュタロン。何とかそれを退けるとヴァサーゴと合流すべくメインスラスターを全開にした。

 

「ダブルエックスめ、小賢しいマネを。新連邦もコロニーレーザーの動きにか気付いたか。これで少しは動きやすくなる」

 

 一直線に突き進むアシュタロン、けれども進路を妨害する敵影が1機。全身が黒い装甲とビームライフルなどの標準的な装備をしたラズヴェートが目の前から迫る。

 

「アムロ・レイ! そうだ、お前も僕達兄弟の前から消えなくてはならない」

 

「こいつらの目的はコロニーを落とす事だったか。兎に角今は取り付くのが先だ」

 

「行かせるものか!」

 

 ビームサーベル1本でアムロのラズヴェートに挑むオルバ。敵意を感じ取るアムロは操縦桿のトリガーを連続で引く。連射されるビームに反応するオルバは操縦桿とペダルを匠に操作して攻撃を回避するが、いつまでも続けられる物でもない。

 

「クッ!? 近づく事もできないのか?」

 

「ライフルのエネルギー切れ? 戦闘が長引き過ぎた。キッド、聞こえるな? νガンダムを用意しろ」

 

『アムロのガンダム? でもあんな機体で何を?』

 

「爆弾くらいにはなる。ポイントYG-111が1番近い。そこに流せ」

 

『了解、ここまで来て死ぬんじゃねぇぞ!』

 

 ビームライフルを投げ捨てるラズヴェートは右手にビームサーベルのグリップを握り、左腕のシールドを向けるとビームキャノンを発射した。

 回避行動を取るオルバだが、ビームが脚部をかすめる。

 

「コロニーの動きが思ったよりも早い。急ぐぞ」

 

「アムロ・レイ、逃げるつもりか!」

 

 撹乱だけするアムロはオルバを後回しにしてコロニーレーザーに取り付くべくメインスラスターを全開にする。

 

「ガロードは何をしている? ジャミル、サテライトキャノンを使うしかない。間に合わなくなるぞ」

 

 コンソールパネルを叩くとジャミルのGXに通信を繋げるアムロ。だが混沌とする戦場の中で自由に動けるパイロットなどもう居ない。既に統率が崩れた新連邦と宇宙革命軍。サテリコンの部隊を守る為にも前線に突入するのは難しい。

 

『わかっている。ウィッツとロアビィに防衛は任せる。だが間に合うか……』

 

「こうも敵味方が入り乱れれば作戦もあったもんじゃない。まずはガロードと合流する」

 

 まるで背中に目が付いてるかのように、アムロはオルバの追撃を避けながらガロードのダブルエックスの元へ向かう。同時に自身が設計した機体であるνガンダムも受け取るべく急いだ。

 

///

 

 片腕を失うヴァサーゴ。だがダブルエックスの装備もハイパービームソードのみ。

 

「こんな所で私は!? 私はガンダムに!」

 

「シャギア、もう終わりだッ!」

 

「メガソニックはまだ生きている! オルバの援護もあれば!」

 

 腹部装甲を展開し拡散ビームを発射するが、ダブルエックスはビームサーベルを握るマニピュレーターを高速回転させて攻撃を弾き飛ばす。

 防ぎ切ると同時にサーベルを投げ飛ばし、残像を生むビーム刃が回転しながら右腕さえも切断した。

 

「終われない。ここまで来て私は!」

 

「うおおおォォォッ!」

 

 操縦桿のトリガーを引くガロードはブレストランチャー、マシンキャノン、頭部バルカンを展開するトリプルメガソニック砲に目掛けて一点集中で撃ちまくる。

 装甲を完全に撃ち抜く事はできないが、それでも強力な弾丸はトリプルメガソニック砲を破壊して内部から炎が上がった。

 

「これで最後だッ!」

 

「終わる……私が終わる? 何もできず……世界に飲まれるのか?」

 

 ビームサーベルを構えるヴァサーゴだが既に遅く、ダブルエックスのハイパービームソードは機体を胴体から分断した。

 エネルギーの供給を絶たれ動かなくなったヴァサーゴ。

 切断された装甲、ケーブルの類から飛び散る火花に機体のエンジンは今にも爆発してしまう。

 

「勝ったぞ、シャギア」

 

「オルバ……済まない。私は……約束を果たせなかった。私達兄弟を見下したバカ共を抹殺する事ができなかった。オルバ――」

 

 

 

第30話 私のたった1人の弟

 

 

 




時間が掛かって申し訳ありません。久々の更新です。
次回でいよいよ最終話、長かったこの作品も完結です。
次回更新をお待ち下さい。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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