雪の王者   作:雪ノ王者

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出発地点、カノコタウン

——何故此処にいる!

 

わからない。わからないの!

 

——貴様はこの世界に居るべきでは無い。帰れ! 帰るのだ!

 

無理! どうやって帰ればいいの!

 

——お前はこの世界に害を与える。我の世界に。帰れないのなら——死ね。

 

嫌! 死にたくない! 死にたくないの! お願い、返して! 元の世界に返してよぉ! お父さん、お母さん、■■! 助け、て——

 

 

あれ? 此処は何処?

 

私は、誰?

 

私の名前は……何だっけ。

 

何か意味があったような……誰かが、名付けてくれた名前。

 

ん? 意味って何? 名前って? いや、何って何?わからない、どうして?

 

 

……わかった。私は死ぬんだ。此処で、さっきの生き物に。多分神様なんだね。

 

死ぬ。ごめんね、お母さん。ごめんね、■■。

 

■■? 誰だっけ……大切な人だったような……思い出せない。

 

でも、会いたい。とても会いたい。まだ、死にたくない。

 

死にたくないんだ!!!

 

そうだ、私の名前は——

 

 

『アスカ、大丈夫?』

「大丈夫、だ、け、ど、水を……おいしいみずを……!」

『全然大丈夫じゃないじゃん』

 

言いながら、私のリュックに飛び乗ってジッパーを開け、一生懸命ペットボトルを引っ張る可愛い生き物を見、ほっこりする。

十センチの身体に黄色いふさふさの毛、くりくりの目。バチュルだ。

流石に世界最小のバチュルに五百ミリペットボトルの運搬を頼むなんて無理があったか、と微笑ましい光景に笑みを漏らしながらよいしょっと立ち上がり、バチュルを摘む。

バチュルの抗議の声をスルーしながらおいしいみずを飲む。

 

『アスカ、カノコタウンってあれ?』

「ん? ああ、そうだよ、晃」

 

晃とは相棒のバチュルのことだ。

 

「……イッシュ地方、来ちゃったねぇ」

『来ちゃったねぇ、って、アスカがシンオウから逃げるようにこっち来たんでしょ』

「だってアルセウスってシンオウじゃん」

『まあね』

 

晃の脚を撫で、掌から肩へと移動させる。

さあて、降りるか。

 

『飛び降りるの? 飛行機から?』

「そうだけど? 何か?」

『怪我しないでね』

「もちろん」

 

そう、今私達は飛行機に居る。

本当は船が良かったのだが、今直ぐ出発、となると空の便しか無かったという悲しい現実がある。

 

「アララギ博士には連絡済みだから大丈夫、トウコ・トウヤは知るもんか、ベル、チェレン、Nもゲーチスも私には関係無い! だから大丈夫! よって降下ぁ!」

『ちょ、予告無しの命綱無しバンジージャンプは、嫌だぁぁぁぁあああああ!!!』

 

晃の絶叫をBGMに、私はカノコタウンへと飛び降りた。

 

 

「私はツタージャ!」

「じゃあ、私はミジュマルね!」

「ベル、勝手に決めるなよ。まあ、僕もポカブが良かったから良いけど」

 

私達はアララギ博士からポケモンを貰った。

三人で話しながら私の家を出て、アララギ博士の研究所へ向かう。

 

「こんにちは——って、あれ?」

 

ベルが挨拶しようとして止まる。チェレンと二人でベルを中に押し込み、自分も中に入った。

そして、ベルの視線の先のアララギ博士と、一緒に話している人を見る。

その子は私達よりちょっと上の年齢の見た目をしていた。半袖のTシャツにショートパンツ、レギンスとスニーカー、そして背負っているモンスターボールのプリントが入ったリュックサック。髪型は、肩下までのストレートな黒髪をポニーテールにしている。帽子は地味めなキャップ。肩には、バチュルの平均サイズから見ても小柄なバチュルが乗っている。

 

「——あ、到着したらしいですよ?」

 

少女は此方を見てそう言った。

アララギ博士も此方を見る。

 

「博士! ポケモン、ありがとうございます!」

「僕も大切に育てます!」

 

ベル、チェレンがアララギ博士に礼を言っていた。ワンテンポ遅れて、私も言う。

 

「アララギ博士、ありがとうございました」

 

アララギ博士は微笑んだ。

 

「良いのよ。それに、貴方達には色々協力して貰うしね。あ、紹介するわ、此方はカントー地方のアスカちゃんよ。お母様がポケモンの生態研究をしているんだけど、今度シンオウ地方へ行くから、その間イッシュを旅するそうよ。アスカちゃんも自己紹介して」

「アスカです。カントーのマサラタウン出身の十九歳。パートナーのバチュルはイッシュのポケモンだけど、イッシュに来たのは初めてで、それは晃も同じ。あ、晃っていうのはこのバチュルのこと。よろしく」

「よろしく! あ、えーと、何て呼べばいい?」

「アスカで大丈夫」

「ちゃん付けは?」

「無しで」

「OK、アスカ! 私はベル、こっちはトウコでその隣がチェレンだよ」

「うん。ほら、晃も挨拶しなよ」

「バチュ!」

 

あ、可愛い。

 

「ポケモン図鑑よ。アスカちゃんにもあげるわ」

「ありがとうございます」

「バチュッ!」

「はい、行ってらっしゃい。そろそろ行かなきゃカラクサタウンに着くまでに日が暮れちゃうわよ」

「そうなったら野宿の仕方を教えてあげるけどね」

 

アスカは旅したことあるのかな?

 

こうして私の冒険は始まった。

 




こんにちは、雪の王者です。
これからよろしくお願いします。
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