東方屍姫伝   作:芥 灰仁

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鬼神

鬼子母神ーー

 

その名は仏教にて多くの子を持った女神と覚えられているが、ここ妖怪の山では違う。

 

多くの鬼()を従え、神(はは)として君臨する鬼。

それが鬼子母神であり、鬼の首領ーー

 

 

 

「相変わらずメンタル弱いですねー、黒羽ちゃんは」

 

 

 

そんな彼女が少女の振り下ろそうとしていた腕を握りしめ、陽気に笑いながら馬乗りにされている天魔(とも)を見る。

そんな天魔は見下す鬼子母神を睨みつける。

 

 

「く……鬼どもが何しに来の……」

 

「"ども"ではありませんよー。私、単体で来ちゃいました」

 

 

突然現れた女性は睨みつけられながらもヘラヘラと笑う。

彼女は鬼子母神。

別名は鬼神。

本名は千樹 斬乂(せんじゅ ざんげ)

 

赤毛の長髪に額に伸びる二本の捻れた角、だがその顔は幼く、人間でいう十五歳くらいの見た目だ。

それも目はほんわりとしており、彼女の雰囲気はなんというか穏やかという感じがある。

 

そんな彼女の手には一本の酒瓶が握られており、それを見せつける様に天魔にお気楽な様子で見せる。

ぶっちゃけ鬼子母神は天魔の屋敷に飲みに来ただけだった。

 

天魔は溜息をつきながら彼女の来た理由を察する。

昼間っからこいつは飲んでばっかでという表情をするが、今この場では願ってもない助けだ。

それにここで鬼らが大勢来て、この騒ぎを止めてしまって鬼全体に借りでも作ってしまうことがあるならば後々めんどうなことになる。

ならばこいつ一人に借りを作って今度、酒の一本や二本を振る舞えば簡単にチャラになる、と天魔は考える。

 

 

「……鬼子母神か」

 

 

天魔の上に馬乗りになり、鬼子母神に腕を掴まれている少女が鬼子母神を睨みつける。

 

 

「はいー、あなたは誰ですかー?」

 

「お前を殺す奴だよっ!」

 

 

少女はそう言いながら背中から生えている骨の手を鬼子母神の心臓に目掛け突き刺そうとする。

 

 

「あうー、そういうつもりで聞いたんじゃないんですけどー」

 

 

しかし、その手は鬼子母神の胸には届かず、小枝の様に折られてしまう。

 

この骨の手は普通の骨とは違い、妖力で金剛石には劣るがそれくらいの固さに補強されているはずなのに折れた。

 

少女は折れた骨の手を見て、唾を飲み込む。

これが鬼子母神……鬼の頂点馬鹿力かと。

 

 

「……なぁ、鬼さん」

 

「なんですか?」

 

「あんた戦いたいだけの妖怪なんだろ? なら、この女を殺した後に相手してやるから大人しくそこで見ててくれよ」

 

 

少女がそう言うと鬼子母神は顎に手を置き、うーんと考え出す。

少女は今こうしている間でも折られていない骨の手で天魔の心臓目掛けて、突き刺そうとする。

しかし、背後に鬼子母神が立っており、いざ刺そうとしても先ほどと同じ様に全て折られるのがオチだと考え、すぐに殺す案を消す。

 

 

「たしかにー、私は戦うのは好きですね。貴女と正々堂々と戦う為には一度仕切り直した方がいいと思いますしー。でもー、黒羽ちゃんが死んじゃうのもなー」

 

「ええぇいっ脳筋バカ!? 迷う事はないでしょ! 今すぐこの女の首を刎ね……」

 

 

天魔は首を刎ねろ、と言おうとしたところで先ほどの光景を思い出す。

この少女は首を刎ねても死ななかったのだ。

では、どうすればこの少女は倒れるのかーー

 

 

「あー、黒羽ちゃんそういうこと言うんだー。見殺しにしちゃうよぉ〜」

 

「あ、まじでごめん今のなしなしっ!!」

 

「ぷーん、馬鹿っていう子は知りませーん」

 

「ちょ、後で美味しい酒あげるから許してっ!?」

 

 

少女は溜息を吐く。

調子が狂う、と。

 

 

