ファンタジーな魔法って言わなかったっけ?   作:いつのせキノン

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望まれぬ“死”

 

 その日も、いつも通りの日常が続く。そう思っていたのは確かだ。

 

 

 

 

 

「……ええ、はい。警戒はしてますが、今のところ手掛かりは全く……、はい、はい。ありがとうございます」

 

 輪廻メグルは夜の海鳴市上空にいた。

 箒に器用に立って、二度折れた大きなとんがり帽子と、藍色のローブ。右手にはケータイを持って、誰かと話をしていた。

 

「……そうですか。でも、対策はとっていたのでしょう? ………………ああ、良かった。……はい、僕の方も対策はしてますから、心配には及びませんよ。万が一でも、少し活動頻度が下がるくらいです。……はい、では、また」

 

 その声音は、普段よりかは親しげな、打ち解けた者との会話に聞こえた。

 メグルは電話を終えて懐にケータイをしまい込み、ふぅ、と一つ溜息を吐いた。

 

「……あまりよろしくない兆候だよな……、」

 

 まだ賑やかな電光の浮かび上がる海鳴都市部を見下ろし、呟く。

 彼が懸念していることとは、とある知り合いからもたらされた情報だ。

 最近、同じく魔法に精通している知り合いたちが謎の人物たちに襲撃される、という事件が相次いでいた。目的は全くの不明だが、とにかく異常な力を使うとのことで、メグルにまで連絡が回ってきたのだ。

 その“力”というとのは、メグルにとって違和感を感じるものであった。

 超短文詠唱と、戦闘に特化した力。三角形の陣が特徴的、と言われた。

 これと大きく一致するのが、ミッドチルダ式の魔法である。そのミッドチルダ式は魔法陣が円形だったが。

 

「……管理局からもう少し情報を貰っておくべきだった」

 

 後悔を漏らし、どうしたものかと考える。

 現状、その三角形の陣を扱う力がミッドチルダ式に通じるものなのかは判断がつかない。情報が不足しすぎているのが確かだ。

 もし仮に、同系統の魔法を使う者たちの仕業だとすれば厄介極まりない。管理局には要請を送るべきだろう。

 

 無言で、懐にある携帯端末に指先を当てた。

 そこにあるのは、クロノから貸与されたアースラとの通信機器だ。一度連絡を入れれば、すぐさまクロノらが反応するだろう。

 

「……杞憂だといいんだけどな……」

 

 とりあえず、報告程度はしておいてもバチは当たらないか。そう思って、コールを――――、

 

 

 

 

 

「――――――――アイゼンッッッッ!!!!!!!!」

「ッ!?」

 

 濃厚な殺気に、思わず端末を投げ出して箒から飛び降りた。

 

 刹那、顔のすぐ横を掠める赤い何かが、端末を破壊していった。

 

「……捕捉された……っ」

 

 重量に引かれ地上へと落ちながら、メグルは夜空を睨みつけた。

 先程まで彼がいた場所には、赤い服を纏った年端もいかない少女がいた。その手にハンマーを持ち、メグルを同じく睨み返している。

 

 やはり、と心の中で毒づく。間違いなく、先程の情報と特徴が一致した。兎、赤、ハンマー、少女……。

 

「……逃げるか」

 

 そうなれば、あまり状況はよろしくない。予想ならば、あと二人と一匹は確実にいる。

 

 身体を反転、真下へ滑り込んで来た箒に着地し、都市部のビル群内へ飛び込んだ。

 

 瞬間、ねっとりとした空気を肌で感じると同時に、世界の色が褪せてゆく。

 間違いなく、結界だ。それもミッドチルダ式に似た、戦闘特化のもの。

 

 眼下の人々が結界から弾き出されてゆく。

 いよいよもって、世界にはメグルが一人となった。

 

 大きな交差点の真上で、急ブレーキ。

 油断なく周囲を見渡して、四方向、道路のそれぞれに一つずつ影を認めた。

 

