「んぅ……」
朝日が窓から差し込んでくる。
「ふぁぁ…こんなにゆったり寝れたのも久しぶりですね……」
ゆったりとした足取りで部屋の外へ出る。
廊下を進み、キリトの部屋をノックする。
「キリトさん、おはようございます」
「ツイタチか、おは……ってなんだよその格好!」
袴を下だけ履き、上はさらしである。
「起きたばかりなんで普通ですよ」
「上は着てくれ」
「仕方ないですね。わかりました」
アイテムから袴の上を出して装備する。
「お世話になりました。この借りはいずれ返させていただきます」
「それだと捨て台詞みたいだぞ?」
「……ふふ、それもいいですね。それではまた会いましょう」
ツイタチは建物を出る。
"本当にそれで良かったのかぁ? 助けでも求めたら手伝ってくれたんじゃねぇの?"
再び心の中の自分が話しかけてくる。
「あなたが居ますし、大丈夫だと思いますよ」
懐から転移結晶を取りだし74階層へと飛ぶ。
しばらく迷宮を進むとリザードマンロードに囲まれた。
「さて、そろそろ頼むよ」
紐を取りだし、髪を束ねる。
こちらの余裕に苛立ちを覚えたのか、リザードマンロード達が剣を構えて襲いかかってくる。
「遅せぇなぁ……」
放たれた居合の構えからの一閃。これによりリザードマンロード達は音もなく消え去った。
一瞬のでやられたのを見て、間合いの外に居た敵達はたじろぐ。
やられた敵の粒子が舞う中心に居るツイタチは先程までとは雰囲気が違った。
可憐な容姿なのは変わらないのに、放つ殺気はまるで修羅の如く威圧がある。
「《抜刀ノ型・飛燕》ッ!!」
長刀を振るう。
刹那、周りから全ての敵が消え去った。
一振りで全部倒したのだ。
ツイタチは思う。この辺りまで来ると敵の動きが人に近く、衝動を抑えやすいと。
長刀を鞘に収め、握っていた右手を見る。
「ククッ…この手も随分と汚れちまったなぁ……?」
紐をほどいて、髪を再び降ろす。
そして歩き出す。
▼▽▼▽▼
50層、『黒の剣士』キリトは街の外れを歩いていた。
「この辺りか? NPCが居ないが合ってるのか?」
『閃光』の少女に頼まれ、最近噂になっているとあるクエストを探していた。
なんでも、行方不明者が続出するらしい。
ふと、丘の大きな木の下を見ると少女が居る。
岩陰から観察してみる。
全体的に線が細く、整った輪郭、艶のある黒く長い髪、蒼い右目と紅い左目。
服装は丈の短いスカートの桃色の和服。
圧倒的な美少女だ。
その少女に見とれていると。
カカカッ!!
隠れていた岩に三本の苦無が突き刺さっていた。
「誰ですか!出てきなさい!」
「ま、まてまて!敵意はない」
敵意の無しを証明するために両手を挙げながらゆっくりと出てゆく。
「この辺りの変わったクエストを受けに来たんだよ」
「私と同じという訳ですか」
「行方不明の人を探してるんだよ」
「私も人探しです」
キリトと目的は同じ。
それでもこんな子を危険に巻き込む訳にはいかないと判断した彼は少女を説得することにした。
「君は帰った方がいい。このクエストは危険だと思う」
「断ります。私は探さなきゃいけないの……兄さんを探さなきゃ………」
少女は提案を拒否してきた。予想の範疇ではあるが。
「わかった。だが、危険だと思ったらすぐに逃げるぞ」
「それはわかってます。こっちも死ぬわけにはいきませんから」
木を二人で見上げる。
二人の間にリンゴが落ちてきた。
キリトはリンゴを拾おうと手を伸ばすと、リンゴがすごい勢いでこちらへ向く。
「我を拾おうとしてくれるとは……非常にッ!!大義であるッ!!」
リンゴが凛々しい顔を向けながら大声で話しかけてきた。
「うわああぁぁぁぁぁぁ…!!」
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!りんっ、リンゴが喋ったぁぁぁぁ!!」
大パニックである。
数分し、少し落ち着いた二人はリンゴ…人面リンゴの話を聞くことにした。
「━━であるからして。この依頼をしたいのだ」
リンゴがの癖にとても長々しく、深い話をしてきた。
要点をまとめると、自分は生前騎士でこの木の下で力尽きたそうだ。
昔、ギリギリ救えなかった姫の眠る墓に花を備えてきて欲しいということ。
「頼むッ!!お願いだ!!我は此処を動けぬのだ!!」
「わかったわかった。元から受けるつもりだったし問題はないよ」
「私も同じで、問題はありません」
流石にリンゴが彫りの深い顔で懇願してくると引くな。
キリトはそう思うのだった。