戦姫絶唱シンフォギアGB   作:ちばばばん♪

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第10話 君でいられなくなるキミに

「 夢の軌跡は 」「 ここで終わりじゃないよ 」

「 進もう 」「 進もう 」「 先へ 」「 先へ 」

「 命尽きようとも 」「 天に還ろうとも 」

 

地羽伴と天羽奏は歌い始める。

目の前にいる敵には、セレナ1には、全てをぶつける、ぶつけなければならない。

相手はエクスドライブモード、しかも、完全聖遺物状態のガングニールを携えているのだから。

 

「そう…そこにいたのね…重…」

 

かつてドイツで発見されたガングニールは、穂先の一欠片だけの状態であった。

残る部分がほぼ完全な状態で発掘された、という可能性はあるものの、それを中国軍が掌握しているというのは想像に難い。

そうであれば、伴と海根重が誘拐されたあの日、立花響から除去されたガングニールの欠片を中国軍は回収する必要はなかったはずだ。

そして研究所でのガングニールのギア量産計画も、重に植えつけ培養するという形ではなかっただろう。

 

「そのガングニールは重の成れの果て…ガングニールに侵されて…そんな姿になってしまったのね…」

 

何よりも伴は、その槍の鼓動から、とても懐かしい、重の鼓動、温もりの波動を感じ取っていた。

待ち望んだ再開は、夢見た形とは違っており、重の頬を涙が伝う。

 

「諦めるな!まだ海根重の魂はそこにある!だから私は、ここにいる!!」

 

奏が伴を叱責する。

あの研究所で処分されそうになった伴が、ガングニールの絶唱によって召喚させたエインヘリャルの奏。

本当は重を召喚するつもりであったが、魂がヴァルハラにない重は召喚できず、名前の親和性によって偶然奏が呼び出されたのである。

ヴァルハラは戦士の魂が集う場所とされているため、単に重が戦士として認められていない可能性もあったが…。

今日まで幾度となく召喚に失敗してきた伴は、この世界のどこかで必ず重は生きていると、そう願い、信じ続けていた。

そして奏は、そんな伴の駒、あるいは騎士として、今日まで共に歩み続けてきたのである。

かつては時折霊体となり風鳴翼の様子も伺いに行っていたが、新しい仲間と歩み始めた翼を見、寂しく思いつつも安心し、別れを告げた。

そして今、奏は新たな別れを迎えようとしている。

 

「伴、私を完成させろ!!」

 

伴と奏もまたガングニールのエクスドライブ状態ではあるが、完全聖遺物に及ぶだけの力はない。

そしてまた、セレナ1を倒すだけでなく、この非人道的な実験自体を止めたいと願っている。

そのために、伴はあの研究所で得た陰陽術の知識を聖遺物と掛け合わせ、新たな力を得ようとしている。

 

「 ありがとう 君も、海も、土も、空も、全部 」

「 さようなら 君と、波と、草と、風と、全部 」

 

セレナ1は、歌う二人をじっと見つめていた。

セレナシリーズが最強である、最強の兵器を作り出す実験は成功であると示すには、相応の相手が必要である。

そのためにアガートラームのベクトルの力を密かに走らせ、二人の力を分析しようとするが…計測できない。

本能は、これ以上は危険だ、攻撃すべきだと告げているが、待つ。

 

その時、空が割れ、中から巨人が現れた。

 

「…来たわね、レイアの妹…私の大樹!」

 

空中から現れたのは、レイアの妹と呼称されるオートスコアラーの成り損ないである。

伴が4体のオートスコアラーと共に復活させた錬金術の兵器。

他の4体同様、伴の目的に沿った形で再設計されている。

 

「私も準備OKだ、フォニックゲインが漲ってきたぜ!」

 

奏が告げる。今までの路上ライブ等を含め、奏は常にフォニックゲインを貯蓄し続けていた。

それは奏を、聖遺物によって作られた体を持つ聖遺物同位体である奏を完成させるため。

伴は奏の胸の真ん中に手を当て、そして静かに引き抜いた。

奏の体から抜け出てきたそれは槍…完成された槍…レプリカ・ガングニール!

 

「今まで、付き合わせて悪かったわね、奏。…感謝してるわ」

「…ああ、託した」

 

役目を終えた奏は静かに海へと落下していく。

その目に光はないが、最後まで伴に向けられていた。

 

「エクスドライブとエクスドライブ。レプリカとレプリカ。これで、私と同じになったということかしら?」

 

セレナ1は問いかける。

ギアと槍は同じ、だが装者の素体としてはセレナ1が上だという自負はある。

だが不確定要素として伴には陰陽術がある、レイアの妹もある。

 

「装者の素体として私は劣っているわ…このままでは勝てない。だから、こうするのよ!!」

 

伴が突然、レイアの妹に首を掴まれる。

そしてその状態で伴は、自らに槍を向け、そして自らを、レイアの妹ごと、突き刺した。

 

「降りてこい!!オーディン!!」

 

かつてオーディンは、ユグドラシルの木で首を吊り、ガングニールに突き刺し、神に身を捧げ、神の力を得たとされている。

これはその儀式の再現、例え自分を失ってでも、全てを終わらせる覚悟がある。

 

今度こそセレナ1は直感に従い、槍から膨大なエネルギーを収束してを放つ。

だが届く前に霧散してしまう。

 

「私の勝ちよ、セレナ1。私はもうすぐオーディンに体を乗っ取られる。でもその前に、この世界に神の力で呪いをかけるわ。

 聖遺物を兵器にするための非人道的なくそみたいな実験が、二度と行われなくなる呪いよ!!」

 

…何かが、世界に浸透した。

セレナ1が持つ槍が、人に変わる。重の姿に戻る。どこからともなく現れたファラが重を回収し、離脱した。

世界の幾つかの場所で、稲妻が落ちた。聖遺物の非人道的な実験施設が神の雷で破壊されていく。

 

「これは、何?研究所のみんなは無事なの!?」

 

セレナ1は混乱する。中国に残してきた皆にこの呪いの災禍が降りかかっていなければ良いのだが…。

だがそんな希望は、エアキャリアからの李将軍の通信に打ち砕かれる。

 

『神の呪いとやらで幾つかの施設がやられ、クローン達が犠牲になった。だがまだ無事な施設もあるらしい…』

 

もちろん李将軍が施設を放棄して自爆スイッチを押したため、内容は出鱈目である。

本国からの報告はまだ何もない。

だが、これで李将軍の真の目的は達せられる。将軍は密かにほくそ笑んだ。

 

「…妹達はやらせない!貴女が命をかけるなら…私も命をかけましょう!」

 

セレナ1は、最強の装者になる覚悟を決めた。

本当は昔から気が付いていた、それは実は睡眠学習で植えつけられていたのだが、妹達といたいがために気づかないふりをしていた。

だがその妹達が危機である、迷っている猶予はない。

 

「ベクトルの力よ!体内の刻印から遡り、リインカーネーションを!セレナ・カデンツァヴナ・イヴの魂をこの体に!」

 

最強の装者になるための最後のパーツ、セレナ・カデンツァヴナ・イヴの魂。

中国軍の最終的な計画とは、その魂の複製をクローンに植えつけ量産したギアを纏わせることで最強の軍隊を作り上る計画。

即座にエアキャリアに魂の情報が転送されていく。

セレナ1は、その魂に対する命令ベクトルを体内に残し、そして魂をかき消された。

 

「…私は、…セレナ・カデンツァヴナ・イヴ、…世界が…眩しい」

 

セレナは目を擦る。そして目の前の敵に、アガートラームの剣を向けた。そうしろと、体が言うがままに。

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