東方屍姫伝   作:芥 灰仁

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結末

「さとり様ー、どこですかー!!」

 

博麗神社から少し離れた土地。

火焔猫燐は手押し車を押しながら自身の主人である古明地 さとりを探す。

すでに宴会が終わって数時間ほどが経ったが、行き先の一つも言わずに姿を消した主人を探すがいまだに見つからない。

 

故に焦る。

何かあったのではないか、と。

先ほどからちょくちょくと出会す骸骨らに殺られたのではと気が気で仕方がない。

燐は地上にはあんなのが徘徊しているのかと身震いをしながらも、さとりの身を心配し、時には骸骨らから逃げ廻っていた。

もう帰りたい、だけどさとり様がと葛藤しながらさとりのことを探していた。

 

「うにゅぅ……お燐、まだ地底に着かないのぉ?」

 

「お空! 寝ぼけてないで探すの手伝ってさ!?」

 

燐は自身の手押し車の中で呑気に寝ている霊烏路 空に向け声を上げた。

空を乗せながら動くのは大変だからそろそろ自分で歩いて動いて欲しい。

というか呑気に寝ているのがムカつくから蹴り落としてやろうか、と思ったが可愛らしい寝ぼけ顏を見てそれは躊躇われた。

しかし、さとりを探すには二手に分かれた方が早いのではと思い、心を鬼にして叩き起こそうか、と迷っていると燐の背後から声が聞こえた。

 

「おりーん、何してるのー?」

 

聞き慣れた声。

燐はその声が聞こえると顔をぱーっと

明るくさせ、振り向いた。

 

「こ、こいし様ー、無事だったんですね!」

 

燐の目先には自身の主人の妹君、古明地 こいしがいた。

 

「まあ、私は誰からも気づかれにくいしね」

 

「そうですか……そういえば! さとり様を知りませんか!?」

 

燐はさとりが見つからない焦りから、大声をあげ、こいしに聞く。

こいしはそんな慌てる燐の姿を見て、クスクスと笑った。

 

「そんな心配そうにしなくていいよ。お姉ちゃんはアレでも強いんだから」

 

「し、しかし骸らが……」

 

「あぁ、別にあんなのどうってことないよ」

 

「で、ですけど……」

 

「大丈夫」

 

燐の戸惑いにこいしは首を横に振るった。

そして、燐を安心させるように口を開いた。

 

 

「ーーもう、異変は終わったから」

 

 

 

 

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

私が慧音先生の胸に顔を埋めていると、その横槍は入ってきた。

 

「なにいつまでも似合わない事してんだよ!」

 

「ふげっ!!」

 

突然の横からの足蹴。

軽めに蹴られたからフラつく程度で済んだが、思ったよりいいところに決まって一瞬だけ呼吸ができなくなった。

 

ちなみに蹴った本人は妹紅だった。

 

「も……妹紅」

 

蹴られた私は妹紅の方を向く。

そう言えばこいつの事を完璧に忘れていた。

 

「雪、妹紅と知り合いなのか?」

 

「え……ああ」

 

慧音先生の問いかけに私は頷いた。

そして、私は急に慧音先生に会えた嬉しさから、不安に陥った。

別れが別れだったから、どう接すればいいのかわからなかった。

 

しかし、妹紅はそんな様子を気にする様子を見せずに普通に私に話しかけてきた。

 

「てか、いつまでもくっついてんじゃねぇよっ、離れろ雪!」

 

「あ、うん……」

 

私は妹紅にそう言われると、慧音先生から離れ、妹紅の正面に立つ。

妹紅は慧音先生から離れた事に満足するとよし、と満足気に頷いた。

そして、すぐに思い出す様に私の胸元を掴み揺すり始めた。

 

「そういやあ、あの不気味な骸骨どもはなんだよ!? お前が原因だって聞いたがどういうことだ!!」

 

「そ、そう言えば雪!! なんでお前が生きて……というかなんだその白髪は!?」

 

「ちょっ、そんなに揺らすな妹紅! それに慧音先生も! せ、説明するから!!」

 

妹紅に続き、慧音先生も私に駆け寄り積もりに積もった疑問を訪ねてきた。

私が二人に落ち着く様に言うと、二人は早く説明しろと言うように私を睨みつけてきた、こわい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

 

 

 

 

私は、順番に二人に事の成り立ちを話していった。

私が妖怪になった経緯や原因を、私と妹紅の関係を、そして私がどうしてこの異変を起こしたかの説明を簡潔にした。

 

私が話している間は二人とも静かに聞いてくれていたが、私が話し終わるとすぐに慧音先生が私に再び抱きついて慰めるように頭を撫でてくれた。

 

「……辛い人生を、送ってきたのだな」

 

慧音先生は私を撫でながら、涙は流してはいないが心底悲しそうな声で私の身の上を同情してくれた。

 

しかし、私はそんな慧音先生の慰めの声に首を振った。

 

「ううん、そんな事ないよ慧音先生。最初の方は確かに辛かったけど……さっき話した斬乂って人と出会ってからは幸せだったよ」

 