「こそこそ逃げんなよ」

 

 先程の、赤い少女。

 

「……大人しくしていてくれ」

 

 長身の、剣を構えた女性。

 

「座標捕捉。いつでもいけるわ」

 

 緑色の、糸のようなモノを構える女性。

 

「………………………………………………………………」

 

 無言でメグルを見やる、狼。

 

「……最悪だ」

 

 思わず悪態をついて、状況を語る。

 文字通りの四面楚歌。事前に情報を得ていたとしても、これはいただけない。

 

「……で、どちら様? 生憎と襲われる趣味はないんだけど」

 

 最悪ならば、せめてペースをこちらに手繰り寄せる必要がある。飲まれる前に、口を開いた。

 

「すぐに終わる話だ。大人しく、何も言わずにいればそれでいい」

「……説明になってないんだけど……」

 

 げんなりと言い返す。

 とにかくこちらに従えという意思表示。これでは交渉ではなく脅迫だ。

 

「……最近の襲撃事件は貴方たちの仕業でしょう。しかも狙った先は尽くが僕と同じ……何を欲している?」

 

 金、ではない。だったら億万長者と呼ばれる者を脅したほうがよっぽどいい。

 そうなれば、【魔法使い】を襲う理由なんてものは、蓄積されてきた技術と記録くらいか。

 しかし、これまでの報告でそれらを奪われたという報告はなかった。

 むしろ、メグルと同じ【魔法使い】たちは、何もされなかったというのだ。

 

「それを教えることはできないの。恨んでくれて構わないわ」

 

 けれども、頑なに教えてはくれない。

 加えて、今の言葉でメグルは交渉が不可能だと判断を下した。この者達は不退転の覚悟で事を進めている。自分がどうなろうと構わない、という、ある種特攻に近い。

 

「……そう。じゃあ、さよならだ」

 

 故に、無視。

 杖を懐から取り出すと同時に、札をばら撒く。

 

 瞬間、爆音と閃光が幾重にも重なった。

 更には煙が立ち込め、視界を塞いでゆく。

 

「チィッ!!」

「ヴィータ、早まり過ぎだ!!」

 

 開戦の合図となったそれを契機に、全員が一斉に動き出した。

 赤い少女は舌打ちをしながらも鉄球を立て続けにハンマーで叩き、剣士の女性の制止も聞かずに煙の中へと突貫。

 

「探知するわ、ザフィーラ、援護を!!」

「……承知」

 

 全体を俯瞰する位置にいる女性は三角形の魔法陣を展開。狼は言葉を発し、いつでも飛び出せるよう姿勢を低く保つ。緑の風が低く地面を凪いで、煙を煽ってゆく。

 

「――――捕まえたッ!!」

「オオオアアァァッッ!!」

 

 捕捉と同時に座標を算出。息のあった連携で、狼は力強い咆哮と同時に地面から白い楔を大量に撃ち出した。

 

「傷を負わせたぞ!!」

 

 煙から飛び出してくる黒い影を追って狼が叫ぶ。

 すぐさま地を這うように飛んで追い掛けるのが赤い少女と剣士の女性だ。高速で遠ざかるメグルへ、肉薄しようと迫る。

 

 対して、メグルは最悪すぎる展開に歯を食いしばる他ない。

 ローブはボロボロ、体中に切り傷やら刺し傷やら。致命傷は咄嗟に防いだが、凡人が耐え抜くにはあまりに酷と言えよう。

 何より、脱出用に仕込んでいた転移魔法が発動していないのが焦りを加速させた。恐らく何かしらの干渉、もしくは空間的な妨害を受けている。

 万が一にあり得る、などと思っておきながら、いざ使えないとなればこの焦りよう。詰めと心構えが浅すぎたと自身を罵倒した。

 

 ここまで来ると逃げ切るには結界端まで移動し、壁に穴を空けるしかない。

 だが、こうもしつこく付き纏われてはまともな【魔法】も扱えない。準備不足が祟った。儀式魔法なんぞ、戦闘特化魔法の前には霞むのだ。

 

