ファンタジーな魔法って言わなかったっけ?   作:いつのせキノン

3 / 24
魔法少女と魔法使い

 

 謎の少女の襲撃があった翌日。私、高町なのはは放課後の図書室に向かっています。多分だけど、輪廻メグルくんがいるだろうから。

 昨日はアリサちゃんやすずかちゃんがいたからうやむやになって別れちゃったけど、今日は放課後のうちにメグルくんの事をちゃんと聞かないと。そして、私やユーノくんの事もしっかり説明ないといけない。少なくとも私はそう思います。

 

 時々しか利用しない図書室の扉を開けて中に入ると、何だかいつもと違った景色に見えました。

 メグルくんは……良かった、今日もいるみたい。噂通り、テーブルの一角で黙々と分厚い本を読み進めてます。何読んでるだろう……って観察してる暇じゃなかったの。声かけないと。

 

「メグルくん、ちょっと今いいかな?」

「……ん……高町?」

 

 テーブルの合間を縫って肩を叩くと、いつものメグルくんが無表情のままこちらを怪訝そうに見てきました。

 

「……話がしたい、と?」

「うん。昨日のこととか、私のこととか……いいかな」

「……わかった。場所を移そう」

 

 そう言ってメグルくんは静かに本を戻して外へ。私もそれに続きます。

 

 やって来たのは屋上。今は皆部活やら帰宅やらで私達以外に人影はありません。

 いつもアリサちゃんやすずかちゃんとお昼を食べてるベンチに隣同士で座り、しばらく無言になりました。

 

「……何から、話せばいいのかな」

「……さて、何だろうね。取り敢えず確認なんだけど、これから話すことは魔法のことだね?」

「うん。そのつもり」

 

 するとメグルくんは「じゃあ、」と言って、昨日も使っていた紙を1枚ポケットから取り出して小さくぶつぶつと何かを言って、それを私とメグルくんの間に置きました。

 

「あの……これは?」

「……簡易呪符。僕達の話し声が拡散しないようにしてる」

 

 つまりは結界みたいなものなのかな。魔法を使った兆候は全然感じられなかったけど……感知できないくらい上手に魔法を使ったのか、それとも別のプロセスの魔法なのか。私にはまだまだ理解できそうにありません。

 

「……まず最初に、僕から質問させてほしい。魔法のこととか。いい?」

「あ、はい、どうぞ」

 

 そこからはメグルくんの質問に私が順番に答えていきました。メグルくんは本当に細かいところまで質問をしてきて、私が言おうと思っていたこと、抜けていたところまで全部的確に聞き出していました。私の魔法のことも、ロストロギアのことも、私の知ってる範囲で全部のことを教えました。

 時折メグルくんは少し黙り込んで何かを考えていました。きっと、私には想像も及ばないところでの事を思考してるんだと思います。

 

「……わかった。まとめると、高町の扱う魔法は、その発祥の地域で科学として一般に認知されたモノになると。また、僕の使う魔法は全く別系統の魔法になる。そうなると高町は【魔導師】で僕が【魔法使い】と分けられることになるね」

 

 確かに、昨日見たメグルくんの魔法は不思議でした。私やユーノくんの使うミッド式は魔法陣の発生に伴い魔法の効果が現れますが、メグルくんが使う魔法は魔法陣が出現せず、また個人特有の魔力光もありませんでした。

 

「……それについては僕の魔法が個人に依存しないものだからね。僕の魔法は五大元素に起因するから、状況や環境に左右されることがないんだ」

 

 メグルくんの言う五大元素とは、“火”、“水”、“風”、“土”、“(から)”の5つ。昨日の子猫を閉じ込めた土の壁もこれなんだとか。詳しいことは、ちょっとよくわかりませんでした。沈むものとか浮かぶものとか、話が抽象的でイマイチです。

 そして触媒魔法。これは今私とメグルくんの間にあるような、道具を使った魔法のこと。メグルくん曰く、道具の材料さえあれば理論上無限に魔法を使えるみたいです。私の場合は持ってる魔力が空になっちゃうともうダメなんだけど……。

 それに五大元素の魔法も魔力は世界が持つ普遍的な純粋魔力を使用するから自分の持つ魔力は使わないんだとか。とってもエコだね、と言ったらメグルくんは終始微妙な表情でした。私からしたら結構便利だと思ったんだけどな。

