東方屍姫伝   作:芥 灰仁

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混乱

目を覚ますと知らない天井だった。

ボロボロで今にも崩れ落ちてきそうなほどのボロボロな天井。

そんな天井の下で私はなぜ寝ているのか?

 

 

「あ、茜姉さん! "雪姉さん"起きたよっ!?」

 

 

私が目を開き今の現状を考えていると、私の隣で座っている十歳くらいの少年が声をあげながら部屋から出て行く。

 

誰だあの子は?

私は寝そべっている身体を起こしながらそう疑問に思う。

そして身体を起こして周囲を見渡す。

私が今いる部屋はボロボロで天井だけでなく、壁も床もボロボロで簡単に穴があきそうなほどボロい。

どこかの廃屋だろうか。

内装的には神社や寺を思い出す。

部屋を区切る障子は部屋と部屋を区切っているはずなのに紙が張り替えられていなく穴が開いてある。おかげで隣の部屋の様子も丸見えだ。

 

 

私の今の服装も学校の制服から、所々に小さな穴が開いている茶色の着物に着替えさせられている。

ていうか、私はなぜこんなところにいる?

友達の飛鳥と学校帰りで一緒に歩いていたのは思い出せる。いつも通り何気ない雑談をしていたのも思い出せる。

だが、記憶はそこで途切れている。

飛鳥と並んで歩いていたはずなのに何故、私はこんなわけもわからないところで目を覚ましたんだ。

 

 

 

「とりあえずここがどこか確認を……あ……」

 

 

私はそう呟きながら立ち上がると、身体がふらつき尻餅をつく。

どうやら私が寝ていたところに布団が引いてあったみたいだが、綿が入っておらずほぼ布一枚で、尻餅をついても衝撃が緩和されない。おかげでお尻が痛い。

 

ていうか、今気づいたが頭が少し痛い。

今ふらついたのもそれが原因だろう。

 

 

「"雪ちゃん"っ! 安静にしておかないとダメじゃない」

 

 

私が尻餅をついている状態で頭を抑えていると、私と同い年くらいの少女が慌てながら部屋に入ってきた。

その少女は私が今きている様なボロい着物を着ており、肩にかかるくらいの黒髪。

少し飛鳥に似ているが瓜二つというわけではないのですぐに別人だとわかる。似ているのは髪型と大きなおっぱいなだけだ。後は顔が多少、面影があるくらいだろうか。

 

少女は慌てた様子で私に近寄り、私の首に手を回し思いっきり抱きついてきた。

抱きつかれてわかるがその少女はすごいやせ細っており、胸以外は脂肪が全くついていない。

 

 

「もぉ、心配したんだよ! いきなり木から落ちて気を失ったって聞いたときは心臓が止まったかと……」

 

「いや、あんた誰?」

 

 

私は少女にそう尋ねる。

抱きついてきて一方的に話していた女性は話すのを止め、私から離れ私の目に視線を合わす。

その表情は青ざめており、私の肩に置く手は震えている。

 

 

「え、じ、冗談だよね」

 

「いや、冗談とかではなく、あんた誰?」

 

 

少女の問いに私がそう答える。

私が答えると少女はさらに顔を青ざめ、気を失う様に私に抱きついてきた。

 

 

「あ、茜姉さん大丈夫!?」

 

 

少女が倒れる途端に部屋に私が目を覚ました時にいた少年が声をあげながら入ってきた。

よく見ると少年が入ってきた部屋の入り口には何人かの小さな子供がこちらを覗いており、どの子も私と同じ様にボロっちぃ着物を着ている。

 

私に抱きつく様に倒れてきた少女はうぅ、とうめき声をあげながら気絶しているし、駆け寄ってきた少年もはわわはわわ、と言いながら慌てている。

 

どうなってるんだこの状況……

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

 

私が目を覚ましてから半日ほどが経った。

日は完全に沈み、空は真っ暗で月がぽつんと浮かんでいる。

そのなか私は縁側に座りながら月夜を眺め物思いにふける。

 

 

「……どうしたものか」

 

 

私は溜息をつきながら今の現状に参っている。

 

とりあえずここが何処やらなんでいるのかなどの疑問はある。

だが、今の一番の問題は私を"雪ちゃん"と呼ぶ少女のことだ。

 

私が目を覚まし、私に抱きついてきた少女……名は白鷺 茜(しらさき あかね)というらしい。

彼女は私の様子を見て気絶した後はすぐに目を覚ました。

しかし、顔は蒼白しており私の肩を掴んで何度も"雪ちゃん雪ちゃん"と叫んでいた。

そしてしばらく叫んだ後、何かを諦めたのか落ち込んだ様子を見せ、部屋から出て行ってしまった。

 