「なぁ、鬼子母神さんよぉ。私は出来ればあんたも殺したいんだ。だから、今はこの女を殺らしてくれよ」

 

 

少女がそういうと馬乗りにされている天魔は今の自分の状態を思い出し顔を青くし、鬼子母神は忘れていたかの様に手をポンと打つ。

そして鬼子母神はしょうがないなー、と言いながら肩を回す。

 

 

「んー、申し訳ないですけどー。そのお話は無しで今すぐ……遊ビマショ?」

 

 

鬼子母神が三日月の様に微笑むと同時に少女目掛けて拳を振るう。

少女は拳を避けるため横に避けようとするが、避けきれず後方に吹っ飛んだ。

 

殴られた少女はゴロゴロと転がりながら吹っ飛んでいく。

 

 

「いっえーい、黒羽ちゃん貸しイチねー」

 

「ふん、仕方がないわね。百年もののやつ飲まさしてあげるわ」

 

「えー、口移しでー?」

 

「なわけないでしょっ!?」

 

 

鬼子母神はカラカラと笑い、助けられた天魔はホッとしながらも助けてくれた鬼子母神にイラつく。

 

そして冗談と笑いながら鬼子母神は手に持つ酒瓶を天魔に渡して、その場で屈伸をする。

 

少女を殴った時に背中の骨の手が少女の身をガードしていたのでまだくたばってはいないはず、そう思いながら手首をプラプラと動かしながら迎え撃つ準備をする。

 

「痛ってぇー、なっ!」

 

鬼子母神が身体の所々をほぐしていると、背後から声が聞こえる。

天魔の時と同じ様に、影を通しての移動術で鬼子母神の後ろから攻撃を仕掛けるが鬼子母神はスルリと避ける。

 

「後ろからの攻撃なんてひきょーですよ」

 

「当たってないくせによく言う、ねっ!」

 

少女はそう言いながら鬼子母神に駆けつけ、自分の両の手と背中から生える十の骨の手を使い拳を振るう。

顔、腹、腕、胸のそれぞれに十以上の拳を繰り出すが全て鬼子母神はガードする。

それも少女の十を超える手に対して、鬼子母神は二本の手だけを使いそれを全て防ぐ。

 

 

「あなたー、もしかしてまだ若い妖怪さんじゃないですかー?」

 

「くっ……」

 

「腕力も速さもあるみたいですけど経験が足りませんねーっと」

 

 

鬼子母神はそう言いながら拳を握り、少女の顔を殴って吹っ飛ばす。

少女は先ほどと同じ様に後ろに飛び、ゴロゴロと転がる。

しかも今回はガードをしておらず直に食らったため、無抵抗に少女は吹っ飛ぶ。

その様子を見て後ろに立つ天魔は溜息をつく。

 

 

「貴女と比べるとかわいそうでしょ」

 

「まぁそうですね。ならうちの子供とやればいい勝負を出来るかもしれませんねー」

 

「強いのか弱いのかわからないわね……」

 

 

まあ、弱いのなら殺されそうになった私はもっと弱いことになってしまうので強くあって欲しいが……、と天魔は内心思う。

 

 

「いえいえ、強いですよー。一撃ごとぐわって来ますし、うちの子に比べれば断然あの子の方が良いものをキメますね」

 

「あら、あんたにそこまで言わせるなんてあの侵入者も中々ね」

 

「でもー、経験が浅すぎますねー。頭とかお腹の当たれば痛いとこばっかり狙ってきますしぃ、それに……後ろからなら誰でも不意打ち決めて殺れるって思ってるんですも、のっ!」

 

「がっ!?」

 

 

鬼子母神がダラダラと語っている途中に、後ろに拳を振り、先ほどと同じ様に影から出てきた少女の頬を殴りつけた。

 

しかし、殴られた少女は拳に耐えその場で踏ん張る。

鬼子母神は耐えた少女の姿を見て、おー、と感心してパチパチ拍手する。

 

 

「頑丈ですねー、頑丈さも鬼並みですねー」

 

 

少女はそう言われると顔を歪める。

 

 

「お前らなんかと一緒にするな……」

 

「あ、もしかして鬼って言われるの嫌でしたー?」

 