 

「……便利な事ばかりじゃない。高町みたいに魔力さえあればどうとでもなるって程、簡単じゃないんだ、この魔法は」

 

 とても長い時間をかけての準備がいる。強力な魔法――大魔法を行使するなら尚更、と。苦笑しながらメグルくんは言いました。それは自虐なのかな、なんて思ったりして……けれど、何か、違う気がします。

 

「それで、これからのことなんだけど……」

「……ああ。僕がこれから、そのジュエルシードをどうするか」

 

 それからはしばらくの無言。たっぷり1分くらい。そしてようやくメグルくんは口を開きました。

 

「……そう、だね……。取り敢えず君に預ける方向で調整してみるとしようか。後はあのフェレット、だっけ。その子からも話を聞きたい」

「ユーノくんとだね。それじゃあ今から家に来てもらえればすぐにお話できるよ」

「……今から、ね……」

 

 メグルくんはふと腕時計を確認。そこから少しだけまた黙って何かを考えてるみたいです。

 

「……そう言えば、霊脈の話をしてなかった。3分前だし丁度良いから、ついて来て」

 

 直後でした。どこからともなくローブが現れてきてメグルくんがそれを羽織り、ローブの中から昨日も被っていた大きな帽子を取り出しました。まだ斬れ込みが残っているのが、ちょっと痛々しいかも。

 

「……君は先に上空へ。僕は靴を履き替えたらすぐに行くよ」

「あ、はい……え、えぇっ!?」

 

 言うや否やメグルくんは屋上から飛び降りちゃいました。箒がないと飛べないって言ってた筈なんだけど、大丈夫かな……。

 慌てて柵の隙間から下を覗くと、メグルくんはいつの間にか竹箒に乗ってゆっくりと降下していました。周りに数人くらい人がいるのに、気付かれてない……何故なのかは私にもさっぱりわかりません。

 取り敢えず無事だったのでホッと一息。それからバリアジャケットを展開して屋上から飛び上がりました。

 

 雲と同じくらいの高さで待っているとすぐにメグルくんも飛んできました。昨日と同じく立ったまま、バランス感覚が優れてます。運動音痴の私とは大違いです。

 

「……さて。そろそろ17時になる。この時間は海鳴市の下を通る霊脈が最も活発化する時間だ」

「霊脈……?」

「……霊脈って言うのは、特殊な力場の流れって捉えて欲しい。高町の知る魔力が地下水みたいに流れてる、と思ってもらえればいい。一概に魔力だけじゃなくて、魔力を含む、様々な要因になる幻想的な力だ」

 

 時計は間もなく17時。残り10秒。

 

「……霊脈が活発化すると、特殊な波動が海鳴市じゅうに拡散する。それに呼応し青い宝石、ジュエルシードも活発化することがあるんだ。必ずじゃないけどね」

 

 来るよ、と一言。時計の秒針が12に重なりました。

 

「…………………………………………」

「……………………?」

 

 沈黙。しばらくしてメグルくんはローブの中から水晶球を取り出してじっとその中を見つめ……大きく息を吐きました。

 

「……今日は、ジュエルシードは空振りだね」

「そ、そっか……」

 

 肩を竦めて苦笑。上手くいかないもんだ、と言いました。釣られて私も苦笑。

 

「……まぁいいや。取り敢えず、今後ジュエルシードを集める時は17時を目安にするのも良いってことだ。被害が小さく収まるのならいくらジュエルシードを回収されようが僕は気にしないし」

「うん、ありがとう。参考にするね。……あ、じゃあ私の家に来る? ユーノくんもいるし」

「……そうだね。何も予定はないし、話を聞かせてもらおうかな」

「じゃあついでだしこのまま行こっか。その方が早いし」

「……つかぬことを聞くけど」

「うん……?」

「学校の荷物は?」

 

 あっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノくんただいま~」

「おかえり、なのは」

 

 家に帰って自室へ。休んでいたユーノくんが棚の上のカゴから起き上がって迎えてくれます。これも慣れ始めてきました。

 

「あれ、メグルくん? 入らないの?」

「……ん……あ、あぁ、失礼します」

 

