機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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第4話

アルタネイティブ社に1人のモビルスーツ乗りが乗り込んで来た。

ガンダムヴァサーゴ。

赤い装甲に黒い翼。

終戦後、連邦軍がモビルスーツの開発技術をより高度なモノへ発展させた事を窺わせるこの機体。

パイロットの名はシャギア・フロスト。

アルタネイティブ社のラボで、彼はソファーに座りながら総責任者であるフォン・アルタネイティブと交渉を進めて居た。

 

「お前の目的は何だ?」

 

「ですから、何度も申し上げて居る通りです。私をここで雇って欲しいのです」

 

「貴様のような何処に居るともしれんモビルスーツ乗りを? 馬鹿馬鹿しい」

 

フォンは交渉を持ち掛けるシャギアを鼻で笑う。

物資も資源も限られてる今の時代、彼は地位を得る事で全てを手にして来た。

金も、食料も、資源も。

巨大企業の後ろ盾もある。

贅沢を尽くす彼の体は脂肪ででっぷりと膨れて居り、シャギアの事を見下すように見た。

 

「確かにモビルスーツを動かす技術は普通の奴よりも多少は出来るみたいだが、そんなモノなど探せばすぐに見つかる。貴様は――」

 

「数日前、ティファ・アディールと言う少女がこのラボから連れ去られたようで」

 

シャギアの言葉に息を呑む。

この事を知るのはファンと、奪還命令を下した数名の部下のみ。

額から汗を滲ませ、動揺を隠すべくメガネのレンズ越しにシャギアを睨んだ。

 

「どこから情報を入手した?」

 

「フフフッ、企業秘密です。雇って頂けるのならお教えしましょう」

 

「何が狙いだ? 金か?」

 

「彼女が連れ去られたのは1週間前。このラボに、バルチャーが襲撃を掛けて来た。急いで彼女を奪還すべく部隊を派遣するが、返り討ちにあい今に至る。なんでも相手は、旧連邦のモビルスーツであるガンダムが現れたとか」

 

「随分と詳しいようだな」

 

「この時代を生き延びるには、情報は幾らあっても困りません。それに、手間と時間を掛けて居ますので」

 

更に警戒心を強めるフォンは、デスクの引き出しに忍ばせた拳銃を手に取ろうと静かに視線を向ける。

シャギアに動きがない事を確認しながら、ゆっくりと手を伸ばす。

ソファーに座り足を組むシャギアはフォンに視線すら向けて居ない。

 

「そして、ティファ・アディールがこのラボで何をされて居たのかも知って居ます。彼女が持つ特殊な能力。15年前の戦争の時に居たとされるニュータイプなのだとしたら、その価値は大きいですね。このアルタネイティブ社を更に大きく出来る。ですがこんな事、無闇矢鱈と言える訳がありません。だから奪還部隊も最小限、最重要機密の彼女の存在を知られる訳にはいかない」

 

「凄いね、ここまでの情報を入手して居るとは。わかった、キミを――」

 

拳銃を取り出したフォンは素早くその銃口をシャギアに向けた。

トリガーに掛けられた指。

躊躇なく、力強く引き金を引こうとした瞬間。

響く銃声。

弾丸はソファーの皮を突き破る。

けれどもそこにシャギアの姿はもうない。

瞬時に駆けると銃を握る右手を捻り上げ、相手から武器を奪い取る。

 

「ぐぅっ!?」

 

「これで私の実力は把握出来たと思いますが? さて、如何です? 雇って頂けますか?」

 

(拒否すれば、その引き金を引くつもりか!? こんな小童にこのワシが!!)

 

突き付けられる銃口、フォンに選択肢はない。

黙って首を縦に振りシャギアの提案に賛同の意思を示す。

抵抗する気はもはや微塵も失くなってしまい、シャギアもそれを感じると銃をジャケットの中に入れる。

 

「ありがとうございます。必ずやティファ・アディールを取り戻して見せましょう。では手始めに、これからの動向を探る為にも占いでもしましょう」

 

言いながらソファーに戻り、再びジャケットに手を伸ばすと今度はタロットカードを取り出した。

両手の中でカードをシャッフルし、備えられたガラスのテーブルの上にカードを並べていく。

 

「カードなどで。そんな事をしとる場合なのかね?」

 

「既に向こうには私の弟を送り込んで居ます。上手く行けば、今頃は内部に潜り込んで居る筈です」

 