「いや……私は鬼"以上"だっ!!」

 

 

少女はそう言いながら大きく深呼吸をする。

そしてー

 

 

 

「アぁああぁあアァああァあアアッ!!!!」

 

 

少女は声にならない声で叫ぶ。

その叫び声は相手を威嚇する様に、そして相手の脳を怯ませる様な叫びだった。

鬼子母神はその叫び声を聞くと身体を強張らせながら固まり、動けなくなる。

同じく後ろに立っていた天魔も動けなくなっていた。

鬼子母神はヘラヘラと笑いながら直立不動にその場に立ち尽くす。

 

 

「あらー、身体が動きませんね〜」

 

「ははっ! これで終わりではないぞっ!!」

 

 

少女はそう言いながら包帯の巻かれた右手を上にあげる。

少女が腕をあげると空模様が悪くなり、鬼子母神の頭上あたりを中心に灰色の雲が集まってくる。

 

 

「な……なにこの妖力はっ!?」

 

 

未だに動けないでいる天魔は、空を見上げながら目を見開き、黒雲から感じる禍々しいものに思わず声を上げる。

 

 

「よろこべ、この技はお前に初めて使うんだからなっ!!」

 

 

少女はそう言いながら上げていた手を鬼子母神に目掛けて、振り下ろす。

 

少女が手を振り下ろすと禍々しい黒雲がピカリと光り、光の柱が大きな音を立てながら鬼子母神目掛けて降り注いだ。

そして、一本の光の柱……雷が一度落ちたら空に集まった黒雲は散り、元の青空に戻る。

落雷した場所は焦げ、チリ一つ残さず消しとばした。

 

「ちっ……これでは喰えないではないか」

 

少女は消し飛んだ後を眺め、舌打ちを打つ。

落雷により焦げた場所には直撃したはずの鬼子母神どころか、近くにいた天魔までもがいなかった。

本来は鬼子母神だけを殺るつもりだったのに、天魔まで殺ってしまったら意味がないと少女は思った。

しかしーー

 

 

「ふえぇ〜、雷まで操っちゃうなんて貴女凄いですねー」

 

 

少女は声が聞こえると顔を歪め、声が聞こえた方に視線を向ける。

少女が向けた視線の先には天魔を脇で抱える鬼子母神。

彼女は近くの木の枝に飛び移っており、黒焦げになった地面を眺める。

 

 

「く……生きていたかっ!」

 

 

少女はそう言いながら鬼子母神の方に右手を向ける。

鬼子母神は何かに勘付き、枝から飛び降りる。

 

 

「ほうほう、氷まで……」

 

 

鬼子母神がそう言いながら先ほどまでいた木の枝を見ると、自分の立っていた枝が凍っていた。

 

 

「背中から手を生やしたり、影から出てきたり、雷や氷を操るなんて初めて見る妖怪さんですねー」

 

「斬乂……こいつは私の部下を殺して操ったり、首が取れても生き続ける様なやつよ。あと、そろそろ下ろせ」

 

「ほうほう、それはまた面妖な」

 

 

鬼子母神が少女の事を感心する。

天魔はというと少女を睨みながら、鬼子母神に向かい未だに脇に抱きかかえられていることに抗議を立てる。

鬼子母神はやれやれ、という顔をしながら天魔を下ろし、再び少女と向かい合う。

 

 

「えーと、今頃ですが貴女のお名前は?」

 

「死に行く奴に教えるわけないだろ……」

 

「まだ勝てる気でいるのには感心しますがー、貴女は明らかに経験不足です。このままでは勝てませんよ?」

 

「勝つんじゃない……殺すんだ……」

 

「んー……、いくら言っても無駄そうですね〜」

 

 

鬼子母神は少女の頑固さに溜息を吐く。

そして、鬼子母神はこの戦いで初めて自分から攻撃を仕掛けようと構える。

 

 

「貴女の本気はわかりましたー。千樹 斬乂、参りますっ!」

 

 

鬼子母神はそう言うと、勢いよく地を蹴り少女に向かって駆け出す。

少女は駆け出してきた鬼子母神に焦った表情を見せながら、包帯の巻かれた右手を向ける。

 

しかし時既に遅し、鬼子母神の拳は少女の腹にめり込んだ。

 

