「「「 終演の歌 終幕の鐘 風と伴に奏づ 自由の旋律 」」」
伴・奏・翼はS.O,N.G.の潜水艦に搭載されたミサイルに搭乗していた。
「「「 この大空に 翼を広げ 」」」
目的地は中国本土にある聖遺物研究施設の一つ。
「 離せ 」「 古き夢に 」「 幕引きを 」
伴の情報が国連に伝わるや否や、中国側はこの施設をテロリストの施設と認定。即座に派兵を開始した。
セレナのクローン達を救出するため、そして重への手がかりを探るため、伴達は行く。
同じくテロリストだからこそ、法律も、権力も、何もかもを無視して、ただひたすら一直線に。
そのために、伴達は響達との距離を置いていたのだから。
「時間よ」
伴は奏と翼に呼びかける。あるいは自分に喝を入れるための言葉かもしれない。
S.O,N.G.の潜水艦から発射され、大気圏外を飛行していたミサイルは、目標地点を前にして降下を始める。
同時に、地上から迎撃のための弾幕が飛来する。
「うおらぁぁあぁあぁぁぁ!」
奏はミサイル全部の走行を蹴破り、自身の槍で嵐のような激風を新たに纏わせ、砲撃を逸らす。
「持っていけ、トリプルだ!」
右側面からは伴が槍からビームを、左側面からは翼が雷を放ち、地上部隊や航空戦力を無力化していく。
歌いながら接近すること数分、遂に施設が視界に入る。
「今度こそは、成功させて見せるわ…」
その頃、施設内では、激しい攻防が行われていた。
セレナ2=シュルシャガナとセレナ3=イガリマは、ギアを持たないクローン達を誘導しつつ戦う。
「まさかいきなり対軍人戦闘実験になるなんて、思ってもいなかったですわ。それもこの装備、まさか…」
セレナ3は安全確認と不意打ちへの対処のために、鎌をドリルのように回転しながら直進する。
セレナ2は後方からの追っ手を凌ぐために、巨大な鋸を盾にして軍人からの銃撃を凌ぎつつ、小さな鋸を床や壁を這わせて攻撃する。
また狭い通路などでは、巨大な鋸で完全に道を塞ぎ、隔壁代わりに使う。
「こいつらは敵、敵、敵…」
セレナ達には強力な愛国心が植え込まれている。
本来であれば最も殺してはいけない相手との戦闘であるが、相手が何者かを考えないようにすることで、何とか自我を保つ。
「これが実験ならば、ギアを纏わない貴女達は戦ってはいけない。いいですこと?」
戦闘技術等も催眠学習によって習得してはいるが、ギアのないセレナ達の自我を守るため、戦闘に参加しない口実を考える。
特にセレナ2は二番目の個体、姉としての自覚もあった。
「セレナ4からの連絡、やっぱり研究員はどこにもいないみたい…装置についてた神獣鏡は壊れてるって…」
「とにかくシェルタードームへ。あそこならば簡単には侵入できないはずですわ」
急ぎながらも、外から爆発音と振動が聞こえてくるようになったことに気付く。
少なくとも現状、軍人以外による攻撃は行われてはいない。ということは、外部から何かがやってきたということになる。
(味方…?セレナ1姉様かしら…?)