「フ――ッ!!」

「……ギッ……!?」

 

 剣が変形し、蛇腹状となって襲いかかってくる。その複雑な動きは、的確に退路を潰すような動きだった。

 もうメグルに上下概念など気にする暇はない。箒から一瞬手を離し、刃の間を小さく擦り抜ける。更に身体を捻って、重力に引かれながら落ちて回避――――、

 

「ガ、ッ!?」

 

 できなかった。

 横っ腹に鈍い痛み。身体が折れ曲がるほどの衝撃を受けて吹き飛び、刃の嵐に放り込まれた。

 痛みに思考が一瞬止まり、悲鳴を上げることも許されず、地面に落とされる。受け身も取れず、コンクリートに何度も叩き付けられ、ガードレールの植え込みにぶつかって、ようやく止まった。

 

「……ヴィータ、やり過ぎだ」

「はぁ? 別に生きてるからいいじゃんかよ。どうせシャマルが治すんだろ」

 

 空中から地面に降り立った二人が警戒しつつ、倒れ伏すメグルの下へと近づいた。

 時折痙攣する身体と、じわじわとその元に広がってゆく血溜まり。どう見ても重症、下手をすれば失血死を免れないほどの怪我であると見て取れた。

 

「蒐集を――――、ッ!?」

 

 しかし、そこまでだった。

 咄嗟に二人はその場を離脱して飛び上がり、桃色の光を回避した。

 

 が、一度の回避では足りず、逃げる二人に更に魔弾が追い縋った。

 

「うぜぇッ!!」

 

 少女は吠えるようにハンマーを振るい、ソレを撃退。剣士の女性も冷静に切り裂いて事なきを得た。

 

「へっ、ちょうどいいじゃんか。今日は稼げるな!!」

「……………………………………………………………………………………」

 

 赤い少女は、その魔法を使ってきた相手を見据え、不敵に笑ってみせた。

 

 けれども、その相手は――――高町なのはは、微塵も笑っていなかった。

 

「……………………どうして、こんなことをするんですか」

「うるせー。必要なことだからやるんだろうが」

「……必要だからって、人を傷付けるんですか」

「そうだよ。魔力を奪うんなら、動けなくした方がいいだろ」

「……それは……話し合いで、解決できることじゃないんですか」

「急いでんだから仕方ないだろ」

 

 赤い少女の答えに、なのははレイジングハートを強く強く握り締めた。指先が白くなって、柄に血がにじむほどに。ギリギリと、歯を食いしばって、赤い少女を睨みつけた。

 

「……シグナム、先に蒐集しろよ。アタシはコイツの相手だ」

「……そうか」

 

 剣士の女性は、赤い少女からの言葉に一つだけ頷いて下がった。なのはの相手をする気はないらしい。

 

「…………やめて、ください」

「あん?」

「これ以上、メグルくんに、酷いことをしないでください……」

 

 レイジングハートを静かに構える。

 これ以上のことをするならば、容赦はできないと。彼女は言葉にせずとも、姿勢で示した。

 いや、それよりも。なのはは己の内で暴れ回る激情を必死に抑え込もうとして、耐えているようにも見えた。

 

 だが、

 

「止められるモンなら止めてみろよ」

「――――――――――――――――――――――――」

 

 

 

 耐えられなかった。

 

 

 

《Quick Buster》

 

「なン――っ!?」

 

 速射砲撃が、赤い少女の居た場所を抉った。

 咄嗟にかわさなければマトモに食らっていたであろう。

 

 だが、赤い少女は冷や汗が止まらなかった。

 威力が速射砲撃のモノではない。当たりどころが悪ければ一撃必殺に相当しかねないほどの火力であることを、瞬時に見抜いた。

 

 なのはの目は、充血するほどに見開かれ、ただ一人、少女だけを眼中に入れている。

 

《Accel Shooter》

 