「弟だと?」

 

「えぇ、とても優秀なね。さて、占いの結果が出ました。これは……」

 

手に取ったカードは悪魔のカード。

じっと見つめるシャギアはニヤリと口元を歪めた。

 

「悪魔のカード……」

 

「ワシはカードの事などわからんが、悪魔とは穏やかじゃないな。良くない事が起こる前触れか?」

 

「いいえ、とんでもない。ここは動くべきです」

 

窓の外から差し込む太陽の光。

それは幾重にも屈折して悪魔のカードに反射する。

 

(オルバなら大丈夫だ。だが、奇妙なモノだ。これではまるで――)

 

 

 

第4話 白い悪魔

 

 

 

翌朝、艦長室で話をするのはジャミルと着替えを済ませたアムロ。

互いに向き合いながらシートに座る2人は、これからの事を話して居た。

 

「それで、どうしてあんな所に? あのモビルスーツの事も気になる」

 

「あぁ、全てを明確に応えられる訳ではないが、それでも良いか?」

 

「構わない。私も同じようなモノだ」

 

「そうか。戦争が終わってから、俺は連邦軍に幽閉されて居た。けれどもそこから逃げようともせず、7年もそこに居た。戦いが怖い、と言うよりも宇宙が怖かった。でも、そこからの記憶は酷く曖昧だ。どうしてあんな所にガンダムと居たのか、俺にもわからない」

 

「宇宙が……私はあの戦争が終わって、モビルスーツに乗るのが怖くなった。今でもコクピットに入れば、手が震える」

 

「不思議だな、どこか似たような所がある」

 

「全くだ」

 

微笑を交わす2人。

それでもまだ、アムロの心の中では混乱したままだ。

 

(自分でもまだ、本当の事がわかっちゃ居ないんだ。ここが何処なのかも、これから何をするのかも)

 

「それで、これからどうするつもりで? 行き先はあるのか?」

 

「ないよ。でもいつまでもここで厄介になる訳にもいかない。少しすれば、ガンダムと一緒に出て行くよ」

 

「だったら、ウチに雇われてくれないか?」

 

「フリーデンに?」

 

「そうだ。今までの戦闘でわかった。アナタの腕は相当なモノだ。それに、もしかしたらニュータイプかもしれない」

 

「やけに拘るな、ニュータイプに。前にも言ったが、俺はそんな立派なモノではない。ニュータイプの成り損ないの、ただの男だよ」

 

ニュータイプを否定するアムロ。

1年戦争の時、確かにララァ・スンとわかりあう事が出来た。

時の流れさえも自由に変えられると思ったが、いつまでも彼女の幻影に縛られる事をアムロは望まない。

けれども、シャアはニュータイプである彼女に執着した。

ニュータイプに囚われて周りが見えなくなったシャアが歩んだ歴史。

それは、彼に何も残さなかった。

 

「アムロ、私もかつてニュータイプと呼ばれた。あの戦場で戦い、そして引き金を引いた。ニュータイプは戦争の道具として扱われ、そして死んで行ったモノも多い。私はもう、あんな悲劇を繰り返したくはない。だが、あれだけ凄惨な戦いがあっても尚、ニュータイプを使う人間は居る。だから助けたい……かつての私のようになって欲しくない。だからティファを助けた」

 

「あの少女の事か。だがジャミル、こんな事をして居ても――」

 

爆音が響く、艦内が揺れる。

話を切り上げてシートから立ち上がる2人。

視線を合わせて意思の疎通をすると、部屋を出てブリッジに走る。

 

「状況は?」

 

ジャミルは艦長シートまで来ると、モニターを見て何が起こったのかをサラに聞く。

一緒に来たアムロも、モニターに表示された映像に視線を向けた。

見えるのは地上を高速で移動する黒いモビルアーマー。

コンソールパネルを叩きながら、オペレーターのサラは的確に状況を報告する。

 

「こちらへの攻撃ではありません。黒い機体がバルチャーに追われてます。どうしますか?」

 

「フリーデンはまだ動けん。ウィッツとロアビィをいつでも出撃出来るようにしろ」

 

「了解です」

 

指示に従い動くサラ。

7機ものモビルスーツが一方的に黒い機体を追い回す。

その状況を見るアムロは1歩前に出た。

 

「キャプテン、俺も出よう。敵の母艦も近い。数は多い方が良いだろ」

 

