戦姫絶唱シンフォギアGB   作:ちばばばん♪

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第5話 胸に力と無力とを

小日向未来は、緒川・ファラと共に皆神山の遺跡内を進んでいた。

入口は既に破壊されたが、響達が後に迎えに来てくれると信じて、そしてその時に良い報告ができるように、未来は先へ急ぐ。

「こっちです」

未来の感知能力とファラの風を操る力、緒川のカラクリの知識によって、未来達は最短で最深部まで到達した。

「この先の部屋から神獣鏡を感じます!」

すると緒川は器用な手つきで未来が見つけた部屋の扉を開ける。

そこには一人、いや一つの影があった。

「おっそーい、待ちくたびれちゃったじゃない」

青い服を身に纏ったオートスコアラー、ガリィの姿がそこにはあった。

「罠!?」

緒川は懐に手を伸ばし、拳銃を手に取ろうとする。だが傍にいたファラが緒川の腕を掴んで離さない。

「これは一体どういうことなんですか?」

困惑した未来がガリィに向かって尋ねる。するとガリィは滑るように床を移動し、未来の目と鼻の先に現れた。

「マスターからのプ・レ・ゼ・ン・ト、神獣鏡のギアはタダじゃあげないってコトよ」

よくよく見るとガリィの手にはシンフォギアのギアがあった。未来はそこから神獣鏡の確かな波動を感じ取る。

「私は何をすれば…?」

「それはね、チュッ」

ガリィが突然未来の唇を奪う。

「未来さん!!」

未来の身を案じた緒川が叫び、必死にファラの拘束を解こうとするが、それはままならない。以前のオートスコアラーは口づけを通して相手の記憶を奪っていた。このままでは…。

「ウフフ、安心して下さい。あれは記憶の伝達、マスターからのメッセージを送っているだけですわ?」

「そゆこと。さ、小日向未来、一緒に行くわよ?」

長い口づけから解放された未来は、確かにメッセージを受け取ったが、それよりも重大な事実によって動揺していた。

「わ、私、初めてなのに…まだ響とも…」

突然未来が泣き出した。

「ちょ、ちょっと、今そんなことやってる場合じゃないって分かってんのか?」

ガリィの口調が荒くなるが、未来はその場に座り込んでしまう。

「わ、私は人形よ!アンタだって、小さい頃に人形にキスしたことぐらい、あるでしょ?」

「でも…喋ってる…」

「今時ファービィだってリコちゃん人形だって喋んだろうが!!」

「…うん」

ようやく未来は泣きやみ、立ち上がった。

「緒川さん、私、この人達、ううん、この人形達と一緒に行きます!」

「そんな、未来さん!?」

未来は先ほどガリィからもたらされたメッセージを脳内に反芻する。

なぜこの場所に呼ばれ、なぜこのような形で情報を伝達されたのか。そして何をすべきで、それがどう響達のためになるのか。

「私、やらなきゃならないことができたんです」

 

その頃、皆神山から少し外れた平野では、伴とセレナ1が対峙していた。

(まさかエクスドライブしてくるなんて…この場のフォニックゲインにあてられただけならいいのだけど…もしも…)

だがこれ以上は考えても仕方のないことだ。こと、絶唱を口にした伴に残された時間は少ない。

「私の絶唱特性は死…さあ英霊ども、ここに集いなさい!エインヘリャル!」

伴の傍に無数の甲冑が現れ、その一つ一つに何かが宿る。

エインヘリャル、それは戦死した勇者の魂。ガングニールの持ち主であったオーディンは、何度死んでも甦るエインヘリャルと共に戦場をかけたと言われている。それは槍自体の純粋な力ではないが、陰陽術を使える伴は槍を触媒としてその現象を再現した。

無数の甲冑がセレナ1に向かって殺到する。

セレナもまた無数の銀剣を空中に出現させ、ベクトル操作の力をもって甲冑を迎撃する。

砕いても砕いても再生する甲冑は銀剣をものともせずセレナ1に接近するが、突然変化が起こる。銀剣が刺さった甲冑の再生能力を、セレナ1はベクトル操作の力で霧散させる。次々とエインヘリャルが戦闘不能に陥り、無数の銀剣はあっという間に伴にせまる。

「なめんじゃねーわよ」

ここまでは伴にとっても想定内だった。

セレナ1と伴の間にある甲冑が突然再生して再びセレナ1に襲い掛かる。陰陽術をもって甲冑の構造を聖遺物から陰陽術世界の未知の物質に変化させ、現実世界の物理法則を超越する。

銀剣を戻すのは間に合わない。セレナ1は銀鞭を発生させ、甲冑を吹き飛ばしにかかる。

だが銀剣も、銀鞭も、突然霧散する。

「この領域の物理法則を陰陽術世界の法則が塗りつぶす!」

セレナ1は領域内のベクトルが計算できなくなる。

しかしセレナ1は即座に自分を起点にベクトルの再計算を行う。陰陽術世界の法則を探す。

「死になさい。そして私の手駒に…」

甲冑の持つ槍がセレナの胸元に届く…寸前で動きが止まった。

「この領域は私が制圧したわ」

ベクトルの力で陰陽術世界の領域発生の仕組み自体を捻じ曲げる。

「げほっ、げほっ、くそったれが…」

そこで伴は力尽きた。絶唱のフィードバックと陰陽術の負荷に耐え切れずに膝をつき、さらに吐血してしまう。

セレナ1は手に銀剣を携え、伴の前に現れる。

「セレナ1、実験終了。対シンフォギア装者戦及び対アルケミスト戦における本計画の優位性を確認」

セレナ1の言葉を聞きながら、ここまでか、と伴は諦めに似た感情を抱いた。

思えば皆神山で失敗だけでなく、ライブ会場でも失敗した。もっと言えば、かつて親友と遭遇した事件、あれが最初にして最大の失敗であり…。

そこまで考えて、伴は諦めてはいけない理由に至る。

そして、最後の力で言葉を発した。

「貴女達が目指す…セレナ・カデンツァヴナ・イヴ…は…果たして人殺しができるよな…残酷な…人間なのかしら…?」

その言葉を聞いたセレナ1の動きが止まる。エクスドライブモードに揺らぎが発生する。

目指すべきは、より完全なセレナになること。ここで人を殺めるという行為は、後々セレナ1にとって大きな楔となり得る。

セレナ1はとどめを思い止まり、姿の見えぬエアキャリアへと消えて行った。

「私はまだ…死ねないのよ…」

 

こうして皆神山での激闘は幕を閉じた。

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