おっぱいが好きだ   作:ゆきひな

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おっぱいが膨らむ

 携帯というものは便利だ。電話にメールに、スケジュール帳に電卓機能、最近ではアプリというものを入れることでゲームなんかもできるようになるらしい。ソーシャルゲームなんて言う物が社会問題にまでなってニュースで流れていたりするが生憎、僕はそういったものには興味がない。そんな暇があるならネットでおっぱいの画像でも閲覧しているだろう。僕の検索履歴は『おっぱい 美しい』、『おっぱい 貧乳』、『おっぱい 巨乳』、『おっぱい、水着』みたいなので埋まっている。時代の流れとともに、多種多様な機能が生み出されていくその小型機械は僕のおっぱいライフにとっては手放すことのできない素晴らしいものなのに、なぜ僕の折りたたみ式携帯電話には防水機能がついていなかったのか後悔するばかりだ。

 

 洋式トイレの水たまりの中に水没した僕の携帯を見て、僕は他人事のようにそう思えるほど、ひどく落ち着いていた。あ、落ちてる程度のように感じたのだ。携帯にぶら下がっていた、まりおっぱいという頭にブラジャーをつけた坊主(目がパッチリ)のストラップが水中でゆらゆら動くのを眺めていた。あまりにショックな出来事に放心状態になっていたようだった。我に返り、携帯を引き上げた時にはもうすでにお亡くなりになっていた。電源がつかない、全く反応していないのだ。

 

 絶望だった。中身のデータまで壊れていたら終わりだ。僕の集めた画像フォルダ、おっぱいコレクションがもう二度と拝めなくなるかもしれない、そう思うと涙が出てくる。ついでにまず最初に思い浮かべるのが彼女との思い出の写真とかそんなんじゃないあたり、僕は駄目人間だと確信する羽目になった。そもそも、自分の意識がなくなるほどお酒を飲んだのが良くなかった。職場の動機と飲み屋をハシゴした後、家の玄関まで帰ってきたのは記憶にあるのだが、そこからいつの間にかトイレに入り、携帯を便器の中に落としてしまっていたようだ。不覚だ、僕に秘密がバレた同じ研究室の彼の気持ちが少しばかり分かったような気がした。

 

 ただ、いつまでもこうして便器の前で項垂れていても時間の無駄だ。おっぱいコレクションという尊い犠牲が生まれた可能性があるが、幸いにして僕の連絡帳には僕の彼女とその妹、僕の母親と兄貴、研究室の彼と教授、高校時代の友人Y、そして各種仕事場への電話番号ぐらいしか度々連絡を取る相手は登録されてない。さっさと携帯ショップに行って、新しい携帯に解約してしまおう。最近ではスマートフォンというタッチパネルの奴が出て、僕の周りの人間も続々そっちへ移行しているのでちょうどいい機会だと思うことにしよう。

 

 そうと決まれば善は急げだ。僕はまだ痛む頭を我慢して携帯ショップへと行く。僕の町の携帯ショップは大型ショッピングモールの一角にあり、今日は平日の昼前ということもあって、大して混むこともなく携帯の機種替えを終えた。予想通り、携帯は連絡帳のデータ以外すべて破損しており、僕のお宝画像集はもう二度と戻ってこなくなったが、戻ってきたら戻ってきたらで携帯ショップで僕の対応をしてくれた若いお姉さんにそのセクハラ画像という名のおっぱい画像を見られるという恥をかく羽目になったので、今回は首の皮一枚つながったということにしておこう。

 

 僕はショッピングモール内を新しく買い換えた白のスマートフォンを弄りながら、歩いていた。果物のロゴが裏側に入ったそれは噂通り様々な機能がついていて、どうにも扱いが分からない。僕の彼女はスマートフォンなので、今度彼女に色々と教えてもらおう。そうと決まれば、何か彼女にお土産の一つでも買っておいたほうがいいだろう。要は僕の気持ちの問題で決して僕の彼女が無償で教えてくれないわけではない。

 