 八つの魔弾が即座に生成、一斉に射出された。直線的なものから、退路を塞ぐもの、フェイク、タイミングをズラした魔弾。

 

「コイツ……、うわぁっ!?」

 

 少女は悪態をついてシールドを張るが、背後に回り込んだ一撃に体勢を崩した。

 その一撃は実に重い。牽制どころではない、全てが本命だ。

 倒れかけ、それでも体勢を立て直すが、少女の帽子は弾かれた。

 

 そして、魔弾の一つが容赦なく帽子を貫いた。

 

「――――テメェ……ッッ!!」

「……ごめんね」

「謝って済むことかよ!!」

 

 なのはの謝罪は短かった。その態度にますます激昂する少女。

 それでも、なのはの表情は固かった。普段では考えられないほどに。

 

「おらァッッッッ!!!!!!」

「ぐぅッ……!!」

 

 少女は上段からハンマーを叩き付ける。

 なのははそれを真正面からシールドで受け止める。

 両者が歯を食いしばって、むりやり力で押し込んだ。

 

 それでも、互角――――いや、僅かに、なのはが優勢になった。

 

「な、んで――――ッ!?」

 

 直後、赤い少女の腕と脚にバインドが発生。ゼロ距離で全くの不意打ちになす術もなく捕まった。

 

 なのはは無言でレイジングハートを構えた。

 同時に魔力をチャージ。杖先へと魔力が収束してゆく。

 

 つまりは、ゼロ距離での砲撃接射だ。

 

「待っ――――――――!!!!」

 

《Divine――――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずるり、と。音がした。

 

「――――――――――――――――ぁっ?」

 

 その違和感に、なのはは思わず声を上げた。

 

 眼前には、桃色の淡い光が一つ。

 それを支えるように、()()()()()()()が、一つ。

 

「ぁ、ぇ……っ?」

 

 カラン、と、レイジングハートが地面に落ちた。

 視界が明滅し、体中から力が抜けてゆく。

 あまりに非現実的で、何が起こっているのか全く理解が追いつかなかった。

 

 

 

「チッ、クソっ!! シグナム、こっちが先だ!!」

 

 赤い少女は霧散したバインドから解放され、悪態を吐き出しながらなのはを睨んだ。殴ってやりたいと顔に書かれているが、それは強く抑え込まれている。

 苛々を隠そうともせず、しかし必死に表に出さないように、赤い少女は空中に手をかざした。

 

 瞬間、現れるのは分厚い本。十字架が付いた、あからさまに地球の物ではない、魔導書。

 

「……シャマル、始めるぞ」

「ええ、お願い」

 

 短く、ビルの上に立っている女性へと告げた。

 

 

 

 刹那、

 

「ぁ、ッ、ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

  奪われてゆく。

 リンカーコアから、強制的に、魔力が本へと吸い上げられてしまう。

 

 頭からつま先まで、あらゆる体内から何もかもを掻き出されるような感覚。痛みにも似た得体の知れない感触。

 それはまるで拷問にも思えて、その一瞬は永遠に感じるほど……。

 

「――、ぁ、……、」

 

 やがて、浮かび上がっていたリンカーコアは消滅し、生えていた腕も元に戻る。

 力なく、なのはは仰向けに倒れた。

 指先の感覚すら曖昧で、まともに喋ることもできない。身体の奥底、神経ごと縛り付けられてしまったような痺れが今もなお続いている。

 

「へぇ、結構貯まるな」

 

 そんなことは露知らず、赤い少女は宙に浮くその本をまじまじ眺めていた。

 先程まで空白だったページはその多くが埋まり、残る白紙も半分を折り返した。

 

「よし、次はソイツだな」

 

 なのはから視線を外し、未だに起き上がれすらしないメグルへと向き直った。

 

「……や、め……、」

 

 視界端に映る光景に、なのはは手を伸ばした。伸ばそうとした。でも、身体は言うことをきいてくれなかった。

 