考えながらもシェルターに進み、そして遂に入口にたどり着く。認証キーを入力する。その時、一際大きな爆発音が鳴る。
開かれたシェルター、だがその天井は敗れ、中には三人の先客がいた。
「核シェルターって、意外と脆いんだな。たかだかシンフォギアの三撃で吹き飛ぶなんて」
「何せ私は月の破片すら破壊したのだからな」
「何よそのドヤ顔は。むかつくわね」
和気藹藹とした、この場には似つかわしくない雰囲気の少女達。
「…あら、久しぶりね。助けに来たわよ?」
そこにはニコリとした地羽伴をはじめとする、因縁の相手達がいた。
「…丁度いい所に来て下さいましたわね」
セレナ2は、前回の皆神山でのセレナ1と伴の激戦を。エアキャリアのモニター越しで見ていた。
その力は凄まじく、セレナ2・3の二人がかりで戦っていた時には、わざと手加減されていたことに気付いた。
当時、伴が本気を出していたら到底勝てなかったし、多少の調整を受けたとは言え今も勝てるかどうかは分からない。
だが、これは好機である。
「お前達を倒す…そして私達の有用性を示す…!」
セレナ3が鎌を構える。
もしかしたら今回の襲撃は、自分達の対軍人戦闘実験であり、自分達処分も兼ねているのかもしれないと思っていた。
少なくともセレナ1よりは実力で劣っており、そのセレナ1は現在任務でこの施設にいない。
中国で発掘されたシンフォギア、太古にフィーネが作ったそれを纏うセレナ4以下数名の装者は今ここにはいないが、それも好機。
以前よりも強いことを証明できれば、これが処分を兼ねていようとなかろうと、将来に展望が持てる。
「助けられる気はないってことかしら?」
「中国に尽くすためだけに作られた私達に、その選択肢はないわ…。でも貴女達が来てくれて、正直助かった…」
「お礼に貴女方に戦う理由を差し上げますわ?勝てばこの二つのギアはお返しする上に、海根重の所在もお教えしますわ?」
その一言で、伴の顔つきが豹変する。
「遂に、手がかりに、辿り着いた…。いいわ、さっさと始めましょう?」
「ええ、そうね。…クアドラプル伐剣!!」「クアドラプル伐剣!!」
伐剣、それはシンフォギアの持つ決戦ブースター・イグナイトモジュールの起動コマンド。
魔剣ダインスレイフの呪いを応用して意図的な暴走状態を誘発・制御することで、攻防両面の戦闘力が飛躍的に上昇する。
当然ながら危険な機能でもあるため、三段階のセーフティが存在する。
中国の聖遺物研究施設は、この三段階目までに耐え得る精神状態の開発には成功していた。
クアドラプルは存在しない四段階目、セーフティなしの、装者の意志の力だけによる暴走状態の制御。
かつてこの奇跡的な所業に成功した者は、エクスカリバーに起因するガングニールの暴走・破壊衝動に打ち勝った、立花響ただ一人である。
(私はセレナ2…ガングニールと適合する精神、あるいは魂と言ってもいいかもしれない…の模索のために作られたクローン。
私以外にも…沢山の精神のバリエーションが作られて…クローンに植えつけられて…でもあの日に至るまで…誰も適合しなかった。
オリジナルの観測記録から作られたセレナ1ですら…薬品の投与なしでは適合しなかった。
私達は処分されて…新しい異なった精神を持つクローンが作られ続けて…いつかは適合者が現れる計画だった。
あの日…ガングニールの製造を研究していた施設が破壊された日。
唯一シンフォギアを製造できる人物も死んで…計画が完全に白紙に戻って…そして変わった。
多分…完全な装者と…完全な聖遺物…その実験のためだけれども…私は…私達は…暫しの生を許された…嬉しかった。
イグナイトモジュールの起動実験…計画の本筋にはなかったけれども…認められた…嬉しかった。
ああ…私は生きたかったんだ…妹達と…生きたいんだ…だから私は…同胞を殺せた。
殺す殺スこロすコろスkoろスkoroすこロsukorosu…違う!!生きる!!この国で生きる!!妹達と生きる!!ずっと生きる!!
それを阻むモノは全て消し去る!!自由になる!!そのための力を!!!
セレナ3…貴女も…私とは違う貴女だけれども…きっと同じ思いで戦っているのよね?)
(ええ…姉さん…生きたい…皆で…そのために…こんな呪いになんて…負けられない!!負けてなるものか!!!)
目の前で奇跡を眺めながら、伴もまた秘策を使うべき時だと考えていた。
「勝つわ。重の為にも、アンタ達のためにも。キャロル・マールス・ディーンハイムの遺産を使ってね」
魔法少女事変の最終決戦の際、伴はチフォージュ・シャトーの城内に潜入していた。
そこで幾ばくかの錬金術の知識、オートスコアラーの設計図、そしてキャロルの想い出のインストール装置。
通常ではあり得ない量の記憶の記録ができるよう肉体を改造したキャロルとは違い、伴は想い出の全てはインストールできなかった。
だが決戦時にただの一回、決戦仕様になるだけの、焼却用の記憶は確保していた。
皆神山では、重に辿り着けるかが分からなかったため、これの使用を控え、絶唱に頼ったのだが、今回は違う。
セレナ達に勝って、そのまま重の元まで飛んでいく。
今までは計算ずくめだったが、それがことごとく失敗とあれば、このくらいシンプルな方がいいかもしれない、と伴はふと思った。
「エクス、ドライブ!!!」