 そうと決まれば寄る場所は決まっているだろう。僕は何食わぬ顔で、女性用下着売り場へと入っていく。世の男性は、女性用下着売り場に入ることに抵抗を覚えるらしいが、何を臆することがあるのだろうか。女性の魅力的なおっぱいを彩るブラジャーを選びにそこに入る事、それすなわち彼女への愛ゆえの行動なのだ。僕のような紳士は何もブラジャーやパンティーを見て、ぐへへ、と顔をにやけさせるためにそこへ行くわけではないのだ。そんな変態と僕を一緒にしないで欲しい。おっぱいを崇め奉るからこそ、そんな神聖なおっぱいが輝けるように衣装選びに行くただそれだけだ。

 

 先程からブラジャーを真剣な眼差しで選ぶ僕の方を、怪しいものを見るような目で見てくる店員のおばさんがいるがそれはきっと僕ではないだろう。だって僕は紳士だ。今日はおっぱいに悩む僕の彼女のために可愛らしい下着を買いに来ただけだ。全くもって邪な考えなどない。だから僕は彼女に似合いそうな白のレースが付いた下着を手に取る。

 

 そういえば、僕と同じ研究室の彼はブラジャーをつけていないらしい。今時珍しいサラシでおっぱいを平らに潰していると言っていた。それは彼なりの女の体に対する男でありたいというせめてもの抵抗なのだろう。きっと彼が今後、女として振舞うというようなことはないと思うし、仮にあったとしても全く想像できない。それぐらい彼は男より男らしかった。

 

 おっと、ジロジロと手にとったブラジャーを見ている場合ではない。先ほどの店員のおばさんがこちらに向かってきているのだ。断じて、僕の方に来ているわけではないだろうがさっさとレジで支払いをしてしまわないと人生が終わりそうなので、渋々レジへと行く。決して逃げたわけではない、戦略的撤退だ。警察とかが怖いわけじゃないぞ。

 

 会計している最中も変な視線を浴びせられていたがきっと何かの間違いだろう。プレゼント用にラッピングされたそれが入った袋を片手に再びショッピングモール内を歩く。もうじき七月ということもあり、店のあちこちでは水着売り場が設けられていた。マネキンに着せられたビキニを見て夏の訪れを感じるなど風情も何もないが、地球温暖化の影響で変な天気が続いているので仕方のないことだろう。

 

 ともかくだ。夏が近づくっていうのは僕にとっても嬉しい。学生である僕の彼女は補習があるものの夏休みで今まで以上に時間は空くし、僕もまたスクールカウンセラーとしての仕事は休みに入る。大学での研究は忙しくなるが、時間を作ろうと思えばどうとでもなるだろう。

 

 そうと決まれば予定を立てておくべきだろう。夏と言ったら海かプールに行きたい。おっぱいがいっぱいだ。右を見て左を見て、正面を見れば全方位おっぱいが見えるというのはとんでもない天国だ。さらに僕の愛しのおっぱいを持つ彼女の水着姿も拝めるのだ。ただ、彼女のおっぱいを不特定多数の男どもに晒すのは、物凄く嫌で片っ端からそいつらの目を潰して視界を奪ってやりたくなるが、海やプールでも行かない限り僕の前で彼女が水着に着替えることはないだろう。悩んでしまうが、とりあえず保留ということにしておこう。

 

 他には夏祭りや花火大会など、夏休みの行事はいっぱいだ。あえて、どこにも出かけずに家でダラダラと過ごすのもいいだろう。それに彼女のおっぱいを一日愛でても退屈することなどないはずだ。考えれば考えるほどいろいろと思いついてしまうがそれはそれで至極当然なのだ。彼女が高校二年生というのを考慮すると、こうして遊べるのもこの夏休みが最期、そりゃいろいろしたくなる。夏休み明けには来年の大学受験へ向けて勉強の日々を過ごすことになるのだから、僕と会う機会も減ってくるだろう。寂しい気がするが、学生としては避けては通れぬ道なので僕が我が儘を言うわけにはいかない。

 

 ショッピングモールから外へ出れば、カラッとした雲一つない晴天から陽射しを浴びせられ目を細める。もう夏はすぐ近くにまで来ているようだ。僕は期待に胸を膨らませ、一歩を踏み出す。

 

 いや違うか、僕は期待におっぱいを膨らませ、一歩を踏み出した。




 次回は彼女のおっぱいとのイチャイチャを書く予定。
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