そして少女は殴られた勢いで後方に吹っ飛びかけたが、鬼子母神が吹っ飛ぶ前に、伸ばしていた少女の右手を掴む。

そして、殴る。

顔へ腹へ、鬼子母神は少女の腕を掴んでいない方の手で少女に追撃を喰らわす。

少女はなす術がなくひたすら殴られ、呻きながら鬼子母神の拳を耐える。

 

 

「これでー、終わりでーすっ!」

 

 

鬼子母神が少女の手を掴んだまま、勢いよく背負い投げをし、少女の身体を地面に叩きつけた。

地に叩きつけられた少女は僅かな空気を口から出すと同時に血も吐いた。

 

少女が叩きつけられた場所は小さなクレーターが出来ており、如何に鬼子母神が少女を力強く投げつけたのかがわかる。

 

 

「わかりましたかー? これが私と貴女の差です。ちょっと私が本気出しただけで貴女はこのザマなんですよー」

 

 

鬼子母神は倒れる少女を見下ろしながらそう言う。

少女はそう言われると舌を打ち、再び起き上がろうとした。

 

「やめておいたほうがいいですよー。感触的に骨が何本か言ってると思いますし」

 

「かっ、それがどうした……。こちとらお前らと身体の仕様が違うんだよ……この程度……」

 

少女はフラフラになりながら立ち上がろうとするが、すぐにその場に倒れ込み尻餅をつく。

そしてはあはあ言いながら息を吐く。

 

 

「ちっ……下の雑魚相手に妖力を使いすぎた……。やっぱ雑魚でも良かったから喰っときゃよかった……」

 

「なにブツブツ言っているのかはわからないけど……貴女、この後どうなるかわかってるのよね」

 

 

少女が小言を呟き悔いていると、今まで見物していた天魔が少女を見下しながら睨む。

 

 

「はっ……なんだ? 牢に入れられ慰み者にでもなるのか……。そりゃいいな、一種のハーレムだ。どうだ天魔、彼氏いない歴年齢のお前には羨ましいだろ……」

 

 

天魔はそう言いながらカチンとくる。

この状況でも舐めてくる少女を見て天魔は今にも殴りつけそうだ。

 

 

「貴様……、これだけの程をしていていけしゃあしゃあと……」

 

「黒羽ちゃんには私がいるので彼氏はいりません」

 

「斬乂ぇっ! ふざけている場合じゃないわよっ!」

 

 

鬼子母神は天魔に怒られしゅんとなる。

 

「はっ、たかが犬っころ百十二匹と鴉を五十六羽殺しただけだろ……」

 

少女はニヤリと笑い天魔を見つめる。

しかし、息切れを起こしており余裕は全くない。

 

妖力も今の戦いに加え、何人もの天狗を殺し操っていたおかげで殆ど残っていないので少女は正真正銘の大ピンチだ。

さらに妖力が切れたからか今まで妖力で操っていた天狗らも倒れ、元の死体に戻っている。

それ故、今まで死体の相手をしていた大天狗や鴉天狗、白狼天狗らが少女と鬼子母神や天魔を囲むように、少女を睨み剣を構えている。

 

 

「な……貴女そんなに……」

 

 

天魔がそう呆然すると、周りに立つ天狗らが殺せや消えろなどの罵倒を少女に浴びせる。

少女はその様子を見てくく、と鼻で笑う。

 

 

「な、なにがおかしいのっ!?」

 

「いや、私を動けなくしたのはそこの鬼なのに、私に手も足も出なかった天狗共は終わった後に声を上げ責めるだけとは滑稽だなと思ってな」

 

「あ……あなた、馬鹿にしてっ!」

 

 

天魔はそう叫び、少女の頬めがけ平手を打とうと手を振るう。

少女はニヤニヤと笑い、天魔の慌てる様子を見て滑稽に思う。

所詮、天魔もただの頭の悪い妖怪なのだと。

そして少女は来る平手の衝撃に備え目を閉じる。

 

 

パチンっーー

 

 

その頬を叩く音は少女を罵倒する中で虚しく響いた。

 

しかし、叩かれたのは少女ではない。

天魔が手を振り下ろそうとした時に少女の影から出てきた別の人物であった。

 