 後ろから来ていたメグルくん。扉の前で少し立ち止まって、少し遠慮がちに入って来ました。そんなに遠慮しなくていいのに。

 

「……なんでそんなに警戒してるの?」

「……いや、そんな、警戒って訳でもないんだけど…………うぅん、忘れて。こっちが久々にバカになってただけ」

「あ、もしかして女の子の部屋だから?」

「……それも、なくはない。まぁ最もな理由になると、僕の習性からかな」

「しゅう、せい……?」

「……そのことについても後で話そうか。まずは、その子と」

 

 メグルくんがカゴの上のユーノくんを指差して言いました。

 

「昨日ぶり、ですね。ユーノ・スクライアです。ユーノで大丈夫です」

「……輪廻メグル。好きなようによんでくれ。取り敢えず、座ってもいいかな」

「どうぞどうぞー。あ、今お茶持ってくるね」

 

 1度部屋を離れて1階のキッチンへ。冷蔵庫からお茶を出して、コップも用意してっと。

 

「あ、なのは。帰ってたんだ。おかえりー」

「ただいま、お姉ちゃん」

 

 お盆を探していると、美由希お姉ちゃんが入ってきました。タオルを持っていて軽く汗ばんでるのできっとトレーニングの帰りだと思います。

 

「お客さん?」

「うん。今お友達が来てるの」

 

 ……お友達? ……うん、多分、お友達。昨日知り合ったばかりで、お互いのことはまだ全然わかりきってないけど……。

 お友達、か。なれたらいいなぁ。メグルくんの魔法、私とは全然違って面白そうだし。

 

「お友達……って、すずかちゃん?」

「うぅん。今日はアリサちゃんもすずかちゃんもお稽古だから違うよ」

「へぇぇ、……それにしてもなのはがあの子達以外を連れて来るなんて意外だねぇ。男の子だったりして? ってそんな訳ないかー。なのはってば初だしネー」

「あー……そのぅ……」

「……………………えっ、何その反応……まさか男の子!? ボーイフレンド!? なのはが!?」

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ違うよ!? 違わないけど違うよ!!」

 

 何故だかお姉ちゃん、急に目を輝かせて興奮してます……。

 

「わぁお、まさかなのはが男の子を……すごいわねー成長したわねー。口で否定してても女の子が男の子を連れてくるなんて早々無いよ。しかもなのはがよ。こりゃあ一本取られたわー……。で、どんな子?」

「ふ、普通の子だよ? あと、本当にちょっと話があるってだけで全然、全然関係ないからね!?」

「えー、つまんないのー。あ、じゃあさじゃあさ、因みに名前は?」

「……輪廻メグルくん」

「…………どっかで聞いたことあるような…………あっ、あの確か学年主席の子じゃないっ?」

「そうだけど……」

「ビンゴぉ。流石、私の記憶力も捨てたモンじゃないわね。……でもなのは、その子とはクラス違うんじゃなかった? よく声掛けれたわね。勇気の賜物? なのははやっぱここぞって時に強気になるものね。将来の天才を連れ込むとは、グッジョブなのは!!」

 

 お姉ちゃん全然話聞いてないし……サムズアップはやめてほしいの……。

 

「え、えぇっと、それじゃあ私はお茶を出さないといけないのでこれで……」

「じゃあお姉ちゃんも付いて行こうっと」

「あの……一応聞くけどお姉ちゃん、何をする気です……?」

「なのはが目をつけた子がどんなイケメンかを見定めるためー」

「もうっ、だーかーらー!! メグルくんとはそんな関係じゃないし、そもそもお姉ちゃん汗かいてるんでしょ!? 汗臭いって思われちゃうよ!?」

「なぁッ……!? くぅぅ、見落としていたッ……まさか妹に気付かされるとは……麗しき乙女として不覚……ッ!!」

 

 麗しき、乙女……?

 

「待っててなのは、お姉ちゃんシャワー浴びてくるねっ」

「待たないからね?」

「バイノハヤサデー」

 

 すたこらさっさー、とお姉ちゃんはお風呂場へ。今日はお姉ちゃんいつになく暴走気味で困ります。いつもならお兄ちゃんが止めてくれるのに、頼みの綱は不在。ややこしくなる前にメグルくんとは話をしておかないとなの……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。