 既にメグルは死に体だった。

 なのはから見ても、呼吸をするのが精一杯なほど、彼の四肢に力はない。目も虚ろで、何も見えていないのだ。

 

「漏れ出してる魔力はやはり桁違い……だが、魔導師ではないな。また空振りに終わるやかもしれん」

「そうは言うけど、やるだけやりましょう。もしかしたら少しは足しになるかもしれないわ」

 

 メグルが身体をひっくり返され、仰向けに。微かに浅く上下する胸が、かろうじて彼がまだ命を繋いでることを示した。

 

 ――――だめだ。

 

 なのはは叫びたかった。

 あの感覚は、何もかもを抜き取らるてしまう感覚は。

 ただでさえ死ぬかと恐怖を抱いたほどなのに。

 もし、今の状態のメグルが、そうなってしまえば。

 

「蒐集、開始」

 

 無情にも、なのはの意思は無視された。

 魔導書が白紙のページを開き、微かに光り始める。

 

 一瞬、ビクッ、と。

 大きくメグルの身体が痙攣した。何かを拒絶するような、異常なほどに大きな動きを見せた。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンッ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ――――――――、」

 

 

 

 メグルの身体が、()()()()()()()()()()()()()()

 

「はッ?」

「っ、シャマル!!」

 

 文字通り、膨れ上がった胸から空気が抜けるように……それどころか、空気と共に、何もかもが中から飛び出した。

 

 ばちゃばちゃ、ぐちゅ、ぼとっ、と。

 ()()は本来人間の体内におさまってなければならないパーツで。

 千切れ飛んだそれは、無惨にもコンクリート二叩き付けられ、飛散する。

 噴き出した血が、魔導書を、なのはを、ヴィータを、濡らした。

 

「待って、闇の書が止まらない……!?」

 

 メグルは、動かない。血溜まりの中に沈み、もう呼吸すら、していない。

 

 

 

「あ、ああ、」

 

 

 

 

 

 死んだ。

 

 目の前で。

 

 

 

 輪廻メグルは、死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘、何が起きてるの!?」

 

 魔導書はエラーを吐き出す。

 蒐集の停止を受け付けない。

 

 いや、それよりも。

 

「何で、リンカーコアの魔力は空にしたはずだろ……!!」

 

 涙を流しながら地面にへたり込むなのはを中心として吹き荒れる魔力風に、その場の全員が狼狽していた。

 魔導師の心臓はリンカーコアだ。魔力を生成する器官がなければ、ただの人間でしかない。

 

 だから、魔導書は魔力を吸い尽くした。たかが数分で元に戻るはずがないほどに。

 

 

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 レイジングハートから鳴り響く警告音すら、音に掻き消されてしまう。

 

 徐々に、その魔力の嵐はなのはの眼前へと収束していく。魔法陣は、現れない。

 

「ほ、砲撃!? 魔力を無理矢理掻き集めて……!?」

「シャマル、離脱だ!!」

「っ、了解!!」

 

 三人はすぐさま身を寄せあい防御陣形。狼は三人の前に立ち、シールドの準備。

 

「座標設定……、転送開始!!」

 

 

 

 それは間一髪だった。

 

 

 

 前触れもなく、その魔力の塊は解き放たれた。

 何色にも染まらない、純粋魔力が圧縮された、砲撃。

 

 それは魔法ですらなかった。

 

 ただただ遮二無二掻き集められた魔力が押し出されただけだ。

 

 それでもその破壊力は常軌を逸した。

 

 

 

 三人と一匹は、その圧倒的暴力の前から何とか脱出した。()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 砲撃は、何もかもを破壊し尽くす。

 道路を抉り、ビルを根本から薙ぎ倒し、街灯も樹木も例外なく空へと吹き飛ばした。

 

 やがてソレは結界の端へと到達し、あっさりと、結界を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ、あ、あぁ……、ぁ……」

 

 取り残されたのは、なのは一人だけ。

 道路の上に一人、真っ赤に染まったバリアジャケットを纏って。

 

 ただ一人、泣き崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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