「そうか、なら……よかったよ」

 

そう言いながら慧音先生は再び私の頭を撫で、私から離れた。

私は慧音先生の温もりが無くなるのを少し残念がりはするも、妹紅の方をチラリと見た。

 

私の話を聞いて、妹紅がどんな顔をするか知りたかったから。

幸せになれ、と言われ最終的には長年封印されるという不幸な結末に至った事にどう反応をするか気になったからだ。

どんな罵詈雑言を受けるかと思い、私は妹紅の方に目を向けた。

 

しかし私が妹紅の方を向くと、彼女はそんな深刻そうな顔は浮かべていなかった。

というか、むしろ引いていた。

 

「お前……女と二回も結婚してたのかよ。きめぇ……」

 

私の思っていた罵倒と違っていた。

というか酷い……。

確かに、世間的には問題があるかもしれないが、キモイは言い過ぎだと思う。

 

「……も、文句あるのか!?」

 

「いや文句はないけど……マジでお前って同性愛者だったんだな」

 

「違うから! たまたま好きになった相手が女だっただけだから!!」

 

私は叫ぶ様に言うが、妹紅はそんな必死な様子の私を見て更に引く。

 

「風の噂で聞いたが……、お前ってあれだろ? 鬼の頭領に常日頃からベッタベタしてて、いつも盛っている万年発情な淫乱女なんだろ?」

 

「ちょっ!? なにその噂!!」

 

「昔、人里に張り出された鴉天狗の瓦版に……」

 

「射命丸 文のやつかぁぁぁぁ!!!!」

 

確か昔に斬乂と趣向を変えて外でシてたときに覗き見されて載せられたやつだ……。

あの時は妖怪の山に張り出されていたやつをすぐに回収して、その記事を書いた天狗に折檻を加えたが……まさか人里にまで張り出されていたなんて……。

 

私はまさか、と思いながらチラリと慧音先生の方を見た。

しかし、慧音先生はニコニコしていて妹紅とは違いドン引きしている様子はなかった、が……。

 

「まあ、お前がその相手とそういう関係なら多少甘えるのも仕方がないと私は思うぞ」

 

確かにそう言う記事があったなあ、と慧音先生はうんうんと頷き理解者を装っていた。

どうやら慧音先生もその瓦版の存在を知っていたらしい。

というか慧音先生はいつから人里にいるんだよ。

その瓦版が出回ったのは確か六百年も前のはずなのに。

 

「……ち、違うんだ慧音先生。私は斬乂とは清く正しいお付き合いをしていて……」

 

「別にいいさ雪。まあ、外でコトに及ぶのは流石にどうかと思ったが、お前が幸せそうでよかったよ」

 

かっちり瓦版の内容を覚えているんデスネ……。

てか、一番知られたくない人の一人に知られた、それも昔の姉貴分に……。

恥ずかしくて死んでしまいそうだ……。

 

 

「というか、お前があの屍の姫とはな。そっちの方が……ってうお!?」

 

私が羞恥で顔を赤くしながら目をそらし、慧音先生が話し始めようとすると同時に、"それ"は空から降ってきた。

慧音先生はその落ちてきたものに目を見開いて驚き、一歩引いた。

 

「あ……あぁ……」

 

ドサリと音を立て、私と慧音先生の間に落ちてきた"それ"は一人の少女。

彼女は所々に傷を作り顔を真っ赤にして、私の目の前に倒れ込んだ。

 

その少女は、紫色の髪でおさげをぶら下げている少女で、最近知り合った……というか今回の異変の首謀者の一人であった。

 

「きょ、鏡っ!?」

 

私は驚き彼女の傍に駆け寄った。

その少女とはあの狐の仲間で、なぜか他人と話すときには筆談でしかコミュニケーションを取らない変わり者。

それが何故かわからないが空から降ってきた。

 

「雪、知り合いか?」

 

「あぁ、一応は仲間だったってことになるのか?」

 

私は妹紅の質問に答えながら意識が虚ろな鏡の顔を叩く。

そして、その衝撃で鏡は目を開けると私の方をそろりと見てきた。

 

「め、目が覚めたか! いったい何が……」

 

「うぅ……も、もうお嫁にいけ……ない……」

 

顔を赤くさせながら言う鏡。

意識が虚ろなせいか、いつもの筆談キャラは無く、初めて彼女の声を私は聞いた。

意外に綺麗な声じゃないか、てか喋れたのかと心の中でつっこみながら彼女に何があったのか引き続き尋ねるが、再び意識を失ってしまいそれどころではなかった。

 

 

「その子ね、最初は魔理沙と覚妖怪と戦っていたのだけどね……」

 

いったい何が、と私は思っていると不気味な笑い声とともにそのような声が聞こえ、私の目の前に"あの"裂け目が開いた。

そしてその裂け目から奴が現れた。

 