 

「な……」

 

 

天魔や周りの天狗はのみならず、本来叩かれるはずの少女も目を見開く。

 

場は突然と現れた少女に沈黙する。

少女の代わりに叩かれたのは少女の影から出てきた別の少女。

彼女は肩にかかるほどの黒髪で、少女と同じ様に白い着物を着ている。

そんな彼女が少女を守る様に抱きしめ、天魔の平手を食らったのだ。

 

 

「あ……茜っ!? なぜ出てきたっ!!」

 

 

少女はそう言いながら彼女を……虚ろな目をした少女の頭を抱きかかえ、周りにいる天狗らから彼女の身を守る様に胸元に引き寄せる。

先ほどと違い少女は焦りを見せている。

その姿に先程までの余裕は一切なかった。

 

そんな様子を見て天魔は思いついた様に笑い、少女らを見下ろす。

 

 

「ふふ……、どうやら貴女にとってその女は大事な者の様ですね」

 

「……茜になにをするつもりだっ!」

 

 

少女は天魔の言葉に叫ぶ。

天魔はその様子を見てさらに笑う。

 

「どうしましょうか……首を切られても死なない貴女の代わりに切り刻んでもいいし……先ほど貴女が言った様に牢に閉じ込めて慰み者にするのもいいかもしれないわね」

 

「そんなことを茜にやってみろっ、殺すぞ!!」

 

「おや、貴女は自分の心配でもしたらどうですか?」

 

 

天魔は笑みを浮かべ少女を睨みつける。

内心、天魔は勝った、と思い少女を惨めに思う。

どうやらこの女は少女にとっては大切な存在らしい。なら、少女の代わりに罰を与えるのが一番少女を苦しませるのにはいいのかもしれない。もちろん少女の方にも直接に罰は与える。そして先ほど与えられた屈辱を今こそ、と天魔は思う。

天魔は少女に戦いには負けたが勝負には勝った気でいた。

しかし…

 

 

「あれー、黒羽ちゃんなに言ってるんですかー?」

 

 

少女と天魔のやり取りを今まで黙って見ていた鬼子母神が首をかしげる。

 

 

「……なにを言っているのかしら斬乂?」

 

「なにをってー……、その子は私が倒したんだから私のものじゃないですかー?」

 

 

鬼子母神がそう言うと顔を真っ赤にして天魔は鬼子母神に怒鳴りつけた。

 

 

「なにを言ってるのっ! 今回はこいつのせいでみんな酷い目にあったのよ!? 落とし前をつけさせなきゃみんな納得しないわっ!!」

 

 

天魔がそう言うと周りにいる天狗らも声を上げて同意する。

しかし、鬼子母神は天魔がなにを言っているのかを理解できないのか首を傾げる。

 

「でもー、それは死んだ子が弱かったからじゃないですかー?」

 

「な……貴女、私の部下の死を愚弄する気!?」

 

「そんなことないですよー。けど、戦いのなかで死ねて彼らも幸せじゃぁないですかー?私なら幸せですよー?」

 

「っあ、あんたら鬼と一緒にしないでちょうだいっ!?」

 

 

鬼子母神は二ヘラと笑いながら言うが、天魔はその態度が気に入らず、相変わらず顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

そして少女はその間に二人の様子を見ながら、自身の影から出てきた少女の頭に触れ、自身の影の中にもう一度戻す。

少女がもう一人の少女が完全に影に入ると、もう安心だと言わん様にホッとする

そして思う。

今なら逃げられるのではないか、と。

 

 

「ならわかりましたー。黒羽ちゃんの代わりに私がこの子に罰を与えます!」

 

 

少女は自身も自分の影に入って逃げようとすると突然、鬼子母神に肩を掴まれる。

いきなり肩を掴まれた少女はびくっと身体を強張らせた。

そして少女は次の言葉を聞き、完全に再起不能になった。

 

 

「私がこの子を慰め者に使って毎晩可愛がりまーす。今日からこの子は私の飼猫(ペット)です!」

 

 

鬼子母神は二ヘラと笑いながら少女の頭に頬を埋める。

そして少女はその言葉を聞くと、理解の不明さに頭の中が真っ白になった。

 

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