「だが、あのガンダムの修理はまだ出来てない」

 

「やりようはあるさ。またライフルだけ借りるぞ」

 

モビルスーツデッキに行こうとするアムロ。

けれどもジャミルは、その背中を呼び止めた。

 

「待て……これを使え」

 

差し出したのはガンダムに使用するコントロールユニット。

立ち止まるアムロはそれを受け取り、物珍しそうに凝視した。

 

「何だ、コレは?」

 

「GXのコントロールユニットだ。これがなければGXは起動せん」

 

「GXだと? あの白いガンダムか」

 

「アムロ、お前が乗ってくれ。GXに」

 

「俺が……」

 

一瞬、躊躇するアムロ。

けれどもそんな時間はなかった。

黒いモビルアーマーを追うバルチャーの機体、ジェニスがフリーデンの居場所をキャッチしてしまう。

3機のジェニスがフリーデンに迫る。

 

「わかった。俺が乗る」

 

「頼む」

 

コントロールユニットを握るアムロはブリッジを出てモビルスーツデッキへ走った。

けれどもその心中は複雑であり、心の奥に押し込んでハンガーのGXの前に立つ。

 

「アムロがGXに乗るのか?」

 

「キッド? あぁ、そうなった」

 

「まだ修理は完璧じゃないんだ。右足の駆動系はなんとかしたけど、スラスターの出力は充分じゃない」

 

「わかった。助かるよ」

 

「次は壊すんじゃねぇぞ」

 

「そのつもりだ。行って来る」

 

言われてアムロはハッチから伸びるアンカーを掴む。

上昇するアンカーは体をコクピットにまで運び、アムロはGXに乗り込んだ。

 

「全天周囲モニターじゃない。操縦桿もスティック式か。コントロールユニットは……ここか?」

 

コクピット内部の構造に疑問を浮かべながらも、ジャミルから受け取ったコントロールユニットを差し込む。

エンジンが起動しツインアイが光る。

シートベルトを装着して、両足を軽くペダルに乗せると、GXを動かす。

 

「起動したな。GX、出るぞ」

 

背部のリフレクターを少しだけ開けエネルギーを放出させ、GXはフリーデンのハッチから飛び出した。

地上をホバーリングのように移動しながら、操縦桿で感触を確かめる。

 

「操縦方法は殆ど変わらない。これなら行けるか?」

 

バックパックからビームライフルを取り、向かって来る3機のジェニスを視界に捉える。

射程距離からは少し離れて居るが、構わずにトリガーを引いた。

発射されたビームはジェニス頭部をかすめ、次の瞬間にはコクピットのすぐ横へ直撃する。

機体はまだ動くがコクピット内部にまでダメージは到達しており、パイロットは飛び散る機械部品で皮膚を突き破られ動けない。

操縦桿を手放し、機体はそのまま地面へと倒れ込む。

 

「時間は掛けられない。一気に叩く!!」

 

ペダルを踏み込むアムロ。

GXは更に加速し、残る2機へ距離を詰める。

 

『相手は1機だ!! 撃ち落とせ!!』

 

『パイルをやりやがったな!!』

 

「そんな腕では!!」

 

モビルスーツを動かせるだけで、パイロットは戦闘訓練を積んだ訳ではない。

15年前の戦争で地球の大陸が姿形を変え、ようやく人が大地を踏み締める事が出来るようになってからバルチャーは現れた。

モビルスーツは元々は軍の兵器であり、一般人は触れる事さえ出来ない代物。

けれども時代は変わり、バルチャーやフリーのモビルスーツ乗りは捨てられたモビルスーツを修理、改修して自分のモノとした。

そんな彼らの戦い方は、武器を使って喧嘩して居るに過ぎない。

アムロはビームライフルを向け牽制射撃するが、その1発はまたしてもコクピットに直撃する。

 

「こいつら、素人なのか?」

 

『よくも白いヤツ!!』

 

「ちぃ、遅すぎる!!」

 

果敢にもメインスラスターを全開にしてGXに迫るジェニス。

腰部からヒートホークを取り出し右腕を振り上げるが、胸部インテーク部のブレストバルカンが火を噴く。

4つの砲門、高速で発射される弾丸は緑の装甲をズタズタに引き裂く。

破壊される内部部品からは煙が上がり、胸部周辺には無数の穴が開く。

握り締めたヒートホークを振り下ろす事も出来ずに、3機目のジェニスは地面に倒れた。

 