「まあ、結局は覚妖怪が心を読んで心を抉り続けて勝負にならなかったわ。それに途中から鬼の四天王やら鴉天狗が現れ余計に立つ瀬がなくなり、最終的に霊夢がその子の結界から自力で脱出してフルボッコ……。そして私はくたばったその子を貴女にプレゼントしに来たってわけよ」

 

「や、八雲……紫……」

 

「うふふ、ご機嫌麗しゅう」

 

私の目の前に開いたスキマから出てくるのは私の目の仇で……今回の異変の私の目標であった八雲 紫。

そいつが、今頃になって私の目の前に現れた。

 

「雪、久しぶりね」

 

「……あぁ、久しぶりだな」

 

しゃがみこんでいる私を見下すように見る八雲 紫。

私も嫌いな奴が現れ睨むが、そいつが出てきた理由を考えてすぐにある答えに行き着いた。

 

「……私を、また封印でもしに来たのか?」

 

「あら、されたいの?」

 

人を試すようなその態度、だから私はこいつが嫌いなんだ。

しかし、昔のはともかく今回私が暴れたのは明らかに自分の意志からのものであった。

またあんな暗く寂しいところに閉じ込められるのはごめんだが……、もしそれがケジメというのなら私は……。

 

「冗談よ、そんな心配そうな顔をしなくてもいいわ」

 

私の顔を見て、八雲 紫はそう言った。

 

「昔の話はともかく……今回の異変ではお姫様はちゃんとスペルカードルールを守ってたし、お姫様の能力なら出来たはずなのにあの変な怨霊を人里に送り込んではいなかった。今まで見る中で一番被害の少ない異変だと言ってもいいわ」

 

一番焦ったのは貴女が封印から解かれたくらいよ、と八雲 紫は呆れながらに言った。

その八雲 紫の言葉を聞いて私はホッとした。

 

しかし八雲 紫はけど、と言葉を付け加えた。

 

 

「ただで済むとは思わないこと、ね」

 

 

八雲 紫は年甲斐にもなく片目をパチリと閉じウィンクをして意味ありげな言葉を吐く。

 

私がその言葉の意味のわからなさに首を傾げていると、突然と頭上から弾幕の雨が降り注いできた。

 

「うぉっ!? なんだいきなり……」

 

私は降り注いできた弾幕を紙一重に避け、その弾幕の射出元である頭上に視界を移した。

 

私が目を向けた先には、腋の開いた巫女服を着ている少女が腕を組みながら空に浮かび、私の方を見下ろしていた。

 

そして、今にでも噛み付いてきそうな顔で怒気を上げた。

 

「あんたが屍の姫ね!! やっと見つけたわ!!」

 

その少女は眉間にしわを寄せながら私に向け言葉を発した。

私はその見覚えのない少女に急に攻撃を加えられた事に混乱していると、妹紅と慧音先生が呆れながらに口を開いた。

 

「あぁ……、今日は一段とキレてんなあの巫女」

 

「そうだな、おおかた異変解決に駆り出されたのにイラついているのだろう」

 

宙に浮かぶ巫女の姿を見て、二人は呆れながらに率直な感想を述べる。

私はその二人のそんな様子を見てどういう事かと首を傾げが、次の巫女の言葉で全てを理解した。

 

「この前、地底で起きた異変が終わったらまた異変で……あんたら妖怪はどれだけ私の平穏を邪魔すれば気がすむのよっ!!」

 

どうやら私の今回の行いにキレているようだった。

 

「えーと……、なんというかスマン」

 

「スマンで済むなら博麗の巫女は要らないわ!! 今回は無駄にあの鏡の結界から抜け出すのに手を焼いて私は何にもしてなくてイライラしてんのよ!!」

 

いや……それは知らんがな……。

というか途中から私関係ないし。

全部そこで目を回してる鏡が悪いし……。

てか、何にもしてないならいいじゃん……。

 

だが、私のそんな呆然とする様子を気にすることなく、巫女は気が悪いのかイライラした様子で私の方にお祓い棒を向けてきた。

 

「だからストレス解消がてらに私に退治されなさい!!」

 

 

 

ーー霊符「夢想封印」

 

 

 

「…………え?」

 

巫女の叫びと同時に私の周囲に、目の前に色とりどりな弾幕が設置された。

私はいきなりの急展開に何がなんだかわからないでおり、尋ねるように妹紅たちの方へと目を向けたが……。

 

「すまん雪……、こうなった霊夢は私には止めようもないんだ」

 

「ま、今回の反省ってことで」

 

慧音先生は申し訳なさそうに私から目をそらし、妹紅は指を立てて頑張れよと言うだけで助ける素振りも見せてくれなかった。

 

「ーー雪!!」

 

私がその妹紅たちの扱いに困っていると、八雲 紫が私の名を呼び声を上げた。

私は八雲 紫がまさかどうにかしてくれるのか、と期待してそちらの方を見たが、私の視界に映ったのは……

 

 

「どんまい☆」

 

 

八雲 紫のムカつく笑顔。

それが私の見た最後の光景で、気づいたら私めがけ一斉に虹色の弾幕が放たれていたーー

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