S.O.N.G.潜水艦内の司令部では、怒号が響いていた。
「空間にゆがみが発生しています!」
「未確認のエネルギーです!」
伴による神の呪い、そして、別次元からのセレナの降臨。この二つの事象によって、沖縄近海の空間のエネルギーが異常に高まる。
「中国の方向から潜水艦らしき艦影を捕捉」
「敵か!?」
「逃げ遅れた米軍艦の可能性もあります。ノイズも酷くあまり期待できませんが、通信を試みます!」
「別方向より強力なフォニックゲイン…新たなアウフバッヘン波形を確認。これは…」
「神獣鏡…だと!!未来君か?それとも新手か!?」
「わかりません!!」
「不明艦との回線繋がりました!自衛隊です!回線開きます!」
目まぐるしく変わる状況の中、必死に何ができるかを考えるマリア。そこに、エルフナインが現れる。
「セレナ1さんから得たギアの解析、終わりました。このギアは………」
「…奇跡が起こる、いや、奇跡を起こして見せる!出撃します、ミサイルの準備を!!」
マリアはすべきことが見つけた。そしてそれをするための方法も。
「貴女を、倒します!」
セレナは剣を構える。急ぎ倒せと、誰かが頭の中で告げる。何故なのかを考える余裕は与えられない。
儀式中で身動きの取れない伴に対し、セレナは光のベクトルを変換・収束し、光線を放つ。
「そうはさせん!」
「「「「S2CA・テトラブラスト typeキャノン」」」」
響・調・切歌がクリスのキャノン砲に力を集中させ、クリスが放った光線がセレナの光線を逸らす。
その間に翼が飛行し伴に接近、説得を試みる。
「馬鹿な真似はやめるんだ、伴!私は…私はこんな形での解決なんて、伴がいなくなるなんて、認めない!」
「…馬鹿がそっちよ!今すぐ離れなさい!もう止められないわ!」
伴が槍から片手を放し、翼を突き飛ばす。
「…だからあんたを体に戻したのよ…短い間だったけど、世話になったわね…ありがとう…」
その時、翼の後方、先程まで響達といた場所から、大きな爆音が聞こえる。
目をやると、テトラブラストで時間稼ぎを行っていた響達は倒れ、無傷のセレナだけが立ち残っていた。
今度は先程まで伴がいた場所から爆音が鳴り響く。
もう一度伴に目を戻そうとするが、その前に、強力なエネルギーで吹き飛ばされる。
最後に目の端にちらりと映ったのは、伴ではなく、槍を携えた老人と、爆散したレイアの妹の破片であった。
「妹が…逝ったか…」
レイアは響達とは異なる孤島から、戦闘の様子を伺う。
「重ちゃんは目こそ覚まさないけど、体に異常は見られないわ」
重を上空より回収したファラが報告を加える。
「いや~ん、マスターの見た目がオジサマに…マスターまたしても作戦失敗?」
ガリィは冷静に状況を判断する。徐々に伴がオーディンに変わっていっている、と。
「ワタシはいつでもいけるゾ~、未来」
ミカは両手を伴≒オーディンに常に向けている。ミカの背中には神獣鏡を纏う未来がいた。
「伴さんの残した指示は、伴さんとセレナさんが射線軸に来たら二人纏めて神獣鏡で無力化すること。でももう猶予はない…撃ちます!」
未来は島ごと覆っていた迷彩を解く。
伴は、自身がオーディンに変わった後、オーディンが世界の新たな災禍に変わるリスクを考え、未来をこの島に配置していたのであった。
神獣鏡の、魔を退ける輝く光の奔流で、不完全な状態でオーディンを消滅させるために。場合によっては自身の魂ごと。
「疑似エクスドライブ!!」
その叫び声と共に、ミカから大量のフォニックゲインが未来に流れてくる。
大容量・高出力のミカは、奏と共にフォニックゲインをその身に貯蓄していた。
適合係数が非常に低く、単独ではギアを纏えない未来だが、未来とミカ、その名前の親和性を陰陽術に利用して、ギアを纏った。
そして今、エクスドライブモードへと突入する。その負荷は全てミカが背負う。
未来の周囲には、無数の円鏡が浮かび、その一つ一つがまるで神経のような糸状のもので繋がれる。
遠くから見た未来の姿は、まるで蝶を纏っているかのようにも見える。
その鏡一つ一つが浄化の光を灯すが、その光を一旦容量が空になったミカに逆流させ、ミカの両の手から収束させて放つ。
「お願い、帰ってきて!伴さん!!」
オーディンは避けようとするが、水・風・金の三種の結界が阻む。
直撃したオーディンは、姿を伴に戻す。だがそれは、ほんの一時であった。再び、オーディンの姿へと戻る。
未来もまた、変身が解ける。あくまで一発限りの、疑似的なエクスドライブの限界であった。
そして負荷を全て受け、許容量以上の力を束ねたミカは、崩壊した。
セーフティの機能によってギアが解除された響達は、別の孤島に這いつくばりながら、その光景をただ眺めていた。
「そんな…未来が戦ってるなんて…」
「畜生、神獣鏡でも浄化できねえってのか!?」
「もうどうすることもできないのか…?」
絶望する響達をよそに、セレナは再び剣を構える。
「セレナ、もうやめるデス!」
「私達が分からないの?白い孤児院で一緒だった、調と切歌だよ!」
「調…切歌…懐かしい名前…でも駄目…私の中の何かが、思い出させてくれないの…!」
セレナは混乱する。私は妹のために、アレを滅ぼさねばならない。妹…?私が妹だったのではないか…?
「そう…マリア姉さんの…」
そこに一隻の潜水艦が現れる。そこから出てきたのは、自分と同じ顔の…。
「セレナ1姉さん?」
「…それとも貴女は、オリジナルの、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ?」
「私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴよ。…そう、私の中で戦えと告げるのは、セレナ1という人なのね?」
「ええ、私達の、ために…」
「でももう大丈夫ですわ!私達は無事に、風鳴の潜水艦に、保護されましたもの…」
さらに多くのセレナシリーズが孤島に降り立つ。
「セレナ1姉さん、優しくて強いセレナ1姉さん、私達はもう、大丈夫だから」
「今まで守ってくれて、ありがとう…」
その瞬間、セレナの中から何かが消えた。セレナは遂に、本当の意味でセレナに戻った。
「調、切歌、久しぶり、大きくなったね。そちらの方々も、傷つけてしまってごめんなさい」
頭を下げるセレナに、響達は何とか立ち上がり、手を指し延ばす。
「気にしてくれるな」
「あたしらは頑丈が取り柄なんだ」
「一緒に、歌おう!!」
「私達も」「歌うデース」
「「私達セレナシリーズも、共に!」」
「響!私も歌うよ!!」
変身が解けた未来も合流した。
「 I entrust my soul to you 」
「 We entrust our soul to you 」
「 Light to the world 」
「 Light up the darkness 」
斉唱している人数自体は、響・翼・クリスの3人が最初にエクスドライブモードになった際のリディアンの学生数に及ばない。
だがここにいるのは皆、高フォニックゲイナーである。そのフォニックゲインは、当時の何百倍にも及ぶ。
「「「「「「 エクス、ドライブ!!! 」」」」」」
響が、翼が、クリスが、調が、切歌が、未来が、エクスドライブモードのシンフォギアを、纏った。