「残りは……さっきのモビルアーマーは? まだ反応はある」

 

ペダルを踏み込むアムロはGXをジャンプさせる。

だが地上をホバーリングのように移動して居た時とは違い、空中では機体の速度が出ない。

完全に修理が出来てないリフレクターはパイロットの操作通りに反応しなかった。

 

「パワーがダウンしてるのか!? 自分で蒔いた種だが……間に合うか?」

 

レーダーが反応する方角、黒いモビルアーマーの位置を見るアムロ。

4機のジェニスから依然として逃げるばかりだが、旧反転すると巨大な2本のクローアームのに内蔵されたビーム砲から強力なビームを放つ。

追い掛けるジェニスの1機は回避する事が出来ず、直撃を受けると機体は爆発した。

 

「逃げながら1機倒したか。やるな」

 

機体を地上に着地させるアムロは再びホバーリングで黒いモビルアーマーの元へ向かう。

3機に減ったジェニスは目の前の獲物にしか視線を向けておらず、背後から近づくGXのビームライフルが1機を撃ち抜いた。

 

「そこの黒い機体、右に回り込め」

 

『わかった……』

 

アムロは呼び掛けると、モビルアーマーはその指示に従い動く。

GXに接近を許すジェニスが振り返った時には、白い機体はもう眼前に居る。

 

『うああぁぁぁっ!?』

 

銃口を胸部に密着させトリガーを引く。

灼熱のビームに焼かれて機体は背部から倒れる。

鋭い視線を向けるアムロは素早く操縦桿を動かし、ビームライフルをバックパックに戻しビームサーベルのグリップを掴む。

 

「あと1機!!」

 

『やってやる!! 白いモビルスーツがなんだ!!』

 

相手のジェニスもすかさずヒートホークを手に取り振り下ろすが、アムロの攻撃の方が1手早い。

ビームサーベルのグリップを横一閃。

斬る一瞬にビーム刃を発生。

ジェニスの右腕は肘から斬り落とされ、次の瞬間にはコクピットに突き立てられた。

頭部モノアイから光が消え、力を失うジェニスは前に倒れ込む。

肩の力を抜いたアムロはコンソールパネルを叩き、待機して居るフリーデンに通信を繋げた。

 

「どうにかなったな。こちらアムロ、フリーデン聞こえるか?」

 

『こちらフリーデン。モビルスーツ全機撃破、お見事です。敵艦も後退して居ます。無理に追う必要はありません』

 

「そのようだな。帰還する」

 

『わかりました』

 

オペレーターのサラとの通信を終え、すぐ近くに止まる黒いモビルアーマーを見る。

さっきまでの戦闘で、その黒いボディーに損傷などは見られない。

 

「黒い機体のパイロット。無事なようだな」

 

『えぇ、救援感謝します』

 

「敵も引いたようだ。今の内にここから離脱しろ」

 

『それが、推進剤が残りわずかで。操縦系統も故障して反応が悪いんです』

 

「そうなのか? すぐ近くに艦がある。艦長に聞くくらいはしてみる」

 

『助かります』

 

黒い機体のパイロットは密かに笑みを浮かべた。

推進剤が残り少ないのは本当の事だが、操縦系統の故障はカムフラージュする為に意図的に作ったモノ。

少し機体を配線を入れ替えればすぐに直す事が出来る。

 

(これで作戦は次のステップに移る。ニュータイプの少女、ティファ・アディール。けれども何だ? この不愉快な感覚は?)

 

「良し、許可が下りた。付いて来てくれ」

 

「ありがとうございます……」

 

フリーデンに向かうGXと黒い機体。

動かない艦の個室の窓から、ガロードはアムロが戦う風景を見て居た。

普通のパイロットとは一線を越える戦闘技術。

そのあまりの強さに舌を巻き、同時にその力の差が悔しかった。

 

「あれが……ガンダムの戦い……」

 

///

 

モビルスーツデッキに収容される2機の機体。

黒い機体のパイロットと顔を合わせるフリーデンのクルー。

その先頭には艦長であるジャミルが立って居た。

 

「アナタがこの艦の艦長ですか?」

 

「ジャミル・ニートだ。ケガもないようで何よりだ」

 

「オルバ・フロストと言います。助けて頂いで感謝します。ですが、今は持ち合わせが尽きていまして。何か手伝える事はありますか? 助けて頂いたお礼がしたいんです」

 