その後、私が目を覚ました時に側にいた少年……小太郎という名の十歳くらいの少年に話を色々聞いた。

どうやら私?は木から降りれなくなっていた猫を助けようとしたら、木から落っこちて頭を打って気絶していたらしい。

もちろん私には猫を助けたことは身に覚えがない。

なんども少年に自分の事を覚えていないのか、と聞かれたが私は首を振り続けた。

そして少年も何かを諦めた様に部屋から出て行って、部屋には私と私のことをじっと見つめていた何人かの幼い子供だけが残った。

 

それで私は現状確認のために立ち上がり、目覚めた部屋から出てこの廃屋の中を歩き回った。

歩き回ってわかったがこの廃屋はどこかの寺の様だ。そして、この寺には何人かの幼い子供ばかりで大人が誰一人見当たらない。

寺の外を見ても木ばかりが立ち並び、どうやらこの寺はどこかの森の中に建っているようだ。

この事を確認したころは既に日が沈み始めており、見ず知らずの森に行くには危険だと思ったのと、自分の履いていたはずのローファーがどこにもなかったので寺から出ず、こうして寺の縁側に座り空を眺めているわけだ。

 

で、話は戻すがあの少女だ。

なぜ彼女は私の事を"雪ちゃん"と呼んだのだろうか。

もちろん私はそんな名前で呼ばれる所以がわからない。

先ほども寺の中を探し回っていても彼女の姿は見つからなかったし……。

彼女からは話を色々と聞こうと思ったのに。

 

てか、マジでここどこだよ……。

靴どころか私の着ていた服とか持っていた荷物はどこにいったのだ?

スマホさえあれば今のいる場所くらいはわかるかもしれないのに……。

それにママンやパパンくらいには連絡しておきたい。帰ってこない事を心配されて、警察に行かれたら少し困る。

 

 

 

「ゆ、雪ちゃん、隣座るね……」

 

 

私が溜息をついて参っていると、少女……白鷺 茜が背後から現れ、私の隣に座った、

 

噂をすればなんとやら、ちょうどよかった。

今は誰でもいい、兎に角、情報が必要だ。

 

 

「なぁ、ここはどこだ」

 

「どこって……やっぱり記憶がないんだね雪ちゃん」

 

 

私の問いに少女は悲しそうな顔をしながらも答えてくれた。

雪ちゃんとは誰? というツッコミをしたいがそれは後でいい……。

今はとりあえずここがどこなのかだけは把握したいのだ。

 

 

「記憶がないってどういうことなんだ……」

 

「だ、だってそうでしょ? 私のことを覚えてないし……」

 

 

少女はそう言いながら涙を浮かべながら私に抱きついてきた。

グスグスと泣きながら私の胸元に顔を埋めるが泣きたいのはこっちだ。

どこと聞かれ記憶がないのねってどんな展開だ。

私は記憶なし子ちゃんじゃないぞ。

 

 

「お願いだ、ここがどこか答えてくれないか?」

 

 

私がもう一度そう尋ね返すと少女は鼻をすすりながら、顔を上げて私に視線を向ける。

 

 

「本当に覚えてないの? ここは私たちが育った場所だよ?」

 

 

そう答えられると……益々、わからないんだが。

なんだ、これは何かの撮影かドッキリか?

ここまで来るとなんか全部嘘くさく見えてくる……。

 

 

「一緒に過ごしたことも和尚さんのことも覚えてないの?」

 

「いや……その……」

 

 

なんだこれは……。

頭がこんがらがってきた。

この少女の涙は嘘には見えない。

しかし、私にこの少女と過ごした記憶はないし、和尚さんにいたってはなにそれ一休さん? くらいしか思い浮かばない……。

 

 

「そ、それにわ、私とした……結婚の約束も覚えてないの……」

 

 

顔を紅らめ涙声で言われるがそんなことは覚えてない。

確か私たちは女の子同士なはずだ……。

法律的に結婚はできないし私も女の子同士で結婚する気はない。

この少女が男っていうならできるかもしれないが、こんなでっかい胸ぶら下げてる男などいるはずはない。

もしやこれは何かの詐欺か? 同性結婚詐欺か?

もしそうだとしても私にはなんのメリットもない。

 

 

「いや、ごめん……覚えてない……」

 

 

私がそう言うと少女はまたグスグスと鼻声で私の胸に顔を埋める。

泣きたいのは本当にこっちだ……。

 

ここはいったいどこなんだ……。

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