「お礼だと? だったらこの艦で働いてくれ。訳あって、今はこの場から動けない。さっきのように敵の襲撃が来れば防ぎきれるか怪しい。だからその間だけ、雇われてくれるか?」

 

「構いません。ありがとうございます」

 

オルバと握手を交わすジャミル。

その後ろで、サラは見定めるようにオルバの事を見て居た。

 

「戦力が増えるのは良い事だろうけど、本当に大丈夫なのかな……」

 

意味深に呟く彼女。

その意味を理解出来ないシンゴはストレートに聞き返す。

 

「どう言う意味ですか? 戦力が増えれば動きやすくなるでしょ」

 

「それはそうだけれど……人手が欲しいのもわかるけれど……このままで問題ないのかなって。あのオルバって人だけじゃなくて、アムロもそう」

 

「考え過ぎですよ。大丈夫ですって」

 

「だったら良いのだけれど」

 

GXのコクピットから降りたアムロも、コントロールユニットを片手にオルバの姿を見て居た。

見た目には普通の青年にしか見えないが、脳裏に微かな違和感が走る。

 

「オルバ・フロストか……なんだろうな」

 

不信感を抱きながらも、アムロはティファが眠って居る医務室に向かった。

扉を開けて中に入ると、そこに居たのはティファだけではない。

 

「キミは……」

 

「アムロ……」

 

彼女が眠るベッドの傍、小さな花瓶に花を生ける少年。

ガロードは見つかってしまった事に一瞬動揺するが、暴れて逃げ出すような素振りは見せなかった。

そんな彼を見て、アムロも諭すように話し掛ける。

 

 

「営倉から逃げ出したのか。でもどうしてここに居る? キミならモビルスーツを奪う事だって出来た筈だ」

 

「ティファが居る限り、俺は逃げない!! 聞いたんだ、ティファはニュータイプだって。でもそんなの、この子には何の関係もないんだ。ティファはそんな力、必要としてない。それなのにアンタ達が追い掛け回して!!」

 

「そうだな、キミの言う通りだ」

 

「え……」

 

自分の言葉を肯定された事にガロードは拍子抜けしてしまう。

アムロは優しく視線を向けながら、自らの経験を語る。

 

「ニュータイプの事をどう捉えるかは人それぞれだが、それに盲目してはいけない。何て言うかな……俺の知り合いがそうだった。そしてソイツもニュータイプだった筈だ」

 

「ニュータイプって一体何なんだよ?」

 

「人と人とが誤解なくわかりあえる存在、そう聞いた事がある。でも、ニュータイプでなくたってわかりあう事は出来る筈だ。その逆もあるがな」

 

「アムロもニュータイプなのか?」

 

「それはキミが判断してくれ。ニュータイプでもそうでなくても関係ない。そうだろ?」

 

「わかった!!」

 

「そうか。もうすぐ人が来る。見つかる前に戻った方が良い」

 

アムロにそう言われ、ガロードは眠るティファの表情をちらりと見て、病室を後にした。

けれども部屋の扉を潜る寸前、立ち止まりアムロを顔を見る。

 

「まだ名前言ってなかったよな? 俺はガロード。ガロード・ラン」

 

「ガロードか」

 

「また来るよ」

 

そう言い残して足早に去って行く。

扉の傍で立つアムロはガロードの背中を眺めながら、暫くすると医師のテクス・ファーゼンバーグがやって来た。

 

「どうした? こんな所で」

 

「いや、何でもないさ」

 

「彼女の容態が回復するにはもう少し掛かる。安静にしてやってくれ」

 

医務室に入るテクスは、ベッドの傍の花瓶に目が行きメガネの奥の瞳が少しだけ険しくなる。

 

「花なんて誰が置いたんだ。患者には良くない」

 

花瓶ごと持ち去ろうとするテクスだが、アムロはそれを静止した。

 

「待ってくれ。少しの間だけで良い」

 

「だがな……」

 

「頼むよ。今日だけで良い」

 

アムロの言葉に頷くテクス。

ティファ・アディールは未だに目を覚まさない。




活動報告にも書いたけれど、ガンダムUCと閃光のハサウェイとかもいつか書いてみたい。
あとはGレコをどう使うかだなぁ。
あと、なのはとガンダムとで執筆速度が全然違う。
こっちに慣れ過ぎてしまったかな。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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